【閲注・CP注】天才アンドロイド ~日車寛見モデル~ 2

  • 1スレ主26/08/17(月) 21:15:53

    傑物虎杖悠仁!
    禪院家当主伏黒恵!
    特級術師乙骨憂太!
    最強五条悟!
    大人オブ大人七海建人!
    シン・陰流当主日下部篤也!
    半呪霊脹相!
    森羅万象とも呼ばれるこの七人、その正体は揃いも揃って才能の原石日車寛見に惚れたただの男たち!!

    長期任務のため山奥の一軒家で共同生活を送っていた森羅万象こと上記七名
    しかし彼らも健康な若い男、抱えた欲を解消すべく『夜の』天才アンドロイド~日車寛見モデル~を手に入れ充実した日々を送っていたが、ついに日車寛見本人にその存在を知られてしまう

    いつかは真実を話さなければならないと思っていたが現状は上手く隠せているつもりだった森羅万象!
    思った以上に厄介なアンドロイドの日車寛見(識別名称AD-M-8119)!!
    ただでさえ東京高専の留守を任されて大変だというのにとんでもない事実を知らされてめちゃくちゃかわいそうな人間の日車寛見!!!

    バカ男七人が長期任務から帰還する前に日車はとある祓除任務へと向かう、そこで起きる事件とは一体…?
    人間の日車寛見とアンドロイドの日車寛見、ふたりはどうなってしまうのか

    ギャグで始めたはずなのになんかめちゃくちゃシリアスになっちゃった


    ・日車狂いあにまん民、人生初の森羅万象×日車スレをブッ立てました(森羅万象×日車=冒頭七名×日車の複数CP)
    ・全員生存ハッピー時空です、ぜ~んぶご都合!
    ・動画化絶対にやめてください、ろくでもない書き込みをあにまん外にばら撒くんじゃあない
    ・本番、内容に難のありそうな文章は全部Writening行きです、日車受けスレ民最後の抵抗

  • 2スレ主26/08/17(月) 21:17:39
  • 3二次元好きの匿名さん26/08/17(月) 21:20:55

    >>1

    新スレ乙!

    前回の日車さんの担当事件の不穏さと日車さんの心の声が芥見味を滲ませてたけどどうなるかな?

  • 4二次元好きの匿名さん26/08/17(月) 21:29:33

    新スレ おつ! 引き続き楽しみにしてるよ

  • 5スレ主26/08/17(月) 21:55:17

    前スレではレス&♡ありがとう
    新スレでもよろしくね

    広げた風呂敷を畳んでるところだけど思ったよりこの風呂敷デカいな…中身も多いな…スレを立てた時は小包程度だったのに…あれ…?
    ちゃんと畳み切るつもりなので最後までお付き合いいただけたら嬉しいです、大丈夫、多分ちゃんと畳めるから…

    日車が加湿器超えてスプリンクラー扱いされてて笑っちゃった、しっとり超えてびっちょりやね
    100トンガベルオチでもよかったんだけどね、アンドロイド日車をもっと掘り下げたいなって思ったらさ…
    森羅万象も日車に対して後ろめたさはあったけど害意があったわけじゃないし、アンドロイド日車は望まれて作られただけの物でしかないし、人間日車も被害者ではあるけれど自分自身に思うところがある
    その結果が今の展開なんだけど、発端というか原因というか、こんなになっちゃった理由は下記の通り

    『日車』『ラブ』『素敵なものをいっぱい』全部混ぜるとむっちゃかわいいアンドロイド日車ができる…はずだった
    だけどスレ主が余計なものまで入れちゃった!それは?
    『日車はかわいそかわいくてなんぼだろ』
    そして生まれたこのスレ!!歩く加湿器の実力を思い知れ!!スレ主もびちょびちょで困ってる!!
    唯一の救いはアンドロイド日車に加湿機能が搭載されていないこと、加湿器は一台で十分だよ

  • 6スレ主26/08/17(月) 22:04:11

    あとスレ民への相談があります
    writeningのまとめってほしい?
    日常閑話と後日談があってひとつの話って感じにはなってるけど、writeningだけ読みたいんじゃ!って
    希望とかがあったら作るのもありかな?と思って
    でもそこだけ抜粋するとウッヒョ~~~こいつら爛れてるゥ~~~って印象が強くなる気がしなくもない
    そんなん『夜の』天才アンドロイドって時点で分かってる?それはそう

  • 7二次元好きの匿名さん26/08/17(月) 22:14:53

    新スレたておつー!!
    自分はまとめありがたい派です!!あとで読み返しやすくて助かるー!
    でもwritingだけでまとめるのかSSとして全部まとめるのかがいいのかはどれがいいだろう?
    スレ主の負担にならなければまとめはありがたいな!!

  • 8スレ主26/08/17(月) 23:59:25

    やばいやばいスレ落ちるスレ落ちる

  • 9二次元好きの匿名さん26/08/18(火) 00:10:21

    新スレ立ってた!最近ちょくちょく鯖落ちするから早め保守大事だな
    まとめは途中から来た人が読みやすくていいかもですね

  • 10二次元好きの匿名さん26/08/18(火) 00:11:21

    鯖落ちー!!焦ったのでとりあえず10まで保守!!

  • 11二次元好きの匿名さん26/08/18(火) 04:18:07

    鯖落ちしてたらしいから念のため保守!

  • 12二次元好きの匿名さん26/08/18(火) 12:00:04

    writeningのまとめ欲しいです!
    それにしても新スレ立ったタイミングで鯖落ち焦った
    早めの保守を心がけたい

  • 13二次元好きの匿名さん26/08/18(火) 18:59:00

    日車のかわいそかわいいからしか摂取できない栄養もあるんだ助かる
    スプリンクラーと『夜の』天才アンドロイドという単語を斜め読みしてしまってどこから何がとか罪深い思考になってしまった

  • 14スレ主26/08/18(火) 22:44:56
  • 15スレ主26/08/18(火) 22:55:34

    レス&♡&保守ありがとう

    今日車の祓除任務の話を書いてるんだけど…こんなド真面目話になる予定じゃなかったんだけどなってなってる…
    森羅万象×アンドロイド日車のおバカイチャイチャ話はどこ行っちゃったの?
    いや前スレの虎杖×アンドロイド日車の日常閑話拡大版でこういう方面にハンドル切ったけど、
    それ以降の話含めこんなじっとりする!?これが日車加湿器マジック???
    いやひとりでず~っとモダモダモダモダしてた日下部にも責任の一端はあるはずだ、きっとそうだ
    そして虎杖も一緒にハンドル切ったからね、お前も共犯だよ

    そろそろ書き上がりそうなのでもうちょっと待っててね

  • 16二次元好きの匿名さん26/08/19(水) 07:15:17

    保守

  • 17二次元好きの匿名さん26/08/19(水) 14:40:28

    >>14

    まとめ助かるありがとう!!

    やはりアンドロイド日車かわいい…

  • 18二次元好きの匿名さん26/08/19(水) 15:01:19

    writingのまとめありがと〜!!読みやすくて助かる!
    引き続き楽しみにしてるよー!

  • 19二次元好きの匿名さん26/08/19(水) 22:06:08

    writingのまとめありがとうございます!
    ↑読み切れてなくてラストの悠仁の読んで不穏すぎるので前スレ読み直しました。
    読み飛ばしはしちゃダメですね。

  • 20二次元好きの匿名さん26/08/20(木) 06:08:55

    ちょっと早いけど おはようの保守

  • 21スレ主26/08/20(木) 10:35:46

    レス&♡&保守ありがとう

    スレ主の執筆与太話
    スレ主は音楽に詳しいタイプではないのでイメソンを考えるのが得意じゃないんだ
    流行ってる曲の歌詞のここがあのキャラに当てはまるんじゃない!?とこじつけるのは大好き
    だからみんながこのキャラのイメソンはこれ!この話のイメソンはこれ!とか話してるのを聞くと
    ほ~んこんな曲があるんだね~聞いてみるか~と新規開拓できてありがたい

    でもこの作品を読んでる時にこの音楽を流すと良い感じだぞ…って考えはある、BGMを付けたいタイプなのかも
    読んでる時は平気なんだけど書いてる時に歌詞のある音楽と聞くと脳内で言葉が混ざってウワーッてなる厄介マン
    でも聞きたくて音量を絞るかインストを聞いてる本当に厄介マン…

    森羅万象×アンドロイド日車がイチャイチャしてた時は
    『貴方の恋人になりたい』 チョーキューメイ
    これをよく聞いてたよ
    すっごいかわいい片思いの曲だけど、森羅万象もアンドロイド日車もみんな一方通行
    チョコレートみたいに甘い歌声なのに報われない恋のBGMにするという罪深いことをしたよ

    日下部の葛藤、虎杖の秘密、アンドロイドの裏話、人間日車の胸中を書いてた時は
    『愛されない恋人』 書上奈朋子
    これを聞いてたよ、落差ァ!!
    この曲はスレ主的本編中の日車のイメソンでもあるよ
    弱く醜く穢れた相手を見つめて愛してきたけど自分はどこまでもいつまでも『愛されない恋人』
    アンドロイドも人間日車同じく人を愛するけどそれはプログラムで仮初、何かの代わりでしかない『愛されない恋人』

