【ニューヨーク=大塚節雄、高橋里奈】トランプ米政権による難民や「テロ懸念国」を対象にした入国制限措置に抗議するデモが全米各地で拡大している。米国入国の一時拒否や米国便の搭乗を拒否された人は計280人強に上り、デモは全米30都市以上に広がっている。トランプ大統領は29日「イスラム教徒の入国禁止措置ではない。国の安全を保つためだ」との声明を出し、入国審査条件の厳格化に向け制限措置を続ける意向を示した。
米メディアによると、29日夕(日本時間30日朝)時点でニューヨークのケネディ国際空港では数千人が「彼らを入国させろ」と抗議。デモはワシントンやシカゴ、サンフランシスコなど30都市以上の空港や市内でも展開され、ロイター通信は数万人が参加したと報じた。
ホワイトハウスによると、29日午前の時点で、空港に到着して入国を一時拒否された109人のうち、20人以上が拘束されたままになっているという。
各地の連邦裁判所で措置の効力を一部停止する判断が相次ぐ。29日までにニューヨーク地裁などで拘束者の強制送還を認めない決定を下した。ニューヨークやカリフォルニアなど15の州と首都ワシントン特別区の司法長官は29日、共同で大統領令が違憲だと非難する声明を発表。大統領令の無効を目指し、訴訟も辞さない構えで、司法が最終的に無効の判断を下せば、大統領令は取り消される。
国土安全保障省は29日、強制送還を認めない司法判断に従う意向を示しつつ、大統領令の執行は継続する方針を強調した。ケリー国土安保長官は声明で大統領令の適用に当たり「永住権を持つ人たちの入国は国益だと考える」と公表した。
トランプ氏は、デモなどの混乱は「メディアが誤って伝えている」ためだとして、メディア批判を展開。あくまで今回の措置が正当だとの姿勢を崩していない。
今回の大統領令は入国審査を厳格化するまでシリア難民の受け入れを停止し、ほかの国の難民も120日間止める措置。イラク、イランなど7カ国の一般市民も90日間入国させない。同氏は「米国は誇るべき移民国家」であり、「抑圧から逃れる人々への深い思いやりを見せ続けるだろう」と難民などの受け入れは続けると訴えた。
一方、米CNNテレビは29日、ホワイトハウスが外国人訪問者に対し、ウェブサイトやソーシャルメディアの履歴、携帯電話の通話記録の開示を求める案を議論していると報じた。拒否した場合、入国を拒否する可能性があるという。