第二次世界大戦を中心に国家を擬人化することで、当時の国家や戦争と必然的にむすびつく問題を矮小化したり、当時の匿名掲示板の偏見をそのままネタとして利用していたWEB出身漫画『ヘタリア』。
『ヘタリア』作者の浅さと、読者の責任と - 法華狼の日記
ちなみに何で日本君が戦ったかは
詳しくはネットで調べてみてね。切ないよ日本君。゚(゚´Д`゚)゚
そしてすれ違う中国。歴史とは残酷です。マンガで題材とされた日清戦争は、遅れてきた帝国主義者として権益争いに加担したにすぎない。以降も、第一次世界大戦は欧州の戦争に便乗した火事場泥棒、満州事変から日中戦争までは現地の暴走と内地の追認、他も「切ない」という表現がふさわしいとは考えにくい戦争ばかりだ。逆に、相手へ勝手に理想を託した面は日本にも多々ある。中国が一方的に期待した「すれ違い」ではない。
話題の漫画『天幕のジャードゥーガル』の作者トマトスープ氏が歴史趣味で『ヘタリア』を経由していたと言及するインタビュー記事をきっかけとして、国際間で批判が再燃しているようだ。
Tomato Soup : "on se demande toujours à quel moment on peut apporter une pointe de fiction dans un récit historique"
その批判に対して『ヘタリア』の愛読者からも少なからず差別を見逃した反省や、国家全体を擬人化することにともなう問題を認める反応も出てきているのだが*1、現在は問題でも当時は問題に感じないことが当然だったという反応もある。
そして偏見的な描写が正しかったかのように擁護する動きも複数ある。たとえば4000以上のいいねを集めている「ゆうな(南)@歴史(💉×4)(献血70↑)✝️🇺🇦@yuunachuraumi」氏。
ヘタリアで今再炎上してる韓国まわり、そもそも2000〜10年代の韓国の無茶苦茶な反日ぶりを知ってる身としては「あれが日本国内では問題視されなかった程度には現実の韓国のほうがブレーキが壊れていた」時代の産物やね
・蒸し返してはゴールポストを動かして金を取ろうとする慰安婦問題
・ヘッドハンティングしては技術を吸い取ってリストラ組行きのサムスン
・ウリナラ起源説
・言わずもがな震災のお祝い
・他にも事ある毎にスポーツへの政治思想の持ち込み
これでもまだ足りないからやんなっちゃう
河野談話や村山談話をなかったことにしようとしたり、安倍晋三氏*2をはじめ多くの虚偽を流して問題を否認しつづけていた日本社会の動きは、蒸し返しにならないのだろうか。
一方で「ゆうな(南)@歴史(💉×4)(献血70↑)✝️🇺🇦@yuunachuraumi」氏自身は、ゲーム『アサシンクリード シャドウズ』に黒人侍の弥助が登場することに対して、いったん侍という言葉の多様性を認識しつつ、最終的に歴史学者の見解を無視して攻撃をおこなっていた。
侍の定義が曖昧だった話をするなら、今回平山先生の発言でわかったのは「有力者の私兵としての侍」と「公的保証を受けた身分としての侍」がいて、弥助は前者で按針は後者(前者から移行)、
それが大きく引っくるめて皆「侍」呼びされてたから弥助が後者のように認識されていたという話
日本で正しく武士階級として公的に記録された西洋人は三浦按針(ウィリアム・アダムス)と耶楊子(ヤン・ヨーステン)だけで、弥助は徹底的に検証された結果ただの側用人でしかない
「伝説の黒人侍」は黒人やUBIが誇張した妄想だよ
アサシンクリードの場合、「これはトンチキファンタジーJAPANです」って言っときゃもう少し弥助には目を瞑ったにしろ、
・ゲーム内に留まらない弥助の歴史捏造
・神聖な社殿が破壊可能なギミック
・刀剣の無段転載・杜撰な文化考証
とまあ数え役満ホームラン
もちろん弥助を黒人の侍と位置づけてきたのは日本国内の小説などが先だ*3。弥助が侍であったと断言する歴史学者もいる一方、侍であった可能性を完全に否定する著名な歴史学者はいない。
日本軍慰安所制度の諸問題も、インターネットで「徹底的に検証」することで、歴史学に反した見解が一時期は完全に定着していた。黒人の活躍をこばみたい差別主義から、同じような反応があっても意外性はないが。
