アイアンハート、超残念作
どうしてこうなったのか
ちょっと待って、ちょっと待って。
この作品いろいろと突っ込みどころがありすぎて。
私何から書けばいいんだろ?
そもそもアイアンハートってなんですか?という方へ。
アイアンハートは執筆時点(2025年8月19日)で、動画配信サイトDisney+におけるMarvel実写版ドラマの最新作である。
Marvel(マーベル)というと、アイアンマンとかスパイダーマンとか思い浮かべる人は多いだろうし、この記事を拾って読んでくれている方々はああ、あれね、となるかも知れない。
レビューを書く前に少しだけ述べておくと、私自身はアイアンマン以前のMarvel作品であるブレイドから今作まで、ほぼすべての放送媒体のマーベル作品を見てきた。それこそ、アニメのX-MENも4人いるパニッシャーも、デッドプール最新作でネタにされまくった様々なイースターエッグも8割は拾えるそこそこなオタクである。
その私が前情報を一切聞かず、見ずにアイアンハートを見てみた。
正直に言おう。
見る前の私はそこそこ以上にこの最新作に期待していたのである。
どこに期待していたのか、いやどこに期待できたのかって?
それはもちろん、最近のマーベル作品全体が落ち目であり実につまらないから、逆にこのアイアンハートという作品はナンバリングや前日譚がない分、そこそこ独立した作品になっているんじゃないかな?って思っていたのだ。実際、ウェアウルブズバイナイトというホラー的意欲作品や、他のヒーロー名すら一切でてこないムーンナイトはそれなりに楽しめた。アイアンハートもアイアンマンへのオマージュくらいはあるんだろうけど、雰囲気的にも独立した物語が展開して新しい方向から切り込んだ作品を見せてくれるんじゃないかって。
そんな私が6話ほぼ一気見した素直な感想を今からお伝えしたい。
ちなみにマーベル作品を1つたりとも見てないって人はここから引き返して私の別の記事を探すなりYoutubeでかわいい動物の動画を見るなりした方が1億倍有意義な時間を過ごせるのでそちらをお勧めする。
この記事自体は、出来ればこれから見ようかなとか思っている人の役に立てれば幸いだし、そうでなくてもあらすじや今後のMCU作品にどう絡みうるかなども考察しているので、今までのMCU作品を見てかつ今後のMCUも見るかも知れない人は、良かったら読んでいって欲しい。
流れ
本稿は大きく分けて3つの内容に分けていく。
1:アイアンハートの全あらすじ
2:作り手視点で見る考察、あるいはファンからの悲鳴
3:作品を振り返りつつ今後のMarvelを憂う
1:あらすじという名のネタバレ
主人公のリリ・ウィリアムズは問題児。
アイアンスーツを自作した功績を引っ提げてMITに奨学金入学したものの、4年間でまともな成果は一切出せず、軍資金稼ぎに他生徒の宿題やカンニングを請け負うなど、グレー行為に手を染めていく。
それがバレて放校になった結果、自作のスーツを盗んで故郷に帰還。
壊れかけのスーツと一緒に母の住むアパートへと帰る。
スーツを作り直す為にお金が必要なリリは、ジョンという男に誘われるままに町の新興チンピラ強盗集団に加入。リーダーのパーカーを始めとした面々に加わる。早速仕事に参加しろと言われるものの、まともなスーツがないリリはまず自作AIを作ろうとするが、なぜか亡くなった親友そっくりのAIナタリーが完成してしまう。そのナタリーと紆余曲折を経て、リリはジョーという男を探し出す。この男が持っているパーツは闇市で購入したものなので、リリは彼を脅してパーツをせしめ、自分に必要なパーツを手に入れた。
強盗☆大作戦
直したアイアンスーツでリリはパーカーの強盗団の作戦に参加する。内容は地下交通トンネルを作成した富豪を脅して現金をせしめるというもの。強盗団が地下トンネルシステムを無効化し、パーカーは富豪を脅して一件落着、と思いきやリリはトンネルを出たところで警備員に銃を向けられる。
普通に逃げようとした刹那、AIナタリーが機能を停止。リリは顔を警備員に見られた上にスーツのコントロールも効かない絶体絶命に陥る。
リリやAIナタリーは度々発作を起こすが、それには過去に起きた事件が関係していた。彼女の母親が再婚した相手と、リリにとっては親友、姉以上だったナタリーが通り魔によって射殺されていたのだ。
絶体絶命のリリ&ナタリーを救ったのはリーダーのパーカー。
謎のマントをきたまま、彼は自分の拳銃から「曲がる弾丸」を撃って警備員を始末する。
それからも数件の強盗を行ったリリは、パーカーに彼の能力説明を求め、パーカーは「仕組みはわからないし知るつもりもない。魔法だ」と答える。
