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MWSが顕微鏡下の世界を伝えるコーナーです。
日々の業務メモやちょっとした記事もここに記します


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2011年3月20日(2)


http://www.asahi.com/national/update/0318/TKY201103180577.html
4号機のプールでの発熱量は毎時約200万キロカロリー。約1400立方メートル入る貯蔵プールの水の温度を、単純に計算すると1時間あたり約2度上げることになる。 (上記URLより引用)

もしこの値が正しいなら,水の蒸発熱や貯蔵プールの水量,放熱の熱抵抗などを考慮して計算すれば,任意時間での水の残りを計算することができます。筆者がひじょうに大まかに計算したところ,プールに破損がなくても蒸発により300時間から500時間でプールは空になります(皆さんも計算してください。検算してください)。これを書いている時点で180時間以上過ぎています。火災が起きていますから,すでに水素爆発が起きた可能性があり,燃料棒は一部露出して破損していることと推測されます。

3号機にはMOX燃料が使われており,これにはプルトニウムが利用されていますので,これの行く末も気になりますが,4号機貯蔵プールの燃料棒も一刻を争う事態になっていることは明白です。現場では当然,正確な熱力学的計算が行われて作業の優先順位が決められていると思いますが,東京電力から東京消防庁や自衛隊に正しい情報が伝わっていることを祈るばかりです(画像/MWS)。






2011年3月20日


ps

文部科学省のホームページには,上の画像のように,放射線モニタリングの結果が掲載されています。けっこう不親切な表示で,多くの方が知りたい,「福島県」が,ぱっと見るとないように見えます。よーく見ると,福島第一原子力発電所周辺,というリンクがありますから,なるほど,それは一応,福島県ですね。そこでクリックしてみますと,次の画像が表示されます。


ps

これは画面を等倍で切り出したものですけど,読者の皆様,数値がぱっと読めるでしょうか?わざと縮小したjpg画像にして,数字を小さくして,地図の文字を薄くして,どこの地点がどのくらいの数値なのか,わかりにくいようにしてあります。情報操作のイロハのイです。多くの人は,この地図から,正確に福島市の放射線量を読み取ることをあきらめると思います。ほかのページには,きちんと読み取れるPDFが用意してあるのですが,それならば,トップページからきちんと見えるようにすべきでしょう。国民に必要な情報を最適な手段で与えることを怠ったやりかたは,卑劣としかいいようがありません。

そこで筆者が画像処理を施し,読みやすくしたのが下の画像です。


ps

福島第一原発から北北西に汚染域が広がっていることがわかります。5μSv/hを越える高レベルの汚染域がかなり見られます。2,3,31,32,33,34,46,61,62,63の測定点では10μSv/hを越えており,この値が続くようなら(続くと考えられます)避難も考えなければなりません。この高レベルの汚染は,すでに15日夜の測定で認められていますので,かなり初期の水素爆発時(1号機?)に,放射性物質が風で運ばれてこれらの地点に降下したものと考えられます。

10μSv/hのところに一年間居住すれば,それだけで,一般人が一年間に浴びる放射線量の30倍を超える量を外部から被曝してしまいます。しかもそれだけでなく,居住すれば空気も吸いますし水も飲みます。食物も摂取するわけです。内部被曝を避けることはむずかしいでしょう。

直ちに健康被害が出る数値でないことは明らかですが,こんな放射線量の高いところには,国際的にも人が住む環境とは思われていません。こういった数値が出ているにもかかわらず,全然大したことないとか,冷静に判断すれば問題ないとか書かれたメールが飛び交っています。そういったメールを学校の先生が書いていたりすると,うのみにする人もいるかもしれませんね。

そーんな簡単なもんじゃねーよと,ひとこと言ってやりたいですね。地球上のどこに年間100mSv〜1Sv浴びて暮らしている村や町があって,そこの疫学データがどうなっているかを調べないと,「大したことない」「問題ない」という言葉なんて,簡単に使えるものではありません。お勉強のレベルが問われます(文部科学省より引用,画像処理/MWS)。






2011年3月19日 (2)


http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103180413.html

原発から北西に約30キロ離れた浪江町の計測値では18日午後1時32分に毎時150マイクロシーベルトを計測した。この地点付近は16日午前11時半は80マイクロシーベルトだったが、17日午後2時に170マイクロシーベルトに上がり、高レベルが続いている。 (上記URLより引用)

