「農損部に不満のマグマ　北京厳戒　直訴者１０００人殺到」の記事詳細：イザ！

　中国の全国人民代表大会（全人代＝国会）が北京の人民大会堂で５日、開幕する。会期は１４日まで１０日間の予定。金融危機の暴風が吹き荒れる中、社会不安に直結する雇用問題への危機感から、「国内総生産（ＧＤＰ）の８％成長死守」への処方箋（せん）をどう示すかが最大の焦点だ。国政助言機関、人民政治協商会議（政協）第１１期全国委員会第２回会議は３日、人民大会堂で始まった。全人代と並行して雇用問題を中心に経済対策を議論し、政策提言を行う。

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　北京市内の最高人民法院（最高裁）の陳情窓口。２日、全人代開催に先立ち、地方からの直訴者が１０００人近くに膨れ上がった。周囲には直訴者を連れ戻す指示を受けた各地方の当局者が群がる。

　「友人が警官に暴行され植物状態にされた。何とか助けて」「無実なのに妻が実刑で刑務所」…。記者（野口）は窓口付近で十数人の直訴者に囲まれた。握らされた直訴状は瞬く間に２０センチ以上の厚さになった。

　直訴者は４、５年前と同じほどの数に膨張している。北京五輪開催を理由に押さえつけられていた反動が噴き出したかのようだ。市内に潜伏する直訴者は「少なく見積もって数万人はいる」（関係者）とされる。

　新疆ウイグル自治区ハミ駅で２月６日、国有鉄鋼企業の労働者５２人が武装警察隊と衝突する騒ぎがあった。労働者は直訴のために北京に行こうとした少数民族のウイグル族４０人と漢族１２人だった。

　「（衝突で）４人が負傷し、全員が強制的に追い返された」と、別行動で北京に直訴に来たウイグル族のウマイアー・アブラさん（４９）は言う。

　２月２５日、北京中心部の繁華街で３人が焼身自殺を図った。関係者は、この３人がウイグル族だったと指摘した。

　中国は今年１０月１日、建国６０周年を迎える。祝賀行事を華々しく開催したい指導部にとり、社会の安定は最優先課題だ。政府は「反体制活動は厳しく対処する」（当局者）一方、「家電下郷（家電を農村へ）」政策を推進する。テレビ、パソコン、携帯電話などを購入した者に販売価格の１３％の補助金を出す制度で、２億戸が住む農村部での内需拡大と都市との格差是正が狙いだ。

　農村が不安定化すれば、中国全体の安定に重大な脅威を及ぼす。中国にとって農村の安定は、必須の課題だ。（北京　野口東秀）

　■全国人民代表大会（全人代）　日本の国会に相当し、中国の憲法上は最高の国家権力機関とされる。全国の直轄市、省、自治区、軍などの代表で構成。全体会議は年１回開かれ、首相の政府活動報告や国家予算などを承認し、法律の制定・改正を行う。実際は共産党の指導下に置かれており、政府に対する監督機能や立法機能の強化を求める声は根強い。常設機関、全人代常務委員会の委員長は党内序列２位の呉邦国氏。