昨今では、掲示板、2ちゃんねる(2ch)、ガルちゃん(ガールズチャンネル)、ツイッター、フェイスブック、ブログなど自分で言いたいことを発言できる社会になりました。
しかしながら、書き込みによるトラブルは後を絶ちません。
今回のテーマは『掲示板の書き込み者の特定』について書いてみたいと思います。
ちなみにこの記事は、ど素人が書いているわけではなく、私はインターネットの設計側の仕事をしていました。だいたい10年くらい。プロバイダにも4年いました。なのでWelqみたいな素人がまとめているわけではないです。
それでは、出来るだけ読者の皆さまが分かりやすいように、説明していきたいと思います。
目次
大前提その1:表現の自由のことはご存じ?
2chや掲示板などでトラブルに巻き込まれ、相手を特定したいと考えている方にまずお伝えしておきたいことがあります。
私達の発言は『表現の自由』という憲法で守られているのはご存知でしょうか。
日本国憲法第21条:表現の自由を保障する
そしてもちろん、ネット上の発言も表現の自由があります。
例えば・・・
とある歯医者が居ました。彼はまじめに仕事をしています。ある日、2ちゃんねるに「あの歯医者はヤブ医者だった」と書かれてしまい、数日後から患者が激減し収入が減ってしまいました。
というトラブルがあったとしましょう。
この場合、医者から見れば『名誉棄損』になりますが、2ちゃんねるに書いた方からすれば『表現の自由』になります。
この医者が書き込んだ方に損害賠償請求を行いたくても、裁判所に『これは表現の自由ですから請求できませんよ』と一蹴される場合もあるということを大前提として覚えておいてください。
大前提その2:正当な方法で特定しましょう
表現の自由について理解した方は、もう一つ確認しておいてほしいことがあります。
お金を払って調査するという噂を聞いたことがありますが、グレーな方法もしくは違法なことをしている可能性もあります。
またSNS情報から芋づる式に辿っていき相手を特定できることもあるでしょう。ツイッターからFacebook⇒出身学校⇒友人情報という感じですかね。
でもそれは特定ではなく推測でしかありません。
だってネット上の書き込みや出身学校なんて嘘かもしれないしょ。
もし、あなたがネット上の書き込みで100%の確実な証拠が欲しいなら、以下の2つが絶対に必要となります。
(1)掲示板に書き込んだ時間とそのIPアドレスのログ
(2)プロバイダーのIPアドレスのログ
※ログとはインターネット通信の際に利用する機器に保存されている履歴情報です。
逆にもし上記のような証拠を持たずに相手を特定しても、それがもし間違いだったら名誉棄損で訴えられるかもしれません。相手に執拗に迫ったり、慰謝料を請求したり脅したりすることは、非常に危険だと思います。
では、どのようにして確実な証拠を手に入れるのか、詳しく説明していきます。ネットを利用する上で、無駄な勉強にはならないと思いますので、ぜひ読んでみてください。
IPアドレスから個人情報を特定したい方がまず知っておくべきこと。
IPアドレスから個人情報を特定する方法についてですが、まずはプロバイダやインターネットの仕組みについて知る必要があります。
その辺について超簡単に順番に説明していきますね。
プロバイダーと個人情報
以下のような会話、ネット上で見たことある方も多いのではないでしょうか?
お前腹立つな!
IPアドレスから探偵使ってお前を探してやる
そんなことできるのか!!
IPアドレスが分かってるんだから、お前の名前や住所なんて簡単に分かるぜ、待ってろよ
え?まじで?IPアドレスで住所分かるの?
いや、そもそもIPアドレスってなんだ?
