DARPAのプロジェクトマネージャー、ギル・プラット博士 Photo by Kenji Momota

 それから約1年半。2015年6月6日、決勝戦2日目の午前10時半、ロボティティクスチャレンジの企画・運営の総責任者、DARPAのプロジェクトマネージャーであるギル・プラット博士にDARPAの広報責任者の立ち合いの下、インタビューを行った。プラット博士は元々、MITのロボット研究者で、新設大学の立ち上げに約2年間携わった後、DARPAに転じた。

 最初に、日本チームが苦戦している現状についての感想を聞いた。

「ファイナルの参加チームは大きく2つのグループに分かれている。2013年のトライアルを体験したチーム、そして日本のようにトライアルの後にファイナル出場を決めたチームだ。また、アメリカチームのようにボストンダイナミクス社が開発した『アトラス』という汎用的なハードウエアを使うチームと、日本のようにハードウエアをゼロから作るチームだ。日本はその両方の面で不利であることは十分に承知している」(プラット博士)

ボストンダイナミクス社が設計し製造したアトラス。背中のボックスはバッテリー。頭部にカーネギーロボティクス社のレーザーレーダー(ライダー)とステレオカメラ Photo by Kenji Momota

 今回の参加チームは、アメリカが12、日本が5、韓国が3、ドイツが2、イタリアと香港がそれぞれ1で、合計24チーム。だが決勝を前に日本の『NEDO-Hydra』が棄権。またアメリカの参加チームの半数にあたる6チームが『アトラス』を使用している。

 この『アトラス』の利活用について聞いた。

「『アトラス』はDARPAがボストンダイナミクス社に製作を依頼した。合計8機ある。トライアルの上位8チームに対する特典として、ファイナルまでチームに無償で貸与する契約を6チームそれぞれと結んでいる。残り2機は、1機がスペアとして、もう1機は香港チームが購入した。ファイナルの後、『アトラス』をどう活用するかはまだ決めていない」(プラット博士)

 また、汎用機という観点では、優勝したチームKAISTの総責任者、Jun Ho Oh博士が設計した『HUBO』も汎用型として各方面に供給され、今回の決勝戦ではKAISTの他、ラスベガス大学チームが使用した。チームKAISTはトライアルにも参加しており、さらにハードウエアの開発期間が長いことが、日本チームとの大きな差に結び付いたと言える。

 また、トライアルでトップだった『SCHAFT(シャフト)』、さらにはボストンダイナミクスまでもが、トライアルの直前にグーグルによって買収された。その影響で『SCHAFT』はファイナルに不出場だった。DARPAとグーグルの関係についても、プラット博士に質問したのだが、その内容についてはまた別の機会に紹介する。本稿は“競技”について焦点を絞りたい。

>>後編『米災害ロボット競技で日本が韓国に負けたワケ(下)』に続きます。

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