―記録開始
勇気の無い僕…でも志しは……
作者・・・ルカリアン(フォングル)様
―――前書き―――
やあ!! こんにちは!! 僕ヒノアラシ!!
ギルドでパートナーのキモリと一緒に修行の日々にいそしんでるんだ!!
今は星の停止を食い止めて、僕たちの修行のの成果が認められてもう少しで、ギルドの卒業試験の話が来るかも知れないんだ!!
でも、僕はキモリと出会う前、つまりギルドに入る前は僕はすっごく臆病で、勇気をなかなかどころか・・・全然持ててなかった・・・
その頃から僕はずっと<一人前の探検隊>になりたくて、ずっと勇気を持とうとして持てなかったあの頃・・・・
勇気のない僕・・・でも、志は・・・高かったあの頃のある出来事で僕が少し勇気を持てたときの話があるんだ…、
そのときの出来事のおかげで僕はギルドに入って修行の日々に耐えて絶対<一人前の探検隊>なろうと心に誓ったんだ・・・
という決心だけど持てるようになったんだ。
今からその時の話をするね・・・
<注意>
ここからヒノアラシ君の過去話が出てきますが、中盤までかなりシリアスです・・・
終盤は前向きにしていますが、やっぱり全体的にシリアスなので、シリアスが基本的に苦手な人は見ることを避けてください・・・
―――1―――
ここはある火山のふもとの草原…
僕はここで両親と暮らしていたけど、お母さんたちがそろそろ独り立ちできるようになってほしい歳になったから、
近くだけどこじんまりとした家を作ってそこに住んでるんだ。
僕は最初は反対したんだけど、そのことが周りの住んでる友達に聞こえたらしく僕をそのことでからかうようなポケモン達が出てき始めた。
僕はそれが悔しかった。
だから、見返すためにしぶしぶだけどそのことに了承した。
僕にも友達は一応いたけど…ほとんど顔はあわさなかった。
そんな僕は最初は遊びに誘われることが多かったんだけど、その誘いを断り続けて一人で家で編み物をしてたから、根暗だってからかわれて、
勝手に家に入ってきて僕の作った編み物を破いていくこともあった。
そんなことをされても僕は仕返しをせず、なにもできなかったから弱虫で臆病だって言って、ずっとからかわれた。
弱虫だって…?
そうさ僕は弱虫さ! 弱虫で臆病で何が悪いんだよ!? ほうっといてほしいよ!
分かってるんならなんで…
そんなに僕をからかうのが楽しいの!?信じられない…
僕ははっきり言って親しか信用できなかった…
そんな日々を送ってたけど、ある日僕はそろそろ食料の木の実やリンゴが底を尽きかけていることに気がついたんだ…
いつもなら僕の親が持ってきてくれるんだけど…この時ちょうど運の悪いことに母さんが病気にかかってしまって、寝込んでしまった。
父さんは母さんの看病をしなくちゃいけないし…薬もちょうどいつも木の実を集めている場所にあるということで、そこに僕が行くことにした。
なんだかんだいっても、やっぱり親は一生の宝物だからね…親は大切にしたい…。
僕は木の実を集めに行くため準備をした。
木の実を集めに行くといってもその場所は火山の頂上の平地にあるから。
行くのは少し僕にとっては苦労するから、20個ぐらい木の実をバックに入れて、行くことにした。
この時ちょっとだけど、憧れてる<探検隊>の気分になれた。
そして僕は火山の頂上に向かい、火山を登り始めた。
早く終わらせて帰ろうと考えていた僕は、急ぎ足で最初の山道を登っていた。
途中でポケモンには出会いたくないから、絶対に後ろは振り向かない!
