かつて日本は「皆婚社会」でした。しかし、近年は生涯未婚率が急上昇し、2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が占めるという予測も出ています。
「生涯未婚時代」とは、単に「結婚しない中高年の増加」のことではありません。「結婚を人生設計に組み込まない若者の登場」のことでもあります。
「結婚、出産を経て配偶者と添い遂げる」という生き方や「正社員となって定年まで働く」という人生設計が社会で共有できなくなった時代に、家族社会学の視点から結婚という選択肢を再考したのが永田夏来さんの『生涯未婚時代』(イースト・プレス)です。
今回は京大卒の元ニート、phaさんをゲストに招き、今まで普通だとされていたライフコースを外れて生きることの、この時代における意味について考えていきます。
(2017年8月18日、下北沢・本屋B&Bにて収録)
*前編「『結婚・妊娠・出産』って最後の宗教みたい」はこちら
東京でしかこういう生活はできなかった
永田 phaさんって京都にいた影響があると思います?
pha 結構あるんじゃないかなという気がしますけどね。京都だったら僕みたいな人がいっぱいいるけれど、東京だったら珍しいみたいなのはちょっとあるかなと。
永田 実際住んでみると、やっぱり京都って面白いですよね。東京の人に説明するのはちょっと難しいけど、「だいたい自転車で行ける範囲で全部済む」みたいな感じ。あとはやっぱり京都大学とか寮があるからね。だいたい京都のシェアハウスの人って、寮生活の話をするんですよ。phaさんだってそうじゃないですか。
pha 僕も寮出身なんで。
永田 京都って家の中と家の外の区別があんまりないんですよ。日本家屋も元々そうなのかもしれない。
pha その辺の町が家の延長みたいな感じは、鴨川とかにもありますね。東京だとそういう雰囲気はなくて、家と外がすごく区別されているというか、外はパブリックな場所だから、あんまり好き勝手できないみたいなところがありますね。
永田 下北とか西荻とか、そのあたりだったらまだあるのかな? 私が東京に住んでいたときには近い感じだったけども、でも東京のそれって本当に一部だからね。
pha 東京は本当に駅によって全然違うというか、高円寺の駅前だけ路上で飲んでいてもいいみたいな感じがある(笑)。
永田 あるあるある(笑)。なんでphaさんは、東京にいるんですか?
pha 僕は東京でしかこういう生活はできなかったと思っているんです。
永田 でもルーツは京都にある。
pha ルーツは京都なんですけど、京都もちょっと違うというか。ネットで遊んでいたら知り合いとかいっぱいできて、それでネットの延長で遊びたいとなるとやっぱり東京がいい。
永田 それはわかる。私は東京に住んでいたときに、例えば恵比寿とかで「今これからラーメンを食べるんですけどどうですか」とかTwitterで書いたら「はーい!」って集まって、全然知らない人同士6、7人ぐらいでラーメン食べに行ったりとか、全然できていましたよ。10年前ぐらいのTwitterだと。でもそれってやっぱり東京ならではで、人口が多いからというのが多分ある。それが京都や大阪で成り立つのかといったら、ちょっとわからない。
pha 京都、大阪でそういう仲間を集めて遊ぼうとしても、全くいなくはないけど、東京の10分の1ぐらいって感じがしますね。自分と同じ種類の仲間を探すと。
永田 やっぱり母数が違うからね。東京以外のとこでそういうことをやったら、結局は知り合いが集まっちゃうと思うんですよね。だけど東京だとセンスが合うけど全然知らない人と会うことができる、というのはやっぱり強み。
pha センスが合う人ごとにタコ壺がいっぱいできていて、それぞれクラスタを作れる感じがありますね。だから僕はもう東京しか住めないなって思います。
永田 でも、東京でセンスの合う人同士でつるんだり事業をやったりとか、あるいは一緒に住んだりとか、それってある意味排他的な人間関係だなとちょっと思ったりもするんです。だってフィーリングが合うかどうかで仲間に入れるかどうかが決まるのって、厳しくないですか? そこがすごく難しいなって、最近思うところです。
pha 確かに排他的になることはあります。でもなったらなったで、また別の集団を探したり作ったりすればいいし、逃げ場はいっぱいあるからいいかなとは思うんですけどね。東京だったら一つのところで駄目でもまた別のところに行くとか、いくらでもできる。そういうのが田舎だとできない。一個のところでやらかしたら、もう全部伝わってしまって駄目になりますよね。
永田 それは「できちゃった結婚」、私が「妊娠先行型結婚」って名付けて今や普通にそれで流布しているんですけど、それで地方で住んでいる子ですよ。うまくいっているときには親も旦那も助けてくれるし同級生も助けてくれるし、共同体の中に包摂されているから大丈夫なんだけど、もしも旦那が浮気したとか実はDVだったとかいうときに、それを訴えて周りを巻き込んで状況を変えていくのはかなり厳しい。
pha そこから出て別のところでやるみたいなのが難しい。地方は窮屈だなって思っちゃうんですよ。
永田 そういう意味では、確かに東京は選択肢がある。ただphaさんみたいにリーダーシップとってシェアハウスやれる人って、いっぱいいます?
