---------------------------

----W----125------------
----a-----------------------------
----r-----------------------
----o-t-e-n-k-a----------------
-----------------------------------

---------------------------------------------------------------


（四郎）上海の楽団に誘われてるんです。
（リリコ）そ…　そんなん聞いてないで。
四郎に　思いがけない話が。
紛らわしい事してしもてすんませんでした。
（てん）この楽譜大事なもんですやろ。
ええんです。　これから　ず～っとリリコと漫才続けていくんやさかいもう要りません。
オーケストラで演奏するんが夢でした。
せやけど　今の僕には夢より大事なもんがあるんです。
一方　アサリにも　うまい話が。
移籍のための支度金です。
（アサリ）えっ　返せ！？
あっ　ちょっ…　ちょっと待っとくんなはれ。
全額？
℡いつまでも移籍を決めて頂けないならお渡しした支度金返してもらいませんとねぇ。
わ…　分かってまんがな。
けどほかに　だ～れも行かんのにわいだけ北村出るっちゅう訳には…。
（亀井）聞こえたで。ひっ！
♪～
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ　ハンカチのように」
♪「心の中に　すべり込む」
♪「いちばん　ちいさな魔法」
♪「泣いたり　笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えないあなたのために」
♪「パレードは　まわり続けてる」
（風太）支度金　ぎょうさん　もろて給金１０倍払う言うたらうちを裏切んのか！
やっぱり断ろ思たんやけどもろた金　全部　使てもうて。
そんな大金　何に使たんや？
キースが　おらんようなって一人で寂しいさかい若い奴らと　毎晩飲み歩いて…。
アホやな。
申し訳ありまへん！
はっ…。
これで　支度金返してこい。
すんまへん！　おおきに！
これからは　北村のために頑張らしてもらいます！
何回　見ました？　これ。いや　かなりの数見てるけどね。ねえ！
もう　裏切りません！
何回　裏切りました？　こいつ。
（ため息）
今日も　召し上がらしませんの？
ホンマに　お体　壊してしまいますよ。
（隼也）「実は　僕も結婚する事になりました」。
（ため息）
（ため息）
（歌子）何や　あんたらさっきから　ため息ばっかり。
（隼也）嘘ついてもうた。
何や　心が痛うて。
あんな嘘には　悪い嘘と　ええ嘘がある。
ええ嘘は　相手のためにつく嘘や。
ほら　茶柱立ったで！
きっと　ええ事あるで。幸せって　こういう事なんやなぁ。
オーケストラで演奏するんが夢でした。煙が目にしみるな。
♪～
茶柱一つでも幸せになれるのになぁ。
何で　うまい事　いかんのやろ。
♪～
（すすり泣き）
♪～
また演奏　音　ずれてたで。
そんな事…。口答えすな！
あんたが　ここまで来れたんは誰のおかげ思てるんや。
ろくに　しゃべれんくせに。
（ため息）
何や　アホらしなってきたわ。え？
そもそも　うちと　あんた釣り合うてへんねん！
よう　こんなんと　コンビ組んでたな。
あ～　もう我慢できん。ミス・リリコ　アンド　シローは解散や！
♪～
（風太）お疲れさん。
何や　まだおったんか。ああ…。帰るで。
なあ　風太。ん？
昔やった　あれもういっぺん　やってくれへん？
ん？
（足音）
専務　はよ四郎の代わり　見つけてぇや。
アホ！　解散なんかさせる訳ないやろ。　あっち行け！
（唇を鳴らす音）雨や。
アホか　お前！専務に唾かけんな！
リリコさん　えらいこっちゃ！四郎さんが　危ないて！
えっ！？一刻を争うんです！
一緒に来て下さい！分かった　分かった！
（風太）はよ　行ってこい！
さあ　ほな行こか　もう。
おトキちゃん　来るのが遅い。もう　汚いな。
（トキ）奥の部屋です！四郎！
四郎！
四郎　大丈夫か！？
どないしたんや？
四郎が　もう危ないて…一刻を争うて…。
お？　あっ　これか？
王手。
また負けた。
え？
一刻を争う勝負です。
はあ…。おおっ…！
はあ…。
あんたら優しいな。
相手を思て　嘘ついてる。
四郎さんは　ホンマは上海行って楽団に入りたいけどリリコさんの幸せ考えて連れていく訳にはいかへんさかい大阪で漫才続けよ思てはる。
リリコさんは四郎さんが　上海行って夢かなえられるんやったら自分一人　北村に残ってうちらへの義理　果たそ思てはる。
ちゃ…　ちゃうわ。うちは　愛想が尽きたんや。
ほうか。ほんなら　四郎は　どないや。
ちゃいます。
僕は　リリコと漫才やってるんが一番楽しいんです。
けど　四郎さん　楽譜燃やして泣いたはりましたやん。
リリコちゃんも　こないだ茶柱見て　泣いとったやん。
「茶柱一つで幸せになれる」って。
好きな人と一緒やったら茶柱みたいに小さい事でもうれしゅうて幸せになれるもんや。
ほな　そろそろ本音で決着つけよか。
そやな。
２人でホンマの気持ち　ぶつけ合うてどうするか　決めたらよろし。
おトキ　ちょっと手伝うて。へえ。
隼也　将棋の相手せえ。はい。
あんたホンマは上海に行きたいんやろ？
行きたい。
そやったら　何で　うち一緒に連れてってくれへんの？
連れてける訳ないやろ。
どんな苦労するか分からへんしそれに　リリコは芸人や。
こっちにおった方が幸せになれる。
何で　勝手に　そんな事言うのん！
うちが欲しいんは芸人としての成功やのうて女のささやかな幸せや！
うちは　物心ついた時から旅芸人一座で芸してた。
そやさかい普通の暮らしを知らんと育った。
けど　あんたと知り合うて一緒に　茶柱立ったん喜んでごはん分けて食べて…。
そんな　当たり前の幸せ初めて知ったんや。
この幸せ　手放しとうない！
うちの事　離さんといて！
リリコ　僕に　ついてきてほしい。
♪～
言われんでも　ついていくわ。
おおきに。
社長。
好きな人のためやったら地の果てまで　ついていく。
それも　愛なんちゃいますか。
そのとおりです。
ああ。　しゃあないわ。
好きにし！
おおきに。
おおきに！　社長。
ええな？　風太。
ええか　お前ら。
お前ら　上海行っても北村の社員や。
（駒が盤から落ちる音）あっ！え？
こっち帰ってきたらまた漫才しろっちゅうこっちゃ。
よろしおしたな。
よかったな　リリコちゃん。四郎さんも。
ありがとう。
おおきに。
さあ　みんなで　お茶にしましょか。な！
リリコと四郎は北村笑店の社員のまま上海に行く事になり北村の芸人は誰一人　引き抜かれる事なく終わりました。