弁護士はサービス業
「法律家」の矜持など必要なし!?

 スラップ訴訟や、鬱憤晴らしが目的の高額訴訟にモラルの問題があることは、多くの弁護士が分かっていることである。にもかかわらず、あからさまに批判の声をあげる者が少ないのは、こうした“カネ”にまつわる背景があるからだ。

『弁護士の格差』(朝日新書)では、司法制度改革後の弁護士業界の混乱をレポートしている

「法律家とは判事と検事だけ。弁護士はサービス業、訴訟はビジネスです。刑事裁判もそうです。私選の刑事被告人はお客様です。在野の弁護士を判・検事と同じ扱いにするほうが間違っているのですよ」

 今年、弁護士登録をしたばかりだという大阪弁護士会所属の新人弁護士はこう語る。

 かつて判事・検事と同格の「法律家」と呼ばれた弁護士だが、今や、自らを法律家と呼ぶ弁護士は、若手では真面目なオールドタイプの弁護士を除いてほとんどいない。

 弁護士のサービス業化、ひいては訴訟のビジネス化で、日本の司法は、「弁護士費用をたくさん積める者」が“訴えたいヤツ”を訴訟の場に引きずり出して懲らしめる社会となりつつある。

「裁判員制度でも言われることですが、日本は司法と市民の間の乖離が著しいですよね。しかし、高額訴訟をいつ吹っ掛けられるか分からない社会となれば、いやでも市民は裁判を身近に感じられます。司法制度改革の目的は達成されつつあるのではないですか?」(同)

 果たして司法制度改革が目指したのは、こうした劇場型の訴訟社会だったのだろうか。