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高座　面白かったです。僕　子どもの頃よう　天満の寄席に通うてました。漫才　大好きで。
（リリコ）おおきに。
これを。え？
この手紙　天満の　ある人に届けてもらえませんでしょうか。
え？
僕　明日　前線に行きます。
その前に　これを彼女に送りたい。
そやけど書簡の検閲があるさかい…。
ええで。　届けたるわ。
ありがとうございます。
（キース）懐かしいやろ。（四郎）ちょっと　交換しましょう。
（アサリ）おっ　交換？
やっぱ　それが　しっくりくるわ。（風太）おい　次の部隊の兵隊さんらが集まったさかいちょっと早めに始めんで。
（一同）へえ！
なあ　団長さん。おう　何や？
恋文　書いた事ある？あるかい　そんなもん！　何や。
そんなんやから　兵隊さんの気持ちが分からへんねん！
何や　お前まで。はよ準備や　おい！
早くせえ！
おう行くぞ。あ？
・♪～（ラッパ）
うちら　こんな色気ない高座やってて　ええんやろか。
え？
あ…。
（リリコ）万丈目はん。（万丈目）へえ。今すぐ　台本考えてもらわれへん？今すぐ？
そうや。　よし！
リリコの負けん気がむくむくと　わいていました。
♪～
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ　ハンカチのように」
♪「心の中に　すべり込む」
♪「いちばん　ちいさな魔法」
♪「泣いたり　笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えないあなたのために」
♪「パレードは　まわり続けてる」
最後は　これまた今回のために再結成しました伝説の漫才コンビミス・リリコ　アンド　シローです。　どうぞ！
（拍手）
おう　ちょっ　待て！　これこれ…痛っ！　おい！
（歓声）
（拍手）
リリコです。シローです。早速やけどなうち　実は　軍隊に入って外地に行った恋人から手紙もらいましてん。ちょっと　読んでみまひょか。
（四郎）こ…　こ…　恋人でっか！？
あいつら　何してんねや　おい。さあ…。
「恋しい恋しい　リリコ様お元気でしょうか。昨日　僕は君に会う夢を見ました」。
（どよめき）
君やて！　もう　いやや　もう！
卵の黄身ちゃうで。（笑い声）
「夢の中で　君は夜空に輝く月を眺めながら泣いてました」。かぐや姫！
ええとこで　合いの手いらんねんもう！
「そこで目が覚めた僕も気が付いたら枕を涙で　ぬらしてました」。
あぁ～！（リリコ）何　泣いてんねん　もう～！
（四郎）ええ話や。（リリコ）そやろ。
つまり　これは　我愛□や。
ウォーアイニーって　何でんのん？
日本語で言うたらな「私は　あなたを愛してます」…。
（阿久津）中止だ！　中止！
アホ　何を勝手な事してんねや！
すんまへん。万丈目はんは悪ない。
うちが　「台本書いて」て無理やり　お願いしたんや。
中止になったんが　最後のお前らでよかったけどせっかく来てくれはった兵隊さんらに悪い思わんのか！ホンマ　すんません。
おい。
何や。昨日　兵隊さんから内地に届けてほしいて預かった恋文や。
え？ちっちゃい頃から天満の風鳥亭によう来てくれてたんや。
アホ　返してこい！多分　前線行ってもう　おらんわ！
わてらも預かりました。
愛想のええ兵隊さんで歌子が　お母ちゃんに似てるて。
なあ！（歌子）そう言われたら手紙断る訳にはいかへん！
（アサリ）わいらも預かったで。近いうち　前線行くさかいこの先　どうなるか分からん言うてな。
兵隊さんら　みんな　内地に残してきた人の事が気がかりでつらいんやと思います。