pha そんなにはいないかな。でもやっている人についていくのでいいんじゃないですか。自分でやりたくなかったら、やっている人の手伝いをすればいい。そういう感じで小さいコミュニティがいっぱいあるから、そういうのに入ったらいいんじゃないかと思うんですよね。
永田 事業者型のシェアハウスとかどう思います?
pha いいんじゃないですかね。
永田 ボルダリングが好きな人が集まるシェアハウスとか、「それがマーケットになるんだ」とか思うと怖いなと思ったけど。
pha 住居の一つとしては、シェアハウスは僕みたいな個人が趣味みたいな感じでやっているようなタイプと、事業者型というのは不動産業者が「この建物をどう運用しようか」と考えて「普通にマンションにするよりシェアハウスした方がよさそう」みたいな感じでやっているものとがありますね。
永田 有機野菜が好きな人のシェアハウスとかね。
pha 僕はいろんな住居があると自由だと思っているので、いろんなタイプのシェアハウスがあって、そこで仲良くなったりすることもあるし、いいと思うんですけどね。それで物足りなくなったら自分で作ればいいし、別のところに参加するのもありだと思うし。とりあえず上京するときにすごく便利ですよね。そんなに初期費用が要らないので。
家族は基本しんどいと思う
永田 家から出て上京する自体がすごく勇気いる人もいっぱいいるでしょう? それが家族のちょっと怖いところで、家族って楽といっちゃ楽なんですよ。だって世の中が「家族ってこうですよ」って準備してくれているし、それに合わせて住宅も作られているしローンも作られているし、全部作られている。社会制度ってそういうものなので、だからいろいろ我慢して家族の中にいたら周りが全部やってくれる。
それでずっとやってきた人が「いや、でも居心地が悪いし、やーめた」と思うのって結構しんどいし、ましてそこからポンとシェアハウスに行くのってハードルが二つ三つぐらいあるのかなという気がするんですよね。
pha だから、実際周りにいるのは「家族がすごくひどい人」が多い気がしますね。そうすると耐えきれなくて家を出て行くけど、ちょっとしんどいぐらいだったら、「まあ我慢するか……」みたいなのがあるかもしれないです。
永田 家族は基本しんどいと思いますよ。うまくいっている人がテレビとかで取り上げられたりすると、「それじゃなきゃ駄目なんだ」みたいな気がするけど、家族って何十年も維持されるものだから、テレビで取り上げられる良い家族なんて、瞬間最大風速ですよ! いいときもある、でもずっとじゃない、と(笑)。よくなきゃ駄目だとか思うと、どんどん変な方向にいきますよ。
pha もっと「解散」しやすくしたい。家族から脱出したりしやすくしたいなというのはあって、シェアハウスがあることでそうなったらいいなという気持ちはあります。
永田 ハードルは一つクリアになりますよね。敷金とか礼金とかないし、冷蔵庫を買ったりしなくていいから。
pha 一緒に住んでいるのはそういう感じで来た人が多いかな。
永田 ある程度の年齢になったら、別に親とかと一緒に住まなくていいと思いますけどね。いつまでも親子のまんま歳だけとって関係性が変わらないじゃないですか。うちの妹は私なんかと全然違って普通にライフコースを着々と歩んでいる人で、普通に結婚して普通に子供も2人いるんだけど、うちの父親がそれを見て「俺、おじいちゃんなんだ」って急に自覚し始めて。家族の変化って人間関係を進めるっていうこともあるんですよね。
pha それはそれでいいのかもしれない。『生涯未婚時代』の中にも、「子供ができると親も成長する」みたいな話はありましたよね。
永田 でも私、そのストーリー本当に嫌いなんです(笑)。
pha あるとは思うけど、なんか嫌ですね(笑)。
永田 否定はしないし、そういう人がいてもいいんだけど、「そうじゃないと未熟だ」みたいなことを言われると、「そうなの!?」って言いたくなるでしょ。私も結婚研究をしていてよく言われますよ。「永田さんも子供を持ったら気持ちがわかりますよ」とか。
