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来年度から全県立病院に医療秘書を 医療局が方針


 県医療局は、慢性的な医師不足で県立病院勤務医の労働環境が年々過酷になっていることを受け、2008年度から医師のカルテ作成などの事務業務を補助的に行う医療クラーク(医療秘書)を全23県立病院に導入する方針を固めた。現在、常勤医が特に不足している3病院で試行しており、「医師が患者と向き合う時間が増えた」「患者の待ち時間も削減できた」などと成果を上げている。達増県政は地域医療の確保を重要施策に掲げており、導入により医師定着の一助となりそうだ。

 医療クラークは医師の補助として主に事務作業などを行う。県医療局は病院ごとの配置人数を検討中で、最低でも1病院1人、広域の中核病院には複数の配置が見込まれる。県は臨時職員としての人件費など関連経費を08年度一般会計当初予算案に計上する方向だ。

 現場の要望を受け、すでに07年度から県立千厩病院(194床)、遠野病院(221床)、大船渡病院(479床)で試行。

 千厩病院は10月、2人の医療クラークを臨時職員として採用した。2人はこれまで医療関係の仕事をしたことがなかったが、医師の指導を受けながら、現在は外科と泌尿器科で事務業務をこなす。

 泌尿器科に配置された安東広美さん(26)は、阿部俊和副院長兼泌尿器科長が外来患者を診察している間、隣で患者からの病状説明や診察内容、薬の種類などをパソコンに打ち込む。作業後、阿部副院長がチェックする。

 阿部副院長は「これまでは、事務作業が多いため外来診察は長引いていたが、患者さんの顔を見ながら話す時間も増えた」と負担軽減を実感。

 安東さんは「病名や薬の名前など専門用語が多くて大変だが、徐々に慣れてきた。患者さんが希望の時間に帰れるように早く仕事を覚えていきたい」と話す。

 医療クラーク導入にあたっては、採用後、医師によるマンツーマンの指導が必要なため、多忙な診療科への即配置は難しい面もあるが、過酷な勤務医の状況を少しでも軽減し、勤務医不足に歯止めをかけようという苦肉の策ともいえる。個人情報を取り扱うため、こうした面での研修も求められる。

 県医療局の法貴敬局長は「試行している病院での効果などを検証しながら、配置する人数や業務内容を探っていきたい」としている。

 医療クラーク 診断書や紹介状の作成補助など、これまで医師が行ってきた事務を補助的に行う。厚生労働省は「医療クラーク(医療秘書)制度」を08年度から導入し、人件費などの費用は診療報酬改定で手当てする方針を固めている。日本医療教育財団(東京都)が実施する民間の資格はあるが、国家資格ではない。県立病院への採用に関しては、特に資格は設けていない。

(2007/12/05)

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