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(トキ)お義母様 今頃太平洋の真ん中辺りですやろか。
(てん)あと半月は海の上やろなぁ。
(戸が開く音)(風太)もう 何なんやろうなぁ。
目新しさがないわ。(万丈目)はあ…。
すんまへん 相撲が人気やいうんで相撲取りと行司の掛け合いでネタ書いてみたんやけど…。分かってるわ そんなもん!
そういう事ちゃう。
(藤吉)おう おうおう!
そやったらこういうのは どうや?
「藤吉山と風太海見合って 立った!おっ 藤吉山素早く 上手を取った!」。
ラジオの相撲中継か。
「藤吉山 風太海を土俵際に追い込んだ!」。
なるほど ラジオか!
万歳にラジオ取り入れたら何や 新しい気するわ。
ラジオの出てくる万歳なんか聞いた事ありませんしなぁ。
これは ええわ!(藤吉)そやろ!
「おっ 藤吉山 得意の上手…」。
(倒れる音)
藤吉はん! 藤吉はん!
社長 大丈夫か!藤吉はん! 藤吉はん!
藤吉はん!(風太)藤吉!藤吉はん!(トキ)藤吉さん!
♪~
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ ハンカチのように」
♪「心の中に すべり込む」
♪「いちばん ちいさな魔法」
♪「泣いたり 笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えないあなたのために」
♪「パレードは まわり続けてる」
すまんな…。
心配かけて。
今は小康状態ですが いっぺん中風で倒れてはりますので2度目の今回は…。
もう 歩いたりできひんいう事ですか?
何が起きてもええよう心の準備をしておいて下さい。
泣かんといてや。
てんてんてんごの おてんちゃん。
それでは 今日の笑いを一つ。
涙とかけて 笑顔とときます。
ほれ。
その心は?
どちらも 頬に こぼれます。
♪~
てん。
うちに帰りたい。
♪~
社長は 意識も しっかりしてはる。大丈夫や。
けど 2回目や。
それは 気落ちしてはるやろ。
そやから 一刻も早く新しい万歳を完成させて社長を励ましたろやないか!
期限は1週間後や。 ええな!
(キース)もちろんや。(アサリ)ああ 必ず。
万歳の台本ももういっぺん 書き直してみるわ。
頼んだで。
うちも 何でも手伝います。うん。
ほな みんなよろしゅうお願いします。
へえ!(一同)へえ!
(ため息)
(リリコ)こんにちは!
おおきに。
そや てん 駅前の和菓子屋で饅頭 買うてきてくれるか。
リリコの好物なんや。
へえ。 ほなちょっと買いに行ってきます。
すまんな。
映画 楽しいか?
え?
そら 楽しい事もあれば嫌な事もある。
何やの? 急に。
芸人には 戻らんのか。
いずれ うちでもレビューやスケッチ劇をやる事になる。
そん時は風鳥亭の高座に上がってほしいんや。
ちっちゃい頃から 寂しい気持ち持て余してたお前やからこそできる笑いがあると 俺は思う。
うれしい。
ん?
初めて 藤吉に口説かれた。
アホ。
それとなもう一つ 頼みがあるんや。
どこ行くんや。
ちょっ… ちょっと気分かえよ思て。
書き上げるまで外には出さへんで。
社長の事が気になって書かれへんねや。
約束したんやろ 社長と。逃げてる間ぁないで!
ほれ。 はい 広げて。
書く!
(ドアが閉まる音)
いや…。見てるから。書ける訳ないやろ。
大丈夫 見てるから。書ける訳ないそんなとこ いたら。
書ける。いや そうでなくても書かれへん言うてんのに。
(アサリ)アカン。(キース)これ お前や。
着るかい こんなもん。何や ピタッときた…。
言うてる場合か アホ!どんどん合わせぇ!
アカンな~。どんどん やらんかい! 早く!
女子に好かれる衣装てそんなん分かってたら苦労せんわ。
どないかせんと間に合わへんで!(2人)え?
新しい万歳作るんやったら衣装も 新しい流行取り入れた方がよろしいんとちゃいますか?
新しい流行?へえ。
(キース)そら 一理あるなぁ。どんなんが はやってんねや。
アホ! お前ら 万歳や。 お!
わろてもらうための衣装や。シャレて気取って どないすんねん!
せっかく 女子が意見言うたったのに。
あ…。(キース アサリ)あ~!いや おトキちゃん。
おトキちゃん ちょっと。おトキちゃん ごめんて~。
なあ ちょっと。
どないしたんや おトキちゃん!おい! おい! おトキちゃん!
つわりの時は 無理したらアカンえ。食べるもんは 少しずつな。
熱いもんは少し冷ましてからにしぃ。へえ。
すんまへん おてん様。社長が大変な時に。
いや ホンマ すんまへん。
気にせんといて。
それより 風太ちゃんと いたわって夫婦仲ような。はい。
この子が見てますえ。
分かった…おトキちゃんの言うとおりにする。
え?うん。
新しい万歳には 新しい衣装やろ?
(隼也)学校 行ってまいります。
おお 行ってこい。気ぃ付けてな。
うん。
(戸の開閉音)
幸せや。
おおきに。 ありがとうな。
うちこそ と~っても幸せです。
なあ てん 覚えてるか?
初めて会うた時の事。京都の くすり祭りやったな。
よっ!
すいません 大丈夫?
まさか…。
俺の嫁はんになってくれ!
俺についてきたら 苦労するで。
覚悟の上です。
(藤吉)ホンマに 苦労かけた。
正直 言うとな俺で よかったんかて思た事何べんもある。
俺やなかったら てんは もっと…。
うちは 藤吉はんとず~っと ずっと一緒に わろてきましたえ。
笑いを商売にするんです。
これが俺らの 夢の寄席や!
あの人を 日本一の席主にしたいんです。
(藤吉)天満の ちっさい寄席から始めて…。
♪~
(藤吉)北村笑店は大阪一の笑いの殿堂になった。
けどな倒れた時 夢見て改めて 気ぃ付いたんや。
ホンマに俺が やりたかったんはな…。
(戸が開く音)・(風太)藤吉 てん いてるか!
へえ! 風太や。
邪魔するで~。
おい! どうや。
え~ 新しい万歳あさっての昼席前天満風鳥亭にて社長と ごりょんさんに見て頂きたいと思います。そうか。
いや~ 万丈目はんも何べんも 台本書き直してるしキース アサリも納得いくまで稽古してる。
そやから 社長もビシッと気ぃ入れて 見たってや。
ああ 楽しみや。
そうですなぁ。
藤吉が夢みた新しい万歳の完成がすぐそこに迫っておりました。