家族のことって、経験至上主義で語られるんですよね。教育もそうかなって思いますけども、「僕らが大学生のときにはみんな授業なんか行かなくって、さんざん外で遊んで最後にテストだけ受けたら単位とか楽勝でとれてたよ」とか。今は全然そんなことなくて、しっかり授業に出ないと駄目なのにね。家族とか教育とかって妙に自分の経験で語ってくる。
pha 誰でも語れちゃいますからね。「自分もやっている」と思って語れるから、語りたくなっちゃうんでしょうかね。ただ、それを押し付けるとか説教するみたいになると駄目ですね。
永田 押し付けにきますよね。押し付けられません?
pha 押し付けられますね。無自覚にマジョリティ的な人が言ってきます。
永田 シェアハウスの中にカップルが住むとか言ったりすると、「一緒に住むんだったら結婚すればいいじゃないですか」とか言われたりするって、しばしば聞くんですよ。
pha 別にしなくてもいいですよね。
永田 なぜ一緒に住むと結婚となるのか全然わからないけど、なんかそう思うみたいです。男子同士でやっているとあんまり言われないのかな? ギークハウスって男の人が多いでしょ?
pha 多いですね。女性もたまに来るけれど、だいたい男ですね。確かに僕も、「シェアハウスで住んでいて他人と一緒にやっていけるぐらいの協調性があるなら結婚もできるでしょう」みたいなことは言われますね。
永田 うざいね~。それとこれとは別だと。
pha それは別ですね。結婚は苦手というか、僕は多分できない。一対一が苦手というのがあるんですよね。一対一だと煮詰まってしんどくなるけど、人がいっぱいいると関係性が分散されるという感じです。
最近、2ちゃんねるを運営していたひろゆきが、たまたま知り合いの知り合いでうちに来たんですけど……。
永田 Twitterに「インターネットが来た」って書いていましたね(笑)。
pha 家でボーッとしていたらいきなりひろゆきが来て、「うぉ、ネットでよく見る顔が突然家に!?」みたいな感じだったんですけど(笑)。シェアハウスについていろいろ聞かれたんですけどね。あの人はパリに住んでいて奥さんがいて、友達とかは少ないわけじゃないけど別に家に来なくて良くて、シェアハウスとか全然理解できないらしくて。家族以外は誰も会わなくていいから外国に住んでいる、みたいな感じがありましたね。僕とかは東京で友達とか遊びに来やすいところで仲間を集めてワイワイしているのがいいなあという感じで全然違うので面白かったんですけど、それは価値観というより好みというか、性格的なものもあるんだなという感じがしますね。
永田 それを自然にできる人と頑張ってもできない人っているんですよね。不特定多数の人とか友達と一緒に一つの空間にいて、普通にリラックスできる人とリラックスできない人っているんですよね。
pha 僕の場合は寮に住んでいるときに他人が雑にいろいろいる空間が好きだというのを自覚したんですけど、寮に住んでいなかったとしても、そういう傾向があったんだろうなぁ。生まれつきの性格なのかなぁ。
永田 私はそれを「なんなんだろう」ってすごく自問自答した時期があったんです。私は長崎出身なんですね。うちが事業をやっているというのもあって、会社の人とかその家族がたくさん集まって来てちょっとしたコミュニティみたいになってて、赤ちゃんもいれば大学生もいるみたいなところでみんなでご飯を食べたりしていた。元々日本って農業国だからそういうことをやっていたはずなんだけど、いつの間にかなくなっちゃっているんだなというのは、結構思ったりします。
pha 確かにそうですね。近代家族の成立によって失われたということですね。
「婚活」「パラサイトシングル」も元の意味からズレていった
永田 ちゃんとすくってくれてありがとうございます(笑)。なんでそんなに社会学が好きなんですか?
