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日本の女性は生理や出産で「無駄な痛み」を感じている

それは「我慢」すべきことではない

筆者は10代後半から30代前半までをアメリカで過ごし、13年前に帰国した。そのときに感じたのは、やっぱり日本はアメリカと比べると、ずっと住みやすい国だということ。日本では暗い夜道を歩くときでも、後ろに誰かついて来てないかとバッグを胸に抱えて警戒しなくてもよいし、アパートを修理に来る人にアポをすっぽかされることもない。思い立ったらすぐに医者や歯医者に行ける。

でも、日本にいると「本当に女は損だ!」と無性に腹が立つことがよくある。日本の女性は、特にリプロダクティブ・ヘルス(性や生殖における健康)の分野において、“無駄な痛み”を感じる機会があまりに多すぎるように思う。私が感じた3つの痛みについてお話ししたい。

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1:生理の痛み

まず挙げたいのは、生理の痛みだ。筆者はアメリカでは、大学生の頃から避妊注射を受けていた。なぜかというと、周りの女友だちの全員が避妊用ピルを飲むか、避妊注射、もしくは避妊インプラントをしていたからだ。もちろんHIVや性感染症に感染しないためにコンドームも併用していたが、当時住んでいたニューヨークではキャリア志向の女性が多かったからか、妊娠の不安は限りなくゼロに近づけるのが、未婚女性としての常識だった。

私がしていた注射は、一般的に「バースコントロール・ショット」と呼ばれ、正式名は「Depo-Provera」という。12週間毎に受けるホルモン注射で、きちんと頻度を守れば妊娠阻止率は99%と、ピルと同等の避妊効果をもつ。また同時に、生理を止める作用もある。注射を始めるにつれ生理の出血の頻度や出血の量が減り、1年後には約半分の女性に生理がまったくこなくなるといわれている(Planned ParenthoodのHPより)。私も1年ほどで生理がピタリとこなくなった。

〔PHOTO〕iStock

副作用として、生理期間が長くなる、生理期間の間に起こるポツポツという出血(スポッティング)、吐き気、体重増加、乳房の痛み、注射跡に残る薄い打撲傷、注射跡に起こる皮膚の小さな凹み(稀なケース)などがあるが、私と友人達が感じたものは、「スポッティング」「注射跡に残る薄い打撲傷」がほとんどだった(もちろん、副作用には個人差があるので一概には言えない)。

生理がこないということは、毎月の出血や、ナプキンやタンポンの使用から来る不快感や肌かぶれ、生理痛から開放される、ということである。避妊注射が認可されていない日本にいるいま、この「生理からの自由」は本当に尊いものだった、とつくづく思う。

さらにNYでは、非営利団体が運営する医療サービスに行って所定の手続きを行うと、学生は無料で避妊注射を受けられたし、避妊用ピルももらえた。大学を卒業した後は、収入に応じて0~150ドルを支払うことになる。私の場合、避妊注射は1回60ドルだった。つまり、アメリカに住んでいる女性は、地域にもよるが、学生ならば無料、社会人になっても年に数万円で生理と妊娠の心配から逃れることができるのだ。

2:出産の痛み

日本は欧米に比べて、無痛分娩に対する理解も進んでいないように思う。妊娠5ヶ月で帰国した私にとって、無痛分娩は当然の選択だった。周りのほとんどのアメリカ人女性が無痛分娩を選んでいたし、痛みに弱い私は陣痛の不安に震え上がっていたからだ。ラッキーなことに、計画無痛分娩をするという私の選択に家族の誰も反対しなかったのだが、なんと反対する人が現れた。内科医である私の女友達だ。

〔PHOTO〕iStock
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麻酔科医が一歩間違えば、母体の下半身マヒや心臓停止などの合併症を起こすから、やめたほうがよい、と彼女は言う。「無痛分娩の無用なリスクを負うくらいなら、痛みに耐えたほうがいいんじゃない? お産は昔から女性が耐えてきたものだし」と。だが、合併症の確率を教えてほしいと彼女に聞いても具体的には答えられなかった。

とはいえ、彼女は20年以上も医師を続けているし、なにしろ同じ女性だ。少し心配になった私は、スタンフォード大学を卒業し、ワシントンDCの大病院で勤務する日系アメリカ人男性の麻酔科医の友人に彼女の話をしてみた。

すると、彼はムッとして、彼女が無痛分娩に反対する根拠が科学的ではないと断言したのである。彼が説明するには、きちんとした麻酔医がいればアメリカでも日本でも無痛分娩が特に妊産婦死亡率を高めるわけではないという。

たしかに、無痛分娩の麻酔による感染や頭痛などの後遺症はなくもないが、ほとんどの場合は数週間で治癒し、彼自身がこれまで1000件以上の無痛分娩を担当したなかで、死亡や重症にいたった産婦はひとりもいない、とのこと。

そして、彼は私にこう言ったのである。

「19世紀半ばに抜歯に初めて麻酔が使われるようになって以来、歯を治療するのに我々は麻酔を使っているけれど、このことについては誰も疑問視しないよね? なのに、お産に関しては麻酔の使用が疑問視される。これは性差別だと思わない?

