携帯電話を肌身離せなくなっているユーザーにはショッキングな事故だった。韓国で携帯電話の爆発による死亡者が出たというのである。ニュースサイトには、焼けて溶けかけた携帯電話の生々しい写真も掲載され、その恐ろしさを物語っている。しかし、真相は違っていたらしい。 |
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携帯電話爆発事故が伝えられたのは、2007年11月28日。現地からの報道によると、同日朝早く、韓国中部・忠清北道の採石場で、33歳の男性作業員が死亡しているのを同僚が発見した。胸ポケットに入っていた携帯電話の電池が爆発して、肺と心臓が損傷を受けたのが原因とみられた。
発見した同僚は「私がみつけた時、彼は地面に倒れていて、まだ携帯電話は燃えていた。火は自分が消した」と話したという。携帯に使われるリチウムイオンバッテリーはエネルギー量が大きく、過充電した場合や、内部がショート場合、発火・爆発することがある。実際に爆発事故は何度も起こっている。 さらに、仕事に関しての一番の相談相手をたずねたところ、職業生活に「希望がもてる」人は、「上司」「職場の先輩」「同僚」の上位3つの回答で合計約6割以上を占め、「特にいない」の回答は10.0%であった。これに対し、「希望がもてない」人では、「上司」「職場の先輩」「同僚」の回答合計は4割を超える程度に留まり、「特にいない」とする回答は21.7%にも及んだ。
救急で受け入れた医師は、取材に対して「溶けた携帯電話が胸のところに張り付いており、携帯電話の爆発以外に死亡の理由は考えられない」とコメント。携帯電話による死亡事故として世界中に伝えられた。携帯電話は韓国メーカーのものだったという。
ところが、翌日になって、話は一転する。調査が進むと、死亡した作業員には胸のほかにも不自然な損傷があり、警察が第一発見者の同僚を追及したところ、作業中に誤って重機でひいてしまったと認めたのだ。自分の過失を隠すため、携帯電話を“犯人”に仕立てようとしたのだった。
では、本当に携帯電話で人が死んだ例があるかというと、中国で2007年7月に起こっている。人民日報によると、甘粛省の22歳の電気溶接工が作業着の胸ポケットに入れていた携帯電話電池が爆発し、折れた肋骨が心臓に突き刺さって死亡したという。爆発した携帯電話は米国メーカーのものだったというが、バッテリーが純正であったかは分からない。
中国では、他の“ニセ物商品”と同様、携帯電話のバッテリーも相当数の模倣品が出回っている。業者は、これらを「原装行貨」(純正品)、「倣冒原装」(準純正品)、「高倣品」(高級模造品)、「兼容品牌電池」(正規互換電池)、「出厂品」(工場出荷品)と呼んでいる。現地紙が調査したところによると、これらの価格差は極めて大きく、それぞれ店頭では498元、100元、55元、25元、5元で売られていたという。
模造品にはニセ物(ときとして本物)のブランドマークが付いているものもある。また、中国の一般ユーザーには、外資メーカーの純正品の価格は“ブランド料”をとっているために不当に高いという感覚があり、模造品を使うことには抵抗がないらしい。
模造品は、多くは現地の小さな工場で生産されており、安いものは品質が不安定な上に、コストを削るため、過電流保護器、過充電防止回路、温度センサーなどを省略していることも多いという。こうした模倣電池は非常に危険なのだ。ただ、純正品でも発火・爆発のおそれで大規模な回収が行われる例もあり、絶対安全とは言いきれない。
万一のときにはどちらでも被害は免れないのだが、胸ポケットに入れた携帯電話を出して尻ポケットに移してみる。