公正を期して報道するのであれば、「スイスの研究チームはフィリップモリスの研究内容を否定した」と報道するのではなく、「9種の有害物質のうち加熱式タバコで減少するのは7種のみ。ホルムアルデヒドとアクロレインは減少していない可能性あり」というところまでを書くべきではないかと私は思う。
本来、おいしいものは体に悪い。霜降り牛肉も、フォアグラもそうだ。もっと身近なものでいえば、味噌汁やポテトチップスも体にはよくない。コレステロールや塩分、脂肪分や炭水化物はみな寿命を縮めるといわれているが、これらの有害物質は自分だけにペナルティがかかるから、タバコとは違う。
アルコール規制の弱さと比べて
タバコの規制は厳し過ぎないか?
しかし、アルコールは違う。酔っ払いは駅で暴力を振るったり、事件を起こしたりすることがある。その際に「意識がなかった」と強弁すれば、同じ法律を犯した人よりも罪が軽くなることがあるから、さらに有害である。
子どものことを考える東京都は、「酒乱の親はアルコールが醒めるまで帰宅を禁止する」条例をつくるほうがいいくらいだ。アルコールに対する規制の弱さを考えると、我々の目はタバコに対して少々厳し過ぎないだろうか。
そのような観点から、私は自分自身についても、「ここのところスモーカーをちょっと迫害しているかな」と認識している。タバコの香りが嫌いだから、世の中の喫煙規制の流れは都合がいいと内心思っているからだ。世界中、様々な場所で様々な理由から、誰かが誰かを迫害し、弾圧し、排除している。
世の中の受動喫煙リスクを低減させようという働きかけは、必要不可欠なことに違いない。しかし理由はあるのだろうが、嫌煙者は一度立ち止まって、加熱式タバコを排除しようとしている自分はどこまで正当なのかを、もう一度考えてみてはどうだろうか。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)