このニュースが正しければ,ここの住民はすでに,汚染のないところに住んでいて受ける線量の2年分を被曝していることになります。この線量がずっと続くわけではないと想像しますが,仮に150μSv/hを一年間浴びると,1300mSvを越えます。これは直ちに(数日以内に)避難を開始してよい(すべき)値です。

これだけ風が吹いているのに,すでに3日間,高い放射線量が続いていますので,すぐに減衰することは考えにくいです。放射性物質の降下物が大地を汚染している可能性が高いです。室内待避の限界を超えていると判断します。鉄筋コンクリートの室内であれば,この1/10程度の被曝になることもあり得ますが,浪江町では木造家屋が多いと想像します。

もしこの地域が,放射性物質の降下物により汚染していると考えるなら,歩いて10km移動するだけでも被曝量が減る可能性があります。西風のときに,西を目指して(あるいは放射線レベルの低い地域を目指して)早急に避難すべきです。移動するときは,福島第一原子力発電所を線源として,その風下にならない場所を目指さないと,予想外に被曝しますので,風向きに注意しましょう。レインコートで全身を覆い,ゴーグルやメガネ,マスクやタオルを口にあて,速やかに浪江町から退去することを推奨します。退去できない人は,室内の中央部,できるだけコンクリートの壁の影になるようなところで待機してください。部屋の換気はせず,室外に出た場合は,外気に当たった衣服をすべて脱いでポリ袋などに入れ,人気のないところに置いて下さい。そして放射線レベルの情報を集め,減衰しないようなら待避しましょう。

いまの(18日の)放射線レベルであれば,落ち着いてゆっくり歩いて待避しても,健康に問題を生ずる可能性はほとんどありません。しかし一年間いるのは生命に危険があります。まずは安全なレベルのところへ移動しましょう(MWS)。

追記:福島放送によれば,

「屋内退避指示エリアに入った浪江町では1万7793人、富岡町では1万5480人、大熊町では1万1363人が避難を終えている。また、南相馬市でも大規模な県外への避難計画が行われている。」

とのことです。1〜2日以内にすべての方々が無事に避難できることを祈りたいと思います。

こういった高濃度の汚染地域は,30キロ以上離れていても出現している可能性があります。まだ汚染の実態はほとんど判明していません。情報取得に努めましょう。






2011年3月19日


ps

きょうは風のお話にしましょうか。今のところ,一般市民がいる場所では壊滅的な放射線レベルにはなっていませんが,これは風によるところが大きいのです。日本には偏西風が吹いていますから,大局的には西から東に風が吹きます。このおかげで,放出された放射性物質が太平洋に向かいます。もし,風が陸上に向かうと,現在のようなレベルの汚染では済まされず,避難区域はるかに大きくります。半径100〜200キロ圏内でも危険な場所になる可能性も否定できません。

現在,福島県などで比較的高い放射線レベルが観測されていますが,これは,14日〜15日にかけて風が内陸に向かったときに,放射性物質が運ばれて,陸に落下したものが一つの原因になっていると筆者は推測します。風の様子はこちらにあります(シミュレーションですが,大まかには正しいと考えます)。

地形的に空気がよどみやすいという問題もあると考えられますが,これだけ西風が吹いてもなかなか放射線のレベルが低下しないので,放射性物質が粒子として地上にあると考えてもおかしくありません。粒子として放射性物質が落下しているとすれば,そう簡単には減衰しませんから,しばらくはこの値が続く可能性があります。福島市の約10μSv/hという値は,すぐには危険ではないものの,年単位で,そこにいても良いレベルでもないので,避難の可能性を考えておくことが必要です。

これは福島県だけの問題ではなく,今後,風の向きと,そのときの放射性物質の放出状況では,いろいろな地域が汚染される(されている)可能性があります。放射線量とともに,気象条件,特に風向きに注意しましょう。

繰り返します。現在,各地がこの程度の放射線量で済んでいるのは,風が放射性物質を太平洋に運んでいるからです。それでも,たった一日の東風で福島県がこれだけ汚染されたのです。東よりの風が続けば,東北,関東一円が高濃度の放射性物質に汚染される可能性が高くなります。安全だと連呼している専門家の言うことを聞くか,自分で考えるか,皆さんはどちらの態度をとりますか。

