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♪～
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ　ハンカチのように」
♪「心の中に　すべり込む」
♪「いちばん　ちいさな魔法」
♪「泣いたり　笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えないあなたのために」
♪「パレードは　まわり続けてる」
（山下）どうぞ。
（ため息）
（てん）急に押しかけて　すんません。
それで　会社辞めはったてどういう事です？
封切り間近の映画が　立て続けに検閲に引っ掛かりまして莫大な損害を受ける事になりました。
映画は　社長の伊能が独断でやってましたさかいその責任を追及する事になったんです。
♪～
（ノック）（栞）どうぞ。
（山下）失礼します。
みんな　そろって　どうした？
社長　映画事業の赤字のせいで今や　伊能商会全体の経営も揺らぎかねない状況です。
この際　映画事業を売却してこれまでの損失を補填するべきです！
ほかの皆の意見は？
異議ありません。
異議なし。異議なし！
異議なし！異議なし！異議ありません！
異議あり。
異議あり？
はい。　まさかあの状況で　そう答えるとは…。
いいか　諸君！
映画で大衆に感動を届ける。
それこそが　この会社の原点だ。
その原点を切り捨てれば会社経営は必ず行き詰まる。
そう思わないか？
♪～
どうしても切り捨てると言うならばもう…。
僕の居場所は　ここにはない。
♪～
　回想　（藤吉）北村笑店の役員になってくれへんか？
（藤吉）俺らが提携したら映画も　もっとオモロイ事ができる。
（足音）
おっちゃん俺も　お酒ちょうだい。
へい。　ちょっと待っててや。おう　ええよ。
やっと帰ってきた。ああ。
どこ行ってはったんや。
東京に行ってた。
なんとか映画を作り続けられないか気骨のあるパートナーを探していたんだが皆　こうも萎縮してしまっているとは。
上映中止の損害賠償はどうしはったんや。
全財産　出したよ。
今は　かばん一つで身軽なもんだ。
北村笑店の皆さんにもなんとか　事情を説明しようとは思っていたんだが…。
♪～
（鈴の音）
こうなってしまった以上北村の役員を辞めざるをえない。
おてんさんの事を　支えていく事ができなくなってしまった。
本当に　すまない。
伊能さん実は　お力を貸してほしいんや。
なあ！
そうです。　日本中のお客さんに笑いを届けるために北村の映画を作りたいんです。
うちらに　映画の作り方一から教えてくれまへんやろか。
ありがとう。
でも世話になる訳にはいかないよ。
うちの人が　お引き止めしてすんまへん。
もう　余計な事ばっかり言うておトキちゃん　年取ったな　おい。
これ。（トキ）何や？見てみ　これ。　何や？
何や？　これ。男同士の酒盛りや。
そのあとは　枕の投げっこや。そう決まってんねん！　男は。
ん？　ほら　てんとこ　行ってこい。へえへえ。
おやすみなさい。すまない。　おやすみなさい。
（飛鳥）おやすみなさい。ちゃんと　洗いもんしといてや。
分かった。　もう　ぐちぐちうるさいな～　おトキちゃん。
（戸の開閉音）
ほれ　伊能はん。ありがとう。
ホンマに　もう少しうちに　いはったらどうや。
「今は　かばん一つで身軽なもんだ」。
その割に　まだ重たい鎧つけてはるんとちゃいますか。
伊能さんの好きな自由の身ぃになったんや。
うちで　また新しい人生　始めたらええ。
ほい。
う～！
あ…。
そや。
ああ…。
あった。
伊能さん。
ああ…　風太君に飲まされ過ぎた。
ああ…。
伊能さん　これ。
懐かしいですやろ。
♪～
この時の情熱さえなくさへんかったら大丈夫やないですかね。
うちは　伊能さんに映画作り続けてほしいんです。
僕は　これを買い付けた時…。
外国の自由な風を日本にも吹かせたいと思った。
でも　観客の喜ぶ顔を見て自分の手で映画を作りたいと思った。
泣いて　笑って　恋をして。
人生は　すばらしいんだぞ。
そういう映画を作りたいと思った。
それが夢だった。
へえ。
伊能さんの　その夢うちらにも見さしておくれやす。
どうか　北村笑店映画部の設立にお力　貸してもらえませんやろか。
♪～
・（戸が開く音）
はっ！
（うなされる声）
♪～