マツダのロータリー・エンジン、電気自動車のレンジエクステンダーとして復活か
ロータリー・エンジンのファンに朗報だ。三角形のローターが回転するこのエンジンに、復活を期待させる光がわずかに射してきた。自動車メディア『Automotive News』によると、マツダのパワートレイン開発を主導する人見光夫氏が、ロータリー・エンジンを電気自動車のレンジエクステンダーとして採用する可能性があると語ったというのだ。

マツダの車両開発本部主査である京免章氏が同メディアに語った話によると、マツダは2019年に2タイプの電気自動車(EV)を導入する計画を立てている。1つは完全にバッテリーの電気のみで走行するピュアEVで、もう1つは発電用の小型エンジンも搭載するレンジエクステンダーEVになるという。米国版Autoblogの編集部がマツダに確認してみたところ、マツダの広報担当者は2019年に両バージョンのEVを投入する計画を認めたが、それ以上の情報についてはコメントを避けた。

振り返ってみると、これが実現すると思う根拠がある。まず、2013年にマツダは「デミオ」に排気量330ccという小型ロータリー・エンジンを搭載したレンジエクステンダーEVの開発に取り組んでいた。その航続距離は400kmといわれ、半分の200kmを満充電したバッテリーで走り、残りの200kmは容量9リッターの燃料タンクに給油したガソリンを使って始動した1ローターのエンジンが発電機として働き、その電力で走るというものだ。

もちろん、ロータリー・エンジン自体を動力源とするクルマの開発も継続していると思われる。2015年の東京モーターショーでは次世代ロータリー・エンジンを搭載する「RX-VISION」コンセプトが公開されているし、さらにマツダは今年の東京モーターショーでもロータリー・エンジン搭載の新しいコンセプトカーを発表すると噂されている先日ティーザー画像が公開された「次世代デザインビジョンモデル」というのがそうなのかもしれない。

だが、最も説得力のある材料はマツダが米国で特許を出願したロータリー・エンジンを利用したレンジエクステンダーEVの資料だ。このパワートレインのレイアウトは、デミオのレンジエクステンダーEVで使われたものとよく似ている。以前、我々が指摘したように、また人見氏も『Automotive News』に語っているように、ロータリー・エンジンはコンパクトで振動も少ないため、レンジエクステンダーに適している。もちろん、最も効率的なエンジンというわけではないが、クルマの駆動力として必要とされるわけではないから小型のもので十分だろう。それなら燃料消費も少なくて済む。エンジンが小型軽量であれば、そのぶん多くのバッテリーを搭載したり、乗員や荷物のためにスペースを有効活用できるし、あるいは単純に車両重量を抑えることにもつながる。

このニュースは、「RX-7」や「RX-8」の後継車を持ち望んでいる筋金入りのロータリー・ファンにとっては、それほど胸が躍るものではないかもしれない。だが、完全に希望を捨てるべきではない。人見氏は『Automotive News』に「マツダのエンジニアはいつの日かスポーツカーに使われるより大きなロータリー・エンジンの開発も続けている」とも述べている。人見氏によれば、大きな問題は技術的なことよりも、ビジネスとして成り立つかどうかということらしい。

もし、マツダの上層部がこの記事を読んでくださっていたなら、我々はロータリー・ハイブリッドのスポーツカーは如何かと提案したい。ロータリー・エンジンの泣き所である低速トルクと燃料消費は、電気モーターを組み合わせることでカバーできるのではないだろうか。そんなパワートレインを搭載した魅力的なスポーツカーを発売すれば、ロータリーをレンジエクステンダーとして使用するハイブリッド車の販売にもイメージアップという効果が期待できるはずだ。マツダの皆様、どうか一度検討してはいただけないだろうか?


By JOEL STOCKSDALE
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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