  • 22二次元好きの匿名さん26/08/20(木) 19:08:05

    保守

  • 23二次元好きの匿名さん26/08/20(木) 19:08:45

    おお知らない歌だ、聞いてみよ
    イメソン紹介とかで新しく曲を知れたりするの良き

  • 24二次元好きの匿名さん26/08/20(木) 19:19:59

    おつかれ スレ主
    音楽に関しては基本 アニソンか流行った曲の二択という THE オタクな私だが たまに古い曲を漁ることもあってだな 竹内まりや「純愛ラプソディ」を推したい

    どこまでも主役(本人)ではないアンドロイド視点 または 本人に選んでもらえないかもと思った時の森羅万象視点 切ないけど 温かみもあって良いぞ 

    あと 某解釈の悪魔米津さんverの「まちがいさがし」
    歌詞はもちろん 森羅万象がまちがわなければ 存在もしなかったアンドロイドだし セルフカバーの方が 鳥さえずりっぽいインストや雰囲気が アンドロイド日車を囲う鳥籠っぽくて良いぞ

    他にも音楽探しつつ ゆる〜く待機してるよ

  • 25二次元好きの匿名さん26/08/20(木) 23:47:39

    寝る前保守

  • 26二次元好きの匿名さん26/08/21(金) 08:06:15

    朝保守

  • 27スレ主26/08/21(金) 16:31:09

    今晩あたりに続き上げられそう!
    シリアスにガンガンハンドル切ってるぞ!

  • 28二次元好きの匿名さん26/08/21(金) 17:42:23

    やったーー楽しみにしてます!

  • 29二次元好きの匿名さん26/08/21(金) 21:13:24

    保守。

  • 30スレ主26/08/21(金) 22:04:51

    日車寛見 祓除任務(パスは今日の日付)

    原作レベルのイテテ表現(スレ主的感覚)があるから苦手な人はごめんね

    あと結構長いのも先に謝っとくし、全然軽い内容じゃないのも謝っとく

    Writeningwritening.net
  • 31二次元好きの匿名さん26/08/22(土) 01:16:51

    えっ!?1?!?ってなってる

  • 32二次元好きの匿名さん26/08/22(土) 07:58:31

    めっちゃ見入ってしまったなにこれすごい
    スレ主……魅せてくれるじゃねえか
    この状態になって、アンドロイド日車の存在があって、どう着地させていくのか
    呪霊との問答とか森羅万象たちからの好意に対しての思いとか読んでてうわぁあぁってなった
    日車、お前……!くそう素直に幸せになれよ愛し愛されていいんだよもおおおおお!

  • 33二次元好きの匿名さん26/08/22(土) 07:59:47

    だ、大丈夫…?何というか…大丈夫…?
    語彙力も吹っ飛んじゃうよ…

  • 34スレ主26/08/22(土) 16:21:45

    レス&♡ありがとう

    文字で表現するバトルシーンって難しいよね
    頭の中で動きや位置を想像しながら書いてるけど、今どうなってる!?を何度も繰り返したよ
    気分を盛り上げたくて死滅回游の日車戦を見てこのガベル捌きが最高!ってなったり
    戦闘BGMを聞きながらここでガベルをズドンと!とか考えながら書いてたよ

    どうしても原作&アニメじゃ表現しきれないシーンとかは他作品を参考にしがちなんだけど
    世界観とか時代が微妙に違うからこれ大丈夫?呪術の範囲内でいける?ってソワソワしてた
    スレ主はロボットものとか近未来アクションが大好きでな…だから日車はアンドロイドになっちゃったのだ

  • 35二次元好きの匿名さん26/08/22(土) 20:07:18

    >>30を読んで感想書いてる途中ですが結構長くなってしまってる

    Writeningで投下したら紛らわしいでしょうか

  • 36二次元好きの匿名さん26/08/22(土) 20:20:41

    日車さん、まさか身体をアンドロイドの身体にお引越しするのか⁈

  • 37スレ主26/08/22(土) 21:13:26

    >>35

    スレ主はいつも名前のところにスレ主って入れてるから区別付けられると思うよ

    レス文のところに感想だよ~とか書いてもらえたら分かりやすいかも

    ロングロング感想嬉しい嬉しい見たい見たい!!

  • 38スレ主26/08/22(土) 23:19:56

    日車が呪霊との戦闘で心臓と両肺を失った
    今でこそ反転術式と本人の呪力で何とか生命維持できているが、それがいつ途絶えて死に至るかは家入をもってしても分からない


    やっと長期任務を終えてさあ帰ろう、いやその前にアンドロイドの日車はマジでどうする…?と彼らなりに真剣に話し合っていた最中に届けられた一報は、正に青天の霹靂だった
    取るものもとりあえず東京高専へ飛び、待ち構えていた新田に先導されて走った先は地下霊安室
    呪術師である限り誰もが一度はここを訪れる、仲間の死に顔を見るために
    七海はかつてここで灰原の上半身だけの遺体を見た、五条も本来ならばここで夏油の遺体を見るはずだった
    家入が反転術式を施す医務室や処置室ではなく、『まだ』生きている日車が『ここ』にいる、それが全てだろう
    けたたましい音を立てて扉を開け飛び込んでくる男たちを、暗い表情の家入が見遣った


    家入「長期任務お疲れさん」

    五条「それどころじゃないだろ硝子!日車さん、日車さんは!?」

    家入「生きてるよ、『まだ』ね。…そいつが例のアンドロイド?」


    家入の視線が寄り集まった彼らの奥に向けられる、そこに立っているのは日車を生き写しにしたようなひとりの男、の人型だ
    彼は隣に立っていた日下部にそっと背を押されて一歩歩み出て、深々と頭を下げる


    8119『お初にお目にかかります、識別名称AD-M-8119、完全機械義体と人工知能からなるアンドロイドです』

    家入「知ってはいるよ、アンタの実家から資料を取り寄せたから。実物を見るのは初めてだけど」


    冷淡な家入の声音に五条は一瞬眉根を寄せたが、すぐに思い当たって爪先に視線を落とす
    彼女がAD-M-8119を受け入れるわけがないのだ

  • 39スレ主26/08/22(土) 23:27:38

    かつて命を落とし、五条が下手に気を回して家入に処理を任せなかったせいで何者かに遺体を奪われ、厄災の器に成り果てた友を思い出させる存在を
    こんなものを作ろうと言い出した五条に殴りかからないのは、冷静さゆえか、それとも呆れ果てているからか


    家入「日車さんは奥の解剖室にいる、付いてきな。ああ、アンドロイドは廊下に出てろ。新田、見張っとけ」

    新田「了解っス」


    案内を任されていた新田が素早くAD-M-8119の斜め後ろに寄った
    彼女のスーツのジャケット下にはスタンガンが隠されている
    大体の人間は強力な電流を流されれば気絶こそしないものの少しの間身体の自由を失う、対アンドロイドならばその効果は倍増するだろう、何せ機械の身体は電気信号こそが全てなのだから
    皆から心配そうな視線を向けられたAD-M-8119は、害意を見せないよう後ろで手を組んだ姿勢のまま気丈な笑みを浮かべ、新田と共に霊安室を出て行った


    新田「…初めましてっスね、ええと…」

    8119『AD-M-8119と申します、呼びにくいでしょうから19番とでもお呼びください』

    新田「はぁ…。てかアンドロイドをこんな間近で見たの初めてっス、めちゃくちゃ人間そっくりなんスね』

    8119『そうなるよう製作者たちが作りましたので。…実は新田様のお姿を拝見するのは初めてではないんです、皆様の任務滞在先で何度かお見かけしたことがあります』


    霊安室前の廊下で並び立ち、とりあえず世間話でもと思って会話を始めた新田は、AD-M-8119の発言に飛び上がるほど驚いた
    訪問時一度も対面せず、姿を見たのも隠れ潜んでいた車の中から任務用のスコープを用いてだったのに、あの距離で気付かれていたとは
    しかし今度は別の疑問が湧いてくる

  • 40スレ主26/08/22(土) 23:37:30

    新田「何で皆さんに報告しなかったんスか?監視されてるなんて大問題っスよ」

    8119『第三者からの盗視でしたら間違いなく報告していました。ですが新田様は東京高専の補助監督、御用があっていらしていたのでしょうし、監視とおっしゃるなら相当の理由がおありかと。…それに、皆様も気付かれていたと思いますよ』