前だけ見てさっさと木の実と薬をとってこよう…そのことだけで頭がいっぱいだった。
なんとか山の中腹まで来たけど、急ぎ足というよりほとんど走ったので、疲れてしまった。
僕は近くの岩の上に乗り少し休むことにした。
ここまでポケモンに出会わなかったから、大丈夫…頑張って早く帰ろう…もう怖くてたまらない…
走ってきたから気づくのが遅れたけど、ここら辺は頂上に少し近くなってるから、熱気が漂っていて少し熱い…
でも、僕は大丈夫だと自分の心に言い聞かせ、休憩をやめてまた山道を登り始めた。
僕はこの後無茶せずにポケモンと出会わないで早く帰れるかも知れないと心の中で思ったが、その考えは甘い考えで、後悔することになるなんて考えることはできなかった…
中腹の辺りを過ぎると山道が結構険しくなってきた。
10分ぐらい急ぎ足だが、なかなか頂上はまだ遠い…
岩場もゴツゴツしてるし…かなり走ってもなかなか前に進めない。
途中、ポケモンの視線を感じたけど無視した。
それからまた結構歩いていると頂上が見えてきた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
頂上がもうすぐというところで僕の息使いが荒くなってくる…
「頑張らなきゃ…あともう少し…」
足に思いっきり力を入れて<でんこうせっか>を繰り出し一気に頂上まで登った。
この時後ろからかなりの数のポケモン達が後ろから来ていたことに僕は気付けなかった。
―――2―――
頂上に着いた僕は安心して、近くの木に寄りかかった。
安心しきっていた僕は疲れてしまった。
頂上は火山の熱気ですごかったが、疲れていたのでそんなことなかなか肌で感じれなかった。
結構な時間を休み木の実と薬を集めようとした時だった…
突然何かが僕の頬を掠めた。
はっとして辺りを見てみると、たくさんのポケモン達がいた。
恐る恐る何かが飛んできた方向を見ると、そこにはゴローンやピジョンなどの僕よりは絶対強いポケモン達がいた。
その光景を見た瞬間僕は焦燥感と恐怖に襲われた。
「ど、どうしよう…囲まれてる」
ポケモン達の目つきは僕を完璧にターゲットにしている。
僕は思わず声を発した。
「ちょ…ちょっと待って! 僕はここの木の実とここら辺にしかならない薬になる木の実を取りに来ただけなんだ!
だ、だから落ち着いてください!」
そう声を発するとゴローン達が声を発した。
「フン! 今度はどこの誰が侵入してきたかと思えば、こんなちっこいヒノアラシか…」
「こんな弱そうな奴、ほっといたって大丈夫そうですな…ん?」
一匹のイシツブテが僕の持っているバックに目を移した。
「親分…このまま去るのもなんですし」
「そうだな…オイ!」
「は、はい!」
ゴローンが威厳のある声で僕に声をかけるお願い…どうか、何にも起こりませんように…
「お前の持ってるそのバック…中身ごと全部こっちによこしなそしたら見逃してここの木の実をとらしてやらあ…」
「えっ!」
「どうする? 断るならどうなるかな? なぁ…」
「うっ!」
怖い…もう何もかもが怖いものに見えてきた。
でも、このバックは渡したくない…これはお父さんとお母さんが一生懸命作ってくれたバックなんだもん…
「………………」
「どうなんだ!? はっきりしろや!!」
「………せない」
「あ? なんだって?」
「渡せない…渡せない…でも、怖い…母さん」
僕の目からは恐怖と絶望そして悲しみと悔しみの涙が出ていた。
僕はいつの間にか泣きながら喋っていた。
「渡したくない…これはお父さんとお母さんが作ってくれた僕の宝物なんだ…
このバックの中身はいつも母さん達が僕のことを心配して持ってきてくれる僕に元気を与えてくれる木の実なんだ…だから、渡せない…」
しばらく僕の泣く声と嗚咽だけが、その場に聞こえていたが、ゴローンが声を発した。
「なら、仕方ねえなぁ…野郎ども!」
「オーーーー!!」
「無理やり奪うまでよ!」
こ、怖い…あ、足が動かない…逃げなきゃ…逃げなきゃ…でも、体が…神様!!
