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(アサリ)離せ! うわっ!
(てん)アサリさん!?
痛いやないか!(キース)この裏切りもんが!
おてんちゃんに 謝れ!
謝るか!
あんたには悪いけどわいも 食うていかなアカンねん。
あんたらの夢に いつまでもつきおうてはおれんのや!
お前も さっさと見切りつけた方がええで。
ここはもう… 終わりや。
♪~
終わりやありまへん。
うちが… うちがこの寄席を守ってみせます!
♪~
♪「出かける時の忘れ物」
♪「ひょいとつかむ ハンカチのように」
♪「心の中に すべり込む」
♪「いちばん ちいさな魔法」
♪「泣いたり 笑ったり」
♪「今日も歩き出す」
♪「ありがとうと言いたいあなたのために」
♪「ごめんねと言えないあなたのために」
♪「パレードは まわり続けてる」
(藤吉)え?
えっ おい! 誰もおらん…。
てん!
どないした?
アサリさんは 神戸の新開地の寄席に行かはりました。
何やて?残った みんなももう 限界です。
そやけど 休んだら余計に…。
一緒に もう一度 文鳥師匠のとこお願いに行きましょ。
いや 何言うてんねん。
伝統派の噺家を出してもらう事ははっきり断られた。
普通の噺家さんを出してもらうんやありまへん。
え?文鳥師匠ご本人に出て頂くんです。ああ 文鳥師匠…。
はあぁ!?
よし よし よし。
てん 買うてきたで。
難波ネギ 手に入りましたか?ああ。
お母ちゃんに教えてもうた青物市場にあったわ。
おおきに。 洗といておくれやす。ああ。
しかし ホンマにこんなカレー作ったくらいで文鳥師匠が会うてくれんのか?伊能さんがお口添えしてくれはったから大丈夫ですやろ。
それに ただのカレーやありまへん。え?
ちょっと お味見を。
ん?
甘っ! 何や これ?
(文鳥)う~ん。
うん。
(うどんをすする音)
こら…。
うまいなぁ。
だしも しっかり きいてるししかも…辛いわ。
わてが辛いもん好きてよう知ってたな。
フフフフ はい。
そやけど このうどんでコロッといくほどわては甘うないで。
うちの噺家を出すのは諦めたんやないんか?
はい 諦めました。
今日は文鳥師匠に出てもらえないかとお願いにあがったんです。
あんた 何たわけた事を!
こら。
わてか?
はい 文鳥師匠です。
こら オモロイ事 言わはるわ。
俺は 子どもの頃から文鳥師匠の落語が好きで特に 「時うどん」が大好きで大好きで。
そらまた えらい前座噺でんな。
師匠の十八番が人情もんなのは存じてます。
そやけど 俺が一番好きなんはやっぱり 子どもん時の「時うどん」で。
あそこが また たまらんのです。
「ひっぱりな!」。
子どもん頃 よう まねしました。
♪~
(うどんをすする音まね)
「ひっぱりな!今 食い始めたとこや。ちゃんと 半分 残しといたる」。「ホンマに 半分 残しといてや!」。
「心配すな」。
(すする音まね)
「ひっぱりな!そない引っ張ったらだしが こぼれるやないかい!」。
♪~
そやけど うちの近所の人らはほとんど誰も師匠の「ひっぱりな」を知らんのです。
今 師匠が出てはる寄席は敷居が高すぎてホンマに面白い落語を聴く機会がないんです。
これは うちに来たお客さんが「金があるなら 文鳥師匠見に行くわい」言うて置いていかはったビラです。
ホンマもんの落語を よっぽど見たかったんですやろな。
お願いします!一回で ええんです!
俺らの寄席は このままやったら立ち行かんかもしれません。
そやから…。
たった一回でええ 席主として悔いのない番組を作って天満の町を歩いてる人らに師匠の落語をその目ぇで見てもらいたいんです!
うちが初めて わろた芸はお祭りで見た落語でした。
そん時 おなか抱えて笑うお客さんらに驚いて笑いってええな芸人さんて すごいなぁ思て…。
(笑い声)
あっ すんまへん。
そやから うちは 面白い落語をぎょうさんの人に見てもろてわろてもらいたいんです。男の人だけやのうて女子はんらにも お子たちにもみんなにわろてもらいたいんです。
♪~
う~ん…。
あんたんとこの小屋が目指す色はそういう事か?
はい。
伝統派でも オチャラケでもない…。
落語のためやと言わはるんやったら…。
一回きりやで。
カレーうどんの礼や。
はい!
あ… ありがとうございます!ありがとうございます!
文鳥師匠が 風鳥亭に!?
(万丈目)嘘や。ホンマです!
嘘や!
嘘や! 嘘や 嘘や!
俺も 腰抜かしたわ。
すごいわ… 天下の文鳥の落語あんな端席で…。
ありえへん。「あんな端席」言うな。
ありがとうございました。伊能さんから聞いたカレーの話のおかげです。おおきに。
(栞)いや こっちこそ。まさか 本当に出てくれるとは。
しかし 師匠に出てもらって客席を埋めたところで一回こっきりでは しかたがない。そのあとは どうする?
さ… さあ。
どないしたら…。ああ…。
これを利用しよう。
新聞?
伝統派の大看板 文鳥が名もなき小さな寄席の席主の情熱に打たれてその高座に上がる。
夢のような話じゃないか。
その夢物語を 新聞で大々的に書いてもらうんだ。
どうなるか 見ものだろ。
喜楽亭文鳥! 寄ってってや!
間もなく札止め! 入ってってや!
喜楽亭文鳥ですよ!喜楽亭文鳥 独演会ですよ!
どうぞ どうぞ。
さあ どうぞ。
すんまへん お子たちを 前に座らしてもろて よろしおすか。
すんまへん おおきに。どうぞ。
♪~(太鼓)
すんまへん。うわ~っ ハッハッハッ!
大入り満員や。夢やないなぁ。
いや 夢や。いや 夢やないて。
はよ 楽屋行こか。アカンやろ 今は。
反対側の袖から見さしてもらおう。
そうか。それも特等席に変わりないか。
うん。行くで。行こ。
岩さん 行くで。(岩さん)あぅ~ 分かった。
師匠 ホンマに こんな端席でしかも 前座噺やりはるんですか?
どうか 我ら伝統派150名の噺家のためにもお考え直しを!お願いします!師匠!
・お願いします!・師匠!
・お願いします!
まだかいな 師匠は。
わざわざ こんな場末の小屋に足運んだったいうのに立ち見やで。文鳥さん ホンマに出るんやろな。
ちょっと すんまへんすんまへ~ん。
ちょ… ちょっと押しないな もう!
(楓)文鳥師匠が 出ても出んでもこんな端席に こんなに人が集まったいうだけでええ記事になるんとちゃいますか?
お願いします。
師匠。
お時間です。(文鳥)はい。
ほな お客さんとこ行こか。
はい。(一同)はい。
♪~