さてさて・・・。
まず、理解してほしいのは、ネット上に書き込んだ人物の個人情報を持っているのは「プロバイダー」なんです。だから一般人は知る余地なし。これは断言できます。
※プロバイダーについて分からない方は以下を読んでみて。
電車でたとえると、線路を作っているのはNTTだとすれば、切符を作っているのはプロバイダーってところかな。どちらが欠けていてもどこにも行けません。
上記の例で言うと、『切符』がネット上で言う『IPアドレス』であり、この『IPアドレス』がないとインターネットには繋がりません。
そしてこの『IPアドレス』を契約してくれたお客さんに、「はいどおぞ」って渡しているのがプロバイダーなわけ。
パソコン使用なら、So-netとか、BIGLOBE、@nifty、OCNだし、スマホなら、docomoとか、auとか、ソフトバンク、格安スマホのOCNmobileONE、Yahooモバイル、楽天モバイル・・・などなど。
私たちは、上記にあげたプロバイダに契約してIPアドレスを貰ってネットをしているわけです。
つまりIPアドレスから個人情報を特定できるのはプロバイダーだけです。そしてプロバイダーは個人情報を厳密に守る必要がありますから、簡単に「ホイホイっ」とは教えてくれません。
では、ここまでのまとめ。
一般人が技術を駆使しても、IPアドレスから個人情報を特定することはできません。
※ハッキングするとかそういう犯罪を除いての話ですよ。
理解できたら次に読み進んでください。
例:2ちゃんねるの場合
2ちゃんねるに何かを書き込むと、書き込みの履歴が残ります。専門的な言い方をすると、2ちゃんねるのサーバーにログが残ります。
履歴には、『7月14日15時30分ーIPアドレス―書き込み内容』という感じで時間とIPアドレスと書き込んだ文章が残っていると思います。
しかしながら、2ちゃんねる利用者も管理者も、書き込んだ人の住所や名前までは絶対に分かりません。先ほど記載した通り、IPアドレスから住所と名前を導き出せるのは『プロバイダ』だけだからです。
ではどうやってIPアドレスから個人情報を特定するのか、その方法を以下に書きます。
問題のある書き込みの場合は、IPアドレスから個人情報を特定できる場合がある
問題のある書き込みがされた場合、IPアドレスから個人情報が特定できます。
この『問題のある書き込み』が曲者で、どこからどこまでが問題なのか線引きが難しく、おそらく永遠のテーマなんです。
説明が難しいのですが、以下簡単に書きます。
問題のある書き込みには3種類あります。
1つ目は警察が絡むような『犯罪予告、自殺予告、ストーカー』の書き込みです。
私がプロバイダーで仕事をしていたときは、サイバー警察から「犯罪予告がありました。御社管理のIPアドレスから書き込まれていますので、書き込んだ人の個人情報を開示してください」という請求がよくありました。
このような警察からの依頼に対しては、IPアドレスの履歴を確認して、個人情報をホイホイ渡していましたね。
そして2つ目の問題のある書き込みは、著作権侵害がらみのトラブルです。
最近私もブログの写真をパクられたので情報開示して損害賠償請求をしたのでその時のことを以下に書いてます。著作権侵害の場合、侵害が明らかなので他とは別で扱います。
そして3つ目の問題のある書き込みは、名誉棄損などの民事トラブル系の書き込みです。
例えば、「ヤブ医者だ」と掲示板に書き込まれたとか。「○○さんは整形だ」とSNSに書き込まれたとか。
このような個人間トラブル系の書き込みで被害を受けた場合は、以下の手順で相手を特定してください。
手順Ⅰ:証拠を残す
書き込み内容の証拠を残す為に、該当ページをPDF化しておく、魚拓を取っておきましょう。
魚拓の取り方は、https://megalodon.jp/を開いて、『魚拓をURLで検索・取得する』の箇所に該当ページのURLをコピペして『検索と確認』ボタンをクリックすると、『このまま魚拓を取る』というページが開くので『規約に同意し取得』ボタンをクリックしてください。魚拓URLが表示されると思います。これをメモ帳などに保管しておきましょう。
WEBページのPDF化のやり方は、ブラウザで該当ページを表示し印刷ボタンを押す⇒送信先をPDFにする⇒保存場所をデスクトップとかにする⇒印刷開始すればデスクトップにサイトのPDFが保存されます。
手順Ⅱ:IPアドレスを入手
まずは、IPアドレスを入手する必要があります。