僕はギュッっと目をつむって体を丸めた。
「よこせ!」
そう言って襲ってきたピジョンの攻撃が目前に迫る。
覚悟を決めた僕はじっと待った…その瞬間を…
しかし、その時体に何か冷たい感触が感じた。
ポッ…ポツッ…
「え?」
目を開けてみるとピジョンの羽が目前で止まっていた。
「あ、 だ…お、親方!」
「ああ、やばい…野郎ども引くぜ!」
「オーーーー!」
そう言うとゴローンやピジョンたちは去って行った。
「な、なんで去って行ったんだ?」
さっきの会話が聞こえなかった。
どうしたらいいんだ?
だが、考える暇もなく答えが分かった。
なぜなら、その瞬間激しい雨が降り始めたからだ…。
「あ、雨だ…」
だからさっきゴローン達が去って行ったのか…ってそんなこと考えてる暇はない!
このままだと僕も雨にぬれて大変なことになる!
僕は急いで走りだして雨宿りできそうなところを探した。
だが、焦っているうえに疲れているから思うように走れない…
そんなうちに僕の体は雨にぬれていく…まずいこのままじゃ…
そう思って、頑張って走った。
やっとまともに走れるようになったときに雨宿りできそうな場所を見つけた。
ホッとして急いでその洞窟の穴に入ろうとしたその時!
ピシャアアアァァァン!!
強烈な音と眩しすぎる光…雷だ!
「う、うあああああ! 雷!」
僕の思考回路はそこで切れた。
雷は僕が一番怖いもの…音だけでも怖いのに光までまともに見てしまった…さらにあの恐々しい形までも…
「だ、誰か! た、助けてよ! う、うああああああ!!」
僕は走りまわってしまった…まだ雨も降っているのに…それが災いしたのか火口の近くまで来ていたところで、格段に大きな雷が僕に向かって落ちた…
「………っあ……」
雷に打たれた僕の体は焦げていて言う事なんてまともに聞いてくれなかった。
ふらふらと体が揺れた後、ヒノアラシの体は火口側の空中に浮いた。
「………死にたくない……」
かすれる声を必死に振り絞って残る力を降り絞って何とか火口の内側から大きく飛び出している岩場に必死にしがみついた。
しがみつくときに体が岩場にぶつかり上に跳ね上がり何とかその岩場の上に乗れた…けど体はもう傷だらけで動かすことができない…
雨が降り続いて火口から上がってくる熱気と相まって熱さがさらに蒸し熱くなり、僕の残り少ない体力を削って行く…
「死に…たく…な…い…し、に…たく…ない…」
必死に声を振り絞って意識を保つ努力をするが、逆にそれが僕の体力を削って辛い…
「薬の…き、のみ…を…と、って…早く…お母…さん…お、父さんの…と、ころ…に…持って…いか、ないと…」
そうだ、木の実を早く集めなくっちゃ…何とかして上に登らなきゃ…
なんとか体を起こそうとするが、体に力を入れることができない…
悔しくて涙が止まらない…
どうして、どうして…こんなにも僕は弱虫で臆病で弱いんだ…僕が弱いからお母さんの病気を治す木の実すらとってこれない。
僕は<探検隊>なりたいっていう高い志があるのにどうしても勇気が持てない…
どうしてこんなにも僕は弱虫なんだ…
悔しくて悔しくて涙が止まらない…
雨にもうかなり長い時間降られている。
もう駄目だ…ゴメン父さん、母さん…
僕やっぱりできなかったよ…ゴメン…
ああ、意識が…遠のいていく…
ふと、視界の隅に何か動いたような気がするけど気のせいだろう…
僕は意識を保つことができなくなり目の前が真っ黒になった………
―――3―――
ここはどこだろう? 辺りが白くて何もない…天国なのかな?
あれ? あそこに僕がいる…さっきまでの僕…
あたりをキョロキョロ見渡してみるとさっきまでの僕の様子が映し出されている。
「やっぱり…弱虫なんだな僕…」
そう言わずには居られなかった…でも、あのあとどうなったのだろう?
映像に視線を戻したがそこには映像はもうなく、ただ白い空間が広がっていた…
「死んだのかな? でも、だったら母さんたちが心配だな…」
なぜか死んだかもしれないということには驚きも何も感じなかった。
ただ、それより先に親のことが心配になった。
母さんたちはきっと、僕が木の実を持って帰ってくるのを待っているはずだ…そうだとしたらここで寝てるは訳にはいかない!
