----W----106------------
----a-----------------------------
----r-----------------------
----o-t-e-n-k-a----------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------
(歌子)笑わんかい!
てんたちの企画が盛り上がる一方肝心のミス・リリコ アンド シローは八方塞がり。
(四郎)「じ じ…」。 すんまへん!(リリコ)構へん 構へん。
(てん)まだ最初の頃の方が勢いがあったいうか…。
(栞)その勢いの正体は 何だろう?
へ?おてんさんが 面白いと感じたその勢いの理由を突き詰めるんだ。そうすれば 必ず問題は解決する。
これも 社長の極意かな。
へえ。 理由か。
(トキ)おてん様ブロマイド この中やったらどれがええ思います?
あっ ああ…。
どないしはりました?
いや 雑誌やブロマイドの前にこの2人の漫才どないかせんとアカンなぁ思て。
(楓)やっぱりうちの台本がアカンのやろか。
うちの亭主が書いた台本よりよっぽど オモロイで。
もう 歌子はん!よう言わはるわ。
なあ!
(キース)寒っ!
大看板のご来店や。師匠 おいでやす~。
(アサリ)いつもの頼むわ。へえ。
何や みんなそろってしかめっ面して。
おっ リリコとシローか。
あら アカンで。
アカンて どこがです?
おい。
歌子はん 師匠らのお勘定うちに つけといて。
へえ。おおきに。
あの台本 オモロイで。ホンマですか?
けどな オモロイから逆に難しいんや。
逆に難しい?どういう事です?
オモロイ本をちゃんと やろうとするから力が入り過ぎるんや。
失敗せんように必死やさかいそれが伝わって見てる方も緊張してまう。
確かに うちも見てる時 力入ってるわ。
ハハハハ やる方も見る方も肩に力が入ってたら笑えるはずないやろ。
ほな つまらん台本書けっちゅう事ですか?
アホ! 本はオモロイ方がええに決まってる。
要は あいつらが緊張せんとあいつららしゅう漫才できるやり方を見つけたったらええんや。
緊張せんと漫才できる やり方…。
♪~
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ ハンカチのように」
♪「心の中に すべり込む」
♪「いちばん ちいさな魔法」
♪「泣いたり 笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えない」
♪「あなたのために」
♪「ありがとうと言えるそのときのために」
♪「ごめんねと言えたあなたの心に」
♪「パレードは まわり続けてる」
あなたのお顔はね丸みを帯びてますから優し~く見えますよ。こんな伸びるし。
痛いっ。 引っ張りな。
私の美しい顔も見て下さい。
自分で言いますか。
せやけど えらい骨張って 筋張ってお気の毒。
やっぱり 緊張してますね。あの2人。
しゃべくりは上手うなってんのやけどなぁ。
緊張せんと漫才やれる方法って何ですやろ。
(四郎)やっぱりあるんかい!
(リリコ)では一曲 流行の歌を。
(風太)次の仕事は これや。(隼也)えっ!
売店の売り子や。専務 そろそろ番組作りとか興行の事を…。
まだ早いわ! 大事なお客さんとじかに接する仕事や。
おい 雑巾がけからしたらえらい出世やないか。
はい。ま 頼んだで。
おお 勘定の計算が一銭でも合わんかったら合うまで居残りや。
そのかわり 売り上げが上がったら褒美をやる。 頑張りや。
はい。
こんぶ 煎餅 みかんに饅頭。
いらっしゃいませ。饅頭 いかがですか?
おいしいですよ。お客さん どうですか?
いらっしゃいませ。饅頭 いかがですか。
いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。
おいしいですよ。(亀井)そんな声のかけ方じゃ誰も買うてくれまへんで。亀さん おはようございます。
売れてまへんなぁ。
こんな饅頭どこにでも売ってるし。
「冷やしあめ ゴ~ロゴロ」や。
ゴロ… え?
当たり前の品物をどう買うてもらうかそれには工夫が必要でっせ。
ボンのお母ちゃんみたいにな。お母ちゃん?
そうです。 真夏の暑い日に氷の上に冷やしあめの瓶 転がして…。
ひやこい ひやこい 冷やしあめ!
一口飲んだら汗も吹き飛びまっせ~。
おおきに ありがとうございます。
見た目に冷た~い冷やしあめはそらもう バカ売れでした。
さ~て ボンは この饅頭どうやって売るつもりでっか?
そういうたら あんたドイツに行きたい言うてたやん。
何でドイツなん?
ドイツいうたらバッハにベートーベン ブラームスにワーグナー。
音楽家にとったら 夢の国や。
夢の国。ぎょうさん 楽団があって才能さえあったら誰でも成功できんで。
ドイツ語 しゃべれるんか?