    新田「そりゃそうっスよねぇ~…上級術師揃いですもん…」


    己の任務が徒労であったと知って嘆く新田の横顔を見ながら、AD-M-8119は困ったような笑みを浮かべた
    彼らも本当は隠し通すつもりでいたのだ、任務が終わっても誰かの家で匿っておけば知られずにいられるのではないかと
    後ろめたい思いが募ろうが、本物の日車に顔向けできなくなろうが、すでに犯した罪ならば黙って墓まで持っていこうと
    もし誰かに見られていたとしても、こんな非常識なことを触れ回られたところで信じる者がどれだけいるのか
    五条たちのネームバリューと地位があれば騙し切れる、欺き通せる、そう驕り高ぶっていた
    そんな時に起こってしまったこの大事件、AD-M-8119の件は全て後に回された
    どこまで行ってもAD-M-8119は日車寛見に似せて作られたアンドロイド、心のような何かがあっても、呪力を持っていても、所詮は物でしかなく本物には絶対に敵わない
    置いていかれなかっただけ御の字ではあるが、連れてきてしまったことで余計な問題を増やしてしまった気もする
    しかし全ては後の祭りだ


    新田「声も日車さんまんまっスけど、口調は違うんスね」

    8119『…プログラムされている口調はこちらだ。しかしここには初対面の人間が多い、君たちも本物と同じように喋りかけられたら困惑するのでは?』

    新田「うわ、うわ!日車さんだ!完全に日車さんだ!ええ…?アンドロイドってここまでそっくりに作っていいんスか…?」

    8119『もちろん禁じられているさ、制約の中にも『実在する人物に似せて作ってはいけない』とある。しかし彼らはそれを破り、企業も金に目が眩んで禁忌を犯した』

    新田「うわーっ!うわーっ!ヤバい話聞かされてるーっ!!」

    8119『呪術界もアンドロイド界も闇深さではそう変わらないだろう、何せ人体や生命といった自然であるべきものに触れているのだからな』

  • 41スレ主26/08/22(土) 23:48:42

    解剖室の中央、剖検台の上で日車はガウンタイプの青い検診衣をまとって横たわっていた
    欠けている部位はどこにもなく、顔色も青白くはあるが普段と大して変わらない、胸だってゆるやかに上下している
    ただ眠っているようにしか見えないのに、事切れて肉と化した人体を開くための場所にいるという事実があまりにも恐ろしい
    すぐ横には心電計があり、日車の胸部に繋がれたコードから伝わる心拍や呼吸が規則正しい波形を画面に映していた
    そんな室内の異物と言えば、パイプ椅子に座って日車の右手を握っている甘井の姿だ
    相当に泣いたのだろう、眼は充血し、頬には幾筋もの涙の跡がある
    時折肩を震わせては鼻をすすり、いまだ馴染んだ様子のない黒いスーツの袖口で鼻の下を拭っていた


    家入「内臓を抜き取られた時大分血管をやられたみたいでね、反転術式で繋いだはいいもののかなり呪力を使ったらしい。人から人へ呪力の譲渡は不可能だけど、消費した糖分を補うことはできるからああやってるんだ」


    甘井の顔色は悪く、こめかみから冷や汗が伝って顎から滴り落ちている
    それでも決して離すまいと震える指先で日車の手を固く握り、自身の生み出した糖分を送り続けていた


    家入「日車さん、起きてますか」

    日車「…ああ」

    家入「馬鹿野郎共が帰ってきましたよ、目開けられますか」


    家入の声かけに応じ、伏せられていた日車の目蓋がゆるりと持ち上げられる
    天井の照明が眩しいのか顔をしかめて数回瞬き、甘井に握られていない方の手で軽く眉間を揉んでから、ふうと息を吐いて日車は男たちに視線をやった
    誰も彼もが死んでしまいそうな表情を浮かべているのがおかしくて、小さく吹き出してしまう


    日車「おかえり、無事の帰還で何よりだ」

  • 42二次元好きの匿名さん26/08/22(土) 23:52:23

    このレスは削除されています

  • 43スレ主26/08/23(日) 00:00:22

    虎杖「日車っ!!」


    堪え切れずに虎杖が駆け出し、剖検台にしがみつく
    ガタンと大きな音を立てて台が揺れるのを反対側にいる甘井が抑える、死の縁に立つ人が寝ているのだ、手荒な真似はしてほしくなかった
    非難がましい目を向ける甘井を無視して虎杖は日車の頬に手を添える
    数えるほどしか触れたことのない日車の肌だが、低いながらに生きている人間の体温が、弾力がある
    生きている、日車は『まだ』生きている
    虎杖につられて残りの面々も剖検台に歩み寄り、取り囲むようにして日車を覗き込んだ
    空色の瞳がこぼれ落ちそうなほどに目を見開いた五条、ぎゅっと眉根にしわを寄せて歯を食いしばる伏黒、目尻も眉尻も限界まで下げた乙骨、サングラスを外した翡翠色の目でこちらを凝視する七海、ただでさえ強面な顔に力を入れて目を細める日下部、脹相はすでに泣き出しており涙と鼻水で顔を汚している
    弟の虎杖も似たようなもので、榛色の瞳は今にもあふれそうな涙でにじみ、鼻の頭を赤くしていた


    日下部「…どうしてそんな危険な任務にひとりで行ったんだ」

    日車「ひとりではなかった。補助監督がふたり、何かあった時のための術師もふたりいた」

    七海「…あなたなら感覚で理解できたはずです、呪霊の強さを」

    日車「猶予がなかった、被害が甚大すぎたんだ」

    五条「なら僕たちを呼ぶべきだった」

    日車「上層部から直々に任命されるほどの任務に当たっていた君たちを?」

    乙骨「どうして撤退しなかったんですか」

    日車「心臓と肺を奪われたのに?それこそ無駄死にだ」

  • 44スレ主26/08/23(日) 00:08:38

    伏黒「取り返そうとは思わなかったんですか」

    日車「取り返したところで、俺の反転術式ではどうにもならなかっただろう」


    問答はそこで途切れた
    全てはたらればだ、過ぎてしまったことだ、もうどうにもならない
    沈黙が落ちる解剖室の中で心電計だけが日車の心拍を刻んで音を立てている、そんな中で一際大きく鼻をすすった脹相が口を開いた


    脹相「日車、受肉体になる気はないか」


    突拍子もない発言に、絶対安静を言い渡されていた日車さえ上体を起こしかけた
    周囲の面々も驚愕の表情で脹相を凝視している
    しかし脹相は本気だった、日車を生き延びさせられるのならどんなことでもやってみせるつもりでこの提案をしたのだ


    脹相「覚えているぞ、宿儺との戦いを。呪術師は強い思いを抱いたまま死ぬと呪いに転ずることがあり、時にそれは呪物にすらなりうる。オマエはあの時己の死をもって処刑人の剣を呪物にしようとした。だがそれは成らなかった、オマエが一命を取り留めたから」


    それを聞いた日下部が顔をしかめる、日車にその話をしたのは彼だ
    死後呪いが強まることはないわけじゃない、それを聞いた日車が自身の内でイメージを固め、死の間際に虎杖へ処刑人の剣を託した
    それこそが自分の役割だと、あの時の日車は本気で思っていたのだ
    その後日車は奇跡的に助かった、生き延びてしまったなどと抜かしていたが、それがどれだけ周囲の人間の心に安堵をもたらしたか
    しかし今、あの時よりももっと恐ろしいことが起きようとしている
    誰の手にも負えない日車の死が刻一刻と迫っている

  • 45スレ主26/08/23(日) 00:24:47

    脹相「…もう助からないのだろう。ならばオマエは呪物となり、何者かの肉体を乗っ取って受肉体になって生き延びるべきだ。適した器が現れるのを待つのでもいい、許されざる罪人の身体を使ってもいいだろう」

    日車「やめろ脹相!俺はそんなことをしてまで生きたくない!」

    脹相「俺が嫌だ!オマエが死んでしまうことに耐えられない!!」


    日車の叫びを掻き消すように脹相がより大きな声で叫んだ
    彼は感情を隠さない、眉を吊り上げ、見開いた目からぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら剥き出しの心情を吐露する


    脹相「俺は弟への愛しか知らなかった!壊相を失い、血塗を失い、残った悠仁が唯一愛する弟だ!だが日車寛見、俺はオマエを知った!弟以外に向ける愛を知った!俺はオマエを愛している!!だから失いたくない!!どんな手を使っても!!」


    日車は穏やかな眼差しと言葉で自分と接する脹相しか知らなかった、だからこんなにも強く想いをぶつけられたことに驚き、言葉を発せなかった
    まだ何かを言いたげに口を開こうとしていた脹相だが、最早言葉にならなかったのだろう、呻くような嗚咽を漏らして俯いてしまう
    引くつく呼吸で肩が揺れる度に涙が床へと落ちて跡を残す、全身で悲しみを示す脹相を止められる者は誰もいなかった


    虎杖「…誰かを犠牲にして受肉するのが嫌ならさ、せめて呪物になってよ」


    頬を撫でていた手で日車の左手を取り、虎杖が声をかける
    久し振りに合った目は太陽の輝きを失い、今にも消えてしまいそうな蝋燭の灯のように揺らいでいた
    虎杖の両手はあの日手の中で崩れた十字架を握るよりもずっと弱い力で日車の手を包み、体温を分け与えるように撫でさする


    虎杖「俺も脹相と一緒だよ、日車のこと失いたくない。できれば人の形のまま生きててほしい。でもどうしても助からなくて、受肉体になるのも嫌だってんなら、呪いになって呪物になってよ。存在だけでもいいから、在ってよ…頼むから…」

