敵を作ってコンテンツを成功に導くための、8つの「べし・べからず」(後編)
この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回は、敵を作ってコンテンツを成功に導くこの戦略を実施する際に「すべきこと」と「すべきでないこと」を説明しよう。
そして、「Mozっぽくない記事だな」「ウチではこの戦略は無理だ」と思ったあなたは、記事の最後にあるランドからのメッセージで、ランドがこの記事に込めた本当の想いを知ってほしい。
「敵」をつくるコンテンツで「すべきこと」「すべきでないこと」
敵をつくるような方法でコンテンツを作ったりアイデアを考えたりするときには、「すべきこと」と「すべきでないこと」がある。
すべきこと裏付けとなるデータを用意する
まず、単に意見を述べるのではなく、裏付けとなる事実やデータを、できるだけ多く集めよう。
これは当然のことだと言える。
裏付けを取らないまま進めてしまうと、今の時代は危険な状況がもたらされる可能性がある。
すべきことさまざまな観点から伝える
僕が強く勧めるのは、さまざまな観点から伝えようとすることだ。これは何も、政治的に左寄りの見方から右寄りの見方までをひと通り検討しなければならないとか、そういうことを言っているわけではない。そういう伝え方も悪いとは思わないが、多角的な見方を提供することを強くお勧めする。
たとえば、「庭の芝生を別のこんな素晴らしいものに替えてはどうか」と言うのであれば、自然保護や生態系の保護だけの話にしないでほしい。経済的な負担という観点から話すこともできるし、手入れのしやすさを他の芝生と比較しながら話すこともできる。そうすれば、さまざまな分野の人たちにアピールできる記事になる。
同じことは、ソーラーパネルの仕事と炭鉱の仕事を比べた記事についても言える。環境を重視する立場から語ると当時に、資本家的な視点から話をすれば、この両端の立場の中間に立つ多くの人たちにアピールできる可能性が生まれるのだ。
すべきことその分野で著名な人たちの意見を取り入れる
3つ目として、著名な人たちの意見を取り入れてから、コンテンツを作成、公開することを強くお勧めする。コンテンツのテーマが、文化的、社会的、あるいは政治的な内容を含む場合はなおさらだ。
このことは、例に挙げた記事の一部にも当てはまる。
ヨガの記事はそうでもないだろう。
しかし、ソーラーパネルと炭鉱の仕事を比べた記事などは、自分の書いた記事をエネルギー業界の人たちに見てもらえれば、記事を書き進めるのに役立つ。話を聞くのは、エネルギー分野や政治分野の人たちになるだろう。
すべきでないこと挑発のためだけに挑発的な内容にする
ここからは、「すべきでないこと」だ。
挑発したいという理由だけで挑発的なコンテンツを作成することは、お勧めしないし、すべきでもない。代わりに強く勧めるのは、作成するコンテンツの中身を検討し、これまで説明したような観点でコンテンツを作ることだ。
決してお勧めできないのは、次のような観点でコンテンツを作ることだ。
人々を怒らせるにはどんなことを言えばいいだろうか
そうではなく、僕が言いたいのは、
すでに持っている信念、立場、データ、ストーリーなどを取り入れるにはどうすればいいのか
と自問し、
誰が敵なのか、誰が味方なのか、賛同者を得るにはどうすればいいのか、記事を拡散するにはどうすればいいのか
と考えることだ。
すべきでないこと擁護できない意見を選ぶ
2つ目だが、僕なら、対抗できない敵や擁護できない意見を選ぶことはない。
たとえば、訴訟を起こされる危険のある分野に深入りしそうなことを考えているなら、避けた方が無難だろう。
同じように、自分の意見が擁護しにくいもので、事前にその分野の人たちに取材して調べた結果、「そのような話は知らないね」と言われるようなら、その意見をそれ以上検討しない方がいいだろう。
すべきでないこと1回トライしただけであきらめる
3つ目は、このようなやり方に挑戦した初めての取り組みがうまくいかなくても、あきらめてはいけないということだ。
他のあらゆる種類のコンテンツと同じように、実践を繰り返し、何度もトライしなければ成功できないと考えてほしい。
すべきでないこと道義に反すること
このようなタイプのコンテンツを作るときに、道義に反するやり方をしてはいけない。
このコンテンツでどうやって敵を作り出して攻撃してやろうか
といった思いでコンテンツを作る誘惑にかられることがあるかもしれない。だが、そんなことをする必要はない。
敵を作るコンテンツであったとしても、それは攻撃的ではない形にした方がはるかにうまくいくと思う。
すべきでないこと嫌う人が出てきたらうろたえる
自分が作っているコンテンツを嫌う人が現れるかもしれない。そのときでも、忘れないでほしいことがある。
オンラインで厳しい批判が始まると、多くの人は逃げ出してしまう。「わかった。自分たちは何か間違ったことをしていたんだ」と考えてしまうのだ。
だが、そうではない。
僕の経験では、それは正しいことをしているから起きることだ。素晴らしいものを作っているのだ。
人々や組織が、何の理由もなく抗議をしたりアイデアに反論したりすることは、あまりない。君のアイデアに脅威を感じているからそうするのだ。
君が敵にとって脅威となるものを作っているということは、君の味方や、君の側についてくれる人にとって素晴らしいものを作っていることでもある。つまり、君のしていることは正しいのだ。
Mozを始めてしばらくの間、まだ「SEOmoz」という名前だった頃には、何年にもわたってさまざまな憎まれ口を叩かれた。だが、これは僕たちが正しいことをし、素晴らしいものを作っていることを示す実に良い兆候だったのだ。
あなたの知っている「素晴らしいもの」は、当たり障りのないものだっただろうか?
この記事を読んで「ウチではこの戦略は無理だ」「Mozっぽくない記事だな」と思った人もいるかもしれない。
Mozのコンテンツとしては異色のこのコンテンツを公開したことに対して、ランドは次のようなコメントを記事に投稿している。
このメッセージで、ランドがこの記事に込めた本当の想いを知ってほしい。
今週のWhiteboard Fridayをチェックしてくれてありがとう! このトピックは異色だが、Mozで取り扱いとずっと思っていたものなんだ。
大半のコンテンツというものは、当たり障りがなく、立場をはっきりとさせないものだ。というのも、企業はだれかを困らせることを恐れ、できるだけ中庸で標準的な立ち位置にいようとするからね。
でも、それは大きな間違いだ。
コンテンツ、製品、企業、人、組織、サービスは、何らかの立ち位置をとるとなると、だれかの味方になり、かつ、だれかの敵にもなる。しかし、そうすることで、口の端に上ることになり、それが増幅されてリンク・カバレッジ・順位につながり、そして記憶されるブランドになるんだ。
これまでに存在した、素晴らしいものを思い浮かべてみてほしい。
- 既存の価値観を打ち破るような新しい企業
- びっくりするような新製品
- エネルギーに満ちた議論
- シェアする価値が明らかに高いコンテンツ
- カンファレンスでの素晴らしいセッション
- 最後まで視てしまった動画
どれも、共感する味方をつくると同時に、その過程で敵が出てくるようなものだったのではないだろうか。
今週のWhiteboard Fridayへの感想を聞かせてほしい。特に、納得いかない点や、あなたの考えと違う点があれば、ぜひ!
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