それに自分の夢もまだ叶えてない!!
「帰らなきゃ…帰るんだ!!」
僕は叫んだ…すると空間がゆがんだ。
「…! もしかして…!? そうだ!!」
僕はさらに大きな声で声がかれそういなるくらい叫んだ…
「僕は生きるんだ! たとえ弱虫でも、きっと僕と共に道を歩んでくれる人がいるって信じてる!
だから、こんなところで倒れるわけにはいかないんだ!! 親を助けるんだ!! 絶対に!!」
空間は壊れ、僕の意識は現実へ引き戻された。
「う、う~~ん」
僕は目を覚ました。
目を覚まして、自分の体の感覚を確かめる。
…大丈夫、痛みがかなりあるけど、ちゃんと感覚が分かる…死なずに済んだ良かった……でも…ここどこ?
目を覚まして見た天井は全然見た覚えのない天井だった。
だが、さっきまでの記憶が脳裏に蘇り、再び体に恐怖が走り、僕の体を震わせた…。
死ななかったとはいえ死にかけたのだからやっぱりその分の恐怖は体に刻みこまれてしまった。
しかも、あの熱さと雷は絶対にもう二度と体験したくない…夏と雷がトラウマになりそうだ…
震える体を必死に抑えても、体の震えは止まらず、僕は恐怖で震える自分の体を抱きしめるしかなかった…。
「目が覚めたか…大丈夫か?」
声のした方を向くと僕は驚いた。
だって…そこにいたのは…
伝説のポケモン:エンティだったのだから…
僕は脳の思考回路が完璧に混乱していた。
だって、目の前にいるのは伝説のポケモンであるエンティなのだから…混乱するしかない…
「怖がらなくていい…ずいぶんとひどい怪我だな…まぁ、雨には長い時間が打たれ…
その上雷に打たれたような体の焦げ跡に全身に打撲と左腕の骨折…トラウマになるのは防ぎきれないな…」
「あ、あの…ここはどこですか? それと、あなたが僕を助けてくれたのですか?」
僕が声を震わせながら尋ねると、エンティさんは安心させるように僕に言った。
「ここは私の住処だ…確かにお前を助けたのも私だ…
しかし、危ないところだった…あともう少し私が君を見つけるのが遅かったら本当に手遅れになっていたかもしれない…とにかく無事なのは良かった…
いや…怪我してる時点で無事ではないな済まない…」
「えっ!? な、何で謝るんですか!? そのあとここまで治療してくれて助かったのなら十分感謝していますよ…」
「そうか、ありがとう…所で、君は一体あそこで何をしに来たんだ?」
僕はそこでハッとなり、その質問に答えた。
「母さんが病気になって…父さんは看病しないといけないから…僕が頂上の平地にある病気を治せる木の実をとりに行ってたんです。
でも、ポケモン達に襲われかけて、助かったと思ったら激しい雨が降っていて…なんとか雨宿りできる場所を見つけてそこに入ろうとしたのまでは良かったのですが、
そこでタイミング悪く雷を見てしまって、思考回路が全部飛んで行って…周りが見えなくなって、気づいた時には雷に打たれて…あんなことに…」
話しながら僕の体は恐怖と悔しさですごく震えていた。
その様子をエンティさんは心配そうに見つめていた。
「悔しい…」
「ん?」
僕の発した言葉に耳を傾けるエンティさん…こんなこと言いたくないけど、もう絶えることができない…僕はゆっくり言った。
「僕は悔しいです。
小さいころから弱虫で臆病で…とても、勇気が持てないのに夢だけは<探検隊>になるって一人前に言って、
それで今回は親が危険だから助けたいのに…助けるどころか自分はなにもできなくて、弱虫だからあなたに助けられてしまった…どうして…どうして僕はこんなにも弱虫なんだよ! ッツ!」
僕は自分のこぶしを思いっきり床に叩きつけたら全身にすごい激痛が走った。
「無理はするな…岩にしがみついても、体にはかなりの衝撃が走ったはずだ。
その前にも怪我や火傷などしていて傷が通常よりも深くなっている。