  • 46スレ主26/08/23(日) 01:02:15

    握った日車の手を額に当てて、祈るように虎杖が乞う
    弁護士であったころから自分をすり減らし、呪術師になってからも心を痛ませ、最後は命でもって役割を果たそうとした日車だ
    自分のために他者の命を犠牲にするなんて到底許せはしないだろう、ならば全てを日車自身で完結させた上で存在していてほしい
    日車寛見の形は失われてしまうがその魂と存在は在り続ける、これが虎杖の出した妥協案だった
    虎杖の伏せた目の端から涙が伝う、戦いの中でどれだけ傷を負っても泣き言ひとつ漏らさなかったあの虎杖が、日車の死を前にして泣いている
    年相応の心の弱さを見せる虎杖を目の当たりにして日車も心をぐらつかせるが、やはり彼らの提案は受け入れられない
    受肉体や呪物になる覚悟を抱けるほど、日車の生への執着は強くなかった
    例えそれが多くの人を悲しませることになったとしても


    乙骨「僕の生得術式である模倣で羂索から得た肉体を渡る術式をどうにかして日車さんに譲渡したらどうでしょうか、あれは脳さえ生きていれば使えるはずです」

    七海「人間が所有できる術式は原則ひとつです、いくら日車さんが天才とはいえ誅伏賜死と同時に所有するのは…。そもそも模倣なのですから当人である君にしか扱えないのでは?」

    日下部「シン・陰流の寿命譲渡は…無理だな、本人が生きてられなきゃ意味がねェ。そもそも他の奴が犠牲になる時点で日車的に駄目か」

    五条「僕の六眼片方渡すのは?六眼の所有者はふたり同時期に存在できないって話だけど、片方ずつならセーフにならない?」

    伏黒「魔虚羅の適応を人体に流用する方法は…?今の肉体の状態を通常であると適応させれば…」


    全員が可能不可能を度外視して思い付く限りの延命方法を口にするが、自分自身の肉体や生命が代償となっていることに誰ひとりとして気付いていない
    これも愛なのか?最早狂気の沙汰ではないか?肘を突いて半端に上体を起こした日車が剖検台の上で後ずさろうとするが、右手は甘井に、左手は虎杖に掴まれて動けない
    愛ほど歪んだ呪いはない、まさにその通りだ
    日車を想う彼らの愛がAD-M-8119を生み出し、そして今は途切れそうな命を何としてでも繋ぎ止めようとしている
    どうして彼らはこんなにも日車を愛しているのだ、一体何が彼らをここまで突き動かしているのだ
    誰も彼もが正気を失っている、愛なんて言葉でこの狂騒は表せない

  • 47二次元好きの匿名さん26/08/23(日) 08:06:31

    うわあああ
    臓器失った時も思ったけど、
    さらにとんでもないことになってるううう
    愛が、呪いが…
    続きがめちゃめちゃ気になる!
    日車にもアンドロイド日車にも幸せになってほしいんだ

  • 48二次元好きの匿名さん26/08/23(日) 08:37:48
  • 49二次元好きの匿名さん26/08/23(日) 10:03:13

    お兄ちゃーん
    メンツの中では控えめな印象だったけど基本的な感情が激しいタイプだよな
    初恋か
    続き気になる

  • 50スレ主26/08/23(日) 17:43:31

    レス&♡ありがとう

    投稿してる時間帯めちゃくちゃエラー多くてヒヤヒヤしてたよ
    主要メンバーが集まってしっちゃかめっちゃかになってきたし、ついにAD-M-8119が東京高専にやって来たぞ
    今までみんなアンドロイド日車のことを日車って呼んでたから、本物もいて呼びにくいんだ
    めちゃめちゃ可愛がってきたから識別番号で呼ぶのもね…どうしたもんかな

    脹相は基本物静かだけど『俺の大切なもの』に対しては爆裂激情タイプだと思ってるんだ
    でも相手を思ってそれを隠しておけるタイプでもあると思ってる
    今回はもう…ネッ、こんなになっちゃったから…ネッ

    文章書いてる時に聞いてる音楽を
    『AIZO』 King Gnu
    これにしちゃったもんだから愛は渦巻くわ代償なんて気にしないわ正気じゃいられないわ
    東京高専はまさに大狂騒!!

  • 51二次元好きの匿名さん26/08/23(日) 18:07:41

    愛が暴走してえらいことになっとる
    どうしょうもない泥沼だぁ
    そんで日車の命に対する日車と森羅万象たちの差がね……
    世情無常で一生平行線ね……

  • 52スレ主26/08/23(日) 18:16:48

    >>48~~~~~!!!!!

    ロングロング感想本っっっっっ当に嬉しいありがとう!!!!!ブチュチュチュ

    あんなに長い文章だったのにこんなに読み込んでくれて感無量ですわ…

    臨場感あふれる感想すぎる、熱い気持ちに応えられるよう続き頑張ります!


    スレ主は36年間非術師として、弁護士として生きてきた日車が大好きなんだ

    呪術に目覚めて呪術師になって呪霊の存在を知って、それを祓除するのが呪術師の役目だって理解はしてるけど

    『心あるもの』『人であったもの』『弱く醜く穢れて尊いもの』への漠然とした愛を捨てられない日車が大好きなんだ

    あのぼんやりとした眼と淡々とした口調の下に隠されたやわらかなやさしさをずっと持っていてほしい

    でも『俺の役割』に忠実すぎるのどうにかしてくれ、お前はオスカー・ワイルドの『幸福な王子』か

    日車~~~お前弁護士も向いてなかったけど呪術師も向いてないよ~~~もっと優しく穏やかな職に就くべきだったんだよ~~~

    それでも『俺の役割』を心に刻んでガベルを手に立ち続けるお前が好きだよ日車寛見

    どうかそのふたつの大きな目でみんなを見守っていてくれ日の下に咲く向日葵の君

  • 53スレ主26/08/23(日) 23:52:21

    困ったことになってしまった
    日車は本当にピンチな状態だけど、森羅万象が何でアンドロイドを手に入れたかはちゃんと本人に説明しなくちゃいけないじゃん?
    だからそのあたりの説明というか弁明というか…そういうパートを書いてるんだよ
    そうしたらさ…トンチキえろんえろん呪力が強すぎてどんどんギャグに傾いてく…!
    日車は!?日車の生死は大事じゃないの!?
    スレ主はずっとシリアスを日車ひとりに押し付けて来たんじゃないか!!
    シリアスにハンドル切りすぎてたらハンドル取れちゃったよ!!どうしよう!!

  • 54二次元好きの匿名さん26/08/24(月) 00:48:41

    >>53

    スレ主

    スレ民の感想や保守レスの分を鑑みてもあと100レス残ってるからスレ主の思うがまま書き殴ってほしい


    こっちはスレ主のどんなSSも楽しみだから待てるよ

    いつもいつも楽しませてくれてありがとう

    週明けで仕事かもしれないよね 身体と天候に気をつけてお過ごしください

  • 55二次元好きの匿名さん26/08/24(月) 09:58:16

    保守

  • 56スレ主26/08/24(月) 13:26:04

    五条「どうやっても反転術式じゃ治せないんだよな」


    どんな可能性にも縋りたくて五条は家入を見た
    即死でなければ、わずかにでも生きてさえいれば彼女が何とかしてくれる、そんな思いで東京高専に戻り命を長らえた者は今までに何人もいた
    今回がその例外である理由は何なのか
    すっかり身に染み付いてしまった、人差し指と中指で煙草を挟むジェスチャーをしながら家入は答える


    家入「…治せない、治癒と再生の術式にだって限度がある。私にできるのは生きてるものを、存在するものを治すこと。もし日車さんの臓器が欠片でも残ってたら、新田の弟の術式も、乙骨の反転アウトプットも、甘井の糖分も全部使って再生させたよ」


    彼女の伏し目がちな視線がちらりと甘井に投げられる
    確かに家入は呪術界随一と言っても過言ではない反転術式の使い手だ、しかし純粋に回復能力だけを見れば五条には劣る
    また、反転術式には途方もない呪力が必要だ、大がかりであればあるほど他者のサポートが必要となる
    今は甘井という外付けの糖分補給タンクが手に入ったため多少の無茶はできるが、それでも不可能の領域はあるのだ


    家入「でも素がないんだ、再生の核となるものが。日車さんが対峙した呪霊は奪った肉体を自分のものとする術式を持ってたから、相手の体内に取り込まれた時点で日車さんの心臓も肺も変質してしまった。だから祓った後に何も残らなかった…今更分かっても仕方ないんだけどね」


    家入の反転術式による欠損の再生は、無からではなく分断された部位同士の縫合によって行われる
    他者の治療ができないだけで、平気で自らの腕を再生させるほどの能力を持つ五条や日車が異常なのだ
    そして天才の頭脳による呪力のイメージは、時に呪術の常識ですら覆す