しゃべれんでも音楽で分かり合える。 きっと。
ほら もう これで拭き。ごめん。
そやけど 何や ええな。
うちも ついてこかな。え?
アホ! 本気にしぃな。
ますます 頑張らなアカンな。
成功して お金ためてあんたは 夢 かなえたらええ。
今日は よう しゃべってんなぁあんたら。
相方やさかいな。うん。
お母ちゃん。ん?見て。
誰や思う?キース師匠。
こっちは アサリ師匠や。
よう似てるわぁ。
売店の売り上げ伸ばすええ方法ないかな思て。
へえ~。
で これ 何に使うの?ないしょや。
え!? 何やの。
お母ちゃんの方は?ん?
大丈夫か?え?
リリコちゃんらの漫才。
まあ 一筋縄ではいかんわ。
そやけどそやからこそ やりがいもある。
何かあったら 相談乗ったるで。
アハハッ それは うちが言う事や。
もう…。 あんたも気張りや。へい。
「どうも~お初に お目にかかります。いうても 私どっかで見た事ありますやろ。銀幕の大女優 リリコ 改め漫才師のミス・リリコです。こちら 私の伴奏者 兼引き立て役」。
「引き立て役て。 シローです。アコーディオンは うまいんですよ」。
「こんな顔ですけど」。「こんな顔て」。
「ええから弾いて」。
♪~
「ね! この人 楽譜がちゃんと読めるんですよ。こんな顔ですけど」。「顔の話は よろしい。この人 口は悪いけど喉は よろしいで。ちょっと 一曲歌うてみて下さい」。
「いや~ うち 下手やも~ん」。「たたきなさんな」。
頂きます。
うまい。
うちが作ったから 変な形やろ。ううん そんな事ないよ。
(せきこみ)
ちょっと…。
痛い痛い。 たたきな。
それ!これや!
(笑い声)
ひゃ~。
う~ん おいしいわ。
どれも ほっぺた落ちそうやわ。
さすが 歌子はん。こんなお弁当やったらお客さん 大喜びしはるわ。おおきに!
それからな このぜんざいも売ってもらおか。
ぜんざい?へえ。 これから寒うなるとあったかい ぜんざい売れるんやないか思いまして。
歌子はんにお願いしたんです。
洋風弁当に ぜんざいか。何や 楽しゅうなってくるな。
(万丈目)う~ん どれも女子はんが好きそうなもんばっかりやな。
ぜんざい おいしそうやな。アカン!何で?
仕事せんと何 のんびりしてんねや。
わては編集長やさかい。何が編集長や。
モンシロチョウみたいな顔して。何や モンシロチョウて。
あんた モンシロチョウ知らんの?し… 知ってるわ!
ほな あんたモンシロチョウの何 知ってんねや。え?
どこの生まれや。 兄弟 何人おる?好きな食べもんは。
(万丈目)何や 知ってるとかその…。(歌子)アホ!好きな食べもんぐらい知ってるやろ。 モンシロチョウの好きなもんは 蜜や蜜。 花の蜜。ホンマ それで よう編集長が務まりまんなぁ。そ… そないな言い方。
あ~ もう編集長でもモンシロチョウでもいいからはよ 仕事行き!あ?
ちゃっちゃと行かんと…。
おえぇぇ~!行くんか! 行かへんのか!
走って行くんやで!はい!
ホンマに もう~!
ホンマ 歌子はんら面白いなぁ。
ろくでもない亭主でっさかい。歌子さんにかかったら万丈目さん口答えできへんさかい。
いつも こてんぱんに言われて何や かわいそやけどなぁ。
それが面白いんや。確かに。
(歌子)我ながら おいしいわ。 アハハハ!
あう あう あ~う あうっ…。
「あうあう」って犬かいな。すいませんねぇ。 そやけどアコーディオンは うまいんですよ。こんな顔ですけど。
あぁ~!(アコーディオンの音)
こないだの漫才大会の時…。え?
四郎さんが セリフ忘れて思わず アウアウ言うてたらリリコさんが セリフ みな しゃべって。はい?
今の 歌子はんと万丈目はんのケンカと同じや。
つまり それは…。
四郎さんが しどろもどろになってリリコさんが しゃべりまくる。
その方が お客さん面白いんと ちゃうやろか。
あるかもしれん。
それを2人の漫才にしたら!
なるほど!うん! おトキ!
呼んできます!
(歌子)ドキドキしてきた。(楓)ホンマやな!
お連れしました! どうぞ。
リリコさん 四郎さん。
うちらから提案があるんです。
何やの? やぶから棒に。
四郎さん 高座でしゃべるのやめまへんか?
え?
四郎さんがあえて しゃべる事ない。
しゃべくり漫才やのうてしゃべらん漫才 やるんです!
しゃべらん?
漫才?
♪~