無理に体を動かせばその分体に負担がかかり治るのが遅くなるぞ…目立つ傷も結構あったしな…」
そこまで言うとエンティさんは一度黙ったので僕は今さらだが自分の体を確認してみた。
胴体には包帯が広い範囲で巻かれていた。
それ以外にも骨折している左腕のギプスや包帯があり自分の体が雨冷えてしまうことも予想されていてご丁寧に自分の体の上に毛布があった。
そうだ…まだお礼言ってない…
ヒノアラシはお礼を言おうとエンティの方に顔を向けた。
「あ、あの…そう言えば助けてくれてありがとうございます…」
「気にするな…当然のことをしただけだ。
それより、一つ聞きたいのだが…」
「はい?」
「君は<探検隊>というものを目指しているのだな?」
「ええ…」
エンティさんは僕に対して質問してきた。
なんだか、伝説のポケモンだからもっと威厳でもあるかと思ったけど…すごい紳士的で優しい、なんだか落ち着く…僕はエンティさんの質問に答えることにした。
「それで、友達にいじめられてやり返せなくて勇気がなくて、臆病だから弱虫って言われているのか?」
「…ハイ…」
この質問には少し間をおいてから答えた。
あまりにも率直に聞いたから…
「そうか…ええっと、君の名前は?」
「ヒノアラシです。皆からはヒノって呼ばれてます」
「そうじゃない…君の種族名を聴いてるんじゃなくて…君の個人名を聴いてるんだが…」
「ああ、すみません。それはちょっと教えられないんです…」
「そうか…じゃあ、ヒノ君と呼ばせてもらうが、ヒノ君率直に言わせてもらうと…僕は君は自分で思ってるほど、弱虫ではないと思う」
「えっ!?」
「だって、そうじゃないか?
君は今日はここにお母さんの病気を治す木の実を採りに来たんだろう…弱虫なのに親が病気であの結構気性の荒いポケモン達がいるこの火山に来たんだろう?
ヒノ君、私はね…弱虫なのに大切な者のために動けるのはその時点で私は勇気があると思うけどね…」
「えええっ!!?」
僕はその言葉に耳を疑った。
初めてだからだ…僕には勇気があると言ってくれたのは…
「僕に勇気が…?」
「ああ、あると思うよ。
ほんとに弱虫ならば、親を助けたくても怖くなってその場で動けなくなってしまうものだからね…
だけど君は体を震わせながらでも登ってきたじゃないか…確かに君には小さいけど勇気はあるよ君にないのは自信だけ…」
僕の目から涙がまたとめどなく溢れてくる…
こんなにも優しく話され、励ましてもらい、心が癒されていく…僕は涙を止めようとした。
「泣けるときに泣いたらいい…」
「えっ…?」
「無理に涙を抑えることはないと思う…涙は強くなるために必要なものだから、今まで泣くのを我慢してたなら枯れるまで泣いたらいい…そしたら、きっと強くなれる…絶対だ」
「エンティさん…ありが、とう…ううう…うああああああああん!!」
僕の大きな泣き声が小さな部屋に響く…
僕は泣いた涙が枯れるまで…
強くなるため…
もっと大きな勇気を持つため…
自分に自信を持つため…
僕は今までの辛かったことをすべて思い出し、それを涙に変えてそれを地に落とした。
その様子をエンティさんは優しい目でずっと見守ってくれていた。
僕が泣きやんだ時、エンティさんは僕に優しく微笑んでくれた。
「どうだ? すっきりしたか?」
エンティさんは僕に確認する様に聞いた。
「はい、かなり…」
「そうか、それは良かった」
「あの、そう言えば僕早く家に帰らないと…」
「ああ、そうか病気を治す木の実を君の母親に届けないとね…それと君の分の食料も…」
「…いえ、僕のはいいです」
「? どうしてだ…?」
エンティさんは顔に?を浮かべて僕に聞いた。
「僕…エンティさんのおかげで、少し自信が持てました。
