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(女性)四郎さん。
(四郎)とにかく はよ行こ。
四郎の前に現れた 謎の女。
(リリコ)あの女 誰?お前が思てるような関係と ちゃうで!ほな どんな関係?
いやいや せやから…ホンマに 何もないんやて。
よう考えてみぃや。あんな べっぴんさんが僕の事 好きになる訳ないやろ。
何や うちが不細工いう事か!
アイタッ!なあ! そういう事やな!
痛い! 痛い痛い! やめえ!どうなんや!あの女 誰やねん!(てん)ちょっと! 何してはんの!?
ひゃ~!
♪~
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ ハンカチのように」
♪「心の中に すべり込む」
♪「いちばん ちいさな魔法」
♪「泣いたり 笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えないあなたのために」
♪「パレードは まわり続けてる」
(ため息)
楽屋で ケンカなんかして。
どないしはったん?
すんません。
女や。へ?
四郎に 女ができたんや。
女!?いや ちゃいます ちゃいます!
だから それは リリコの誤解やて。何が誤解や!
昨夜 女と会うてたくせに。 え!どの口が言うてんねん!
だから それは…。なあ!昔の楽士仲間やて…。
恋文 読んでたやないか!あんたら やめなはれ!
もう ええ加減にしぃ ほら!やめなはれ!
何やビフテキ食わしてもらえるらしいで。
ビフテキは ええな。あっ 亀さん。
お疲れさまです!(亀井)どや? 最近 調子は。
へえ おかげさんでボチボチでんな。う~ん。
あっ こんなん貼られてもなぁ暮らし向きが楽にならんとな。
そうでんなぁ。
実は ここだけの話やがあんさんらの芸がえろう気に入ったいう会社があってな「給金弾むさかいに来てほしい」言うてはんねん。
ホンマでっか?うん。
まあ 紹介したらわしの懐も温まるんや。
どや? このあと 一杯。
とんでもない。 わてらは北村に恩義がありますさかい。
すんまへん。
よっしゃ。 あいつらは大丈夫と。
亀さん!はっ びっくりした~。
社長でっかいな。驚かさんといておくんなはれな。
亀さんに お願いがあるんやけど。
へえ。
♪~
(ノック)
ああ つばきに似合いそうや。
披露宴には 政財界からの賓客も大勢 お見えになる。
まれに見る盛大な婚礼になるやろ。
頼んだぞ。(つばき)はい。
(ため息)
(トキ)会場探し 難航したはるな。(隼也)ああ…。
思案に行き詰まった時は甘いもんや はい。
おおきに。
はぁ~ ホテルやったらいろいろ都合ええけど…オモロないしな。うん…。
もう いっその事電車とか船の中で やろかな。
電車の中?そら 子ぉたちが喜ぶわ。
(楓)なあ 隼也さんその面白い思いつきうちにも分けて。へ?
楓さんも 甘いもの どうぞ。おおきに。
もう さっきから何も思い浮かばへん。
けど 楓さんいっつも楽しそうやで。
うちは 書くんが好きやからな。
あっ そや 楓さん 歌人になりたかったんやろ?え?
あっ そやそや。与謝野晶子の「みだれ髪」がお好きやった。古い話や。
けど 短歌も漫才も面白いから書くんや。
面白い?うん。 漫才やったら日常の普通の生活の中に転がってる小さな笑いのタネを見つけてそれを大きゅう育ててお客さんに見てもらう。それが 面白うて楽しいんや。
ホンマ 何でもないとこに笑いのタネが転がってるもんなぁ。
子を育ててると よう分かるわ。
人生は笑い。 笑いは人生や。
あっ 出た!
かっこええ!深い~!
そや!(2人)え?
北村の25周年パーティー風鳥亭でやったら どないやろ。
え?ここで?うん。
ここやったら 北村の歴史を肌で感じる事ができる。
高座に 歴代の師匠らにも上がってもろてこれまでの芸の数々をみんな見てもらうんや。
あっ 万丈目さんの うしろ面とか。
そら ええわ!25年の芸の総決算か!
あっ その台本 うちに書かして。アハハ お願いします。
ほな うちは 食事の手配するえ。おおきに!
あっ ロビーで立食なんか ええやろか。
ええな!
(イチ)隼也さんお客さんが来てはりまっけど。
はい。
あ… どちらさんですか?
お頼申します。 このとおりです。
ちょっ… 何ですか?頭上げて下さい。
つばきお嬢様はまだ あなた様の事が忘れられへんのです。
どうぞ お嬢様の その想い断ち切ってもらえませんやろか。
♪~
(ドアが開く音)隼也 企画書読んだえ。
あっ… うん。
どないした?あっ いや…。
あ… どやろ?
ああ… ええ思うわ。このまま進めて。
これやったら パーティーで北村の跡継ぎのお披露目できそうやわ。 気張ってな。おおきに。
ほな 先 帰ってるわ。うん 気ぃ付けて。
うん。(ドアが閉まる音)
♪~
(ノック)
はい。
北村隼也様から お手紙です。
(隼也)「つばきさん この度はおめでとうございます。ご結婚が決まったと新聞で知りました。実は 僕も結婚する事になりました。お互い 家の跡を立派に継いでよい家庭を作りましょう。つばきさん 末永く お幸せに。北村隼也」。
亀さん四郎さん どないでした?
(風太)誰と会うてたんや?やっぱり引き抜きか。
いやいや ちゃいます。
あれは ただの女ですわ。
女って ちょっと!
それが えろう品のええ女子でしてな。うん。
四郎と長い事 話し込んでましたわ。
じ~っと 見つめ合うて。
(バッグが落ちる音)
(ドアが開く音)
♪~
ほな うちらは…。構へん!
ここにいといて。けど…。
うち こいつと話すの嫌やさかい。
♪~
師匠 ここんとこ誰と会うててん? ん?
(風太)何や 女でもできたんか。 え?
ちゃいます。
ご贔屓さん ちゃいます?あ~ そっか そういう事かな。
ちゃいます。
ほな 何や?
僕に 女なんておる訳ありませんやろ。
そしたら 何なん?
いや もう頼むわ。はっきり言うてくれ!
上海。
上海?
上海の楽団に誘われてるんです。
ん? 上海の楽団てどういうこっちゃ。
上海でオーケストラ作るいう話があって昔の仲間から一緒に行かへんかて。
そ… そんなん聞いてないで。
昔の仲間の紹介やったさかい話 聞いただけや。
それを リリコが浮気や女や言うて騒ぐから言いだせんようになってしもただけや。
あ…。
紛らわしい事してしもてすんませんでした。
これからも ミス・リリコ アンド シローで高座に立たしてもらいます。
(風太)うん。
そんなん当たり前や。
せやな。
うん うん。 な!
あ~ よかったやないか。なあ 社長。
へえ。
♪~
四郎さん?
あっ… この楽譜大事なもんですやろ?
ええんです。これから ず~っとリリコと漫才続けていくんやさかいもう 要りません。
ホンマに よろしいんですか?
オーケストラで演奏するんが夢でした。
そやけど 今の僕には夢より大事なもんがあるんです。
♪~
煙が目にしみるな。
♪~