福島第一,福島第二原子力発電所にある放射性物質は,まだ,誤差範囲の放出量です。燃料プールでの爆発や,圧力容器の破損に伴う放射性物質の大量放出は,その可能性を否定することはできません。まずは鎮圧できることを祈ります。しかし鎮圧できたとしても,多量のMOX燃料やウラン燃料がある以上,放射性物質の封じ込めが終わるまで,環境への放出は続きます。封じ込めに成功しても,その後も永久に(数万年)管理しなければ,危険な状態になります。これは筆者が適当なことを言っているのではなく,放射性物質というものがもっている性質です。放射線を消す方法はありません。いまはまだ一部を除き安全な地域がほとんどですが,これからも安全であり続ける保証はないのです。

ところできょうの画像は,豊島区内から撮影したバラ星雲(NGC2237-9,46)です。関東地方では計画停電が今後も続きますので,月のない夜に計画停電になったら,夜空を見上げてみてください。辺りが暗くなり,いつもよりもたくさんの星が見えるかもしれません。どんなときでも,一服の清涼剤は必要です(画像/MWS)。






2011年3月18日


ps

きょうは少し放射線の数字と避難に関するお話をしたいと思います。原子力災害においては,ある場所で,どのくらいの放射線量かが,安全を確保する上で決定的に重要です。ですから,放射線量に関する数字は,地球に住んでいる人はみんな知っておいた方がいいのです。

まず大事なことは,数値が「流れ」なのか「量」なのかを知ることです。

人間が1時間当たりに飲んでもいい水の量を0.1リットルとすれば,

0.1 L/h

となって,これは「流れ」です。1時間当たりに0.1リットルの水が通過したということです。

では人間が一年間に飲んでも良い水の「量」はどのくらいでしょうか。計算してみましょう。一日は24時間,一年は365日ですから,

0.1 × 24 ×365 = 876 L

となります。これも一年当たりの量という数値ですから,厳密には876 L/y (yはyearの略)と表記して,「流れ」と解釈してもいいのですが,ふつうは一年当たりの量というふうに書いて,「量」と解釈しています。



放射線量も同じ計算でOKです。一年間に浴びてもいい放射線量を仮に100mSv(ひゃくミリ シーベルト)と仮定します。「量」であることに注意。ここでmは単位換算のための表記で,1/1000を表します。1mgは1/1000グラムですが,その表記と同じことです。その千分の1がμ(マイクロ)という表記です。

一年間の限界線量100mSvをマイクロに換算すると,

100000 μSv

となります。これを1時間当たりに直しますと,

100000 ÷ 365 ÷ 24 = 11.4 μSv/h

ということになります。この値は「流れ」です。

ニュースなどでは,この値と,胃のレントゲンの値(600μSv)を比べて,安全だ,と言っていますが,胃のレントゲンの場合は,放射線600μSvが一発で与えられる「量」であって,それ以上の放射線を受け取ることはありません。これに対して,11.4μSv/hという放射線の「流れ」の中に身をおけば,53時間もいれば,胃のレントゲン1回分の放射線「量」に達してしまいます。

11.4μSv/h × 53h = 604 μSv

となるわけです。放射線の測定値は,μSv/hという単位で発表されることが多いので,その数値を見たら,上記のような計算をして,年間でどのくらいの「量」を被曝することになるのかを計算してみてください。すぐに危険ではないことが理解できますし,かといって,一年単位では好ましくない値ということもあるかもしれません。

現在,福島市では,10μSv/h程度の値が報告されています。このままの値が一年間続きますと,90mSv程度の「量」に達します。これは原子力産業で働く人の上限になりますので,何十年も居住するという観点からは,それほど安全とはいいにくくなります。しかしこれを逆に解釈すれば,あわてて走って逃げるような状況でもないことが明らかです。事態の経過を注意深く見守り,避難のタイミングも考えなければなりません。

50μSv/h程度の,比較的強い放射線の測定値が発表され,これが続くようなら避難しなければなりません。しかしこの場合も,あわててはいけません。汚染地域から,安全な場所に移動するまでに10日間かかったとしても,

50μSv/h × 24 × 10 = 12000 μSv(10日間で)

