スキャンダルを受けて、自民党の細田博之総務会長は記者会見で「高速道路の逆走が原因」と説明したそうだ。しかし、テープの声のどこをどう聞いてもそんな風には聞こえず、まったく納得感がない。この点を元秘書に尋ねてみたところ、豊田議員は道順に強いこだわりがあり、カーナビで示される道順ではなく独自のルートを後部座席から指示し、間違うと激怒することが頻繁にあったそうだ。
ここからはあくまでも元秘書の想像だが、「逆走」とは時折高齢者が逮捕されているような事件ではなく、高速を降りる出口を間違えて行き過ぎてしまったため、少し「戻り道」が発生したことに対して腹を立てたのではないか、とのことだった。この説明だと合点がいく。細田総務会長は本当に「高速道路の逆走が原因」という説明で納得して会見を行ったのだろうか。まったく誠実さが感じられない対応と言わざるを得ない。
今回のスキャンダルは、日本全国で子どもまでが真似をするほど社会に大きな影響を与えてしまった。
キラキラのエリート人生を歩み、出世街道を駆け上ってきた国会議員が、なぜ自身の感情をこれほどまでにコントロールできないのか。
この問題を豊田議員だけを吊るし上げ、単なる一過性のスキャンダルとして幕引きしてしまっていいはずはない。日本の抱える社会問題でもあるパワハラを解決するためにも、今回の事件から得られる教訓について考察してみたい。
パワハラはなぜ起きるのか
マネジメントスキルの欠如
パワハラは、なにも政界特有のものではない。
この記事の読者の方々も、周囲でパワハラの現場を見ている人や、当事者もおられるかもしれない。筆者自身、組織に勤めていた時代にパワハラに遭った記憶がないとは言えない。
パワハラは大きく二つに分類されよう。
まず一つ目は、指導などの大義名分の下、「よいこと」だと思ってやっているケースだ。もちろん社会的な常識の範囲内での叱責は、パワハラには当たらないが、特定の個人に対する人格攻撃になるとハラスメントとなる。これは人格の問題というより、マネジメントスキル不足である。