西日本新聞社

大気汚染抑制に中国躍起 「赤色」警報、「スモッグ費」徴収、違法企業名公表

2015年12月19日 02時04分
「赤色」警報が発令された北京で、19日から22日の車両規制を知らせる電光掲示板=18日(共同)

「赤色」警報が発令された北京で、19日から22日の車両規制を知らせる電光掲示板=18日(共同)

 【北京・相本康一】中国当局が、深刻化する大気汚染への対応策を次々と打ち出している。企業から「スモッグ費」徴収を決めた地方政府も。北京市では18日、重度の汚染が72時間以上続くとして、2回目となる最も深刻な「赤色」警報が発令された。エネルギー消費を石炭に頼る構造改革は時間がかかるだけに、汚染緩和は「強風頼み」。少しでも市民の不満を抑えようとアピールに躍起だ。

 「環境対策に関しては必要な措置を取っている。まだ挑戦に直面しているが、この道を揺るぎなく歩む」

 中国外務省の洪磊副報道局長は18日の記者会見で、政府の「努力」を強調した。本来は所管外だが、メディアや市民の関心は高い。それに呼応するように、新しい施策が目立っている。

 中国紙、京華時報によると、上海市は光化学スモッグの原因となる揮発性有機化合物の排出費用を企業から徴収する制度を試行すると発表した。対象は石油化学、造船、印刷など12業界。排出量1キロ当たり10元を徴収し、来年7月以降、額を引き上げていくという。

 北京市は2017年までに排ガス規制を「世界で最も厳格な基準」に強化する方針を公表。黒竜江省が、質の悪い石炭を使用していた暖房供給会社など47組織の名称を公表したように、違反企業を名指しで批判する地方政府も目立つ。

   ■    ■

 背景には、改善が進まないことへの焦りがあるとみられる。

 中国環境保護省によると、北京や天津など14都市では11月、大気汚染の数値が基準内に収まった日数は半分にも満たなかった。北京市の微小粒子状物質「PM2・5」の月平均濃度は、大気1立方メートル当たり118マイクログラムと、昨年同期より4割近く悪化。中国北部の汚染物質が流れ込み、上海などでも悪化している。

 河北省など華北地域では、エネルギー消費の9割を石炭が占めており、「脱石炭」が急務。地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」によって、エネルギー源転換は中国の「国際公約」となったが、無論、すぐには結果は出ない。

 国土が広いだけに地域によって事情が異なり、重化学産業のインフラ不整備や排ガスの増加、建設ラッシュによる土ぼこりなど、汚染原因が多岐にわたる点も対応を難しくしている。

   ■    ■

 遼寧省は、国有企業301社に汚染物質の排出データを直接収集できる監視設備を設置した。企業任せにできない現実を示しており、長く成長至上主義で来たつけが噴出した形だ。一方、急激な企業の負担増や工場閉鎖はさらなる経済減速を招きかねず、政府にとってジレンマとなっている。

 北京市で今月7日、初めて「赤色」警報が出た際、市内の大手電器店では空気清浄器が1日1万台近く売れたという。呼吸器内科を受診する人が増えていると一部で報じられている。2人の子を持つ北京市の30代会社員は「もう逃げ場がないです」とぼやいた。

 「環境汚染は民心の痛みである」。李克強首相は3月の全国人民代表大会(全人代)でそう述べたが、「痛み」解消はまだ遠い。

=2015/12/19付 西日本新聞朝刊=

 21日、中国広東省深セン市の土砂崩れ現場から土砂を取り除くショベルカー(共同)
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