アメリカでは7割の女性が、フランスでは8割の女性が無痛分娩を選び、女性の選択に反対する医師などいないよ」

ちなみに、一般社団法人 日本産科麻酔学会のHPによると、2016年における日本の硬膜外無痛分娩率は6.1%だ(硬膜外無痛分娩は多くの国で無痛分娩の第一選択とされる方法)。

結局、私は計画無痛分娩を選び、陣痛や分娩にも痛みを全く感じず、子供が生まれた瞬間は「あっけなかった」というのが実感だ。その後、赤ちゃんに異常が見つかり(無痛分娩とは関係ない)、手術を受ける大学病院と産院を授乳のために行ったり来たりする日々が続いて精神的にキツかったが、無痛分娩だったので産後の肉体的回復が早かったのが不幸中の幸いだった。もし自然分娩で肉体的にも疲弊していたら、赤ちゃんの心配とともに相当参っていたと思う(赤ちゃんの手術は無事成功し、今では健やかなティーンに育っているのでご安心ください)。

3:産婦人科医の言葉による痛み

最後に、日本で何人かの産婦人科医にかかって感じたことについてお話ししたい。

NYにいたときは、避妊注射を受けに行くついでに、定期的にエイズや性感染症の検査、子宮検診や乳がん検診を受けていた。結婚前も結婚後もそのルーチンは同じ。アメリカに住む40代や50代にはエイズの恐怖が染み付いている人が多く、パートナーのあるなしにかかわらず、性的活動がある限り、半年毎にエイズと性感染症の検査をする習慣があるのだ。パートナーを疑う理由がなくとも、万一のために検査をしたいという心理からくる。

私が最後に性感染症の検査をしたのはNYで妊娠した13年前だったので、先日、子宮検診でかかりつけの産婦人科医を訪れた際にエイズと性病検査を希望した。すると、産婦人科医は侮蔑のこもった表情でこう言ったのだ。

「何でですか?」

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まさかの問いに絶句した。アメリカで産婦人科医が同じ質問をしたら、「なぜそんな立ち入ったことを聞くのか」と問題視されるだろう。アラフィフの既婚女性が検査を受けることがよほど不可解だったのだろうか。それとも、不特定多数とセックスしている人か、コンドーム無しの不用意なセックスをしている人のように見られたのだろうか。

もし仮にそうだったとしても、批判的な表情をしている医師に素直に打ち明けられないだろう。NYで避妊注射を受けていた医療センターでは、医師以外にもカウンセラーがおり、あらゆる人種とジェンダーが揃えられていた。医師の診察前後に時間を設けて、「何か心配ごとはありますか?」と親身になって聞いてくれる。医師も非常にフランクで、決して「お医者様」的な態度はとらない。

もちろん、日本にも患者の立場に立って親身に対応してくれる産婦人科医はいるだろう。でも、私の運が悪いのか、これまでいろいろな病院に通ったなかで、そうした医師に出会ったことはない。避妊や性感染症のこととなると、批判的な視線で突き放したような物言いをする人が多い印象だ。

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FRaU WEBの記事「教師の性暴力に苦しんだ女性の告白『先生は一切避妊をしなかった』」では、女子高生のときに性暴力を受け、産婦人科で緊急避妊薬を処方してもらおうとしたら産婦人科医から呆れられたうえ、「このような事態が二度とと訪れないように万全を期します」という文章が書かれた紙にサインするように言われた女性のエピソードがシェアされていたが、日本で性感染症の検査がルーチン化しない一因は、こうした産婦人科医の態度や意識にあるのではないだろうか。

これは医師個人の人間性の問題ではない。出産が神聖視される一方で、性がタブー視されている日本社会の価値観の問題だ。

〔PHOTO〕iStock

今年7月に、日本産婦人科学会の副会長がNHKの番組で、緊急避妊薬を薬局で購入できるようにする動きがあることについて、「“じゃあ次も使えばいいや”という安易な考えに流れてしまうことを心配している」と、避妊が性の乱れにつながるかのような考えをもっていることを露呈した件も記憶に新しい。

生理の痛みも出産の痛みも、自らの身を守るための行動も、決して我慢すべきものではない。日本の女性たちが一日でも早く、「無駄な痛み」から解放されることを切に願う。

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