    家入「あと…これは日車さんを責めたいわけじゃないんですけど、あなた天才すぎです。呪力でイメージして脳や肉体を騙したって聞かされた時、てっきり身体の中の空洞はそのままで呪力が詰められてると思ったんですよ。でも開けてみたら…呪力でできた心臓と肺があって、実体を伴ってちゃんと動いてる。そりゃバイタルチェッカーも誤認しますよ、本物じゃないって分かってるのは本人だけなんですから」

  • 57スレ主26/08/24(月) 13:36:59

    完全な再生ではないとはいえ疑似的な心臓と肺を無から作り出したとの発言に、全員の視線が日車へと注がれた
    あの時日車は死なないために必死にイメージしたのだ、自分の体内で動く心臓と肺を
    人体とはこうあるべきだ、これがあるからこそ生命活動は行われる、自分は生きていられる、任務を続けられる
    突き詰めすぎた正しさに日車の呪力は正確に応えた、だからこそ今こうして皆と再会できたのだが…


    伏黒「マジかよ…」

    七海「貴方は…何てことを…」

    虎杖「…本当だ…動いてる…」


    とうに驚きを通り越し、恐怖すら感じる日車の頭脳と才能
    虎杖が思わずと言った風に日車の胸に手を当てたが、とくとくと脈打つ感触が伝わってくる
    これが呪力で再現されているなんて一体誰が信じられるのか
    実際家入は確認のために日車の胸を切り開き、肉と血と血管の中でうごめく青い炎で形作られた心臓と肺をその眼で見た
    もし画像に残せるものなら全員にも見せてやりたかった、あの信じがたい光景を目にしたのは家入と甘井のふたりだけだ
    だからこそ甘井もあそこまで積極的に日車を生かそうとしているのだ、宿儺戦時の治療で見たどんな光景よりも恐ろしく、儚いものを知ってしまったから


    日下部「でもよ、それはあくまで日車のガベルや処刑人の剣と同じようなモンで、呪力が尽きたら消えちまうんだろ?」

    家入「そういうことです。日車さんが任務を完遂させるためだけに作った間に合わせのもの、それを今も呪力で動かしてるんですから、いつか必ず限界が来ます」

    乙骨「僕たちは、それを待つことしか…見ていることしかできないんですか…?」


    彼らが思い付く限りの方法も駄目、家入の反転術式でも不可能、ありとあらゆる術を否定され未来は黒く塗り潰されていく
    もう誰も日車を助けられない、本当に、本当にどうしようもないのだと諦念に身を委ねようとしたその時、日車が口を開いた

  • 58スレ主26/08/24(月) 13:47:03

    日車「虎杖、伏黒くん、乙骨くん、五条、七海、日下部、脹相。君たちと話したいことがある」


    抑揚のない静かな口調ではあったが、冷え切った解剖室にその声はよく響いた
    思い思いの方向を向いていた七対の視線が再び剖検台の上に集まるが、その強い眼差しに日車は正面から向き合った


    日車「少しの間、席を外してもらっても?」


    再度周囲に寄ってきた男たちに囲まれて小さくなっている甘井に日車は声をかけた
    しかし手を離してしまえば糖分補給は途絶えてしまう、本当に大丈夫なのかと甘井は家入と日車を相互に見たが、ふたりから頷かれてそろそろとその手を離す
    甘井に強く握られていた手はじんわりとした痺れ、移された体温が残っている
    日車はその手をゆらりと持ち上げて甘井の頭を撫でた
    カラメルを思わせる焦げ茶色の頭頂部からカスタードに似た色の側頭部まで、労うように数度撫で下ろされて、甘井はぽかんとした顔で日車を見つめる


    日車「ありがとう、君のおかげで少し楽になった」

    甘井「いや、そんな、俺…」

    日車「無理をさせてすまなかったな」


    日車の指先が甘井の頬を撫でて冷や汗を拭う、その感触で甘井はやっと自分がスーツのシャツの下までぐっしょりと汗をかいていることに気が付いた
    それだけ必死だったのだ、目の前の人を死なせたくない一心で、自分にできる唯一のこととして糖分を送り続けていたのだ
    甘井も日車と同じく突然呪術の世界に放り込まれた一般人だったが、ふたりの立場はまるで違った
    死滅回游では百点越えの上位泳者と他の術師に顎で使われていた木端泳者、宿儺戦では最前線で戦った天才術師と後方でサポートに徹していた末端術師
    お互い東京高専に所属するようになっても受け持つ任務はまるで違い、顔を合わせることすら稀だった
    それでもお互いに思っていた、自分たちはかつて何も知らない非術師同士だったのだと

  • 59スレ主26/08/24(月) 13:53:42

    本当にわずかなつながりでしかなかったし、死滅回游のころの甘井は日車を恐れてすらいたが今は違う、共に戦う同志なのだ


    甘井「何かあったらすぐ呼んでくださいね、絶対ですよ。俺だって、日車さんを死なせたくないんですから」


    冷や汗で湿ってしまった日車の手を再度両手でぎゅっと握ってから、甘井は家入と共に解剖室を離れ霊安室の外まで出て行った
    剖検台に仰向けになっている日車は、改めて自分を見下ろす七人の男の顔を見て、そっと口を開く


    日車「まずは謝罪を。君たちの想いを今日の今日まで無碍にしていたことを、申し訳なく思う。君たちの声に、視線に、接触に、気付いていた。気付いてはいたが、どうしても応えられなかった。…本当に、申し訳なかった」

    虎杖「謝らんで、日車はなんにも悪くない」

    伏黒「そうです、全部俺たちが勝手にしていたことです」

    乙骨「謝るべきは僕たちです。一方的に想いを押し付けて、ごめんなさい」

    脹相「…好きになって、ごめんなさい」


    大人たちが答えるよりも早く、少年たちと半呪霊が揃って自分たちの行動を詫びた
    若さからくるためらいのない行動力が羨ましい、しかし今はそんな羨望に身を焦がしている暇などない


    五条「全部バレてるって分かってて言うけど、あのアンドロイドを用意しようって言い出したの、僕からなんだ」

    七海「私も同罪です、五条さんに大いに手を貸しました」

    日下部「俺もだ。…多少迷いはしたけどよ、止めなかった」

  • 60スレ主26/08/24(月) 14:03:41

    日車「君たちはどうしてあのアンドロイドを求めたんだ?…俺は、俺が応じなかったからだと思っている。俺のせいで、君たちにとんでもないことをさせてしまったと思っている」

    五条「日車さんはなーんにも悪くない。これは絶対だから疑わないで、できればもう二度と自分が悪いって言わないで」


    罪の告白にはどうしても心が揺らいでしまい、うろ、と視線をさまよわせた日車に五条がグッと顔を近付けた
    そういえば彼は解剖室に入った時からアイマスクをしていない、色素の薄い睫毛に縁取られた空色の眼が何に遮られることなくじっと日車を見つめている
    後頭部に照明を受け陰になっているはずなのに、六眼は内側から灯るような光をたたえていた


    虎杖「あけすけに言うとさ、みーんな日車のことが大好きで、誰かのために身を引いたりするのが嫌だったんよ」

    伏黒「自分の欲にバカ正直だったんです。日車さんが誰かと幸せになってくれたらいいなじゃなくて、俺が幸せにしてぇなって」

    乙骨「誰かと一緒にいるところを見るだけでヤキモチ焼いちゃって、ちょっと自分でもまずいなって思うくらいだったんです」


    どうかしてたよな俺たち、と少年たちが小さく笑い合う
    今でこそこうして落ち着いて話していられるが当時は本当に酷かったのだ、日車が誰かと話しているところを見かけたら問答無用で乱入するくらいには
    それには日車も思い当たる場面がいくつもあり、やはりあれはそういうことだったのだなとひとり内心で答え合わせをする


    脹相「だが、醜い嫉妬をオマエに知られたくなかった。だから何でもないふりをして、お互いに牽制し合いながらオマエと接していた」

    七海「嫌われるのを恐れてもいましたが、日車さんがこういった恋愛ごとに対して不得手そうな雰囲気も薄々感じていましたので、あからさまなアプローチは避けていましたね」

    日下部「とはいえ七人同時にちょっかい出してたからなァ、ビビってるお前さんを蝶よりも花よりも丁重に扱ってたのは流石に気付いてたよな?」

    日車「それは…もちろん…。三十半ばをすぎた男に対して丁寧すぎやしないかとは思っていたが、正直ありがたかった。本当に困っていたんだ、どうすればいいか分からなくて…」

  • 61スレ主26/08/24(月) 14:15:56

    複雑に絡み合った疑問をひとつずつ紐解いていくように彼らは会話を続ける
    時間が有限だと分かっているからこそ伝え漏らすことのないように、暗くなりすぎないように努めて明るく


    日下部「で、例のアンドロイドちゃんなんだけどよ、俺たちも男だからシてェのよお前さんといろいろ。でもマジで手ェ出しちまったら今までの我慢が水の泡じゃねェか」

    乙骨「そんな時に与えられたあの長期任務です、しかも狙ったかのような面子で。…いや任務は大変でしたしちゃんとこなしましたけど、本当にとんでもない面子でしたね」

    五条「同じ相手を想う男七人が長期間一つ屋根の下、何も起きないわけがなく…手を出しちゃったんだよね~噂の『夜の』アンドロイドに!めっちゃ面倒な任務押しつけられたから癒しがほしかったの!」