実際要所要所でパーカーの体に広がる紋章模様と、それに苦しむパーカーのシーンが挿入される。右腕のジョンはパーカーを身を案ずるが、パーカーは問題ないとはねのける。
リリに悪い意味で影響を受け始めたジョー-脅されてパーツを供与させられた人-は、リリの家を訪ねたりご近所さんに日頃の仕返しをしたりする。また家に訪ねてきた警官達によって、リリは強盗団での前任者、スチュワートが死亡した事を知る。
パーカーの素性を調べる内に、この強盗集団に居るのはさすがにマズいと実感し始めたリリは、次の仕事で足抜けする事を決意。ついでにパーカーの持っているフードマントを採取して今後の対策に役立てようとする。
しかし最後になるはずの強盗作戦でジョンに謀叛がバレてしまい、窮地に陥ったリリはジョンを密室に放置。警備システムによってジョンは窒息死する。
更に現場に残されたパーツによってジョーは逮捕。パーカーはジョンの死で怒り狂い、「契約者」にジョンの死の真相を教えるように吠える。
結局リリの行動によってジョンが死亡し、パーカーは「契約者」によってそれがリリの犯行である事を知る。
ジョーの父親はアイアンマン1作目で出てきた元スターク・インダストリーの副取締役であるオバダイアだという事が世間一般すべてに知られ、ジョー:エゼキエルにはエリート一家出身の一級犯罪者という烙印が押される。ちなみにオバダイアの死の真相は表向き事故という事で偽装されているが、息子のジョーは父親が何者だったかをちゃんと知っており、彼のような人間にならない為に名前まで変えてひっそりと暮らしていた。
刑務所に投獄されたジョーに面会したリリはなんとかすると口ではいうが、具体的な方策や方向は示さないまま。逆にこの状況を利用したパーカーがジョーを救出し、リリの後釜としてチームに誘う。
リリの人間関係はどんどん悪化を極めていく。
追放同然で逃げ出した強盗団はともかく、自分の身を心配する母親とは口論しかせず、ナタリーの実の兄弟には「妹の思い出をAIなんかにして汚さないでくれ」と激しく拒絶される。
頼みの綱であるマントフードの断片解析も思うように進まないところで、母親から望外の申し出がやってくる。
それは「私の友達に魔法を使える人がいるから会ってみない?」というもの。もしかしたらマントフードのヒントになるかもと、リリは母親に同行。そこで会った魔法使い親子にマントフードが何なのかを問い詰めるも、魔法使い母は回答を拒否。自分がリリの関与する「何か」に利用された事に気づいたリリの母親はそれを咎めるも、リリはスーツを着て逃走。
若干口が軽いであろう同年代の魔法使いの子の方と会食していたリリは、マントフードが本当に魔法の道具であること。しかも危険な闇魔法に属する代物であり、おそらくドルマムゥ(Dr.ストレンジ1作目に出てきた多元宇宙を自分のものにすべく暗躍する超存在)によるものだとその子から伝えられる。
が、そこで折悪くパーカーの強盗団に囲まれる。パーカーは一部の事実を隠匿したまま、ジョンの死がリリのせいだと仲間に喧伝、彼女を排除させようとしていた。
自作ツールやナタリーAI操作のスーツを駆使して、強盗団の4人までは撃退するものの、自身の後任として現れたジョーによってリリはスーツを破壊されてしまう。ジョーは自分を電磁人間として改良しており、リリのスーツでは手も足も出なかった。
本来ならばリリを始末する事を命じられていたが、脅迫された身であるにも関わらず、ジョーはリリに対して良心の呵責を感じ、彼女を殺さずに見逃す。その際「お願いだから身を潜めてくれよ、君が生きてると僕もおそらくまずい目に遭うから」とリリに伝える。その様子を仲間の一人が目撃していたが、パーカーの変貌ぶりに不信を抱いた彼女は、その場を黙って去る。
その後アジトに戻ったジョーはパーカーにリリを始末したと告げるが証拠を求められてたじろぐ。そこで先ほどの目撃者さんが「リリが死ぬのを見た」と口添えした事でパーカーは表面上ジョーを信じるそぶりを見せた。
倫理的および精神的支柱であった右腕のジョンが亡くなって以来、パーカーの傍若無人ぶりは手に負えなくなっており、仲間であった目撃者さんにスチュワートの死に関して糾弾されると激昂、同じく仲間であったハッカーのスラッグを締め上げる。結局自分の意志で操縦できるようになったジョー以外を追い出し、パーカーは孤立無援となる。
一方、リリは母親と和解して何が起きているかを話す。AIナタリーやその兄弟であるザビエル、近所の男の子、魔法使いの子と一緒に新スーツを開発する。それは機械と魔術の融合したスーツだった。完成に際し、なぜかAIナタリーの存在が消えてしまう。
同時並行でパーカーの過去が明らかになる。