僕、自分の夢の<探検隊>になることを叶えるためギルドに入ります!」
エンティさんは面食らった顔をしていたが、すぐに顔に微笑みを浮かべて、「そうか…頑張れよ」と言ってくれた。
「送って行ってやる」
「ありがとうございます」
「ギルドまでは遠いからな…親に許可を得たら家の前で待て、ギルドの近くのトレジャータウンまで乗せていってやる…」
「すみませんほんとに…」
「遠慮するな…私は嬉しいのだからな…」
エンティさんは僕に微笑み僕を前足で撫でてくれた。
怪我はまだ治りそうにはないが、ギルドに向かっていきその近くの寝泊りできそうな場所で怪我を治そう。
エンティさんは僕を背中に乗せ、一気に火山を駆け下りた。
―――4―――
エンティさんに火山のふもとで下してもらった僕はすぐに親の家に向かった。
「ただいま! 採ってきたよ!」
「おお! ヒノアラシ! 採ってきてくれたか! ありがとう!」
「早くお母さんに!」
「ああ!」
お父さんは僕から木の実を受け取ると、手早く木の実を摩り下ろし、皿に盛り付け母さんの元に行った。
「起きてママ…息子が木の実採ってきてくれたよ…」
母さんは目を覚まして体を起こした。
「あら、パパ木の実…手に入ったの?」
「ああ、息子が採ってきてくれた! さあ、はやく食べて!」
「ええ…」
母さんは父さんがスプーンで掬った木の実のをパクッと一口食べた。
「ああ、おいしい…」
どんどん食べていくすぐに木の実はなくなり母さんの顔色もすっかり良くなった。
「ありがとう…みんな」
母さんは笑顔でそう言った。
しばらくの間、皆笑い合っていた。
父さんは急にこっちを見て素っ頓狂な声を出した。
「ん? ヒノアラシッ!?」
「なあに? お父さん? そんな声を出して…」
お父さんは僕の方向を見て顔を青ざめている。
母さんもこっちを見て顔を真っ青にした。
「お、お前…そ、その怪我は…」
「あ、ああコレ? 大丈夫だよ心配しないで…」
「大丈夫って!? こんなにも広い範囲に包帯が巻かれているのに!? 左腕も固定されているのに大丈夫だと!? 嘘をつくな!!
本当は痛いんだろ…なんで、こんな無茶を…」
「違うよ、こんな怪我をしたのは僕が弱虫だったから…自分自身に自信がなかったからなんだ…」
お父さんは目じりに涙を浮かべて、声を震わせていた。
今度は母さんが口を開いた。
「ヒノアラシ…確かにあなたは弱虫…でも、あなたは私たちの子供なのよ…無理をしているのは丸わかりなのよ…でも、よかった」
母さんは安堵の表情を浮かべてホッと胸をなでおろした。
僕はここで話すとすごくいきなりになると思ったが、早いうちに言わないと言いそびれてしまいそうだから言ってしまった方がいい…
「お父さん、お母さん、あのさ話があるんだ…」
「「何?」」
父さんと母さんは同時に聞き返す。
僕は一呼吸置いて言った。
「まず、怪我のことは嘘ついてゴメン…でも、確かに怪我をしたのは自分の弱さもあるし、僕が臆病だからでもあるのは確かなんだ…
僕は一刻も早く強くなって将来の夢を叶えたい…だから…」
ここまで言って僕は一旦顔をあげて親の顔を見た。
どちらの顔もおそらくしばらくは見れないだろうから…しっかりと記憶に焼きつける。
そうして、しっかりと間を溜めて僕は言った。
「僕…ここを出て<探検隊>になるために…ギルドに弟子入りする!!」
沈黙が流れる…親は呆然とした顔で僕の顔を見つめている…僕は静かに話した。
「僕、<探検隊>になりたいんだ。
それは、父さんも母さんも知ってるでしょ…それで僕が皆にからかわれてることを…
僕ね…今のままじゃきっと何もできないまま何時までも皆にいじめられると思うんだ…そんなの僕は嫌なんだ。
だから、少しでも勇気を出して弱虫なところや臆病なところを直したいって思って今回、母さんのために木の実採ってくることにしたけど…