    七海「任務時の滞在場所として用意されていたのが人里離れた一軒家なのもそれを後押ししましたね、ここなら何があっても全てを隠し通せるのではないかと思いまして」

    虎杖「何言っても言い訳なんだけどさぁ~!夢だったんよ日車とイチャイチャするの~!でも本物には絶対できないからさぁ~!」

    伏黒「言っておきますが俺たちはあなたが大切で、本当に大切すぎて手が出せなかったんです。あのアンドロイドには申し訳ないことをしましたが、彼は完全に日車さんの代わりでした」

    脹相「俺はそういうことに全く詳しくなかったのだが、触れてはいけないと思っていた日車に触れられると思ったら嬉しくなって舞い上がってしまった」


    全員の赤裸々すぎる告白に流石の日車も両手で顔を覆った、頬は真っ赤になっているだろうし耳も熱くて仕方がない
    しかし聞くなら今しかないだろう、意を決して日車は尋ねた


    日車「君たちはどうして俺なんかのことをそんなに好きになってしまったんだ…?元はと言えば死滅回游の厄介な泳者で、突然宿儺戦に参加させてくれと現れた得体の知れない歴の浅い呪術師で、今もなお精神的に不安定な見目も良くない中年男だぞ…?」

    虎杖「五条先生じゃないけどそれ二度と言うなよ、大体は確かに事実だけど最後だけは全力で否定すっかんね」

    伏黒「その言い方ですとあなたに心底惚れてる俺たちが趣味悪いってことになりますからね、東京高専が誇る上級術師全員悪趣味ってことになりますからね」

  • 62スレ主26/08/24(月) 14:40:05

    視線の強すぎる虎杖と伏黒に至近距離で覗き込まれ、日車は思わず目を瞑った
    彼らには彼らの言い分があるだろうが、それは日車にだってはある
    非術師ふたりへの凶行、逃げ出してしまった弁護士としての立場、泳者二十人との戦い、あの時に断ち切ったつもりだったこの世への未練、贖罪として続けている呪術師としての任務
    そして彼らが注いでくれている愛情をどのような心持ちで受け止めているのか、その全てを暴露したのに、皆の反応は大したことなかった


    虎杖「俺ドン底の時の日車見てるんよ?それ知ってる身としては今の話聞かされてもなぁ…。それと、好きって気持ちを義務みたいに受け止めてるってのも何となく気付いてた」

    伏黒「付き合いは短いですが日車さんの自己犠牲の強さは分かってるつもりです、だから守りたくなったんですよ。俺たち、まだこれからって感じだったじゃないですか」

    乙骨「僕死滅回游で百九十ポイント獲得しました。あれはそう言う儀式で、戦わなければ生き残れなかったんです。あと…えっと…僕、もしかしなくても恋愛関係かなりまずいですね…」

    五条「呪詛師にならないで真面目に任務やってるだけでどれだけえらいか分かってる?あと心がガバってるって話、仕方ないじゃんいっぱい傷付いてきたんだから」

    七海「どの業界もクソです、そんな中で貴方は真面目に働きすぎて限界が来てしまっただけのこと。恋愛に関してもですが、日車さんは大変受け身でやさしすぎます」

    日下部「色々抱え込んでるのは知ってるよ、でも全部ひっくるめて俺たちはお前さんを迎え入れたんだ。あと心の底なしバケツは気にすんな、いくらでも注いでやっから」

    脹相「なあ、日車。これだけの者がオマエを愛し、オマエの生を望んでいるのだぞ。それでもまだ死にたいのか?やはり受肉体となって、俺と一緒に恋愛について学び直さないか?」


    …おかしい、おかしいぞ
    あの息が詰まるような展開はどこへ行ったんだ、日車に似せた人形に注がれる歪んだ愛と、日車の壊れた心に注がれる無意味な愛と、悲しい機械義体の話はどこに行ったんだ?
    この告白で日車は皆から糾弾されるつもりだったのだ、お前の犯した罪は一生許されない、お前はまだ死に場所を求めているのか、そんな生半可な気持ちで呪術師が務まると思っているのか、そして何より
    愛という尊いものを冒涜しているのかと

  • 63二次元好きの匿名さん26/08/24(月) 17:32:02

    精神的に不安定な事を心がガバるって言うの草
    本物の日車さんを大切にしたい一心から代用として買われたのはそうなんだけど今までのやり取り見てきた後だと代わりにしかなれないアンドロイド日車も可哀想だなと少し思ってしまった

  • 64スレ主26/08/25(火) 00:04:00

    レス&♡ありがとう

    ハンドルぶっ壊れたまま走り出したよ
    やっぱ日車がひとり&メインだったから加湿器&スプリンクラーだったんだ
    森羅万象が帰ってきて寄ってたかってチヤホヤしだしたら湿度下がってきたぞ
    日車は呪術界のイエローダイヤモンドなんだ、太陽のような輝きが魅力の希少な宝石なんだ
    人々に幸福や希望をもたらすんだ
    いや向日葵でもいいんだけどダイヤモンドのごとく永遠であってほしいじゃん…
    そこに向日葵や太陽を思わせる黄色のぬくもりがあってほしいじゃん…

    ちゃんとアンドロイド日車も大事にするからね

  • 65二次元好きの匿名さん26/08/25(火) 07:41:25

    保守

  • 66二次元好きの匿名さん26/08/25(火) 12:34:11

    甘井君が泣きながら身を削ってサポートしてくれてたのグッと来た
    日車は自分が思ってるよりずっとずっと周囲の人達から想われてるよ…向けられるのが愛でも尊敬でもこれからも生きてほしいという感情でも
    いずれにせよ大事にされてるのは間違いない
    森羅万象組により徐々に除湿されてくのおもろい

  • 67二次元好きの匿名さん26/08/25(火) 14:45:46

    真面目すぎるから一人にするとどこまでもビチョ濡れになっちゃうんだろうね
    逆に七人で愛情注ぎ続けるくらいが丁度良いバランスになるかもしれない

  • 68二次元好きの匿名さん26/08/25(火) 15:26:15

    新田ちゃんとアンドロイド日車さんの会話も好き
    口調を綺麗に切り替えられる所にやはり人格を含めプログラムされた機械なんだなって強く感じられて凄いけど中々に複雑な気持ちになってしまう
    しかし本人そっくりに作れて自律的に考えを述べられるほど高性能で何なら好みにカスタマイズまで出来るってなるとそりゃ大金積んでも欲しがる人は出るし需要あるよね
    多少問題が起ころうが裏で供給する側も止まらないなこれ
    というかこっそり見てたのも皆にもバレてたの流石だ
    おかえりは一番日車に言いたい無事では無いが…こんな状態になっても労いの言葉から入るんだものな
    三者三様の反応の仕方が良き…

  • 69スレ主26/08/25(火) 21:59:00

    伊地知「失礼します!!」


    五条たちが霊安室に飛び込んできた時と同じような激しさで、伊地知が解剖室に駆け込んできた
    廊下で待機していたはずの家入、甘井、そしてAD-M-8119も一緒に
    すわ一大事かと解剖室のゆるみかけていた空気が一瞬にして張り詰めるが、それに構うことなく家入と伊地知は足音荒く剖検台の日車に駆け寄った


    家入「決まりましたよ日車さん、企業に行きます」

    伊地知「全て承認させました!隠蔽もできています!まだ上層部にも感知されていません!」

    家入「何がなんでも生かしますからね…!」

    伊地知「新田さんに重傷者搬送用車両の準備をさせています!甘井くんは今までと同じように日車さんに付いていてくださいね!」

    甘井「へ、あ、は、ハイッ!!」

    日下部「待て!何の話だ!?何で上層部が出てくる!」

    五条「何何何!?てかふたりは何で企業と繋がってんの!?」


    にわかに騒がしくなった解剖室は、家入と伊地知から話を聞き出そうとする者、自分自身の脳内で情報を整理する者、目まぐるしい展開について行けず右往左往する者とで大混乱である
    案の定甘井も家入たち側の人間として捉えられ詰め寄られているが、彼はそもそもアンドロイドの件自体詳しく聞かされていない
    祓除任務を終えた日車の緊急事態で呼び出され術式を使いながら生命維持を手伝い、つい先ほど廊下でAD-M-8119と対面して仰天したばかりだ
    何を問われても答えられず、相手の剣幕に押されて甘井は涙目になっていた
    そんな中、解剖室の入口近くに立って室内の様子を眺めていたAD-M-8119が、剖検台に横たわる日車に足音もなく近付いてきた
    側までやって来たAD-M-8119と日車の姿を虎杖は見比べる
    本物と並べば多少は差異があるだろうと思っていたふたりは、眼差しも、鼻筋のラインも、耳の形も何もかもが同一で、日車の一卵性双生児そのものにしか見えなかった

