だから加熱式タバコを禁止するという世間のムードは、私には好都合なのだが、その一方で「これは私とは違う嗜好の他人を排斥しているのではないか」という疑念を消すことができない。
「有害化学物質9割減」に
次々投げかけられる疑問の声
加熱式タバコに関しては、先行者であるフィリップモリス社の研究で、WHO(世界保健機関)が有害物質に指定する9種類の化学物質が、紙巻きタバコと比較して9割減少したと発表されている。別方式であるJT(日本たばこ)のブルームテックは「健康懸念物質の99%削減」をうたっている。
にもかかわらず、世の中にはそれらの検証が「タバコ会社による研究であるため信用できない」という風潮が出来上がっている。医学会からは加熱式タバコについて「健康に悪影響がもたらされる可能性がある」と警鐘を鳴らす見解が発表されたが、その中では「これらの新型タバコの使用と病気や死亡リスクとの関連性についての科学的証拠が得られるまでには、かなりの時間を要します」と明記されている。
つまり、医学界としては「わからないから推定有罪」であり「当事者であるタバコ会社の研究は信用できない」というスタンスである。
さらにスイスの研究チームの発表によれば、フィリップモリスの言う「9種類の有毒物質で平均9割削減」は間違いだという。ただしそのデータを見ると、9種類のうちホルムアルデヒドとアクロレインの2つの有害物質が2割程度しか削減できていないというのが、フィリップモリスの研究結果との違いだとわかる。
ホルムアルデヒドは、新築の住宅の壁紙やつくりたての家具製品から出る化学物質として知られている。アクロレインは食用油で揚げ物を調理するときに出る物質だ。それらの有害物質からも子どもを守る必要があるのかもしれないが、だったら「子どものいる家族は新築の住宅を購入できない条例」とか「子どものいる台所で揚げ物の禁止を促す条例」も検討するほうがいい。もちろん、これは皮肉であって、まともな意見といえないことはわかっているが。