実は、国会議員の公設秘書の給料はかなり高い。特に政策秘書で50歳を超えていれば、間違いなく年収1000万円を超えている。政策秘書の資格を持つ者の中には、登録だけして事務所に現れず、高額な給料をもらい逃げする輩までいたりもする。国会議員の公設秘書は案外「美味しい」職業なのだ。だからこそ、ブラック事務所だとわかっていても、他に雇ってくれる事務所がなければ飛び込んでみようという心理が働いてしまう。

 一方、雇い主側の国会議員は日々極めて強いストレスを受けている。自分が正しいと信じることを実現するために議員になっても、政治の世界は「出る杭は打つ」風潮が根強い。だからこそ、そのストレスのはけ口を求めるのかもしれない。秘書は本来仲間だが、議員と秘書の間で能力や政治への想いや経歴があまりにも違いすぎると、一つ間違えば、はけ口の矛先が秘書に向いてしまうことになる。

 秘書業界では特に「役人出身」の議員は評判が悪いケースが多い。パワハラが報道された議員は自民党だけではない。例えば、同じく役所出身の民進党の後藤雄一衆議院議員も、防衛省の女性職員に威圧的な言動をしたとして国会で陳謝している。役人は仕事柄、議員にペコペコする機会が多いため、その頭を下げてきた対象に自分がなったことで、尊大になってしまいやすいのかもしれない。

 この強烈なストレス環境下で平常心を保っていられるか、というストレス耐性こそがリーダーとしての「器」とも言えよう。

議員生命を絶たれた豊田議員
パワハラは割に合わないと心得よ

 最後に今回の事件から得られた教訓をまとめたい。

 まず何よりも、パワハラは「割に合わない」ということを、もっと社会全体が真摯に理解しなければならない。豊田議員はパワハラで実質的に議員生命を絶たれた。どんなに政策や地元回りに励んでいても、パワハラ一発で、仕事人生にピリオドを打たれてしまうのである。「豊田議員は昔はよい面もある子だった」「秘書にも非がある」などという甘い見解はまったく通じない。人生を懸けて得てきたキャリアをこれですべて失うとは、なんともったいないことか。

 二つ目が、安易な一般化でわかった気になってはいけないということ。各種報道を見ると、インテリ評論家はすぐに安易な一般化やラベリングをして解説し、わかった気になる傾向がある。これだから女性議員は…役人出身は…、高学歴者は…、「魔の2回生議員」は…といった安易な一般化は、同じグループに属する人にとっては迷惑千万だ。パワハラの原因は安倍政権のおごりでも何でもない。この事件は豊田議員個人が起こした事件であるから、やはり本人がケジメをつけるべきだし、本人が釈明を行いその実態を明らかにすべきだろう。このまま放置すれば、豊田議員が日本社会に与える悪影響は計り知れなくなる。