学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地格安売却問題を巡り、国会は混迷を極めている。昨年2月の問題発覚後に国有地売却に関する決裁文書が書き換えられたと、朝日新聞がスクープした。契約当時の文書には、学園との取引について「特例的な内容」との表現があり、学園の要請への対応が時系列的に記述されていたが、国会に開示された文書では、それらが消えたという。財務省は国会で、森友学園との事前の価格交渉を否定し続けてきたが、それを根底から覆す内容であった。

 財務省は当初、背任と公用文書等毀棄で告発を受けて大阪地検が捜査中であることを理由に、文書を直ちに確認できないとしたが、与野党から強い批判を受けて、コピーを国会に提出した。しかし、そのコピーが既に国会に開示されたものと同じという「ゼロ回答」だったために、さらに激しい批判を浴びることになった。

 その後、近畿財務局で国有地売却の交渉・契約を担当した職員が遺書を残して自殺したと報じられ、当時の財務省理財局長だった佐川宣寿国税庁長官が辞任する事態となった。そして、遂に財務省は、決裁文書の書き換えがあったことを認めた。書き換え前の文書には、森友学園の籠池泰典前理事長の発言として安倍晋三首相の妻昭恵氏に関する記述があり、書き換え後は削除されていたという。

財務省をスケープゴートにするには
あまりにも遅すぎた安倍政権の対応

 この連載では、森友学園問題の「落としどころ」として、「財務省をスケープゴート」にすることだと指摘していた(本連載第172回)。だが、残念ながら、佐川長官の辞任はあまりに遅すぎて、「落としどころ」になりようがなくなった。

 昨年7月の中央省庁の人事異動時に、佐川理財局長(当時)の処遇は、国税庁長官への「栄転」ではなく、窓際への「左遷」が妥当だった。それが難しくても、少なくとも昨年11月に、佐川長官の処分を断行すべきだった。