12000μSv = 12mSv

となり,これは医療用CTスキャン数回分の被曝量になります。被曝としては多いですが,すぐに健康障害になることは希です。敏感な人は下痢くらいするかもしれませんが。実際は屋内待避もできますし,もっと測定値が低い段階で避難命令が出るでしょうから,余裕があるものと想像できます。

つまりあわててはいけないということです。

怖い怖いと走って逃げて,電柱に頭ぶつけて死ぬ方がもっと恐ろしいのです。

放射線は目に見えませんから怖れるのは当然ですが,いろいろなところから測定値が発表されていますので,ほんとうに危険になったら逃げることは十分に可能です。

まずは放射線の測定値を怖れるよりも,自分で計算してみて,年間上限値(労働者の最大被曝量 一年あたり約100mSvと考えてください)との隔たりを確認して,心を落ち着けてください。

なお,小さなお子様や,妊婦の方々は,もう少し放射線に敏感です。それに,不安の解消の意味もあります。一年の上限は高くても25mSvくらいに考えて,早めに行動するのも良いかと思います。原発災害がなければ,空気や食べもの,大地から一年間に2.4mSvくらいの被曝量です。

移動するときには,西風が安定しているときにすれば,放射性物質が太平洋側に行きますので,被曝を小さくできる可能性があります。また,雨や雪の日に移動すると,雨や雪に溶けている放射性物質が身体に付着することもありますので,できるだけ避けましょう。

もう一度いいますね。少しだけは放射線を浴びますけど,生命に何ら危険なく移動できる時間はじゅうぶんにあるので,あわててはいけません。あわててケガをしたり,命を失うことがあってはありません。まずは,現在発表されている放射線の測定値を自分で計算してみて,程度を確かめてください。

もちろん,福島第一,福島第二原発から30〜100キロ圏内にお住まいの方で,それよりも遠方の家族や親戚の家に待避することができる方は,放射線レベルが現在の段階でも,安心のために待避しておくという考え方もあります。筆者はそれを否定しません。それぞれの人にほんとうに必要なのは,科学的データよりはむしろ,「その人が安心すること」という心理的な問題ですし,現在,放射性物質の放出が続いていて,今後も放出が続くことは明らかだからです。

これを書いている時点でも,福島県から避難しておられる方が1万人程度だと報道されていますが,それはそれで合理的な行動です。

ところで,今日の画像は神奈川県内で採取した海の珪藻です。珪藻を覗いていると頭がクールダウンされ,ストレスが和らぎます。ニュースを見過ぎてお疲れの方,5分くらい顕微鏡を覗いてみてはいかがでしょうか(画像/MWS)。






2011年3月17日


ps

筆者は環境リテラシーの向上を目的として,文化系大学において環境論を5年間ほど担当していました。その中で原子力利用に関する諸問題を2コマ行っていました。原子力と口を開けば「安全」「安全」「必要」といった世間の風潮は明らかに間違っているので,原子力の持つ正の側面と負の側面を詳細に論じました。講義を聞いた多くの受講者は,正の側面に感心しながらも,負の側面を避けることが重要だという感想を寄せてくれました。筆者は質問票を配布して,それに返答しながら講義を進めます。学生はいろいろな質問を考えてくれて,こちらも一生懸命に答えました。今日の画像は5年ほど前に講義を行ったときの質疑ですが,この欄をご覧になっている皆様も,学生になったつもりで,上の画像をしっかり読んでみてください(画像/MWS)。






2011年3月16日


ps

福島第一原子力発電所に近い地域では,ヨウ素剤(ヨウ化カリウム製剤)の配布が始まっています。ヨウ素は甲状腺に貯蔵されますので,予め甲状腺をヨウ素で飽和させておけば,放射性ヨウ素(ヨウ素131)が大気に混じって飛んできても,体内から排泄され,内部被曝を低く抑えることができるという考え方です。この対策は,特に子どもにとって有用なことが知られています。このヨウ素という元素は特に海藻に多く含まれることが知られていて,日頃から海藻を多食する人は,それだけ甲状腺にヨウ素が蓄えられていますので,放射性ヨウ素を蓄積してしまうリスクはそれだけ低くなります。福島県から離れていても何となく不安だと思う方は,海藻類を食べて不安を和らげましょう。画像は神奈川県内の塩だまりに生えていた海藻です。こんな海藻でもヨウ素が含まれています(画像/MWS)。






