大学でロクに勉強していない文系が、会社では幅を利かせていることに多くの理系社員は違和感を持つ。
その発想自体が間違いだと指摘するのは、『人事部は見ている。』の著書がある評論家の楠木新氏だ。
「そもそも、自分は勉強してきたのに、と考えることがおかしい。会社に入るということは一つのコミュニティーに入ることで、自分が努力した成果がそのまま自分に戻ってくる仕組みになっていない。その代わり、自分がしんどい時は助けてもらえるかもしれない、それが会社です。仕事は真面目に勉強したら『優』がもらえるものじゃない。そう学ぶことが何より大事なのですが、理系の価値観では理解できないのも仕方ありません」
Aさんのように「使えない」と言われながらも就職できたのは、幸せなほうかもしれない。
いちばん潰しが利かないのは、「何となく理系」を選んだ下位校の学生たちだ。
「理系からの就職先は大半が製造業ですが、もはや製造業の従業員数は1000万人を切りました。企業が理系に求める能力の水準が飛躍的に上がっています。
たとえ上位校の理系卒でも昔のように優遇されるわけではない。まして、勉強すらしていない下位の理系校となると、企業側は見向きもしていないというのが現実です」(大学ジャーナリストの恩田敏夫氏)
一部の下位校には、修士を卒業した半数が博士課程進学も就職もできない、という惨状がある。
もちろん、大学だけで人生が決まるわけではない。だが、研究者になりたいという強い夢と能力がある学生以外にとって、理系に進むのはやっぱり損、と言えそうだ。
でも、とAさんが言う。
「文系が支配する社会は危ないと、原発事故を見て改めて思いました。危険性を認識しない文系が原発を政治的に利用して、あんな目に遭った。理系であれば原発の恐ろしさをきちんと理論立てて説明できるから、パニックにもならない。文系が『言葉』だけで回す世の中は、やっぱり未熟だと私は思います」
「週刊現代」2012年3月17日号より
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