俺らの仕事は手紙を預かる事やない。
それに　こないな事が　ばれたら北村の責任問題や！
よこせ。　これは　俺が預かる。
ええな！
・（軍用機の飛行音）
大陸の戦火はどんどん拡大してゆきましたがそれでも　日本には連戦連勝の朗報しか伝わらず…。
（てん）「兵隊さん等に満面の笑み」か。
よかったぁ。
（トキ）そうですな。
けど　うちの人の写真どこにもありまへん。
写真のないのが　ええ便りいう事やろ。
そうですな。うん。
（山下）この戦争　いつまで続くんやら不動産もデパートもこの先　どうなっていくか正直　分かりません。
映画の方も堅実に　やっていきませんと。
（栞）ん？　それは軍部の意向に沿って孝行忠義の物語を作れという事か？
いや　社長はそういう方やないのは分かってます。　けど…。
この　新世紀キネマとの提携話真剣に　お考え頂いた方がええと思います。
もう　大きな流れには逆らえん世の中なのかもしれません。
♪～
（楓）面白ないですか？
（亀井）そやなぁ。
この歌がよう分かりまへんねん。
歌て　何です？
ああ　これです。
（楓）「ああ　おとうとよ　君を泣く。君死にたもうことなかれ」。
与謝野晶子か。うん。
有名な歌でっか？日露戦争の時に出征する弟に宛てて書いた歌です。
うん　けど　この歌やと話が暗うなるんとちゃいます？
そうですやろな。
わしが　昔　寄席やってた時戦争行く若い芸人　見送ってな。
あいつ　兵隊行かんとあのままやったらええ噺家になってたやろな。
戦死しはったんですか？
いや　そのまま　軍隊残りよった。
えっ　戦死しはった…。いや　今も元気やで。
暗そうな話でも　笑えまっしゃろ。
亀さん…。
よかったわ。
♪～
月命日に　わざわざ　お越し頂いてありがとうございます。
いや　藤吉君と話がしたかったんだ。
ちょっと　弱気の虫が出た。
伊能さんが？
何でもない普通の映画を作りたいだけなんだがその普通が　だんだんと難しくなってるのかもしれない。
こんな時　後先考えずに突っ走る藤吉君の事を思うんだ。
彼は純粋だった。
へえ。
昨日　わろうてくれた人が今日は死んでるかもしれんてなぁ。
けど　泣いて死ぬよりわろてから死んだ方がええんちゃうか。
そうかもな。
なあ　お前は死ぬ前　最後に何したい？
え？
俺は　お前と漫才やりたいわ。
やっぱり　お前がええ。
内地に帰っても　コンビ続けてくれ。
お…　おお。
わろてくれた兵隊さんみんな　自分の親戚みたいに思えてつらいわ。
えらいとこ連れてきてしもうてすまんな。
うちは　ここに来て　よかったで。え？
マンマンで　みんなにコーヒー出して日がな一日おしゃべりしてるだけの事がどんなに幸せな事かよう分かった。
こうやって　手ぇ握ってくれる嫁はんいてるだけであんたも幸せやで。
歌子。
♪～
（足音）
よっしゃ　その意気や！…っしゃ！
次も頑張んで　漫才。な！　ハハハハハ！
（ドアの開閉音）
イッタ…。恥ずかし　ホンマに…。
必ず　無事で戻ってきてや。
そやないと　承知せえへんで。
大丈夫や　安心せえ。
なあ　飛鳥。　お母ちゃんとちょっとの間　待っててな。
（飛鳥）うん！よっしゃ。
♪～
兵隊さんから預かった手紙の事や。
あれは　皆　俺の荷物の中に入れて内地に持ち帰る。
ええんか？ばれたら　えらいこっちゃで。
まあ　団長の荷物までいちいち調べへんやろ。
さすが団長さんや！
これで　すっきりして漫才できるわ！
その漫才の事や。
リリコ　四郎。
お前らの漫才　好きにせえ。
（２人）え？
万丈目はん新しい台本　書いてもらえるか？
へえ…。
よっしゃ　集まってくれ。
明日は　いよいよ　ここ上海での最後の慰問でございます。