安倍首相が「自分の絶賛本」「自筆本」を爆買いしていた

領収書公開!
政治資金を使ってベストセラーを演出
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マイボトルで常温に近い水を飲む。甘利明氏の大臣辞任、宮崎謙介氏の議員辞職、丸川珠代環境相の失言など不祥事が続くが、安倍氏自身の政治資金にも問題が
〈政治家に限らない。今の日本でこれほど精神的な気品を感じさせる人物に出会うことは、まれである〉
〈安倍晋三こそが、「俳優」ではなく、本当に戦うべき課題をしっかりと見据え、(中略)信じ難い突破力で猪突猛進した「戦うリーダー」だったのである〉(『約束の日 安倍晋三試論』より)
 このような表現で自らを絶賛し続ける本を読んで、安倍晋三首相(61)は一人、悦に入っていたのだろうか――。
 本誌は総務省支出情報開示室に情報公開請求して、安倍氏の資金管理団体「晋和会」の政治資金収支報告書の領収書を入手した。それによると晋和会は、安倍氏自身の著書や知人の書いた本を大量に購入していることが判明。’12年9〜11月には文藝評論家・小川榮太郎氏が書いた、冒頭の『約束の日』(幻冬舎)を2380冊も購入していた。小川氏は’12年9月に発足した「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」メンバーで、今年2月13日には「放送法遵守を求める視聴者の会」事務局長として読売新聞に意見広告を出している。
●’12年9月4日 リブロ池袋本店200冊
●’12年10月16日 丸善丸の内本店900冊
●’12年11月9日 紀伊國屋書店900冊
●’12年11月9日 文教堂書店200冊
●’12年11月17日 リブロ池袋本店180冊
 他にも同時期に大手書店のべ8店で書名の明らかでない149万6250円分の書籍を購入。この額は『約束の日』定価(1575円)のちょうど950倍、つまり950冊分だ。

なぜ5000冊も買うのか
 なぜ複数の書店に分けて買ったのか。
 答えは新聞広告にあった。同年11月末の新聞広告において、各書店の週間ベストセラーランキングで1位を獲得したと大々的に喧伝されていた。
 当時は民主党政権下であり、安倍氏が自民党総裁に返り咲いた時期だった。
「安倍政権誕生に期待する本が売れているように見せかけ、注目を集めようとしたことは明らかです。それにしても、冊数が異常です。政治家が意図的に世間の印象を操作するために書籍を買うのは問題でしょう」(出版論を研究する植田康夫・上智大学名誉教授)
 同書は新聞広告が呼び水となり、発行8万部のベストセラーとなった。
 そして’12年12月の総選挙で自民党が圧勝、再び安倍政権が誕生した。
 さらに晋和会は『約束の日』の版元である幻冬舎に、’12年11〜12月に3回に分け、計256万2054円を支払っている。『約束の日』の定価で割ると、1626冊あまり。安倍首相はこの歯の浮くような礼賛本をなんと合計5000冊近くも買ったことになる。一体何を考えているのか。
 総理就任後の’14年4月には自身の新刊『日本の決意』を版元の新潮社から1000冊購入した。これも政治資金だ。
「政治資金で書籍を買う場合は、政策の調査研究のために必要な関連書籍に限るべきです。自身の本、あるいは自身の意図を汲んだ本を政治資金で買う必要性はまったくない。もし選挙区の有権者に無償で配ると公選法違反になります」(神戸学院大学法学部教授で政治資金オンブズマン共同代表の上脇博之氏)
『約束の日』の著者、小川氏はこう語る。
「大量購入の話は知りませんでした。購入者の状況や意図については、書き手ですから、私には分かりません」
 本誌は安倍氏の事務所に書籍の購入意図について質問状を送ったが、期限までに回答はなかった。
 大手新聞社・テレビ局の幹部と会合を重ね、報道に「公平性」を求めて、萎縮させる。その一方で、政治資金を使ってベストセラーを作り上げる。安倍氏のメディア操作は異様としか言いようがない。
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安倍氏自身の近著『日本の決意』を購入した領収書(左上)と評論家が自身を絶賛した『約束の日』の領収書(上・左下)。驚愕するしかない金額と冊数である
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安倍首相の資金管理団体が購入していた小川榮太郎氏の著書と自身の近著。政治資金で爆買いの必要はない
PHOTO:鬼怒川 毅