日本の酒蔵などに興味を示す富裕層もいる(※写真はイメージです)

2月15日から中国で春節の大型連休が始まった。中国人が頻繁に海外旅行する今、富裕層に「成り金」「金ピカ好き」というイメージを持つ人もいるだろうが、そういう人ばかりではない。今、富裕層の一部は、なぜか“日本の老舗”に注目し始めているようなのだ。その理由を解き明かしてみると……。(ジャーナリスト 中島 恵)

今の中国は建国からは「若い国」
意外にも老舗は少ない

「日本を訪れるたびに、こんなにも中国との深い縁があり、すばらしい歴史や文化があるのかと感動するのですよ。早朝、日本の寺院を訪れると、ほうきできれいに掃いた庭が清々しく、心が落ち着きます。寺院で座禅に参加したあと、老舗の和菓子店で抹茶とお菓子をいただくのも至福のとき。京都にはとくに老舗がたくさんあるので、それらを1軒1軒、訪ねて歩くのも楽しいですね。中国には老舗は少ないので……」

 以前、取材で知り合った上海に住む起業家の男性(41歳)は真面目な顔でこう語る。その語り口や丁寧な物腰から、育ちのよさが感じられる新・富裕層といえる一人だが、私は彼の言葉を聞いて、目からウロコが落ちる思いだった。

 日本人は中国と聞くと「4000年の悠久の歴史がある」とすぐに想像するが、考えてみれば、今の中国(中華人民共和国)は建国からまだ70年も経っていない“若い国”だ。中国にも「老字号」(日本語でいう老舗)はあるものの、実は案外、その数は少ない。

 有名なところでは、漢方店の『同仁堂』(1853年創業)、食品会社の『六必居』(1530年)、刃物で有名な『張小泉』(1663年)など……。調べてみたところ、中国政府が認定した100年以上の歴史がある企業は、わずか1000社ほどだった。