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(亀井)皇軍の武運長久とわろてんか隊の成功を祈ってバンザイ!(一同)バンザイ!
新聞社の依頼で 北村笑店は笑いの慰問団として芸人十数名を戦地に派遣する事になりました。
はあ~ 出陣式だけでこない取り上げられて北村の名前も大きゅう出てますわ。
(てん)それに 団長が英雄みたいに紹介されてるしな。
うん。(トキ)へえ。
(楓)ごりょんさん 今 新聞社で第一報 聞いてきました。
わろてんか隊上海に着いたそうです。
そうか!
よかった 無事 着いて…。
けど 看板芸人ごっそり 行ってもうたから我々も頑張ってお客さん 呼ばなあきまへんで。
うん。
みんな 働きましょ。
(3人)へえ!
♪~
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ ハンカチのように」
♪「心の中に すべり込む」
♪「いちばん ちいさな魔法」
♪「泣いたり 笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えないあなたのために」
♪「パレードは まわり続けてる」
♪~(ラッパ)
(万丈目)あんな歓迎されるとはなぁ。
こら 気合い入れんと。(歌子)久しぶりに腕鳴るわ。
え…?
(アサリ)ハハハハハハ!いや~ 懐かしなぁ この格好。
(キース)おお 元祖しゃべくり漫才の復活や。ああ。
おっ 写真撮ろか?ああ!(笑い声)
かっこよう撮ってや。おお いくで~!
(風太)おい どけ アホ。おっ…。
慰問団の面倒を見て頂く阿久津少佐殿や。
ご挨拶せえ。(一同)よろしゅうお願いします!
ご苦労さま。 陸軍主計少佐阿久津隆一であります。
早速 慰問演芸会を催しますが将兵の士気高揚のためよろしくお願いします。
ご期待に沿えるよう気張らせてもらいます。
しかし その格好は…。
あ… 高座の衣装ですけど。
兵隊たちに妙な里心がついてはいかん。
ここ上海においても戦場にいる心意気で是非 制服のまま演じてもらいたい!
諸君は栄えある皇軍将兵の慰問団だ。
その事は よくわきまえておいてもらいたい。
では。
♪~
何や 思てたんとちゃうな。
まあ しゃあない!ネタだけで どれだけ兵隊さんらを笑わす事ができるか腕試しや。
(2人)へえ!
え~ 連日連夜 勇戦敢闘される皇軍将兵の勇士の皆さんを慰問せんと我々 わろてんか隊はるばる やって参りました。
(唾を飲み込む音)
え~ これからのひととき漫才や落語 奇術をお楽しみ頂きお国のために ますますお働き頂く励みになれば我々 慰問団としてこないに名誉な事はありません。
「もしもし?」。「もしもし?」。「もしもし?」。「もしもし?」。
「どちら様ですか?」。「キミが かけてるんやがな」。
「もしもし?」。「もしもし?」。♪「亀よ 亀さんよ」
♪「世界の」… 歌てる場合か!
ありがと。何のありがとうや!
(笑い声)
「もしもし?」。「もしもし?」。
はよ!ご陽気に うしろ面を さあ!
せやから 何回も言うてますよねこの格好やったらうしろ面なんか できまへんがな。
ん?
これで よろし。何や? これ。
前面や。(笑い声)前面?
それでは ご陽気に 前面をさあ!
(万丈目)あ~ もう しゃあない。お願いします。
♪~
(万丈目)こんなん 普通やがな。
(万丈目)ヨッ オイトナ!ヨイヨイ~!
少佐殿 なんぞ問題ありましたやろか。
いや 皆も大いに楽しんだようでよかった。
おおきに。(ノック)
・阿久津少佐殿 失礼致します。お連れしました!
よし お通ししろ。・はい!
(ドアが開く音)どうぞ。
リリコ!
君に面会だ。
はっ。
(リリコ)新聞に あんたらが慰問に来てるて 出てたんや。
そうか。
ここんとこ何の音沙汰もないさかいお前らの事 心配してたんや。
四郎さんが入ったオーケストラ楽団外国人ぎょうさん集めてたさかい世の中が 何や怪しゅうなってきて解散してしもたんや。
何で知らせへんねや。
そら うちらにも意地がある。
あんだけ大口たたいてこっち来たんや。
ほんで 今は何してんねや。
四郎さんは バーでピアノ弾いてる。
それだけでは食べていかれへんからうちは近所の食堂で働いてんねん。
ホンマに 大丈夫なんか?
地の果てまで ついていく言うて一緒になったんや。
別に苦労でもないし後悔もしてへん。
ちょっと懐かしゅうなって来ただけや。
ホンマか?
