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2009,6,7 ちやほや
2009,6,5 ズレ亀裂
2009,6,2 君と僕の温度
2009,6,1 寂しい憧れ
2009,5,31 スーパーカー
2009,5,30 君は僕の宝物

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ちやほや 2009,6,7
気づいたらネタ帳と化していたwww
日記はmixiでじゅうぶんですみたいな。。
でも書いちゃう(´ω`)


所詮顔なわけよね。
こういうこと言う奴が一番顔を気にしている罠^^
はいはいわろすわろす……。

何かちょうめんどい。
めどい。

どこまで書いたらいいのか(´・ω・)
伝えたい人に伝えられない。
そんなもんかー。
伝わってるのか心配。
てた伝える必要性すら感じない。

今日傘いるのかしら。
わすれたし(´・ω・)
自らの意思で持ってきてなかったわけですががが。

ぷはー。

悩みは尽きない!

好みの人。

難しい。

誰か教えて(;∀;)

私はどうしたらいいの??

だめなやつ。

ホワァ!!

ズレ亀裂 2009,6,5
自分が良いと思ったものを人が受け入れてくれること。
大切なんだけど。

目悪くなったかもしれない。
でもそのほうがいいとおもう。
なんか急にそう思った。
疲れてるのにテンションをあげて。
でもお腹痛くて。
だけどテンションあげて。
別に頼まれてないけど。
しなきゃいけないわけじゃないけど。
何かしゃべりたくてなかよくなりたくて。
お腹痛いと言えば誰かが助けてくれるかなとか。
そう思ってるわけではない。
ただ本当にお腹が痛くて。
でもそれを疑われて煩わしいと思われることってどれだけ悲しいんだろう。
うそつき少年が狼に食べられる。
食べられた、今正に。その瞬間。
いっそ形に出来たら一番楽だったのに。
甘いパン。菓子パン。カロリー1000以上未知数。
お腹につめこんでも何の意味もない。
何か動かずにそのまま残る。
排出。綺麗さっぱり。
辛いと思うのは何でだか。
人は人である故に人とぶつかったりして。
よくわけがわからないので。
これにて終幕ちゃんちゃん。

君と僕の温度 2009,6,2
めずらしく6ろ組話。










手の温度。
思い出せない。
ぐーして、ぱーして、ちょきして。
私の手のひらは皺と傷だらけで、まめもいっぱいあって。
その中でも君と一緒に行った実技訓練のときの傷が一際強く残っていて。
私は今日もそれを見ながら、気づけば眠っている。
一人で居るのが怖かった、昔は特に。
だから無理を言って君の手を握って、一人じゃ眠れないと君を困らせた。
君の困った顔を見るのが好きだった。
その表情を見る度に、自分は一人じゃないと思えたから。

深く考えたことがなかった、自分の人生も他人のことも、全てのことに対して。
何となく毎日過ごして、何となくやることをやって、何となく生きて、生きて、生きて。
可愛いと思う女の子もいたし、お気に入りの後輩も居た。
だけど別れる日、涙は零れない。
そんな私と対照的にみんなぼろぼろ泣いていたけれど、私はただ薄く笑うだけだった。
泣けないんだ。だって悲しくなんてないし。
残念だと思ったけど、別に悲しくなかった。
私は隠れて君の手を握る。君は私を見て、そしてゆっくりと手のひらに力をこめた。
悲しくなんてない。さびしくなんてない。
ただ少しの間だけ一人になるだけ。
わかっている。わかっているけれど。
君の温度が静かに遠ざかる。
なあ、と私は声をあげた。
君が振り返る。その顔はいつもと同じで、私ははじめて悲しくなった。
だけどそれを表情に出すことが出来なかった。
君の前では素直な自分でいられてると思っていたのに、それすら嘘だったのだろうか。
もう会えない? 一生? ほんとに?
言いたいことは山ほどあった。
聞きたいことも山ほどあった。
けれど私はその全てをうまく口に出すことが出来なかった。
君の手の温度がすきだ。
もし君が何も考えずに、それこそ私のようにただ何となく私の手の温度を甘受していてくれてたというならそれでも構わない。
少なくとも、私は君のその微かな温度によって救われていたのだから。