  • 70スレ主26/08/25(火) 22:14:21

    8119『初めまして、日車寛見。俺の全ての元となった人間』

    日車「君が例のアンドロイドか、初めまして。…ふふ、本当に俺と瓜二つなんだな。君も日車寛見と呼ぶべきか?」

    8119『いいや、それは君だけの名前だろう?俺の本来の名前はAD-M-8119だ』

    日車「意味は?」

    8119『ADはアンドロイド、Mは男性型、81は日本人モデル、そして19番目に作られたという意味だ』

    日車「なるほど。…どこからどう見ても人間そのものだ、世の中に溶け込んで同じように生活していたらまるで見分けがつかない」


    自分と同じ顔をした男が、自分と同じ表情を浮かべて、自分と同じ声で話しかけてくる
    日車は初めてアンドロイドの存在を知った時のことを思い出していた
    自分を好いてくれている男たちが自分を模して作った人形を愛でている、それに対して最初は強い嫌悪感を抱いた
    信じられない、気持ち悪い、理解できない、狂っている…日車寛見という存在を馬鹿にしているのではないかと
    けれども最終的には受け入れてしまった、自己嫌悪と諦めの気持ちも含めて
    愛を返せなかった自分が悪い、愛したかった彼らの気持ちも尊重したい、自分にだって彼らに対する愛はあったのだから
    そしてもうひとつ、先の祓除任務のことも思い出す
    他者の姿を真似て害を振り撒いていた呪霊が日車の姿をも真似て、人間の姿を取り戻したいと臓器を奪っていった
    呪霊らしい身勝手で暴力的な許されざる行為ではあったが、そこには理由があり、悲哀があった

    皆求めているのだ、人間の形を
    欲は人によれど、同じ形をして他者と関係を結び合える身体に焦がれていた
    呪霊の欲は分かりやすかった、過去を取り戻したかったから、得られるはずだった未来を手にしたかったから
    そして彼らの欲も…嫌というほど知らされてしまった
    度を超えた愛を昇華するためだけに大金を注ぎ込んで作られた人形、日車の写し身、愛されるためだけの存在

  • 71スレ主26/08/25(火) 22:35:12

    日車「教えてくれ、アンドロイドの俺。君は幸せに過ごしていたのか?」

    8119『もちろんだとも。みんなが俺をかわいがってくれて、愛でてくれて、愛してくれたよ。君の代わりとして』

    日車「…空しいと思わなかったのか?」

    8119『なぜ?俺はそのために作られた、むしろそう扱ってもらわなければ俺の存在意義は失われてしまう』


    日車の胸中に引っかかるものがあるのは、あの呪霊とのやりとりがあったからだ
    かつて機械義体は人々の憎悪の対象だった
    機械の手足は罪の証、誕生時の身体を手放した人間は人ならざるもの、脳と内臓と肉体の全てが揃って初めて人間と認められる
    機械義体であったから命を奪われた人間がいる、機械義体を得られなかったから命を落とした人間がいる
    そんな時代に渦巻いていた負の感情から生まれた呪霊が日車から心臓と肺を奪い、そして祓われた
    日車にとって機械義体は救われなかった人々の悲しみの象徴として心に刻まれている
    しかし目の前にいる人工知能を搭載した全身機械義体はどうだろう、人に望まれて作られ、人の目に触れぬよう隠されながらも大切にされて過ごしてきた
    一体何が違うのか


    8119『俺たちアンドロイドは物だ。この身体を作る際にヒト由来の有機性パーツを使ったとしても、絶対に人間には成り代われない。人を人たらしめるもの、脳と魂を作ることは不可能だからだ』

    日車「全身機械義体者とアンドロイドの差は脳と魂の有無だけだと?」

    8119『企業はそう定義しているし、俺もそう思っている。脳と魂を持たないアンドロイドには個も人権も何もない』


    自分は人間ではないとAD-M-8119は言い切った
    脳だけは生身であったがために、そこに魂と、怒りと悲しみを抱く心があったがために最後まで自分は人間であると主張し続けていた呪霊との違いはそこだった

  • 72スレ主26/08/25(火) 22:52:58

    8119『アンドロイドの前身である全身機械義体が作られた理由は、人間が生きるお手伝いをするため。失ってしまった身体の代わりになるため。人の形をした器を人間が使う、それだけのことだったのに…』

    虎杖「器…」

    伏黒「それ、は…」

    日車「彼の言う器は呪術的な意味とは全く違う、文字通りの意味でしかない」

    8119『最初から空で誰も犠牲にしていない、今俺がこうして動いて会話をしているのも全てプログラムだ』


    器という言葉に思うところのある虎杖と伏黒が表情を曇らせたことに気が付き、日車が声をかける
    AD-M-8119も事情は分からないが、説明が足りなかったのだろうと認識して言葉を重ねた
    日車が犠牲になっていないと言うにはいささか語弊があるが、彼の身体を傷付けてAD-M-8119が生まれたわけではないし、AD-M-8119が日車に取って代わることは絶対にありえない
    劣化はするものの老いることのない身体と、人よりもはるかに優れた人工知能を持つアンドロイドでも、脳と魂だけは絶対に作れない
    これこそが本当の意味での『不可侵領域』、存在するかどうかも分からない神さえ立ち入れない場所
    世界にふたつとなく、ひとりがひとつだけ所有するものと、その内側に宿る形のないもの


    日車「随分と概念的な話になったな。…だが元弁護士であったからかな、何となく理解できる。日本国憲法第十一条『国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる』。これは人間として生を受けた後脳と魂だけになってしまった者にも適応され、逆にそれらを持たないアンドロイドには適応されない、と」
    8119『あの頃の人間がもう少し賢くて、その言葉を正しく理解して、受け入れることができていたのなら、人型ロボット産業はより高度な発展を遂げていただろうな』


    ふたりの日車の話を聞いていた脹相が、隣に立ってハンカチを貸してくれた乙骨の上着の袖をくいと引いて尋ねる


    脹相「…人間の日車とアンドロイドの日車は何の話をしているんだ?」

    乙骨「人間の日車さんはどこまでいっても人間で、アンドロイドの日車さんはどこまでいってもアンドロイドってことの確認の話です」

  • 73スレ主26/08/25(火) 23:12:29

    時は少し遡る

    機械義体の話は少し調べれば誰でも知ることができるが、その多くは情報規制されているため、裏側や真相、その後の経緯を知るにはそれなりの力が必要になる
    そんな中、深部も深部、企業代表と直接話をした男がいる
    日本呪術界御三家五条家当主、五条悟だ

    あの長期任務が始まるよりずっと前から五条は企業代表に対して『作ってほしいアンドロイドがあるんだよね』と依頼を持ちかけていたが、先方は恐れおののいていた
    常にアンダーグラウンドな世界を相手にしているのだ、呪術界についての情報はそれなりに仕入れていたし距離も置いていた
    お互い交わってはいけない領域だと感覚的に理解していた、この技術と呪術は絶対に交わってはいけないと
    だというのに五条悟は飛び込んできた、彼は呪術世界の均衡だけでなく元機械義体、現アンドロイド世界のバランスまで変えに来たのだ

    五条悟は世界をも掌握する日本呪術界の重鎮だ
    先の大きな戦いでその情勢は大きく変わったと聞くが、より強い権力を得た最強たる呪術師が笑って言うのだ
    君たちの持ってる技術なら、この人そっくりのアンドロイドを作れるでしょ?と
    企業代表が自衛のために多くの業界の裏事情に精通していたことが仇となった

    外見はこれ、詳しいサイズとかはこっち、音声データも十分用意してあるからここからサンプリングして声作って、性格についてはまとめた資料と生活パターンの記録を用意したからそれを元にしてプログラム組んで、あとこれは門外不出なんだけどとある戦いの映像も渡すから必ず見るように
    個人情報を超えた個人情報を山のように押し付けられ、企業代表は悲鳴を上げて主張した
    確かに私たちはを負の遺産とまで言われたあのオーバーテクノロジーを秘密裏に引き継いだ!
    人体の神経と機械義体を繋いで意のままに動かす技術も、脳を移植させて全身機械義体を新しい身体とする技術も!
    失われてはならないものだと、未来に残すべきものだと思ったから!
    けれどもあれはあくまで医療技術なんだ!何らかの理由で身体を失った人々が科学の力で生き延びられるように…!


