最後に、パワハラがマネジメントスキルの欠如によって起きるものならば、議員のマネジメントも含めた評価制度を確立するべきだ。多くの場合、選挙の結果は候補者個人の資質とは関係ない。有権者は議員の所属している政党名や経歴程度しか知ることはできないのだから、それを有権者のせいにされても困る。議員個人に対する評価制度は皆無と言っても過言ではない状況だ。その議員個人の評価をできる人物は、日々業務を通じて一緒に働いている「秘書」かもしれない。360度評価として、部下からの評価も行う企業も多いだろう。

 議員会館の地下にある議員課へ政策秘書の資格証書を持参すると、政策秘書のいない議員リストをもらうことができる。筆者も何度か実際にリストを見たことがあるが、いつも政策秘書がいない常連議員が何人かいる。豊田事務所の元秘書によれば、公設秘書がコロコロ変わる事務所はパワハラが起きている可能性が高いという。

 今回の事件は、秘書がICレコーダーで豊田議員の罵声を録音していたことで発覚した。たしかに、ICレコーダーは自分の身を守る武器になる。全国のサラリーマンもICレコーダーを常備することでパワハラ上司に一矢報いることができるかもしれない。ただし、元秘書によれば、録音しようとしても、疲れ切るとそれすらもできない状況になるという。何より刺す方にも覚悟がいる。刺した方は「二度と業界に戻れないかも」と不安がよぎると躊躇してしまう。

 だが、「刺す」まで行く前に秘書の意見を吸い上げ、マネジメントスキルの評価と向上につなげる仕組みができれば、こんな不幸を繰り返さなくていいし、議員生命を絶たれる議員もいなくなるだろう。

 豊田議員の事件が一過性のスキャンダルではなく、日本社会にはびこるパワハラ文化を一掃するきっかけになれば、豊田議員はむしろ大きな価値を日本に与えたことになろう。自民党は政権与党として、そこまでやって初めて国民に対する誠意を示したと言えるのではないか。

 そして、豊田議員には政治家らしく腹を切っていただき、「パワハラは割に合わない」という強烈なメッセージを「このハゲ-!」並みのインパクトで日本中に向けて発信してもらいたい。