一人で過ごす日々。
真っ暗な闇の中。
微かに光る真っ白な光を求めている。
陳腐な言葉だ。だけど救われている。
その何かを求めて生きていると思えば、何とかなった。
惰性で生きるには厳しすぎるこの日常に、微かな光を探している。
君の手。
目を覚まして、汗だくの身体に触れる。
自分の手のひらはこんなに冷たかっただろうか。果たして。
私はゼェゼェと荒くなる呼吸を必死に落ち着かせる。
君の手のひらが私の頭を撫でる幻想を見た。
もうどこにもいないのに、いや、いるかもしれないけれど。
どうしているだろう。
6年を共にすごした友は、今頃どうしているのだろうか。
そんなことをぼんやりと思う日が増えた。
答えはないのに、きっと幸せに暮らしているだろう、といつも結論づけた。
そう思わなければやっていけない。
私は決して幸せではないのに、願わずにはいられない。
願わくば、あの人が幸せでありますようにと。
要するにそれはこの職業から足を洗っていることに通じるのだけども。
 ああ、やめようかな。
ふと思った。唐突に。
冷たい水で頭を洗いながら、そんな突拍子もないことを考える。
別にそこまでなりたかったわけでもなかった職業だ。未練なんてない。
じゃあなんでこうなったんだろう。
今更だ。もう結果が出てしまっているのに、今更過程を考えたって意味がないのに。
水が冷たい。当たり前だ。それすらわからなくなっている。
 やめよう。
一度、学園に戻って、先生に相談しよう。そう思った。
もしそのせいで死んだって構わない。
ただ、このままずっとこうして生きていくことのほうが、今死ぬことよりも辛く思えた。
あの頃は何も考えていなかったことが、今更になって私の心を強く揺さぶる。
森を走り、木々を蹴り、人を背中から刺し、拭いきれない血を被り。
信じる人を裏切り、微笑む人の目を抉り、愛を囁く人の喉を千切り。
憎まれて憎まれて、殺されそうになって、それでも生きてきた。
それでも生きてこれた。

何年ぶりだろう、先生の顔を見るのは。
優しい担任は私の顔を見て嬉しそうに顔をほころばせた。
でも私はうまく笑顔を作れずに、我ながら中途半端な表情をしてしまった。
先生は笑みを消して、私の下手糞な笑顔をじっと見つめる。
いつから上手く笑えなくなってしまったんだろう。
笑おうとすると、目が痛くなる。頬がほぐれずに、口の端しか持ち上がらない。
 そうか。
先生は一言そう言った。そして、私の背中をぽんぽんと二回、優しく叩く。
私はもう何も言えずに、俯いた。
全てを見透かされた私は、どんな顔をして良いかわからなかったのだ。
 二年ぶり、だな。
あの頃とかわらない廊下を先生と並んで歩く。
まだ二年しか経っていないのか、と私は思った。
もっと長い時間を一人で過ごしている気がした。
先生が私の為に、座布団を一枚引っ張ってきてくれた。
私はそこに座り、先生がお茶を淹れるのを待つ。
その間、私も先生も一言もしゃべらなかった。
静かな部屋に水の音だけが響く。
 先生。
私はそっと口を開いた。
目の前に置かれたお茶から、真っ白な湯気がたっている。
ぐらぐらと目の前が揺れる。
まるで、蜃気楼みたいだ。
 すみません。
気づけば私は頭を床に押し付けていた。
 すみません、先生。
先生が立ち上がる音がする。視界には毛羽立った畳だけが広がっていた。
眼球の奥がじんじんと痛む。
相変わらず涙は出ないけれど、昔の私だったら泣いていたんじゃないかと思った。
 先生、すみません。すみません。
無様だった。それでも卑屈な気持ちは少しもなかった。
先生が何かを言いながら私の肩に触れる。
私は何度も何度も、すみません、と繰り返した。何度も何度も。
悔しかった。
自分を卑下するわけではないけれど、今の自分は最低な人間だと思った。
先生は優しく私の肩を掴み、そしてゆっくりと口を開く。
その内容に、私は耳を疑った。

