栗城史多×安藤美冬 【第2回】 「苦しいエベレスト挑戦もみんなで楽しみたい」 すべてをリアルタイムで伝える登山家が目指す夢

2012年09月02日(日) 安藤 美冬
upperline

栗城: それは僕もちょっと近いところがあるかもしれません。今、年間で講演は70本くらいやってまして、いろいろな方に集まっていただいていますけど、最初はお客さんが10人くらいしか集まらなかった。でも、「呼ばれたところにはとにかく行こう」と決心したんです。そういうことが口コミでどんどん広がっていったおかげか、今、僕を講演に呼んでくださるのは、8割くらいが一般の方々なんです。

 そういうことがあるので、「講演に来てくださる方の一人一人を絶対に大切にしたい」と強く意識しているんです。だから、講演後のサイン会は絶対に座ってやらない。立ってサインします。

安藤: 実際に栗城さんのサイン会で見ました。車椅子の人に対しては、しゃがんで、きちんと目線を合わせてサインしていましたね。

プレッシャーもあるんですよね・・・

栗城: 僕のお父さんは眼鏡屋で、商売人だったので、「お客さんを大切にしろ」ということをすごく言われました。「お客さんを大切にできなかったら、何をやってもダメなんだ」と。

 皆さん、忙しいのにわざわざ来てくれる。特に車椅子で移動するのが大変な方が、僕なんかの話を聞きにいらっしゃるなんて、本当にありがたいじゃないですか。だから少しの時間でも、直接お話をしたいと思って。正直、講演の内容よりも、そういうことの方が大切だと考えているくらいです。

安藤: サイン会も大事だと思いますけど、やっぱり山に入ったときの自分を見せることが、栗城さんにとってはいちばん大切じゃないですか。前にも映像で、山でケガをして苦しんでいる栗城さんを拝見したんですけど、そういうところを含めて、登山している自分を全部見せている。しかも、単独で無酸素という難易度を高くした中で山に挑戦している自分を・・・。

 こうなると、もう栗城さんは存在だけで人を十分に勇気づけているわけです。ファンとしては、「登頂してくれたらもちろん嬉しいんだけど、栗城さんの存在に励まされるだけでいい」となってしまう。それが最もすごいことだと思います。

栗城: ありがとうございます。でも、プレッシャーもあるんですよね・・・。

previous page
4
nextpage



underline
アクセスランキング
昨日のランキング
直近1時間のランキング
編集部お薦め記事
最新記事