メキシコ湾での原油流出事故で、英BPの原油回収作業の重要部分が停止状態となり、来週には回収量を倍近くに拡大するという同社の計画に狂いが出てくる恐れがある。
23日午前、海底ロボットが原油封じ込め用のキャップと衝突、海上で原油を吸い上げている2隻の船舶のうち、規模の大きい方の「ディスカバラー・エンタープライズ」を使っての回収を中止せざるを得なくなった。
このキャップは長さ1.6キロほどのパイプで同船とつながっており、同船は1日に1万8000バレルの原油を回収している。米沿岸警備隊のアレン司令官によると、キャップを急いで取り替えないと、来週までに全体で5万3000バレルを回収するという同社の計画が難しくなるという。
流出事故の政府対策本部長を務める同司令官は、キャップは数時間で取り替えられるだろうが、その内部に天然ガス・ハイドレートと呼ばれる結晶が見つかれば、時間はもっとかかる可能性があるとしている。もう1隻の「Q4000」は1日に約1万バレルを回収している。
今回の海中衝突は、BPが3週間近く前にキャップを使った回収を始めて以来最大規模の障害となった。ただ、これが最後とはならないと見られる。事故現場付近はハリケーンシーズンの最盛期に向かっており、強力なハリケーンに襲われれば、回収船を避難させなければならず、作業は数日中断することになるかもしれない。
先週末にはディスカバラー・エンタープライズでの故障と悪天のために作業は10時間中断された。
政府や独立系の科学者らは海底油井から噴出している原油の量を1日3万5000~6万バレルと推定している。
アレン司令官によれば、3隻目の回収船が29日に現場に到着する予定だ。BPはこの3隻で30日までに1日5万3000バレルを回収するとしていたが、ディスカバラー・エンタープライズが早期に作業を再開できなければ、この目標は実現されないと見られる。BPによると、22日の回収量は2万7090バレルだった。