ぜんぜん、かわっていない。
あのころと、まったくかわっていない。
歩き慣れた道を、今私は走っている。
これも昔と同じだ。
この道を歩くとき、私は何かに急かされるように不思議と早足になる。
バタバタと廊下が音をたてる。私を怒る人はここに居ない。
突き当たり、一つ目の扉。
部屋の名前を確認するまでもなく、私は扉を開いた。
ふ、と受付に居る男が顔をあげる。
その男と目が合って、そして細い目が驚愕に見開かれる。
 長次!
咄嗟に、私は男の名前を叫んだ。
そして駆け寄る。男は一瞬身を引こうとして、そしてすぐに元の体勢に戻った。
二年ぶりだった。二年経ったのに、何もかわっていない。
ただ少し頬がこけたような気がする。でもそれ以外に何もかわったところは見られない。
威勢良く名前を呼んだのは良いけれど、私は次に何と言って良いのかわからなかった。
長次は私の顔を見て、薄く微笑んだ。
その笑顔に私の心がざわめく。嬉しくてたまらない。
あの頃に、戻れる気がした。
 久しぶりだな。
長次の低い声が頭に響く。私は小さく頷いた。
先生に、長次が学園に戻って来てる、と聞かされて私は居てもたってもいられなくなった。
どうして、何故、と思う前に既に身体は動いていた。
先生の話を最後まで聞かずに、部屋を飛び出す。
長次が居る場所は図書室だと、そう思った。
私はうまく長次の顔が見れなくて、長次から視線をはずしながら問いかける。
 長次、今ここに居るんだって?
 ああ。
視線をはずしたまま、言葉を探す。
口の中がカピカピに乾いていて、うまく喋れなかった。
喉まで渇いて、そういえば今の季節が秋だったことに気づいた。
春に別れて、秋にまた戻る。
ロマンチシズムがとまらない。いや、ロマンチシズムってそもそも何だっけ。
 忍者は、やめたんだ?
気づけば口が勝手に動いていた。
私の言葉に、一瞬部屋の温度が下がったような気がした。
焦って視線を長次に戻す。
長次は私をずっと見ていた、昔と同じ目で。
何故か、焦る。長次の冷めた目が私を急かした。
 あのね、長次。
私も、やめようと思っているんだ、と。
続けようと思った言葉は長次の静かな声で掻き消される。
 足を、と。
冷たい声だった。静かに、トンと私の胸に落ちる。
私は視線をゆっくりとさげる、長次の下半身へ。
 足を、きった。
その声を私は一生忘れることはないだろう。
長次の下半身、右足部分が空白だった。
何も無かった、本当に、何も無かったのだ。
どくん。心臓が飛び跳ねる。口から飛び出てしまいそうなくらい、強く。
ごめん、と言いたかったけれどそれは言ってはいけないと思った。
心臓がばくばくと飛び跳ねている。あっちこっちにぶつかる。
手がわなわなと震えて、その震えを隠そうと頭にを抱えた。
長次はもう私を見ていなかった。遠くを見ているような、そんな目をしている。
皆、変わっていた。当たり前だ、二年なんて、あっという間だから。
それでも変わらないで居て欲しかった。
あ、違う。違う。
私だけが、変わっていないんだ。
だから、みんなも同じように、あの頃のままで居て欲しかったんだ。
長次が一つ息を吐いて、私の名前を呼びながら私を見る。
 こ、へい。
と、その目がまた驚きで開いた。私の名前を呼ぼうとしたその声の末尾が千切れて霧散する。
私は泣いていた。涙が止め処なく、流れていた。
頭を抱えていた手で、必死に涙をせきとめる。
それでも指の間をぬって涙は地面に落ちた。
 こへい、た。
長次が私の名前を呼ぶ。
その声は昔と同じくらい甘くて優しいのに、長次はもう昔とかわってしまっているんだ。
長次の右手が机の上で丸まっている。
私は顔を隠しながら、指の間からその手を見ていた。
夜、眠れないとき、私はその手を掴んで眠った。
長次から私の手を握ることはなくて、いつでも私から長次の手を握っていた。
長次の手が握り返されたのは、卒業式のあの日だけ。
いつだって、長次は私が無理矢理に押し付けたものを笑って受け入れてくれた。
甘やかしだったのか、何となく、そうしていたのか。
あの頃の、幼さ特有の優しさだったのだろうか。
だとしたら、もう長次は今の私を受け入れてくれないんじゃないかと思った。
そして私はそれが何よりも怖くて、それでも触れたくてたまらなかった。
私は涙をとめられずに、嗚咽を繰り返しながらも震える左手をそっと長次の手に重ねた。
う、う、と私の嗚咽だけが響く。
長次の右手はとてもあったかくて、私はますます涙がとまらない。
 ちょう、じ。
途切れ途切れに、名前を呼ぶ。
 ああ。
長次が相槌をうつ。
ゆっくりと、左手が何かに包まれる。
涙越しに、長次の手が私の手を握っているのが見えた。
とまらない。涙が、もう。
とうとう、とまらない。
私は崩れるように長次に抱きついた。
長次の左手が私の背中を抱く。
まるで赤子のように私は酷く泣いた。
瞳の裏に貼りついた光景を捨てるように、泣いた。
 なぁ長次、お前はぜんぜんかわってない、かわってないよ。
私は息も絶え絶えに、嗚咽の合間に訴える。
 長次、長次、なぁ、ちょう、じ。
長次の手が私の左手を強く握り締めた。
私が死んだら、左手だけは焼かずにそのまま埋めて欲しい。
ふと、そんなことを思った。