pha 結構好きですね(笑)。
永田 大学でやっていた?
pha そんなにやってないですけど、好きでしたね。普通の生き方に違和感を持っていたから、そういう違和感の背景を説明してくれたというのはあったと思います。
永田 一番好きな社会学者は誰ですか?
pha 誰だろう。やっぱり見田宗介にすごく影響を受けましたね。他はそんなに読んでいないんですが。
永田 社会学に関心あるのは、普通の生き方や家族の在り方への違和感をちゃんと説明してくれる感じがあるんですかね?
pha ありますね。僕、家族が元々嫌いだったので(笑)。
永田 わかります。私もそんなに好きじゃないです。
pha そういう息苦しさを説明してくれる枠組みがあるというのが面白くて、心の支えになったというところがあります。自分の感じている社会への違和感はこういう背景から生み出されているんだ、というのを説明してくれて、楽になったのはありますね。
永田 それは私も思うところがあって、専門書も出していないのにいきなり新書で、しかも「時代」についての本を出した理由は、やっぱり家族や働き方に対して疑問に思っている人って、周りに同じような人がいないからモヤッとするわけじゃないですか。専門書だと読者を選んじゃうけども、新書だったらそういう人のところに届けられるよねっていうのが、すごくモチベーションとしてあるんです。追い詰められている人が、「あ、こういうのもあるんだ」と思ってくれやしないかって。
pha たくさんいると思いますよ。
永田 私もphaさんの本を読んで、そう思ったし。
pha そういうのがあるから本を書いているのはありますよね。
永田 phaさんの本を初めて読んだときに、おって思ったんですよ。「研究者でもないのにこういうこと言う人がとうとう出てきた」と。しかも自分の経験としてそういう話をしているから読者に届くじゃないですか。
ただ、「そういうライフスタイルがあるんだ」というのがもっと認知されていいと思うんだけど、まだ時間がかかるのかなとも思います。私は、「結婚しようがしまいがどうでもよくない?」って、20年ぐらい自明中の自明だと思っているんですけどね。
pha 社会学とか学問のところで言われている段階から一般に下りてきて、本を読まない人にも広がっていくのって、20~30年かかるんですかね?
永田 でも「パラサイトシングル」とか「婚活」とかは一気に広がったから、「なんだよ」とか思って。
pha キャッチコピー力なんですかね(笑)。すごいですよね、そういう言葉を作る山田昌弘さんって。
永田 山田昌弘、うちの師匠ですけどね(笑)。
pha でも広まると、やっぱり元々の意図とはちょっとズレてくるというのはありますよね。
永田 優しいね、phaさん。本来は「婚活」もそうだし、特に「パラサイトシングル」はそうで、別に若者いじめしようと思って言ってたんじゃないんですよ、山田先生は。初めは「同じぐらい頑張っている人が、親元に住んでいたら生活に余裕があるのに、一人暮らししていたらいっぱいいっぱい。これって不公平だよね」という話を、彼は言っていた。だけどそれが広まるにつれて、だんだん「若者はなんか甘えていてけしからん!」みたいな話に変わっていっちゃったんです。
pha それを考えると、「自分たちの考えていることはどうせ少数派で多数派は揺るがない」「何かを世間に広めても歪められてしまう」という気分にもなりますね。
永田 だったら流行語とかにならなくても、こうやって地味なトークイベントでも広めていった方が、結局は世の中を変える力になるのかなって気はする。
pha 僕は割ともう、そんなに多数派に訴えかけるというよりも、少数派の仲間に対してずっと言っていこうぐらいの感じになっていますね。「多数派は知らん」「勝手にやってくれ」というか。
永田 それはわかる。「流行語作って世の中席巻しよう」って電通っぽい考え方というか、バブル臭が少ししますよね(笑)。
pha ゆるい流れを作るぐらいの感じでいいと思う。
「他者に会う」機会が家族しかなかった男たち
永田 phaさんってブログ書くときと本に書くときは、使い分けているんですか?