やっぱり勇気なんて出なくて、雷や雨に打たれて、崖に自分の体をぶつけて死にかけたんだ…ほんとに怖かったけどそれ以上に悔しかった…
だって、今回自分で決めていったことなのに、怪我をしてしまうし、野生のポケモンが出ても戦わずに逃げたし、
雷で我を忘れてしまったり…ほんとにふがいないことばかりで情けなく思ってて…死にかけてたけど、あるポケモンに助けられたんだ。
そのポケモン僕のためにこんな治療もしてくれたんだ。
その時に僕思わず本音を漏らしてしまってね…泣いたの思いっきり…泣いていいって言ったからそのポケモンが…優しくしてくれて励ましてくれたから…そしてこうも言ってくれた…
君には勇気はある、ないのは勇気じゃなくて自分の気持ちの信念と自信だって…
嬉しかった、本当に臆病だって思っていた僕にでも志が高いのに勇気のなかった僕に勇気があるって言ってくれたのは嬉しかった。
だから僕はその優しさを無駄にしたくない…今度は後悔する前に動きたい…
だから…僕はここを離れてギルドに弟子入りするんだ…」
父さんは僕の目を見て納得の表情を浮かべた。
母さんは僕の言葉を聴いて唖然としていたがすぐに微笑んだ。
そして、母さんが口を開いた。
「わかったわ、自分で決めたんでしょう…だったら私は反対しないわ…自分の思うことをしなさい…初めてあなたが自信を決意に変えて事だから…」
父さんはそれに続けた。
「お前が頑張るなら構わない…それにお前も本当にいいことだ…もう、今日から行くのだろう…」
「うん」
「なら、いい。
私も母さんもお前のこと応援してる。
頑張れ!」
「うん!! ありがとう!!」
そう言うと僕は自分のバックを肩にかけた。
「それじゃあ、行ってきます。
きっと、立派な<探検隊>になって、帰ってくるね!」
「ああ、頑張れよ!」
「頑張って…体には気を付けてね…」
「うん…じゃあ、行ってきます!!」
そう言うと僕は踵を返して走りだした。
一時別れるけど、また戻ってくるとは分かっていても、やっぱり涙は止まらない…僕は涙を見せたくなかった。
でも、僕は母さんたちの前で泣いたことがなかったから…最後踵を返す一秒前に涙を頬に流した。
それ以上は恥ずかしいから、走った。
火山のふもとで待つエンティさんの元へ…
―――5―――
火山のふもとにつくとエンティさんはこっちを見て少し心配そうに聞いた。
「別れは…大丈夫だったか?」
「うん、ちょっと泣いたけど…大丈夫…行こう」
そう言うと僕はエンティさんのふかふかの背中に乗った。
「そうか、では行くぞ!」
エンティさんは軽い助走から飛びあがった。
一瞬にして、したが広く見える。
両親の家と僕の家が小さくなる…自然と涙が流れてしまう…さっき、泣いたのに泣き切れてなかったみたいだ。
その頃、ヒノアラシの親は…
エンティの背中に乗ったヒノアラシがここを去って行くのをヒノアラシに分からないように見に来た。
「なるほど、ヒノアラシを助けたのはエンティだったのか…」
「懐かしいわね…ヒノアラシは大丈夫かしら?」
「あいつなら大丈夫だろ…俺たちの子だ、きっと俺たちのように強くなるさ…」
「そうね…信じましょう…」
「あ、エンティがこっち向いたぞ」
エンティはこっちを見ると微笑んだ。
「相変わらずの微笑みだな…」
父親が懐かしく思い出す…
母親もそれに便乗する…
「エンティさん私たちだけでなく息子まで助けてくれたのよね」
「ああ、そうだったな…エンティ…いや、正確にはエンティじゃなかったな…」
「ええ、そうね。 なんだったかしらあの人の本当の姿って…」
「忘れたのか…? …にだろう」
「えっ? ゴメン聞こえなかったわ…もう一度言って…」
「だから…あいつの本当の姿は…ミュウだろう」