*****


長次と小平太の鬱なお話。
長次が足を失ったのは子供を守る為だったりして。
まぁそういう話。

寂しい憧れ 2009,6,1
6はと6い話。










傘を、深く被る。
世を忍ぶ仮の姿、なんてそんな格好は良くないけれど。
忍んでいるのは確かだ、だけども別に誇れることでも無い。
遠く伸びる影を後ろに残して、ゆっくりと道を行く。
ろくに舗装されてない山道。
子供が遊んでいるのだろう、小さな丸い石が道の端に山になっていた。
暑い。
今年の夏は、格段に暑い。
去年はそんなに暑くなく、むしろ雨ばかり降っていた気がした。
梅雨と夏の境目がわからないまま、気づけば秋になっていた。
雨の音がすると、去年のあの日を思い出す。
だから、今年は雨の日が少なくて良かった。
去年と同じくらいの頻度で降っていたら、私はきっと発狂していただろうから。
ふ、と口元だけで笑って道を急ぐ。
この調子で歩いていたら、着くのが遅くなってしまう。
ポケットにしまった紙を取り出し、道を確認した。
 もうすぐだ。
何年も会っていなかった友人からの手紙を手にしたのは、つい数日前、在学していた学園を訪れたときだった。
話の終わりに、先生はそういえば、と私に手紙を差し出した。
「覚えているかな、六年の……」
この子たちも数日前に来てね、昔の友人が来たら渡してくれと頼まれたんだよ、と先生は続ける。
私はその場で開かず、先生に礼を言い足早に帰宅した。
家に着いて、すぐに手紙の封を開けた。
そこには、今住んでいるところの地図が入っていた。
それと一緒に、短い手紙も。
私はその手紙に目を通して、静かに封筒に戻した。
ぼんやりと一人の部屋、天井を見上げる。
何かをする気が起きない。
とくとくと、知らない内に身体の中から何か大切なものが零れていく。
私は床を這いずって薄い毛布を布団から一枚引っ張った。
それを身体に巻きつけ、目を閉じる。
今は、床の固さと冷たさが心地よかった。
そして気づけば、私は意識を失っていた。