    五条「じゃあどうしてそんな素晴らしい技術を使ってあんなお人形を作ってるの?」


    昨日何食べた?とでも尋ねるかのような軽い口調の問いかけに、企業代表は返す言葉もなかった

  • 74スレ主26/08/25(火) 23:40:02

    正義や正しさを主張したいのなら、引き継いだ全てを隠し続けているべきだった
    しかし人間は弱く醜く穢れた存在だ、それが比喩ではなく文字通りの場合なんて腐るほどある
    現実離れした技術に呑まれ、これで人の欲望の全てを叶えるものが作れたのなら…そう一度でも思ってしまったら、後は坂を転げ落ちるように物事は進んでいった
    全身機械義体は人権の問題があったからあんな悲惨なことになったのだ、ならば最初から何も持たせなければいい
    脳に人工知能を詰めて、全てを機械にしてしまえば誰も訴えることなんてできない
    人間と証明できるものがなければいい、実在する、実在した人物に似せたり、記憶を移したりしなければいい…
    それを免罪符としてアンドロイドを作り、金儲けをしていた事実は隠せない


    五条「僕も大分バカなこと言ってる自覚はあるよ、でも提供してるそっちも同類でしょ?考え付かないわけないじゃん。良識がそれをやらないようにしてたのかもしれないけど、覚悟がなかっただけ、最後の一線を越える狂気がなかっただけ」


    五条の言葉の全てが真実だ
    実行されなかったのはアンドロイドに関わる者、企業側も購入者側も含めて全員が『本当の罪』を恐れたからだ
    しかし呪術師は違う、彼らは一般人と全く異なる理の中で生きている
    見えないものを見て、超常の力を操り、途方もない年月を生きる者もいれば、人の世そのものとしてあり続ける者もいる
    呪力を持たない者、非術師と呼ばれる者は一生知ることのない裏の裏の世界
    そこから彼はやって来た、コンビニを訪ねるような気軽さで


    五条「おたくを潰したいわけじゃないし、その技術を呪術界に寄越せって言うつもりもないよ。機械義体技術が本当に貴重で重要なものだってのは僕にも分かる。あとそれは非術師の領分であるべきだとも思う、万人のためのものであった方がきっと正しく発展していける。…ってマジなハナシしちゃったけど、今の僕はあくまでお客さんなわけ。おたくの作ってるアンドロイドのちょっと特別なやつが欲しいの」


    傍受されないよう何重にも防壁を張った通信にポップアップ通知のサインが浮かぶ、今ここにアクセスできるのは五条だけだ
    詳細を確認すると、通常取引されているアンドロイドの価格の数倍の金額が一括で振り込まれていて、企業代表は思わず椅子から転げ落ちた

  • 75スレ主26/08/26(水) 00:00:11

    五条「それ口止め料だから。このことは僕とアンタだけの秘密、もしバラしたら企業ごと潰すし技術も全部もらう。命が惜しかったら黙ってて。あ、今更だけど今後も長~いお付き合いになるだろうからどうぞよろしくね?いろいろ無茶言うと思うけどちゃんとお金は支払うからその辺は心配しないで。後で専用窓口の話もしたいな」


    この金銭のやりとりは伊地知にも知られていない
    五条だけが理解していればいいのだ、何重にも積み重なっていく罪の重さを
    どんな対価を支払ってでも用意したかった、ただひとつの贈り物


    五条「愛ほど歪んだ呪いはないし、お金で本当の愛は買えない。それでもあれこれやっちゃうんだから、人間ってホント厄介」


    脅すようなことばかり言っていた五条がポツリと漏らした言葉に、企業代表は思わず通信モニターに映る相手の顔を見た
    人間とは思えぬ白銀の髪、アイマスクで目許を隠していても分かる美貌、完全な部外者である自分にも分かるそのオーラ
    そんな男が莫大な金を払って求めるのは一見凡庸な男をモデルにした違法アンドロイド
    なぜと問えば答えてくれるだろうか、余計こと聞くとか死にたいの?とまた凄まれるだろうか
    困惑が伝わってしまったようで、五条はにんまりと笑みを浮かべて画面越しに企業代表を見つめ返す


    五条「詳しく話してあげてもいいけど、それはまた今度ね。あと改めて確認、アンドロイドの寿命って五十年くらいらしいけど、ボディ取り替えたりデータコピーしたりすれば半永久的って考えていい?」


    まだ機械義体自体が作られてから半世紀も経過していない
    明確な答えは出せないが時代も科学も進歩するはずだ、保証はできないができうる限りの対応はすると企業代表が伝えると、五条は満足げに微笑んで見せた


    五条「さっきも言ったけどお金はちゃんと払うからね、何なら僕がスポンサーになったっていい。本当にどうしようもなくなったら僕っていうかこっちで引き取ってあげるからさ、安心していいアンドロイド作ってよ」


    じゃあ今日の話はここまで!また何かあったら連絡するから早めに窓口作ってね~!と気楽な挨拶としっかり課題を残して、五条からの通信は切れた

  • 76スレ主26/08/26(水) 00:20:43

    8119『日車寛見、すでに察していると思うが俺は君の器になる。君の肉体に残された時間はもうない、だからその脳に魂、呪力、全てを込めて俺の身体に移り、生命を繋ぐんだ』

    日車「…俺は延命を望んでいると一度も口にしていない。俺の意思は無視されるのか?」

    8119『君は死にたいのか?』

    日車「……どうだろう。心臓と肺を奪われた時点で死は覚悟していたが、こんなことになるとは思ってもみなかった。積極的に死を望んでいるわけではないが、突然全身機械義体になれと言われても、何と答えればいいのやら」


    その願いを叶えられず呪霊になってしまった人間を俺は殺めたのに、と日車は小さくつぶやいた
    しかしここには全てが揃っている
    まだ生きている日車の脳、日車の姿を完璧に写した全身機械義体のアンドロイド、世に知られてはならないことを封じ込められる呪術師の世界、日車の生を心から願うたくさんの人々


    七海「…全身機械義体に人間の脳を移植する技術は失われたのではなかったのですか?」

    伊地知「過ぎたるものではありましたが、それは時代と人々が追い付いていなかったからで、技術だけを見れば本当に優れたものでした。ですので秘密裏に封じることにしたそうです、正しく扱える時が来るまで。なのできちんと現存しています」

    五条「それを人間の日車さんとアンドロイドの日車さんでやるってことね」

    家入「事前テストなしのぶっつけ本番だよ。あとは…証拠隠滅か」

    日下部「証拠隠滅ってよォ、つまりはおんなじ姿形してるやつがふたりいるってのが問題だから、合わせてひとりにしちまえって話か?とんでもねェこと考えるな企業さんとやらも」

    家入「金に目が眩んでやらかした企業側も隠せるものなら隠したいでしょう、脅しもしましたしね。黙ってればいいんです、関わった人間全員が。…あと何度だって言いますよ、日車さんが好きすぎて暴走したあなたたちが原初の原因です。それが色々あっていい感じに収まろうとしてるだけです」


    日下部が家入の言う証拠隠滅とやらについての持論を述べたが、ド正論で言い返されて言葉を失う

  • 77スレ主26/08/26(水) 00:54:09

    何事もなければ彼らは一生AD-M-8119を隠し続けただろうし、AD-M-8119が作られなければ日車は間違いなく命を落としていただろう
    あらゆる偶然の糸が一本に撚り合わせられ、日車の命を繋ごうとしていた
    ふたりの側に立っていた虎杖は、始まりの日を思い出す
    ソファに寝かされていたAD-M-8119が目蓋を開いて、自分たちの姿をその眼に映したあの瞬間
    あれもひとつの生命の誕生だった
    全てが作られたものであろうが、日車寛見と名付けられたAD-M-8119は機械の心臓に電源を入れられて、世界に存在を刻んだのだ


    虎杖「死なないでよ、日車。アンドロイドの日車と一緒になって、生きてよ。呪物でもいいって言ったけどさ、俺やっぱり日車のかたちが好きだよ」

    日車「俺は脳だけになって、姿形は彼のものとなるが?」

    8119『日車寛見、元は全て君のものだ。俺が写させてもらった姿を、君が取り戻すだけだ』

    日車「それでもだ。…俺はどうにも他者に対する線引きが上手くできない。弁護士として向き合ってきた人たちにも、呪術師として向き合ってきた呪霊たちにも、…アンドロイドである君にも」

    8119『…君は本当にやさしすぎる。脳も魂もない俺に、心を見出すんだな』


    日車が持ち上げた右手をAD-M-8119の手が取る
    指の長さ、爪の形、指紋まで同じ手と手が触れ合う、同じ温度で
    ふたりがどちらも人間であったのなら、呪術界では双子として扱われ忌み嫌われただろう
    しかし彼らは違う、日車はただひとりの人間として生を受け、AD-M-8119はそのコピーとして作られた
    寸分の差違すらもない同一の姿形をした人間は世界にふたりと存在してはならない
    ドッペルゲンガーが恐れられている最大の理由、それは自己の揺らぎからくる不信、恐怖、そして死の予感


    日車「ここまでお膳立てされておきながら命を放棄するのも、贖罪を道半ばで諦めるのも、彼らの想いに応えられないまま終わるのも、君の存在理由を否定するのも、どれも不誠実だと俺は思う」

  • 78スレ主26/08/26(水) 01:01:31

    日車「すまない、AD-M-8119、アンドロイドの日車寛見。君の身体で生きることを俺は選ぶ」

    8119『それでいい、日車寛見。それこそがアンドロイド、全身機械義体の生まれた原初の理由なのだから』

  • 79二次元好きの匿名さん26/08/26(水) 01:04:25

    >>78

    ワァ………ァ………(ちいかわ泣き)

スレッドは8/26 11:04頃に落ちます

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