「はじめに就職した不動産会社ではすぐに営業成績トップになりましたよ」
豪快に笑いながらこう話す身長187cmの男の名前は小野剛。この名前を聞いてすぐに元プロ野球選手を思い浮かべられる人はかなりの野球通だろう。日本でのプロ野球生活は5年。一軍での登板数はわずかに12試合。勝利、敗戦、セーブ、ホールドいずれも「0」という記録が残っている。しかし、そんな小野は現在、実業家として複数の企業を経営し、その年商は4億円までになっている。引退後の生活が極めて不安定なプロ野球選手のセカンドキャリアとしては大成功と言える転身である。ここまでの成功を収めた小野剛とはどんな人物なのだろうか?
桐蔭学園から慶応大学、
三井物産に入社する夢は簡単に打ち砕かれる
小野の出身は大分県中津市。1994年春に地元の中学を卒業後、高橋由伸(現巨人監督)など多くのプロ野球選手を輩出している神奈川の野球名門校、桐蔭学園に進学している。九州を遠く離れた野球名門校に進学するということは、それだけ甲子園、プロ野球への憧れが強かったのかと思いきや、その動機は意外なものだった。
「目標は慶応(大学)に行って三井物産に入社することでした。当時は高木大成さん(元埼玉西武)、高橋由伸さんが慶応に進学していたので、桐蔭学園で活躍すれば慶応に行けるだろうと。中学時代から今くらいの身長があって地元ではそれなりに有名な選手でしたから。ただ入ってみると中学日本代表クラスの選手がゴロゴロいて、投手をやりたかったのに野手をやらざるを得ませんでしたね」