2011年3月15日


ps

ここのところの東日本の状況は上の画像のような感じです。最初の11日の大地震の直後は,数分おきに地震が続き,夜中も地震が続いて眠ることができませんでした。15日現在でも余震は続いていて,落ち着かない日々を過ごしています。夜には静岡で比較的大きな地震が起き,都内でもかなり大きな長周期震動を体感しました。この地震活動は,たぶん,当分終わらない気がします。大地震がきても対応できるように,気を引き締めていきましょう(画像/yahoo地震情報から転載,気象庁のデータにつき許可未取得)。






2011年3月14日


ps

福島第一,第二原子力発電所では,現在も注水作業が行われ厳しい戦いが続いています。大量のホウ酸水が注入され海水で満たすことに成功すれば,短期〜中期的には安定な状態に持ち込めるでしょう。ぜひともそのようになって欲しいもので,祈らずにはいられません。きょうの画像は珪藻土を焼き固めたもの(提供:日本ダイヤコム工業株式会社)です。珪藻土は水酸基と水分を含みますので中性子の減速効果があり,さらにこれにホウ酸とある種の金属を含ませれば,中性子とガンマ線の遮蔽も効率よく行えることが明らかにされています。コンクリートと異なり,それ自体は放射化しにくいという特長もあります。この性質から珪藻土を放射線防護壁としての利用する研究が行われています。このような類の資材が必要になる状況が最小限になるよう,原子炉の冷却がうまくいくように,みんなで願いましょう(画像/MWS)。






2011年3月13日


ps

ガイガー管を久しぶりに出しました。理由はおわかりかと思います。原発は炉心を冷やすことができなければ,放射性核種の崩壊熱で加熱され続けますので危険な状態になります。現在はまだ反応容器が残っているとも伝えられますが,ジルコニウム-水反応が起こった可能性が高い上,セシウムが検出されていますので,燃料棒が破損していることは間違いないと思います。無理やりにでもホウ素を放り込んで水で冷却できれば,再臨界を防ぎ沈静化できる可能性もありますが,バックアップ電源もポンプもまともに働かない状況ではハードルが高いと言わざるを得ません。

とにかく,制圧できることを祈るばかりですが,情報に留意し,念のため防災の備えをしておきましょう。原子力災害では初期の内部・外部被曝を低く抑えることが大事です。放射性物質の拡散が起きても対応できるように,居場所を確保し,飲料水,食糧を確保しておけば安心できます。余裕のあるときに準備されてはいかがでしょうか(画像/MWS)。

きょうも複数の方から連絡をいただきました。ご心配いただきありがとうございます。






2011年3月12日


ps

すごい地震でした。筆者は冷えた体を温めるために研ぎ物をしている最中でした。水面が微妙に揺れ,それが数秒以上続いたのでP波を直感し,直ちに顕微鏡デスクに戻りました。念のため,微分干渉顕微鏡と透過明視野生物顕微鏡の入っている棚を押さえてS波にそなえました。まもなく周期の長い大きな揺れがやってきました。これまで体験したことのない大きな激しい揺れで,P波の長さと揺れの周期の長さから,巨大な揺れが長引くことを直感し,激しい揺れの中,微分干渉顕微鏡と透過明視野生物顕微鏡を棚からおろしました。揺れは収まらず,デスクの上の30kg級の顕微鏡が放り出されるように動いています。棚と同時に全力で押さえますが,デスクごと100kg以上の重量が動いているので押さえ切れません。じりじりと顕微鏡に押さえながら耐えていると,こんどは30kgある倒立顕微鏡が動き出し,Jシリーズ用の珪藻在庫が落ちそうになっています。必死に食い止めながら,次々と落ちる書籍や空箱などのの落下物の様子を見て,揺れが収まるのを待ちます。しかし揺れは収まらずかなり厳しい時間を過ごしました。

揺れは1,2分ではなかったと感じました。何度も「大丈夫だ,絶対大丈夫だ」と叫び,自分に言い聞かせました。未曾有の長周期震動で,まるで船にでも乗ったかのようです。やがて揺れが弱くなり,ケガや機器類全損の最悪の事態は避けられました。珪藻在庫も守ることができました。顕微鏡は必死に手で押さえても26cm動きました。まもなくやってくる余震に耐えながら重量級の顕微鏡をデスクから下ろし,珪藻在庫を余震にそなえて移動しました。その後も強い余震が数分置きに続いています。