私が友人宅を訪れる決意をしたのは、それから数日後のことだった。
 ここか。
雑な造りの家。
それでも、木の板が新たに貼り付けられていたり、と多少工夫が見られる。
森の奥に転々とこうした家がある。
その内の一つがまさか友人の家になるとは、思ってもみなかった。
 居るだろうか。
微かな期待と不安が入り混じった複雑な感情を持ちながら、そっと扉に手を当てる。
「あっ、お客さん?」
と、背後から明るい声がした。
ゆっくりと振り返る。太陽が眩しくて、思わず目を細めてしまった。
茶色のふわふわとした髪が太陽を反射して、キラキラ光っていた。
髪と同じ栗色の吊り目が私を捉えて、驚きに見開かれる。
「仙蔵!」
わっ、と。まるで子供を脅かすかのような大声で彼は私の名前を呼んだ。
それがあの頃と変わらないままで、私は思わず笑ってしまった。
「ああ、久しぶりだな、伊作」
本当にそう思った。懐かしくてたまらない。
そしてそれと同時に、胸の奥の奥からじんわりと暖かくなった。
伊作は輝くばかりの笑顔で私に駆け寄る。
眩しい、太陽と同じくらい。目が開けていられない。
「どうしてここがわかったんだい? あ、もしかして……」
「つい数日前にね、行ったのさ」
「なんだ、だったら私たちももう少し遅く行けば良かった。そしたら仙蔵と学園で会えたかもしれなかったのに」
 私、たち。
その単語に胸がちくりと痛んだ。
「そう、だな」
「とりあえず立ち話もなんだし、中入ろ。ちょっと散らかってるけど」
そう言って笑った伊作は何だか照れくさそうだった。
その表情が、今が幸せであることを物語っていた。
私は伊作に促されるままに家にあがる。
散らかっている、と言ったけれどそんなに汚くない。
むしろ、これで散らかっているのだとしたら私の家はどうなってしまうのだろう。
「綺麗だな」
「そ、そんなことないよ。……でも、留さんが綺麗好きだから」
ああ、なるほど、と。
納得してしまう自分が可笑しかった。
手際良くお茶を淹れる伊作を待ちながら、ふと辺りを見回した。。
微かに、薬の匂いがする。部屋にはそこかしこに花が飾られていた。
服が壁にかけられている、二着ずつ、綺麗に。
「はい、どうぞ」
その声に慌てて前を向く。
伊作は学園に居る頃よりも、少し背が高く、髪が短くなっていた。
「僕が分量を考えたお茶なんだ」
そう言ったお茶は、甘い香りのするものだった。
味は少し苦い、普通のお茶と同じ。
「美味いよ」
「ありがとう」
暫く、向かいあったまま互いにお茶を飲んでいた。
静かな時間が流れる。
私は何をしに来たのだろう。いや、昔の友人を訪ねるのに理由なんている筈もない。
ふぅ、と一息つくと伊作がまず先に口を開いた。
「留さんは、まだ用事があって町に居るんだ。帰ってくるのは夕方くらいかな」
「いつもそれぐらいなのか?」
「うーん……、今日は仕事がないんだけどね、仕事がある日も同じくらい。僕は普段朝から昼まで茶店の手伝いをしてる」
「なるほど」
「仙蔵は?」
その問いには答えず、お茶を一口飲んだ。
香りだけ、甘い。嗅ぎ慣れた花の匂いがする。
私はゆっくりと口を開いた。
「まだ、忍んでる」
「……そうなんだ」
伊作の声は哀れみも尊敬も混じっていない、ただの言葉だった。
「そうさ」
私は答えて、残ったお茶を飲み干す。
伊作は「お代わり用意するね」と言って、そっと立ち上がった。
私は伊作の背中を見ながらポケットに手を突っ込む。
すると、丸まった紙に手が触れた。
手紙は、家に置いてきていた。
伊作の字で書かれた、短い手紙。