パーカーは父親から絶交された後、自宅に強盗に入るも失敗。絶体絶命に陥った時、不思議な空間に迷い込む。
そこで出会った初老の男、契約者とパーカーは会話する。「何が望みだ?」という契約者にパーカーは「父親以上の大金持ちになりたい」と伝える。契約者は満足げに「ではそれを叶える為の道具を与えよう」と言い、直に連絡すると告げて姿を消す。これがパーカーがフードマントを手に入れたきっかけだった。パーカーは魔法のマントフードで自分を認めず追い出した父親への復讐を開始する。強盗団は結局彼の私利私欲の為の存在だった。
物語は最終盤。強盗団のアジトに戻ったリリは電磁人間になったジョーを倒し、パーカーからフードマントを奪った。パーカーは力を失って地面でのたうち回る。
その後すぐに、リリはパーカーも訪れた不思議空間で契約者と邂逅する。
契約者に「あんたが誰だか知ってる。ドルマムゥでしょ」というリリに「あんな野郎と一緒にしないでくれ。私は、メフィストだ」と告げる契約者。
メフィストはパーカーと同じように、リリにも契約を迫る。
月日は過ぎ、ガレージに突如現れたナタリー。唖然として自体が呑み込めないナタリーに、リリは熱狂した様子で語りかける。ホワイトボードには魔術のレトリック方程式が書かれ、周囲に置かれたテーブルにはパーツや機械が散乱している。どういう事?とナタリーは呟き、近づいてきたリリを手で押しやる。それに更に感動するリリ。
「おかえりなさい、ナタリー」と彼女を抱きしめるリリの右腕には、パーカーに走っていたのと同じ魔法の紋章模様が現われていた。
2:突っ込みどころしかない本作品
ああ!やっと書き終えた!
要点だけ書こうと思ったけどちょっと長く書いちゃったよ!
アイアンハート、いかがでしたか?
映像的見せ場も物語的盛り上がりも一切無し。
スクリプトライターが頑張った感はあるんだけど、作品が「受けない作品に必要なすべての要素」を内包していて見る者のやる気を無くさせていく・・・
まず主人公について。
自分勝手で身勝手、自尊心の塊で世の中を全て知った気になっている10代の女の子。トラウマ持ち。
起点としての要素は割と良いんだけど、主人公が持つべき「成長性」「外見的魅力」「内面的魅力」を一切持たないある意味すごい子。
あのね、君は大学4年間何をやってたんだよ、成長ゼロか。あっ、ゼロだからカンニングや盗作に手を貸しちゃうのか。
あげく故郷に戻ってやる事が強盗。えええ・・・
この主人公じゃあ魅力的な作品作りは難しいな。
ちなみにリリちゃん、最後まで一切の反省無しです。
どうやらスーツ作りに関しては一級品らしく、父親から貰う予定だった車を改造してスーツを作り直してます。動力をアークリアクター無しで作れるあたり、そこで特許取って会社設立すれば良かったんじゃないかな。別に放校されててもスタートアップ作れば良かったじゃない。
ちなみに初登場作品「ブラックパンサー:ワカンダフォーエバー」で関係のあったワカンダ女王シュリや王室近衛ナキア達にはリリ本人の羞恥心から連絡を取っていないので、ナノテクやヴィブラニウムといった先端技術は使えない模様。
もう一つアイアンハート全編で特徴的なのが、主人公もメインの敵対者も「かくたる目的を持たない」って事。
例えば海賊王に俺はなるとか、春高で優勝するとか、そういうもの。敵対者であるパーカーは一応超金持ちになって父親に仕返しするっていう目的があり、それ自体は作中で達成されるけどそこで終わり。
主人公であるはずのリリちゃんはトラウマ関連により偶発的に生み出されたAIナタリーを消去出来ず、愛着を持ち、結果それに執着するあまり、悪魔であるメフィストと契約してしまう結末。
目的を持たずモラル指針もない若者が悪魔にいいように誑かされるのがアイアンハートです。
全ての登場人物が初登場な上に背景を説明するシーンが一切ないので、どの場面においてもどの人物にも感情を揺さぶられることなく、ずっと傍観者としてこの寸劇を見る事が出来ます。
3:どうすればよかったのか
さて、どこがおもしろいんだこの作品、と思ったあなた。
そう、そうなんです。
何にも面白くないんですこれ。
例えばですね、
強盗集団がお金持ちに反感を持つに至った経緯とか、町の社会構造とか、リリがどうしてスーツに執着するのかを深堀するとか、内気でいじめられっ子だったジョーがリリと出会って明るくなってくとか、観客を引き込む作風にする事はできたはずなんですよね。
リリちゃんにも魅力ないんだけど、この強盗団もただのチンピラ集団。名前もハッカーの人以外全く出てこないし覚えられない。ジョーも見返してやっと思い出したレベル。なんでジョンとジョーだよ、ややこしいわ!