筆者のところでは,震度5までは大きな被害が出ないように,棚はすべて壁によりかけており,積み上げているものはほとんど落下してもよいものにしています。つねに地震に注意を払い,どんなに微弱な揺れでも顕微鏡デスクに戻って棚を押さえつつ状況を見る訓練をここ5年間続けてきました。しかしそれでも実際に体験すると甘いものではありませんでした。顕微鏡の被害はなく,棚も倒れませんでしたが,書籍や小箱や小物が200個くらい落下しました。震幅の大きい長周期の震動でしたので,都内でも化学系のラボなどはたいへんな状態になっていると想像します。

東北地方の被害状況には絶句するばかりです。皆様の被害が最小限で済むように祈念します。一人でも多くの命が助かるように祈念します。どうか皆様もじゅうぶん気をつけてお過ごし下さい(画像/MWS)。

複数の方から連絡をいただきました。ご心配いただきありがとうございます。






2011年3月11日


ps

今年も確定申告の時期がやってきましたので各種書類と格闘しています。どこまで精密にやるかによって作業時間が変わりますので,いつも悩みます。精密にやったところで,節税金額は知れているからです。かといって,大まかな金額を書き込むわけにもいきませんので,根拠を揃えなければなりません。ここのバランスが難しいですね。筆者は領収書類を見れば,それがいつ何に対しての支払いなのか思い出せますので,まず支払先の山をつくり,次に大体の項目ごとに山を作り,その山をまとめてポストインデックスで仕分けの内容と金額を記入していきます。何かに似ているなぁと思いつつ作業していたのですが,これはKJ法ですね。むかし,教育の分野で論文を書いていたとき,自分の考えを論理的にまとめるために,言いたいことを書き殴り,それを文ごとにハサミでチョキチョキ切って,同じことを言っている山をつくっていって整理したことがあります。まだワープロが高価だった時代の話です。いまはワープロで一文一文を数行置きにはなして,論理的つながりで組み替えられますから,とっても楽になりました。。などといろいろ回想しながら作業していると,結局,遅々として進みません…(画像/MWS)。






2011年3月10日


ps

東北地方沿岸で地震があり,宮城県から岩手県にかけて津波を観測しました。上の画像は大船渡の潮位ですが,干潮時に+60cmを記録しています。かなりシャープなピークで震幅は80cmありますので,養殖施設に被害がないか心配です。昨年も2月28日に津波があり,このときは被害が出ました。二年連続で春先に津波というのは,単なる偶然とは思いますが,不気味な気もします(画像/気象庁)。






2011年3月9日


ps

ps

AAC-01などでは位相差検鏡でも珪藻の干渉色が楽しめることはこれまでも紹介してきました。COS-01でも位相差法で一部の珪藻に干渉色が出ます。たいてい珪藻の片側の縁に虹が出るのです。スペクトル色ではないので干渉によることは明らかだと思いますが,はて,これはどんな光の現象なのでしょうか。色の出ている部分は光学的厚さが連続的に変化しているように思えます。これが干渉とどう関係しているのかいないのか,今ひとつピンときません…。光学は歴史ある学問ですが,目の前にあることを説明するのもなかなか難しい学問でもあります(撮影/MWS)。






2011年3月8日


ps

筆者のこれまでの経験では,大学等の教育研究機関では,実習用顕微鏡や研究室の顕微鏡が常に整備された状態にあることは珍しいといえます。今回の訪問先でも,学生実験に使う顕微鏡の状態はひどいものでした。油浸対物レンズは油まみれ,コンデンサにまで油が回っているものもありました。さらに乾燥系40倍対物レンズの先端は油膜が覆い,まともに観察できません。10倍対物レンズは指紋がついていました。この状態で微生物学実習が行われていたのだとすれば,顕微鏡という機器の真価は伝わらなかったでしょう。筆者が講師をするときは,対物レンズの清掃法も項目に含まれていますので,油浸系,乾燥系ともに清掃技術が身に付きます。このとき大切なことは,珪藻プレパラートを検鏡することです。珪藻を覗いて,機器の良い状態を知らなければ,汚れた状態も判別できないのです。珪藻プレパラートを常備して,同じ顕微鏡で繰り返し検鏡することで,その機器の整備状態がわかります。筆者はそのための材料として珪藻プレパラートを販売してもいるわけです(撮影/MWS)。