pha 本はやっぱり編集者との相談も入りますしね。ブログは逆に完全に100%趣味であんまり見直しせずに書くという感じにしています。本とか仕事の文章は書いてから何回も直したりはするけれど、その反動でブログは好きなことしか書かない。投げっぱなしで「もう無茶苦茶でもいいや」ぐらいの感じにしているのはあります。
永田 炎上とか怖くないですか?
pha 炎上はそんなに怖くないですね。叩かれてもあんまり気にしない方なので。怖くないですけど、でもあんまり炎上しないですね。
永田 私なんてテーマ的に結構炎上しがち。年上からも嫌な顔をされるし、外に出たら敵だらけですよ。
pha こういう話は自分の人生を元にしてみんな言いたいこと言いますからね。
永田 「甘えだ」とかね。今回炎上するとしたらどういう炎上なのかと、私の中で想定しているのは、おじさんが怒るパターン。あともう一つはいつまでも結婚しない40代ぐらいの子供を持つお母さんが怒るパターン。「うちの子のことを考えたら、こんな話なんて許容できない!」「親としての役割がいつまでも終わらないじゃないの!」みたいな感じで怒られるのかなぁとか思って。
pha 40代の娘がいる世代はあんまりネットをやっていないんじゃないですかね? でもそれで怒るのは、そもそも逆恨みというか筋違いですよね。結婚しない娘が実家に住んでいて仕事はしてなかったりするというのは、もっと別の方向も探しておくべきだったという感じだし、そもそもこの本だって「未婚でいい」と言ってるわけじゃないですからね。結婚に頼らずにそれぞれの生きる道を見つけて多様化していったらいいなという話ですよね。
永田 めっちゃ穏当やん、はっきり言って(笑)。なのに「でも子供が減っているんだから、結婚しないとなると人口減少どうするの」とかよく言われます。「それとこれとは別だし、なんで結婚しないと子供を持てないという前提なのかな?」とか思いますけども。
pha 確かに結婚しないと子供を持ちにくいけど、それは制度がおかしいというか。もっと、働きながら子供を育てられる環境とかがあればいいですよね。
永田 シェアハウス住みの人も、割と言われがちなことかもしれない。「もっと苦労をしよう」「俺が積み重ねてきた人生と違う人生を選んでいるお前らが気に入らない」みたいな。
pha 嫌ですね。歳をとるとそうなっちゃうんですかね。
永田 加齢の効果なのか世代の効果なのか。
pha 加齢でも世代でもなく、なんかうまくいっていないとそうなっちゃうかもしれない。あと、本で「結婚で成熟するわけではない」という話が面白かったです。そもそも企業で働いている人にとって、成熟する機会が家庭ぐらいしかなかったのでは? みたいなことを書かれていましたね。
永田 年功序列や終身雇用で守られていた時代の男性って、歳をとればおのずと偉くなっちゃうわけです。だから本音をぶつけてくるとか自分の意に沿わない前提を突きつけてくる人って、会社には基本いないのかなと。そういう環境に馴染めなかったら、会社を辞めちゃうじゃないですか。あるいは左遷されるとか。だから、「他者に会う」という機会というのが家族の中ぐらいしかない人たちかなと思う。
でも、もっと若い世代は「終身雇用ってなに?」みたいな感じですよ。私、一度も正規雇用されたことないんです。なので、周りは他者だらけですよね。自分とは違う考えで生きている人たちと接するのが当たり前だから、他者と出会うようなきっかけなんか家族じゃなくてもたくさんある。そのような立場から見てみれば、「自分と全然違う生き物に出会うきっかけが家族だって、どれだけ温室なんだ」って思いますよ(笑)。でも、それをもって内田樹さんは成熟だというわけです。
pha もうその世代は仕方ない(笑)。
永田 それでは時間が来たみたいで。この『生涯未婚時代』という本は割といろんなところに引っかかるように書いていますし、もし誰かに結婚のことでマウントされたら、ここに書いてあることで強気に反論してみたり、そんな感じで使ってもらえるといいかなと思います(笑)。今日はありがとうございました。
(おわり)
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