1970年代、グリーンランドの自治権獲得に大きく貢献したロックバンドがあった。彼らの名前は「スミ」。グリーンランド語でWhere?(何処?)という意味だ。彼らはグリーンランド語で歌う最初のロック・バンドだった。彼らのファーストアルバムのジャケットは、先住民族イヌイットが、入植者の北欧人を殺害し、その腕を切り落としているというショッキングな19世紀の版画がベースになっている。
「彼らが歌いだした時は、本当にビックリしたわ、グリーンランド語で歌っているのですもの!」スミの出現は、多くのグリーンランド人にとっては、大変な衝撃だった。「どんな風に反応して良いか分からなかった」「凄く心配したわ。“どうか問題を起こさないで!”と願った」当時デンマークの統治下にあったグリーンランドにおいて、デンマーク人にどう見られているかということはグリーンランド人にとっては非常に重要な問題だったのだ。
しかし時は70年代、時代は解放と自由をもとめていた。スミのレコードは爆発的なヒットとなり当時のグリーンランド人の人口の20%がこのアルバムを購入したと言われている。
「僕たちはただ聞いてほしかったんだ」と、バンドのフロントマンでソングライターのマリクは回想する。「グリーンランド人は自分たちの国の政治についてまったくコントロールを得ていない。これでは、まるで植民地じゃないか、と」「そして僕らは若かった。その状況を何とか変えたいと願っていた」
スミの解散から数年後の79年5月、グリーンランドに自治政府が発足する。あれから40年、グリーンランドには現在でも解決すべき社会問題が山積している。
音楽は人々の声を代弁できるのか、そして社会を動かすことが出来るのか。力溢れる音楽に彩られた珠玉のドキュメンタリー。現在グリーンランドで、もっとも人気があり彼らの後継者と言われているロック・バンド、ナヌークのメンバーも出演している。
監督:Inuk Silis Høegh 制作:Ánorâk Film 出演:Malik Høegh (Sumé), Per Berthelsen (Sumé)、Emil Larsen (Sumé), Hjalmar Dahl (Sumé), Hans Fleischer (Sumé), Sakio Nielsen (Sumé), Christian & Frederik Elsner (Nanook)
原題:SUME - MUMISITSINERUP NIPAA
英題:SUMÉ – THE SOUND OF A REVOLUTION
2014年 グリーンランド/デンマーク語&グリーンランド語/日本語字幕/71分
企画/宣伝:THE MUSIC PLANT
協力:トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
英語ではGreenland、グリーンランド語ではKalaallit Nunaat。北極圏に位置する世界最大の島。(人口:56,000人)現在はデンマーク本土、フェロー諸島とともにデンマーク王国を構成しており、独自の自治政府が置かれている。全島のほとんどが氷と雪に覆われた無人地帯で、狩猟文化を中心とする先住民族とデンマークからの入植者が混在した独自の文化を形成している。
グリーンランドについて、詳しくはこちら。