お前ら まだ北村の社員のまんまやったな。
え?
♪~
さあ 入れ!(万丈目)うわ~!
いや~ リリコはん 久しぶり!
あ~ 四郎さんも元気そうでもう 何よりや!
ホンマに お久しぶりです。(四郎)ご無沙汰して すんません。
今日から この2人にはわろてんか隊に入ってもらう。
おお!みんな よろしゅう頼むで。
へえ!けど よう許可下りましたなぁ。
あの堅物の少佐やったらアカン言いそうなもんやけど。
いや~ こいつらを まだうちの社員にしといてよかった。
兵隊さんの慰問のためや言うたらはんこ押してくれた。
ああ~。 これで北村の大看板のそろい踏みや。
オモロなるで。
そやけど 漫才 大丈夫なんか?しばらく やってへんのやろ?
もちろん うちは天才やさかい大丈夫や。
(笑い声)ほな 四郎さんは?
僕ですか?あんたはアウアウ言うてるだけやさかい問題ないわ。え!(笑い声)
アコーディオンの腕前は 天才やしな!もう~ 何やねん!
何や のろけかい!
さあ みんな北村笑店の底力 見したってや!
(一同)へえ!
おおきに。
社長! リリコはんや。
リリコ アンド シローが わろてんか隊と合流したみたいでっせ。
え!
ほんまや。 どういう事やろ?
四郎さんの楽団うまくいかんかったんやろか?
あ… まあ 事情は どうあれお二人が 戻ってきてくれはったんやったら百人力や。
な!うんうん。確かに。
うちも負けてられへん。
節約や出産奨励これで どう笑わせいうんやろか。
(隼也)ただいま。
いや~ 「わろてんか隊慰問団」か。
(つばき)はい。おじ様が 団長さんらしいです。
そうか。(藤一郎の声)
ただいま 藤一郎。
あっ 隼也さん これ。ん?
今日 届いたんですけど 大阪から。
おしめが こんなに。
はあ~。
お母ちゃん…。
おおきに。(藤一郎の声)
藤一郎 おばあちゃんが心込めて縫うてくれた贈り物ですよ。
どうも~ 皆様 ご機嫌よう!ミス・リリコです。
こちら 私の伴奏者 兼 引き立て役。
シロ! シロ シロ…。(笑い声)「シロ シロ」て子犬か!
緊張して 頭ん中が真っ白になってますけどこちら シローさんです。どうぞ お見知りおきを。
あ… あう あうあう あう…。「あうあう」て犬かいな!
すいませんねぇ そやけどアコーディオンは うまいんですよ。
こんな顔ですけど。あう~!(アコーディオンの音)
ね! この人楽譜も ちゃんと読めるんですよ。
こんな顔ですけど。次の曲は 何やの?
えっ ベートーベン? アホか!(笑い声)
この このこの この…。「このこ このこ」て どこの子や。
迷子でもおるんか! あんたが 今高座で迷子になってんねん!ホンマ しょうもない。 あら失礼。
(アサリ)腰や。(キース)大丈夫か? お前。
いや~ 兵隊さんら 喜んでたで。
お疲れさん。お疲れさん。何や 久しぶりでえらい緊張したけどウケて よかったです。
そやけどこんな格好で漫才すんの味気のうてお客さんに申し訳ないわ。
失礼する!
君 その髪飾り 取りたまえ。
えっ これも あきませんの?
兵隊さんらのお故郷のおねえちゃんみたいで可愛らしい思いますけど。
諸君は明日 前線に赴く兵隊たちを笑わせるのが仕事だ。 いたずらに里心をつかせるような言動は慎んでもらいたい。
すんませんでした。これから 気ぃ付けますよって。
(ため息)
服や髪飾りなんか関係ない。
せや。 お前らの腕やったら兵隊さん なんぼでもわろてくれるわ。
それにしても ウケ過ぎちゃうか?
へ?みんなはじめっから終わりまでず~っと わろてた。ああ 確かに。
怖いほど わろてくれはるわ。
最後の笑いやからかもしれんな。
ん? どういうこっちゃ。
バーで ピアノ弾いてるとやたら陽気に歌うたり踊ったりしてた兵隊さんが次の日からパタッと来んようになるんです。
後で話聞くと前線に送られる前の日やったて。
そういうたら今日の兵隊さんらも近々 どっか戦場へ行く言うてはったわ。
何や 責任重大やな。
うん…。
♪~
あの 高座 面白かったです。
僕 子どもの頃よう 天満の寄席に通てました。
漫才 大好きで。あ… おおきに!
これを。
え?
お願いします。