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高知県「光通信ゼロ」解消へ4町村が整備  「情報格差は生活格差」

(2017.06.19 09:00)

 超高速でデータを送受信できる光ファイバー通信が全域未整備となっている高知県内4町村が、整備に向けた取り組みを進めていることが、高知県のまとめで分かった。土佐郡大川村、吾川郡仁淀川町、幡多郡三原村が2017年度から整備に着手し、長岡郡大豊町も2018年度から整備を進める計画だ。

 高知県は2017年度、民間事業者が整備する場合の補助制度を新設しており、未整備地域が残る自治体でも整備を促し、中山間地域の活性化や移住の支援につなげたい考えだ。

 高知県情報政策課のまとめによると、光ファイバー通信が全域で未整備なのは大豊町(約2千世帯)、大川村(約200世帯)、仁淀川町(約2700世帯)、三原村(約700世帯)。

 光ファイバーを中心とする超高速通信網の整備は、民間事業者による「民設方式」と、市町村による「公設方式」がある。未整備地域では、採算性の面から民間事業者による整備が進まず、市町村も整備費や維持管理の負担など財政上の理由から着手できずにいた。

 国は、市町村が整備する場合に事業費の3分の1~2分の1を補助しているが、民設には補助していない。

 こうした状況から高知県は民設を促そうと2017年度、「情報通信基盤整備事業費補助金」を新設。市町村が民間事業者に補助して整備する場合、高知県も事業費の10分の1を補助する。この補助金で三原村が2017年度に村全域を、仁淀川町が2017年度から2018年度にかけて約2100世帯の整備にそれぞれ着手する。

 さらに超高速に比べて速度が落ちる通信網を公設で整備済みの大川村と大豊町は国の補助を活用。大川村が2017年度から2022年度にかけて村内全域を、大豊町も2018、2019年度に1400世帯をそれぞれ整備する計画を立てている。

 仁淀川町と大豊町では未整備が600世帯ずつ残るが、仁淀川町と大豊町はLTEと呼ばれる携帯電話を使った無線での整備を予定しているという。

 また、未整備地域が残っている高知市や吾川郡いの町など8市町でも、高知県は民間事業者に費用や条件などを踏まえた整備案を作成してもらい、市町と協議を進める方針だ。

動画再生の途中でフリーズ状態が続くパソコン(高知県いの町小川柳野)
光通信網に残る「空白」 移住や企業誘致に支障も
 「ブロードバンド」と呼ばれる高速大容量のインターネットサービスが普及し始めて十数年。光ケーブル通信が全域未整備の高知県内市町村が、ようやくゼロになる見通しとなった。ただ、旧町村単位や市街地以外は未整備の市町村もあり、住民からは「単なる『情報通信格差』ではなく『生活格差』だ」という不満の声も根強い。

 「動画も思うように見られないし、ネットの買い物も難しい」

 吾川郡いの町吾北地域の柳野地区。5年前に茨城県から移住してきた藤倉啓輔さん(37)は、動画が静止したパソコン画面にため息をついた。テレビ番組の動画は再生までに1分半ほどかかり、その後も10秒ごとに止まるという。

ダウンロードに半日
 いの町は2004年10月、吾川郡伊野町、吾北村と土佐郡本川村が合併して誕生した。市街地の旧伊野町は光ファイバー通信網が整備されているが、旧吾北村と旧本川村は全域が未整備だ。

 いの町は旧2村(吾北村と土佐郡本川村)で、役場や学校などを結ぶ通信ネットワーク「高知県情報ハイウェイ」を利用し、無線LANを使ったブロードバンド化を推進。中継局経由で加入者世帯に電波を送っている。

 ただ、藤倉さんによると、天候や回線の混み具合によって通信速度が大幅に落ちるといい、「霧が立ち込めるとひどくなる。確定申告の時にソフトをダウンロードするのにも半日かかった」と苦笑する。

 シイタケ農家の藤倉さんは高知県外に売り出しており、「光通信ができればWebサイトや通販の仕組みを作れるし、もっと収益を増やせるのに…」と“格差”を嘆く。

 いの町は「民間がやってくれればありがたいが、(旧2村の)人口を考えると費用対効果の面から、なかなか見込めない。行政がやろうにも億単位で費用がかかる」(総務課)と、整備に二の足を踏んでいる状況だ。

 同じように合併前の土佐山、鏡地域の全域が未整備の高知市の担当者も「整備費用はざっと試算して10億円。携帯電話を使ったサービスも始まっており、なるべくそちらを利用してほしい」と話す。

厳しい「民設」
 一方、整備を進める市町村はインターネット環境を改善し、移住促進や企業誘致を図ろうとしている。

 2017年度から高知県の補助も活用し、整備を始める吾川郡仁淀川町の担当者は「3、4年前に全域で試算したら10億円以上となり、頓挫していた」。約2700世帯のうち8割弱に地域を限定したことで、費用は予算ベースで約6億円になったという。

 担当者は「ネット環境で移住を断念する人もいたし、住民からも要望があった」と整備に踏み切った理由を説明し、「今後整備を計画しているシェアオフィスにも生かしたい」との展望を描く。

 高知県情報政策課の小野広明課長は「移住促進を考えたときに、ネット環境が整っていないと不利なのは明らか」と話し、高知県が開設を進めている集落活動センターが取り組みを広げていく上でも通信網の充実は不可欠とする。

 高知県は民間事業者が整備する場合の補助制度を2017年度に新設したが、今後の整備は見込めるのか。

 四国電力グループのSTNet高知支店は「人口減と高齢化が進んだ地域で、どれだけ加入者がいるかが重要だろう」、NTT西日本高知支店は「人口の多い地域は早くから民設で整備してきた。民間単独でできる所はほぼ残っていない」とそれぞれ説明しており、未整備地域の解消には高知県や市町村との協力が鍵になりそうだ。

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