卒業してから、村医者をしていたこと。
そこで食満に再会したこと。
足抜けした食満と共に、森の奥にある家で暮らしていること。
もし良ければ遊びに来て欲しい、と。
要するに、忍として生きる私たちに安全な場所を提供してくれる、ということだ。
何かあったらここへ来てくれ、と。
伊作は昔からかわっていない。
自分の身よりも、他人を優先するところ。
そんなところに、恐らく食満も救われているのだろう。
私は手紙のことを思い出して笑った。
そこに、不思議そうな顔をした伊作がお茶のお代わりを持って戻ってきた。
「どうしたの?」
「いや、大したことじゃない」
「そう?」
なら良いけど、と言いながら私の前に甘い香りのするお茶を置く。
ああ、そうだ。この香りは。
「……仙蔵」
私は伊作がこれから言うことを何となく理解していた。
勘が良いのは、昔からかわらない。
知らない方が良いことがこの世には多すぎることを理解したのは、卒業してからだった。
「仙蔵?」
伊作が私の名前を呼ぶ。
何だ、早く言ってくれ。いっそ、一思いに。
心の中で悪態をつく。
「ちょっと、仙蔵」
伊作が私の肩に手を伸ばす。
「え」
間抜けな声が、私の口から零れて落ちた。
「あ」
伊作が苦しそうな顔をして私を見ている。
どうしてお前がそんな顔をしているんだ、と。
言おうとしたら何かがぽたりと私の足に落ちた。
 なみだだ。何故?
「……今日、君が来てくれてほっとしたんだ。君が思ったよりも元気そうだったから」
伊作は眉根を寄せたまま、呟く。
「でも、少し驚いた。君はきっと、文次郎と一緒に来ると思っていたから」
「文次郎――」
気づけば口に出していた。
 文次郎、そんな奴も居たな。
そう言ってやるつもりだった。
なのに、私の口はポカンと開いたまま、何も音を出さなかった。
「仙蔵」
伊作が私の名前を呼んでくれる。私の肩を掴む手が強くなる。
私は馬鹿みたいに涙を流しながら、口を開いた。
「お前は、幸せだ、伊作」
くらくらする。眩暈が酷い。
ずっと、そうだ。最近、調子がすこぶる悪い。
「お前と会ったとき、幸せなんだと思った。本当に今幸せなんだと、そして、お前と食満が一緒に暮らしていることが自然だと思った」
甘い香りがする。白い湯気がふわふわと漂っている。
良い香りだ、あいつの嫌いな香りだった。
「……無様だ、ありえるわけがない」
涙がとまらない。息が出来ない。苦しい。
有り得ない夢を見た。
私があいつの食事を作り、あいつの服を洗い、あいつに抱きしめられて眠る。
綺麗に咲き誇る花を見ながら、一緒にご飯を食べる。
大きな木の下で手を繋ぎながら、一緒に眠る。
そんな全てが、私をおかしくさせた。
あいつに会いに行こうと思った。
卒業してから、随分と会っていない。
それでも住む場所は知っていた。ただ、ずっと訪れる勇気がなかっただけだ。
私は書かれた地図を手に、その日の任務が終わったら訪ねようと決めていた。
その晩だった。
雨が降っていた。むせ返るほどに強い臭いがする雨だった。
あいつが死んだと、仲間から聞いたのは。
出来たら、知らないところで死んで欲しかった。
そして永遠に私の中で生きたままで、私のこの思いを綺麗な思い出のままにして欲しかった。
でももう、知ってしまえばどれも叶わない。
汚い字で書かれた地図を手に、私はあいつの家に駈けた。
真っ暗な部屋。汚い。
こんなところで暮らしていたのか、と思った。
雨のせいか、湿気で酷い香りがする。
部屋の奥へ進む、と甘い香りに辺りを見回した。
そこには私が好きだった花が飾ってあった。