あっという間についた。
ここがトレジャータウン…ドキドキする。
この階段の上にあのギルドがあるのか…
「じゃあ、私はここまでだそれでは…」
「あ、ちょっと待って…」
「なんだ?」
「気になってたんだけど…何でここまで僕に親切にしてくださったんですか?」
エンティは微笑んで答えた。
「それは…いつかわかる…それも、いつか<探検隊>になって解き明かしてよ…その方が面白いだろう…」
「そうですか…後、あなた本当にエンティなんですか?」
その質問にはエンティは目を丸くした。
「何でそう思うんだい?」
「だって、エンティって言うともっと威厳のある感じだと思ってたんですけど…
でも、違ったので、こんな伝説のポケモンもいるのかな?って思ったんですけど…やっぱり納得できなくて…」
エンティさんはフフフと笑った。
「? どうかしました?」
「いや、君も鋭いなって思ってね…」
「えっ?」
聞き返さない内にエンティさんの姿は光に包まれ、別の形を作った。
「やっぱり…エンティじゃなかったんだ…」
「まあね…僕も本当の姿を君に見せれて安心しているよ…」
「あの…」
エンティもといミュウはヒノアラシが何か聞く前に釘を刺した。
「ストップ…それ以上は聞くのは禁止。
ここからは自分の努力と自信で乗り越えていってね…大丈夫、君なら大丈夫だよ!!
きっと、乗り越えられる…探検隊になるにはパートナーが必要だよ。
一人が無理でも、パートナーと一緒なら乗り越えなれるよ…信じてる。
頑張ってね…君を思っているのは一人じゃないから…前を向いてね…それじゃあぼくはここで…」
「あ、あの…ありがとう…きっと、答え見つけるよ…」
「頑張ってね…それじゃあ!」
ミュウはそう言うとテレポートして消えた。
しばらくの間、僕はその場に立ち尽くしていたが、決意を確認した。
「ようし!! 頑張るぞ!!」
こうして、僕の<探検隊>になるための前進運動は始ったんだ…
―――6―――
これで僕の話はおしまい…どうだった?
僕、今だから思えるけど…やっぱり、ミュウが僕を助けたのは、なんだか親に似てたからじゃないかって思う…まだ、わかんないけどね!
やっぱり、弱虫な僕だけど、今はキモリと一緒だから乗り越えられる。
時空の塔でのまでこともキモリと出会ったから、僕は乗り越えられた。
これからは僕も頑張らないとね!!
キモリを引っ張って行くぐらいにね!!
僕たちの軌跡(みち)はまだ続いているから…
「おーい、ヒノアラシ何やってんだ?
早く探検行くぞ~?」
「あ、うん! 今行くよ!」
「何してたんだ?」
「えへへ、なんでもない!」
「そうか…」
「ねえ、キモリ」
「? なんだ?」
「これからもよろしくね!!」
「! ああ、こっちもだ…」
勇気のなかった僕、でも志は高かったあの頃…
僕に足りてなかったのは勇気でも強さでもなかった…
僕に足りなかったもの。
それは自分に対する「自信」と「信念」…
今は結構キモリがいるからそれがかなりある。
でも、いなかったら得てなかったと思う…
でも、あの事があったからこそ希望ができたんだ…
今はお互いに信じあっている。
あの頃高かった志はもうすぐそこに来ている。
だから今度はもっと高い志を持ちたい。
もっと自分に「自信」を持ちたいから…
だから、キモリ…みんなこれからもよろしくね!!
END
―――空豆の感想―――
まぁなんてこと!?
かなり本格的に描いてくださいました!! うわぁ、嬉しいな!コレは!!
コレはまじめに ばちが当たりますね!!^^
ミュウまで出て来てる!?
まさか、ミュウってあの短編漫画に出したミュウなのでしょうか!?
そうだったら嬉しいです><
ここまで本格的に描いて下さって本当にありがとうございました!!
―記録終了