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仕事ものしりコラム

スープの冷めない距離は20km トランスヒートコンテナ、実用化へ

トランスヒートコンテナは熱を運ぶ技術である。工場排熱や焼却炉の廃熱など、ただ捨てられていた熱を媒体に蓄熱し、別の場所に運んで利用する。ドイツで開発されたこの技術が2008年4月から青森県で実用化されることになった。さらに、熱を利用して冷やすという新しい技術も実用化に向けて研究が進んでいる。

スープの冷めない距離は20km トランスヒートコンテナ、実用化へ

熱を運ぶトランスヒートコンテナ

省エネ対策のネックはエネルギーが保存できないことにある。火力発電所は最大ピーク時に合せて、消費電力が下がる夜間でも昼の1/2程度の発電を行っているし、原子力発電所は昼も夜もフル稼働だ。この余剰電力を蓄電できれば、エネルギー問題は大きく改善されるはずだが、バッテリーのような既存の蓄電技術ではまったくコストが合わない上に物理的にも不可能だ。

そこで一般的に使われているのが夜間電力を使ってお湯を沸かし、それで給湯を賄おうというもの。電力を熱の形で保存しておくわけである。

大量のエネルギーを保存する方法はほぼないのが現状だが、その中でも熱の保存はある程度道筋が見えている。1999年にドイツで開発されたトランスヒートコンテナは酢酸ナトリウムなどの潜熱蓄熱材(PCM)を使って工場や焼却場などから出る排熱を蓄熱、トレーラーに積んだタンクで任意の場所まで熱を運ぶシステムだ。

まず排熱でオイルを加熱、パイプを通じて熱交換器に集める。熱交換器はPCMが詰められたタンクを加熱する。PCMは常温では固体だが、加熱することで液化する。目的地の熱交換器をタンクのPCMで加熱、熱の放出が終わるとPCMは固体に戻る。

トランスヒートコンテナは石油を運ぶタンクローリーのようなトレーラーでPCMのタンクを運ぶ。熱源からだいたい10〜20km程度の施設が対象だ。熱のチャージには約3.5時間、放出には約7時間が必要になるため、時間的な面では効率が良くないが、トランスヒートコンテナを扱う三機工業によると輸送距離30kmでの熱効率は91%。これは電力の53%、高温水輸送の37%に比べ、かなり高い。蓄熱した状態でPCMの温度は1日あたり1度程度しか下がらないため、1週間ほどは保存できるという。

青森県八戸市にある八戸港ポートアイランドでは三機工業のトランスヒートコンテナを使った熱の供給を予定しており、青森県栽培漁業センターでアワビ養殖の水槽の加熱に利用することが決まっている。

ごみ焼却場では温熱プールなどに廃熱を使っていたが、それは200度以上の高温部分で、それ以下の低温部は排熱されていた。PCMはそうした低温排熱も効率よく取り込むことができ、パイプの敷設などの大きなインフラ整備の必要なく熱の輸送が可能になる。

タンク1つで1世帯が必要とする熱量の55日分を賄えるとされており、将来、効率的な運用が可能になればプロパンガスのようにトランスヒートコンテナによる熱の配分ができるかもしれないし、家庭の廃熱をPCMで蓄熱、有効に利用することも考えられる。

熱を伝え、音で冷やす不思議な熱音響冷却装置

同志社大学の坂本眞一研究員らが実用化を進めている熱音響冷却装置は、廃熱で冷却する不思議な装置だ。しかも熱を伝えるのは音である。

熱音響冷却装置は加熱部分のスタックAと冷却するスタックBからなり、スタックA-B間はパイプで円環状につながれている。スタックAを加熱すると音が出る。スタックAは筒状で閉じている。温めるのは一端だけだ。一端を温めると内部のガスが膨張、もう一端へと向かい、そこで冷やされて元へ戻り、また温められて、を繰り返す。ガスが膨張→収縮→膨張を繰り返し、それが音に変わるのである。発生した音がスタックBに届くとスタックAとはまったく逆のことが起きる。音によってスタックB内のガスが膨張→収縮→膨張を繰り返すと加熱の反対で熱が放出される。つまり冷却作用が起きるのである。

この現象を使うと排熱によって冷却するという不思議なことが起きる(スターリングエンジンで知られる物理現象だ)。坂本氏の実験ではスタックBを40度以上も冷却することに成功した。熱音響冷却装置は構造が非常に単純で電気は不要、それでいて氷点下まで冷却できるのだから用途は非常に広い。家庭の廃熱を使って動く電気代ゼロの冷蔵庫も夢ではないし、砂漠地帯なら冷房使い放題である。坂本氏はパソコンのCPU冷却や自動車のクーラーへの導入から製品化を進めたいとしており、期待したい。

地球温暖化という大きなスケールを考えるのは個人には難しいが、電気を使わずに熱を直接使うようにシステムを変えて、それで電気代が安くなるならしめたものである。個人用の製品も視野に入れて開発いただければと思うのだ。

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