汚い部屋の中で、そこだけが別の場所のように綺麗だった。
新しい水が器に張られている。
私はふらふらとその花へ近づいた。
嫌いだと、言ったのに、あいつは。
こんな花臭いだけだ、と。何度も何度も言っていたのに。
込み上げる衝動を、抑える術を私は持たなかった。
私は狂ったように部屋の中を荒らした。
何か、あいつが残したものが欲しかった。
何を探しているかわからないけれど、必死に探した。
夜が落ちて、朝が昇るまで、ずっと。
太陽の光と鳥の鳴き声の中、私は震えながらあいつが残した落書きを読んでいた。
そこには、あいつらしくない泣き言がたくさん書かれていた。
 もういやだ、と。
私たちは人を殺すには優しいものを見すぎていたのかもしれない。
 あいたい。
紙の一番下に、ぐにゃぐにゃの字でそう書かれていた。
泣いた。
湖が出来るくらいに、私は泣いた。
夢を見た。有り得ない夢を見て、私は少し可笑しくなっただけなのに。
「それでも、そんな日々も良いんじゃないかと、思っていたん、だ」
もし私がそんなことを言ったら、あいつはどうしただろう。
一蹴しただろうか、それともあの照れてるのか怒ってるのかわからない顔で頷いてくれたんだろうか。
「伊作、私は弱いんだ、とてもとても」
「仙蔵……」
「答えが無いことが、私をより弱くする」
もう枯れたと思ったのに、涙はどうしてこんなに流れるのだろう。
「馬鹿だな、お前は悲しくないのに」
「違うよ、仙蔵」
気づけば、伊作も涙を流していた。
私たちは、互いに涙を流しながら向かいあって座っている。
「僕も、悲しい、僕でさえ、悲しいんだ」
伊作は涙を流しながらそう言った。
「だから、君はもっと悲しんで良いんだよ……!」
震えながら、伊作は叫ぶように告げた。
語尾は弾けて消えて、私はその声に恐る恐る震える手で伊作の頬に触れた。
「泣いて良いんだよ、もっと、もっと欲しがって良いんだよ!」
伊作の叫びに身体が震える。いや、もっと前から震えていたのに、見ないふりをしていただけだ。
私の手の震えが強くなる。歯がガタガタ鳴って、そして喉が痙攣した。
 文次郎、そんな奴も居たな、なんて。
どうして言えただろう?
「もんじ、あ……」
伊作の頬に触れていた手を咄嗟にひいて、自分の口元に当てる。
一緒に居ようって言って。
手を握って。
笑って。
何でもないことを話して。
辛いこともぶちまけて。
おいしいご飯を食べて。
綺麗なものを見て。
ずっと、ずっと、飽きるまで続けて。
それで、いつか死ぬときに。
すきだよ、って。
そう言えたら、しあわせだったなって。
そう言えたら。
馬鹿みたいなプライドを捨てて。
そう言えたら。
「あ、ああああ、あああぁぁぁあ……!」
喉から落ちる。涙が眼球を押し上げて、地面に落ちる。
私は始めて自分の身体の自由を失った。
伊作の細い腕が私を守るように抱きしめる。
私は伊作の服を強く握り締めて、衝動のまま叫んだ。
「ああ、ああああああああああぁぁああああああああ!!!!」






私を置いて行くな、と。
私はお前の服を握りながら言った。
寝ぼけているんだ。だからこれは数には数えない。
夢だと思ったって良い。
お前は私を振り返り見て、そしてまた背中を向けた。
当たり前だ。
お前はそう呟いた。
私は驚いて、でもとても嬉しくて、ふふと笑った。
なぁ、いつか。


*****


なんぞこれ。。
なんだかな。


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