物語の流れ筋的に
ーリリと周りの人々
ーパーカーと強盗団
この2つを支柱にうまく展開するのが書き手の見せ所だったはず。
リリは物語の序盤に放校されるという失墜スタートだったのでこれ以上落ちないかなと思ったらお金欲しさにチンピラ参加という、トンデモ行動に走るので割と救われないし話も盛り上がらない。
結局リリは恐喝・強盗・故意の殺人・爆破・放火といった一級犯罪に加えて、唯一の家族である母親の期待や信頼への裏切り、友人であった死者への倫理的冒涜(遺族からの強い反発を生んだ故人イメージの私的利用)、悪魔との契約をこなしてるのでまぁすごいな本当。びっくりするくらい悪役じゃん。
パーカーにしても富豪を襲って契約書にサインさせてたのは、メフィストとの契約もあるんだろうけど、ただの父親への仕返しっていうのが。
良いんだけどそれ別にフード無くても出来たぞ多分。
もっと言っちゃうと魔法のフードが持つ能力、瞬間移動と物質操作が出来るなら強盗団自体は全く要らないわけで、どうしてそれでもパーカーが親友のジョン含めたそういう人々を集めて「ごっこ」をしてたのか、それも深堀り出来たんじゃないかな、表現次第で。
本編で要らないところはたくさんあるんだけど、まずオバダイアの息子ジョーは全く要らなかった。主人公との対比要素として出すにしても、ご都合過ぎる上に話がぼやける理由の一因。上述したリリかパーカーどっちの話筋にも使えない要素を入れた結果、ただでさえ見えづらい物語の輪郭が更にぼやけた感じ。彼がリリと社会から受けたひどい仕打ちには同情しかないし、リリはジョーをぶっ飛ばしておいて「友達に戻れる?」とか言っちゃうし。
次に要らないのがナタリー周り。実はナタリー役の人が演技力良かったしキャラも明るいから、彼女がスーツ着て暴れちゃって「リリごめーん!」とか言う作品の方が明るくてバカっぽくて良かったんじゃないかな。
ナタリー関連が要らない原因は、遺族である兄弟のザビエルがリリ相手に強烈にキレるシーン。ザビエルはリリの倫理的支柱にもなり切れず、恋愛関係にも発展せず、リリが何かよからぬ事をしてるのを雰囲気では察してるけど何もしない、所謂完全に他人。でもリリは若干彼に対して好意めいた言動そぶりを見せるものの、結局ナタリーを作り出しちゃった事でその関係はご破算。ザビエルは人が良いからあとからリリに協力してくれるものの、その心変わりがいまいち分からないし描かれてなくてご都合的。普通絶交でしょ。
リリの周りには彼女を心配する人(とAI)が集まってくるものの、それを一切活かす事が出来ない悪人のリリは、結局事故で喪失したAIナタリー復活の為に自分の人生を棒に振り、それに満足しておしまい。えーっと、この作品を通してMarvelと監督は一体何がしたかったんだ?
強盗団は爪はじき者や被害者で構成されている義賊、と思ったらそうでもない様子。快楽放火魔、暴力大好き姉妹、天才ハッカーらしいドラァグクイーン、チンピラにもなり切れないチンピラ、コンプレックス持ち元お坊ちゃま。どれも視聴者が魅力的に思うほどの悪人にはなれず。更にそこにジョーを入れたせいで元々まとまらない味がぼんやり風味に。そもそも結成の目的からしてパーカーの私利私欲なのでそれはそうか、という感じ。せめてパーカー筋かリリ筋のどちらかにもう少し力を割いていれば。バランスを重視した結果毒にも薬にもならないMarvel印の謎煮込みの完成だ!