問題の書き込みがあったサイトの『問い合わせフォーム』から『名誉棄損の内容を書き込んだ相手を訴えたいので、IPアドレスを教えてください』と連絡を行いましょう。
掲示板側が教えてくれたら、次に進めますが、教えてくれない場合もあります。その時は、弁護士を雇って正式な方法を取りましょう。
※なお、掲示板に削除の申し出もできますから、合せてお願いしてみましょう。
※掲示板によってはIPアドレスを元々表示しているサイトもあります。
手順Ⅲ:プロバイダーを調査
上記の方法で、IPアドレスが分かったら『ドメイン/IPアドレスサーチ』を使ってプロバイダーを特定します。
検索ワードにIPアドレスを入力し『管理情報紹介』をクリックすると、以下のような画面が表示されます。
『b. [Network Name]』の箇所にプロバイダー名が記載されていますので、これが相手のIPアドレスを管理しているプロバイダーということになります。
手順Ⅳ:発信者情報開示請求を行う
プロバイダーが判明したら、プロバイダに問題の書き込みの内容や証拠、IPアドレスその他必要な内容をメールで連絡し、発信者情報開示請求の方法を教えてもらってください。
やり方はプロバイダがメールで教えてくれると思いますが、http://www.isplaw.jp/の発信者情報開示関係書式(PDF)を参考に、wordもしくはgoogleドキュメント等を使用して申請書を記載します。
また、最初に証拠として保管したページを印刷したりする作業が必要になってきます。
あと、印鑑証明が必要だったりします。
豆知識
ちなみに完全に余談の専門ネタですが・・・プロバイダーは、『IPアドレスをいつ、だれに渡したか?』という履歴を残しています。
※履歴はいつまでも残しているわけではなく3~6か月という期限があるので、あまりに古い話だと残ってない場合もありますから、「とりあえず履歴だけ残しておいて!」とお願いしてから話を進めるのが賢いやり方ですね。
まず、私たちの家にあるインターネットのモデムにはMACアドレスという番号があるのですが、このMACアドレスを使って個人を特定しています。
どういうことかと言うと・・・
プロバイダーが契約者に「IPアドレスどうぞ~使ってね~」って渡す時、『DHCPサーバー』というものが自動的にやってくれるのですが、この中に以下の情報が履歴として残ります。
■IPアドレス—■モデムのMACアドレス—■IPを付与した時間(リース時間)
そして企業がユーザー情報を管理しているCRMという物の中に以下の情報が入っています。
■ユーザー情報—■レンタルしたモデムのMAC
このDHCPと、CRMを以下のようにリンクさせます。
上記図のような形で、IPアドレス=ユーザー情報が特定できるってわけ。
手順Ⅴ:プロバイダーからの返事を待つ
さて・・・ここまで読んで頂いて大変申し訳ないですが、簡単にプロバイダーは個人情報を教えてくれません。
というわけで、ここまでやってもプロバイダーが個人情報を教えてくれなかったら、弁護士または警察に相談してください。
民事トラブルであれば弁護士の名前を使えば、プロバイダーは教えてくれると思います。
ただし一つ注意点があります・・・弁護士などに相談している間に、プロバイダーのIPアドレスの履歴が消えてしまうかもしれません。まずは履歴の保管だけでもプロバイダーにお願いしておきましょう。
まとめ:IPアドレスから個人情報は特定できるか?
問題のある書き込みがあった場合、個人情報を特定することは可能ですが、弁護士を雇う必要があります。
IPアドレスから地域や場所とかを駆使してある程度絞り込むことはできると言う方もいますが「名前、住所、電話番号」を「ばちっ」と特定させるのは無理ですからね。
ただその書き込み内容が、あまりにも悪質で身の危険があるのであれば、すぐに警察に相談してください。その方が早く進むかもしれません。
例えば以下のニュースは良い例です。
元交際相手を誹謗中傷する内容をインターネットに書き込むなどしたとして、広島中央署は16日、名誉毀損とストーカー規制法違反の疑いで、広島市東区戸坂長尾台の女子大学院生(23)を逮捕した。容疑を認めている。
元交際相手の20代の男子大学生に、インターネットの掲示板サイトに誹謗中傷する内容を掲載して名誉を毀損し、ストーカー行為をしたとしている。
誹謗中傷を受けて、警察に相談した結果、書き込んだ相手が逮捕されていますね。
自分でいろいろやるのも大事ですが、ヤバイなあと思ったなら警察に相談してくださいね。
どこのサイトに書き込みしたか覚えてないのでこまってます。ipもとにけしたいです。7426993626399