民間出身初の女性校長になった、剛腕マザー

リクルートのトップ営業、会社社長、そしてどん底も経験

また、平川さんは、アメリカやフィンランドなど世界中の学校を見てきた経験から、今、日本の中学教育に足りない要素は「生徒に考えさせる体験」だと考える。

「詰め込み型の正解主義だけでは、自分で考える力は育ちません。ですから、私は体験教育を重視しています」

たとえば「食物連鎖と環境問題」。体験的に学ばせるために、樹木医の資格を持った企業の方に来てもらい、共に校庭をフィールドトリップしてもらう。「2050年には全総物物種の4分の1が絶滅するかもしれない、私たちにできることは何だろう?」などと考えるのだという。

「メンデルの法則」を習う中学3年生には、製薬会社のゲノム研究者を招聘し、最新の遺伝子研究について講義してもらい、終了後は、それとは切り離せない生命倫理について考察する。

先生たちからのリクエストがあれば、平川さん自身がアポ入れに四苦八苦しつつ、サッカー日本代表の川島永嗣選手を学校に呼んだりもする。中学3年生8人に、来日した「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル教授の公開授業を受けさせたりした。

「何にでも影響を受けやすい中学生にとって、多種多様な職業の人と触れ合う機会は大切だと思います。輝いている大人のオーラを感じてほしいのです」

一方、「答えは現場にしかない」という信念のもと、「毎日1回、突撃授業取材」も欠かさない。

「抜き打ちで押しかけて、授業を生徒と一緒に受けるのです。すると、生徒の人間関係が見えてきたり、誰々が先生の話を聞かずに他のことをやっているな、あるいはこの先生の授業のここはわかりづらいな、といったことがよくわかります」

授業終了後は、すぐさま先生に、感想や気づいたことをフィードバックする。

「先生たちはよく頑張っているので、ほとんどの場合は褒めます。でも、こうしたほうがいいと気づいたことがあったら、『先生、あの返しは絶妙でしたね』など、まず、いいところを指摘したうえで、『でも、授業中に他のことをしていた子がいたの、気づかれました? もしかしたら、できる子には難問集を与えて解かせ、先生はスローな子に集中して、教えてあげたほうがいいかもしれませんね』なんてアドバイスをするようにしています」

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