そして更に要らない要素は魔法。作中での仕組み解説無し。科学も魔法も説明無し。だけど主人公は出来る子設定で、突然話に現れる女の子もその道のプロ。そもそもDr.ストレンジでも解明や言及はなされなかった魔法、スピンオフで理論体系の説明が出来るはずもない。でもその魔法がメイン要素の一つにあるのでさあ大変。科学技術vs魔法となるかと思いきや、その融合で一本上をいくぜ!という脚本にした結果、魔法の代償としてAIが消失する不思議。どういう仕組みなんだマジで。
この魔法&科学技術の演出の真の問題点は、おそらく脚本や演出担当がそれが何かを理解すらしてないって事。技術的ロボティクスの考察もなければ、オカルトの風味もない。魔法陣書いて上から垂れてくる液体を車リサイクルして作ったスーツに塗ると魔法が使えます!なんて言われてもそんなの全く魅力的じゃない。
魔法マント依存症のパーカーが魔法使いの子に接触したポストクレジット、むしろ止めといた方が良かった。魔法が薬物みたいな扱いだったよ。
実際、今作では整合性の矛盾や設定の甘さが目立つ。
たとえばどんな事をしても傷つけられないマントフードが、なぜリリが発明したレーザーカッターで採取できたのか。
リリの脳内を元にAIが誕生したのなら、なぜリリはその後で基本的ガイドラインをAIナタリーにプログラムしなかったのか。実際、ナタリーを人間のように振る舞わせたせいで、リリは1回の作戦で2度も死にかけている。AIがトラウマによるパニック症候群になるというのは20年前ならOKだっただろうが、生成AIや自立AIが実働している社会で、亡霊みたいに扱われるナタリーは滑稽でしかない。
オバダイアの息子、ジョーにしても、警察は一体何をやっていたのか。トニーがオバダイアの名誉を守ったとはいえ、数億以上の部品を闇市で購入している人間が野放しになるほどMarvel世界は技術だけが突出して治安が全く追い付いていない社会という事なのだろうか。実際、冒頭リリがスーツで空を飛び回る際も、空軍や警察の出動は無かったし。実際は未確認飛行スーツが飛んでいるのだから、おまけに墜落までしているのだから、なんらかの公的組織が動いてもよさそうなものだ。他シリーズのSecret Invasion、WandaVision、Falcon and Winter Soldierなどでは、治安組織は曲がりなりにも活動していた。それがヒーローやヴィラン関連でも。今作ではそれがない。リリが何をしてもお咎めがどこからも降ってこない。軍や警察に追われていいだけの大犯罪者であるリリが、なぜかガレージにこもってナタリー復活に没頭出来てしまう。それがメフィストの魔力のおかげだとしても手前の段階でもっと大事になっていてしかるはず、なんだけどなあ。なんだかなあ。
制作側は様々な要素をこの作品に詰め込むように要求されたのかも知れないし、逆にどうにか意欲作としてねじ込みたかったのかも知れない。
でも残ったのは、誰の印象にも残らず、ましてや好意も嫌悪も沸かない、どこにも辿り着かない作品がまた一つ生まれただけだった。
まとめ:あとがきに代えて
また一つ、というのは実はファンならある程度頷けるかも知れないけれど、Endgame以降のMarvel作品は方向性及び内容がかなり混迷しており、純粋に作品単体で面白いのは全く他と関わりの無いMoonKnightくらいで他はひどい出来だからだ。
Endgame以降の作品、ドラマにしても映画にしても、MoonKnight以外は他のMarvel作品を文字通り一通り全部追っていかないと理解出来なかったり、そもそもあらすじすらついていけないものが多い。
つまりMarvelは最低限映画全部見てますよね?という前提のお話が多いのだ。最盛期を誇ったInfinityサーガは様々なヒーローのオリジンストーリーに付随して、随所に謎の「インフィニティストーン」が登場してそれを探し求める強大な悪の存在、サノスがちら見せされ、そのサノスがいざ登場してクライマックスに向かっていくという盛り上がりを見せた。
現在のマーベル作品にはそれが一切ない。
サノス及びInfinityサーガで起きた指パッチン事件、ヒーローの引退に伴う後日譚という形で全編が進んでいます。
ドラマシリーズだと
Loki、WandaVision、SecretInvasion、Ms.Marvel、Hawkeye、Echo、The Falcon and The Winter Soldier、What if、I am Groot、She-Hulk、X-Men 97、Agatha All Along、Daredevil:Born Again
映画及び単体作品だと
Black Widow、Shang-Chi、Eternals、Spider-Man:No Way Home、Dr.Strange:Multiverse of Madness、Werewolf by Night、Thor:Love & Thunder、Black Panther:Wakanda Forever、Antman and Wasp:Quantumania、Guardians of the Galaxy:vol3、The Marvels、Deadpool & Wolverine、Captain America:Brave New World
そして最新アニメでアイズオブワカンダ(Eyes of Wakanda)が公開中です。どうです?どれか観ました?