2011年3月7日


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前日も朝から夜までの作業になりましたので,余裕をみてもう一泊。仕事もおわり,さて帰りましょか。近くの駅まで散歩を楽しみます。


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この駅名を見て,講義の合間にもオヤジギャグを飛ばしたくなったわけですが,地元の人は聞き飽きていそうなので,ぐっとこらえました。


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が,駅にこのようなものがあることから,地元の方もけっこうオヤジギャグ性のセンスを持っているようです…。


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水平線近くの空に色がほとんどついていません。スモッグ・排ガスの類が少ないことを示しています。実際,とても空気が澄んでいて,市街地のこの辺りでも4等星が見えました。おおいぬ座の脚の部分もはっきりと見えます。夏なら,いて座の天の川が見事なことでしょう。羨ましいことです。


ps

何か名物らしいものはないかと,数駅戻ります。いい天気ですね。駅に物産館がありましたので,覗いてみるとニギスやサヨリのの干物がうまそうでしたので,地酒とともに買い込みます。まもなく特急列車が入線しますので,さささと駅に戻ります。駅から半径100メートル以内,15分程度の観光が終了しました。筆者にとっての観光は,夕飯を探しに地元スーパーを覗くのがメインです。その土地の方々の暮らしを見るのが観光です。


ps

さて,列車は始発駅を出るとすぐに山を登りはじめるのですが,発車20分もしないうちから,なんと雪が降り始めました。


ps

雪はどんどん強くなり,何だか北国にきたようです。


ps

白銀に彩られた吉野川渓谷を鑑賞できました。すばらしい。とてもトクした気分です。


ps

ときおり現れる農村集落も冬景色です。


ps

渓谷を流れる水も清らかで美しい。水色フォーレル5号というところでしょうか。筆者の目には,比較的貧栄養な水に見えます。


ps

平野が近くなってくると雪も止んでいました。


ps

あっというまに瀬戸大橋にさしかかります。画面右側に見えています。


ps

海の上を列車が走る不思議を楽しみながら,瀬戸内海の風光明媚な島々を鑑賞します。


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鉄骨の下にある瀬戸内海の水色を観察し,しばらくすればすぐに岡山です。滑り込んできたのぞみにさささと乗り込みました。そのあと,どうやら,こちらの管理人と相対速度540km/hですれ違ったようです…。


ps

帰宅してすることと言えば,おみやげのチェック。なんともかわいらしい姿です。


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こちらはかわいくないが,うまそうです。


ps

で,やっぱしうまいんですねぇ。薄塩に苦みが調和して,焼きたての香ばしさがたまりません。

南国への仕事は,よい想い出とよいおみやげばかりの,素敵な6日間でした。お世話になりましたホストのY先生,お忙しいなか聞きにきて下さいましたA先生,これから卒論に取り組む3年次の方々,院生の方々,研究員の方々,ありがとうございました。楽しかったですよ(撮影/MWS)。







2011年3月6日


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出張先では大学院特別講義を担当させていただきました。3日間で半期の授業に匹敵する時間の話をしましたが,朝から晩までさすがにヘビーなスケジュールで,受講者の皆さんは大変だったことと思います。しかしホスト役の先生が非常によい講義環境を提供して下さり,集中講義としてはかなり,良い条件だったと思います。筆者は顕微鏡の話をしていれば自然に楽しく時間が過ぎるので,長時間の講義も苦になることはありません。

参加者は学部学生,大学院生,研究員,教員と様々でしたが,今回も,とても熱心な受講者の方々でほんとうに嬉しい気分でした。講義や実習は参加者と講師でつくりあげるものですから,熱意ある受講者に助けられている面も多いのです。筆者が嬉々として顕微鏡の話ができるのも,それは受講者あってのこと。実は受講者が主役で,「とりあえず理解できたぞー」「何だかわかんないが面白そうだぞー」という表情を浮かべてくれないことには,前に進まないのです。

