参院選の焦点の1つに憲法改正問題がある。自民党が勝った場合、すぐにも憲法改正に動き出すのではないか、という見方を強調するメディアもある。はたして、自民党をはじめ改憲派が多数を占めた場合、本当に改正発議のような動きが始まるのだろうか。
私はそうは思わない。少なくとも、いまの国会を前提にする限り、可能性はほぼゼロに近いとみる。理由は簡単だ。相次いだ高裁の判断で「いまの衆院は違憲」とみなされているからだ。
4月26日公開のコラムでも書いたが、昨年末の衆院選について全国14の高裁と高裁支部で示された16件の判決中、14件が違憲、残る2件が違憲状態という判断だった。違憲判決のうち2件は衆院選そのものが無効という厳しい内容だ(たとえば日本経済新聞)。
「すっきりしたいねえ」
これを素直に受け止めれば、いまの衆院議員は「違憲の議員」という話になる。そんな違憲の議員が選んだ安倍政権は「違憲の政権」である。そもそも違憲の政権が改憲に動く正統性があるか。もちろん、ない。これは単純明快な原理の話だ。
分かりやすく言えば、自民党がいくら選挙カーの上から改憲を訴えてみたところで、路上から「政権自体が違憲じゃないか。改憲を言う前に国会を解散して政権を選び直せ」とヤジを飛ばされれば、それで終わりである。
誤解がないように言うが、私自身は憲法改正に賛成だ。だから、改憲に反対するために書いているのではない。だが、その私からみても、安倍政権が本気で改憲に動き出そうとするなら、そういうヤジを飛ばすだろう。
実は安倍晋三首相に直接、そういう趣旨の話を申し上げたことがある。それは5月14日夜に会食したときだ。
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