【今、何が問題なのか】次の標的は飲酒か
2009/07/13 11:56更新
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記事本文
世界的に過度な飲酒への警告が目立つようになった。25人に1人が飲酒がらみで死んでいる。ロシアの人口減少はウオツカの飲み過ぎが原因であり、豊かになったアジアの新興国の人々が欧州人並みに飲酒するようになれば、健康被害の規模は計り知れないという。喫煙人口は減った。きょうのテーマは「次の標的は飲酒か」とした。
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記事本文の続き ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領(43)は先ごろ、政府に対し、国民が飲み過ぎないための措置を講じるよう命じた。ソ連崩壊後の1990年代、ロシア経済は破綻(はたん)し、人々はつらい日々を過ごした。大統領はしかし、「私たちはいま、90年代よりもたくさん飲んでいる」と語った。
■男性平均寿命60歳
ロシアでは今月(7月)から、カジノが全面禁止となった。ウラジーミル・プーチン前大統領(56)=現首相=が2006年、カジノ規制法を可決させ、それが施行された。社会を健全にするのだという。今度は若きメドベージェフ大統領が飲酒に切り込むのだろうか。
ロイター通信によると、ソ連時代の1980年代、ミハイル・ゴルバチョフ共産党書記長(78)が、飲酒の規制に乗り出した。だが、アルコールの違法製造・販売をはびこらせただけに終わった。ロシア人は男は酒豪をよしとする。次の指導者、ボリス・エリツィン元ロシア大統領(1931~2007年)は度々、飲み過ぎを指摘された。
過度の飲酒は、ロシアの深刻な問題の一つだ。国連は今年4月、ロシアの人口はこのままでは、現在の1億4200万人から、2025年までに1億3100万人に減ると警告した。その要因として、食生活、喫煙と並んで、飲酒が挙げられた。ロシアの男性の平均寿命は60歳前後。飲酒が過ぎるからだとみられている。
■アルコールの値上げ必要
飲酒がらみで死ぬ人が増えているとする論文が、英医学誌ランセットに掲載された。それによると、00年は死亡者の3.2%だったものが、04年には3.8%に増加した。ほぼ25人に1人の割合だ。男女別では、男性が6.3%、女性が1.8%。地域別では欧州(ロシアを含む)で1人当たりの酒量が最も多く、飲酒がらみで死ぬ人も多い。
執筆者の一人であるカナダ・トロント大学のユルゲン・レーム氏が、タイム誌などに説明したところによれば、飲酒する女性が増えたのが要因であり、その背景として、新興国が豊かになってきたことが挙げられる。
英国やノルウェーなどでは、アルコール消費量の30%は女性によって占められるが、インドではなお5%に過ぎない。国が豊かなら、女性は飲酒する。そしていま、巨大な人口を抱える中国などのアジアの新興国が、女性が飲酒しうる国になりつつある。人類は飲酒の拡大を阻止するべきであり、その手段として最も有効なのが、アルコール類の値段を上げることだろうという。
■過度と適度の境目あいまい
ところで、「飲酒がらみの死」とは何だろう。アルコールの健康被害で真っ先に思い浮かぶのが、アルコール依存症だが、依存症では死なない。レーム氏らの論文では、いくつかのがんや心臓発作による死のほか、自殺や事故、暴力による死などが挙げられている。飲酒との因果関係は議論のあるところだろう。
しかも飲酒については、喫煙と違い、警告と同じくらい頻繁に、「効用」の指摘がある。過度な摂取はだめだが、適度ならむしろよいということのようだ。もっとも、個人差もあって、過度と適度の境目がよく分からない。
酔っぱらって醜態をさらしたり、人に迷惑をかけたりする。そんなとき、あからさまに非難せず、「体に悪いですよ」と言ってくれる人がいる。「25人に1人」の警告は、そういうことのようにも思える。
(内畠嗣雅(うちはた・つぐまさ)/SANKEI EXPRESS)
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【関連記事】【今、何が問題になっているのか】世界は飲み過ぎている? (2009(平成21)年3月12日付EX)
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