また、id:hokusyu氏経由*4で知った、2600以上のいいねを集めている「姉崎もね@moneko_dr」氏の「反日」に対する反発の正当化だが。
ヘタリアの韓国描写についてはあれがもともとネット発の作品なのと、あの当時実際韓国側の反日(というより日本に対する、戦時関係ないものを多数含んだアンチ行為)がめちゃめちゃ多かったこと考えれば寧ろ丁寧に描く理由がなかったのだと思うが
たとえば宗教のビラを面白がるなかで、たとえビラの表現を引いたのだとしても、証言者を「自称元慰安婦の婆さん」と記述していた。年齢があわないという批判がよくある難癖だという留意もない*5。
駅前とかで配ってる変な宗教のビラってちょっと面白いよな(明らかに年齢が合わない自称慰安婦の婆さんを批判しまくる○福のビラをもらったことがある)
さらには古典的すぎてFAQで反論してすませられるような南京事件否定論も開陳していた。現在ここまで素朴な否定論は逆に珍しい気すらする。
日本軍がどこどこの街で30万人虐殺した!!…みたいなやつってスーパー系抗日映画のノリで発言してんのかなやっぱ(刃物と銃で原爆並の威力出せるなら敗戦してねえんだよなぁ……って毎回なるあの手の主張)
日本兵の悪役描写は信憑性イマイチだし……南京に30万人もいませんですしちなみに日本に落とされた原爆での死者が2回分合わせて30万くらいだったはず。
当然のようにゲームで黒人侍が主人公になることへの反発へ端を発したインターネットのデマにも染まっているし*6、日本が韓国を差別的に消費することは正当化しても日本が敬意をもって消費されることには反撃したいらしい。
日本人からしても弥助は浪漫あるし、あちらさんの夢の投影先になること自体は楽しくてええんちゃうなのだが、「日本人は組織的に黒人奴隷を使っていた」なんてトンデモはそういう幻影を幻影として楽しむ文化を壊してしまうものでもあるのよな
この件って以前からあの人らの行儀が悪いからこっちも反撃せざるを得ないって感じではないか?すべてに現実の社会問題持ち込んで批判したり東洋人軽視がなけりゃこっちだって笑い飛ばして済んだのに
少し興味深いのが、「ゆうな(南)@歴史(💉×4)(献血70↑)✝️🇺🇦@yuunachuraumi」氏も「姉崎もね@moneko_dr」氏も、それぞれプロフィール欄で「文卒医クラ寄り歴クラ いだてん過激派大河民」や「歴史・民俗学・美術・生物など小難しい話だーーいすき」と自認していること。
歴史を愛好していると自認しながら、いやだからこそ集めた知識を恣意的に活用できて、愚かしい歴史を好悪で否定してしまう。歴史趣味の危うさを感じずにいられないし、その危うさはそのまま『ヘタリア』の危うさでもある。
だからこそ、歴史を趣味として、それを題材とした創作にたずさわるならば、意識的に真摯でなければならないのだろう。
*1:2020年に再始動した時も、少なからず日本国内からも批判が出てきていた。 『ヘタリア』がコンテンツとして再始動するらしいが、擬人化日本の受容を見てもう限界だと思った - 法華狼の日記 今回の発端となったトマトスープ氏のインタビュー記事も、『ヘタリア』の描写や視点には不足があると思うようになったかのようなニュアンスが感じられるが、機械翻訳で読んでいるため断言はできない。
*2:インドネシアに日本軍が1万人くらいしかいなかったという、かなり独自性の高い虚偽を根拠に高木健一氏の活動を国会で批判していた。 高木健一氏が池田信夫氏を告訴したらしいので、安倍晋三氏が流したデマについて指摘しておく - 法華狼の日記
*3:弥助が黒人の「侍」だったという話を今さら否定することはできない - 法華狼の日記
*4:
*5:年齢申告の見かけのゆらぎについて - 法華狼の日記や 新たな元慰安婦が名乗り出たという報道に対して、反論のためおかしな年齢の計算をしたり、内地に慰安所がなかったと嘘をつくjpn1_rok0氏 - 法華狼の日記など、独立した主張としておかしな計算がよくおこなわれている。
*6:織田信長が弥助を入手したように、黒人奴隷を入手することが一部地域で流行したという記述があっただけで、奴隷制度があったという話ではない。「組織的」と解釈できる記述にいたっては思いあたるふしがない。