WWW http://www.iwate-np.co.jp

かぐやの月探査順調 奥州RISE開発の高度計使用


 奥州市水沢区の国立天文台RISE推進室(佐々木晶室長)で研究開発され、月探査衛星「かぐや」に搭載されているレーザー高度計での観測が順調だ。月面にレーザー光を発射して、クレーターの状況など月の地形を調べており、間もなく全球のデータが世界で初めて得られる見込みだ。月面の重力分布など全体のプロジェクトもトラブルがなく推移しており、月の起源などの秘密に迫っている。

 主衛星かぐやに搭載されているレーザー高度計は縦約30センチ、横約40センチ、奥行き約40センチの箱形の直方体。質量は20キロ。月面に向かってごく短い波長のレーザー光を発射し、その往復時間で月表面の起伏を計測する。

 かぐやは月の「南極」と「北極」をつなぐ軌道を1周約2時間かけて周回。レーザー高度計は月の公転と自転を利用することで、全球における地形を観測できる。

 同推進室によると、これまで観測されることのなかった月の両極部分(緯度75度以上)などの計測が、特に成果を挙げているという。

 昨年12月の本格観測以来、これまでに月の4分の3程度の地形データを取得。▽高さや深さが9キロほどある月面の起伏▽これまで見つかっていなかった直径数キロの比較的小さなクレーター−などが観測されているという。

 研究員の石原吉明さん(30)は「クレーターの中央部が盛り上がった中央丘や複数の外輪を持つリングクレーターなどが鮮明に見えている」と説明。宇宙航空研究開発機構は近くこれらの映像を公開する予定だ。

 プロジェクトでは、月の引力により生じる主衛星や子衛星の軌道のぶれなどで月の重力分布も調べており、レーザー高度計で得られたデータと合わせ、月の地殻など内部構造も調査している。

 かぐやは10月ごろまで月を周回。レーザー高度計による地形計測も同時期まで行われ、最終的には米国の衛星クレメンタイン(1994年)の数百倍の密度での計測を目標としている。

 月の地形観測とは レーザー高度計がレーザー光を発射し、月面の高さを5メートル単位で計測する。観測間隔は南北方向に約1・5キロ、東西方向には約2キロを目指す。観測点は、最終的に3千万点以上になる。月面の起伏の観測精度は、従来の月探査衛星クレメンタイン(米国)の20−30倍、観測点の密度は数百倍が見込まれ、月の両極部分の計測は世界初。

【写真=調査を進める国立天文台RISE推進室の研究員たち。間もなく月全球における地形データが得られる=奥州市水沢区】

(2008/01/29)

ロード中 関連記事を取得中



トップへ