「自治体に騙された…」
荒稼ぎする都内某区の後見センター

 都内でも同様のケースが起きている。認知症の兄のことで地域包括支援センターに相談に行った70代の妹に対し、ある区内の地域包括支援センター男性職員は「後見人をつけるしかない」「いつもそうやっている」「20件以上の実績がある」と断言。ロクな説明もないまま後見人をつける書類にサインをするよう求められ、妹は家庭裁判所に資料を提出した。

「その後、選任された司法書士に家を売られそうになり、その対策として各方面に相談したというからお気の毒です。これについて地域包括支援センターの男性職員はだんまりを決め込んでいます。介護に加え、悪質な司法書士後見というお荷物を抱えてしまった妹さんは、区を相手に訴訟も辞さない覚悟のようです」

 各地域にある「社協」こと社会福祉協議会の後見に関する課題も山積している。被後見人の財産を横領した宮城県の某社協を筆頭に、各地の社協で係争まがいの案件が多発している。

「後見は福祉の知識だけでは対応することが難しい。経済や金融、不動産の知識がないと、簡単に騙されてしまいます。本質的に後見は社会福祉協議会に馴染まないんです。実際、都内某区社協の後見センターは、区の看板と予算を背景に億の売り上げを叩き出していますが、後見の実態を見ると、お抱え不動産業者を経由して被後見人の家を売却し、お抱え老人ホームに被後見人を措置のように入所させるパターンが多いようです。中には後見人が親をどこかへ連れていってしまい、死に目に会えなかったという家族もいました。これでは権利擁護どころか権利侵害です。心ある中堅職員は自暴自棄になり転職を考えているようです」

 それでも後見の実績を増やそうと、家族に内緒で、家裁に後見を申請する自治体や社協も増えているようで、「自治体(社協)にやられた」と宮内さんに相談してくる事例は増え続けている。

 貯金や不動産があっても、認知症になり、悪質な後見人の食い物にされる可能性があるわけだ。そんな後見制度の利用を促進する「後見制度利用促進法」が議員立法で成立し、昨年5月から施行されている。そもそもこの制度は、司法書士会の後見集団であるリーガルサポートが主導して、民主党政権時代に永田町を練り歩き、数年越しで成立させた法律である。

「当初案は、『行政は後見に予算をつけろ。その予算は弁護士、司法書士、社会福祉士で独立して使う』というものでした。供給者側のお仕着せ法はよくないということで、後見制度の立法を担当した小池信行先生と代案を提唱して回り、ようやく後見される人の視点、後見人と取引する金融機関等の視点、後見人の不正防止の視点などが盛り込まれて施行されました」

 後見制度利用促進法により、後見人・被後見人を増やそうというキャンペーンが行政主導で始まったわけだが、介護保険や医療保険と違い、後見費用は、被後見人の全額自己負担であることを忘れてはいけない。高齢者の場合で数百万円、障害者であれば数千万円もの費用を後見人に支払うことになる。家族内で任意後見契約を結んだとしても、任意後見監督人費用は結局、数百万円にのぼる。

 一度、後見が始まれば、死亡するまで後見人が付き続けることになる。宮内氏は「それほどの費用をかけて後見人をつける必要があるのか、他人が土足で家計に入ってきてもよいのか、よく考えてから後見制度を利用してほしい」と語っている。