さて,講義がすべて終わったあとは,残された時間で顕微鏡のメンテナンスです。どこの大学でも,顕微鏡を購入する予算はありますが,メンテナンスにはなかなかお金をかけられないのが現状です。それで多数の人が共同で利用する機器は劣化が著しいことも多いのです。限られた時間ではありましたが,何とか一台を復調でき,研究に活用していただけるのではないかと思うと,今後が楽しみです(撮影/MWS)。






2011年3月5日


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ここのところの長期休業は,高知空港に隣接する研究教育機関への出張でした。高知空港の真横ですから,もちろん列車で行ってきました(^^;。北のモンスターFurico283系,熱き想いHEAT281を乗った筆者としては,当然2000系気動車を見逃すわけにはいきません。瀬戸大橋を渡りながら瀬戸内海の島々を眺め,吉野川沿いの絶景を楽しみながら目的地に向かいます。列車で来たというと皆さん驚かれます。はて? 鉄道が通じているから鉄道を利用する。なーんにも不思議ではないと思うのですが…(撮影/MWS)。






2011年3月4日


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顕微鏡写真撮影(デジタルイメージング)においては画像処理が欠かせませんが,画像処理自体は一般写真にも同じように適用できますので,日頃から画像の特性を見抜いて画像処理に親しんでおけば,顕微鏡写真にも自然と応用が効くようになるでしょう。上の画像は明暗差が大きく,暗部が潰れてしまった画像ですが,ガンマ補正(+1.9)を行うことにより,暗部を見やすい画像にできました(下の画像)。このような作業を日常行っていれば,自然に画像が「読める」ようになり,処理すべき項目が自然に浮かぶようになるのです。大切なことは,画像処理ソフトで画像を処理していろいろ遊んでみることです(撮影/MWS)。






2011年3月3日


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位相差や微分干渉法の機材を持っていなくても,デジタル画像処理によって,それらの検鏡法に匹敵する画像を作ることが可能になってきています。上の画像は昨日と同じもので,イケメン珪藻(Auliscus)を透過明視野で撮影したものです。この画像だけを用いて,種々の画像処理を施すと,下の画像を作ることができます。微細構造が明瞭になり,構造の再現性も高く,コントラストの不自然な逆転も起こりません。こういう画像を製作してみると,デジタル画像処理というのは,本当に素晴らしい技術で,いろいろな可能性を秘めていると実感します(撮影/MWS)。






2011年3月2日


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「本日の画像」で紹介している顕微鏡写真は,基本的には,明視野,斜光照明,暗視野照明で撮影しています。位相差や微分干渉の機材も複数所有がありますが,このコーナーではあまり使っていません。このコーナーを楽しみにしている方々が真似できるような方法を中心に紹介したいからです。しかしながら位相差や微分干渉法はそれぞれ特徴的な絵が得られますので,日々の検鏡では利用しています。きょうは筆者お気に入りのイケメン珪藻を明視野と位相差で載せてみました。上の明視野法では素直な像が得られますが,下の位相差法では珪藻被殻の厚みによってコントラストが異なり,同じ珪藻なのにたいぶ違った印象を与えています(撮影/MWS)。

※現在,臨時休業中です。大変恐縮ですが,頂戴しましたご注文分の発送につきましては,3/5頃に予定を連絡させて頂きますのでしばらくお待ち下さい。






2011年3月1日


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デジタル時代に入って顕微鏡写真は劇的に効率が上がるようになりました。むかしはフィルムの浪費が避けられず,暗視野や蛍光顕微鏡写真をマニュアル撮影するのは相当な技術を要したものです。いまではデジタル撮像してその場で確認できますし,難しい被写体でもたくさん撮影することにより成功率をアップさせることができるようになっています。デジタル顕微鏡写真のコツは何と言ってもたくさん撮影することでしょうか。上の画像は炭化水素を生産するボトリオコッカスという緑藻を撮影したときのものですが,この日の撮影では,この藻類だけで572枚の撮影をしています。あとから見返すと,これでも,もうちょっと撮影しておけばよかったと思うくらいです(撮影/MWS)。

ところで,2月28日21時現在で,web上で初心者向けお薦めプレパラートを教えて欲しいという質問が回答受付中のようです。顕微鏡観察の先輩方,こちらにどうか答えをつけてあげて頂けませんでしょうか。筆者は珪藻以外には詳しくありませんので,先輩方のお教えを乞う次第です。






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