私はうっかり飛ばしちゃったMs.Marvelを除いて全部視聴しました。それも今週中観る予定です。
近頃総制作指揮を執るケビン・ファイギも言ってましたが、どれもこれも完成度は今一つ。そもそもインフィニティサーガも、最後の2編があってやっとまとまりを見せた感じでした。もちろん個々の映画でそれぞれ感動する場面やかっこいいシーン、セリフはたくさんあるんですけどね。
今のマーベルがどういうあらすじを作ってるのかは別記事で書くとして、アイアンハートはものの見事に着地点を失ってます。主人公の年齢的にヤングアベンジャーズ系列に入るのかなと思いきや、犯罪行為オンパレードかつ傍若無人天上天下唯我独尊我至高他最低のリリ。同年代で今頃の若者として生きていて、ましてやヒーローとしての理想と現実に葛藤するほかの子達、カマラカーン、ケイトビショップ、キャシーラングやウィッカンマキシモフとは乖離がありすぎて同じチームで活動は不可能でしょう。だから本当にこれはダークサーガに入れるにしても悲惨な最後を迎えそう。でも決着を付けてほしさもある。最後は良い事して力尽きるか、そうでなければ最後まで救いの無い悪の少女で終わるか、どっちにしても今後出てくるのかもちょっとわからないタイトルになりました。
そうだ、これスターウォーズ8に似てるんだ
書いていてふと思い出した。
作品でやりようはあったのに、期待して観に行った観客を悪い方向で裏切った作品。スターウォーズのEP8だ。
あれを観た後の感覚に近い。
あれも
シスだと思った?→違いますーシスっぽい何かですー
スカイウォーカーが?→しょぼくれてます
反乱軍は?→駆けつけてくれません
フォースって?→便利魔法です
銀河の仕組みを?→見せません
みたいなとにかく会話中相手の言葉に被せてくるような話し方の作品。
今回に当てはめると
アイアンスーツを作ったのは?→作れるから
お金がないから?→強盗します
AIナタリーどうして出来たの?→わかりません
少しは反省しろよリリ!→私は悪くない!社会が悪い!
AIナタリーどうして消えたの?→魔法です
強盗団は→やっぱりただのチンピラでした
メフィスト出てくるかもよ?→メフィストですけど何か
監督が同じなんじゃないかってくらい、ファンや深読み好きな視聴者を肩透かしや説明不足の設定で足払いに来るのが本作アイアンハート。
ちなみに私はEP8を劇場で見て大変がっかりしたので、以降のSW作品視聴を止めました。後に諭されて友達の家で一気見したMandarorian、エピソードがまんま子連れ狼や7人の侍で、正直二番煎じにしてもひどい出来でした。元ネタを何も知らない人は逆に楽しめるのかも知れない。
ですので、Marvelもういいや、って人は引き続き見ない事を推奨します。
私も多分今後劇場に足を運ぶ事は無いと思う。
何か良いところを書こうかと思ったけど、作品が薄すぎて何も良いところが無かった。聞く話ではメフィスト役にいい俳優を使ったとの話だったけど、演出や脚本、台詞がすべて陳腐なので彼を誉めようがない。作品が混ぜ込んだ種々の要素に関しても、それを活かせるように演出・構成出来ていないんだから批判すら出来ないというのが私のスタンス。ただ文句を言おうにも、逆に文句が言いづらいくらい今作はうすぼんやり。
うーん、次はMs.Marvel、の前にもうちょっとプラスな事を書ける作品を観ようかな。
Disney+は今しばらく鑑賞するので、何か感想書いてよって意見あったらぜひコメントください。
それじゃ、また次回!
総合スコア



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