桜花姫第零部特別編
第零部
特別編
第一話
小村落
世界暦五千十年五月下旬の時期…。真夜中の出来事である。西国内地の北方の山奥には過疎化した閉鎖的小村落が存在する。総人口は四十人程度と最少であり西国出身者でも小村落の存在は知らなかったのである。近頃…。小村落では無数の悪霊が出現するとの噂話が各地に出回る。深夜帯の出来事である。小村落の噂話が気になった最上級妖女…。月影桜花姫は問題の小村落へと直行する。
『西国の北方には無名の小村落が存在したなんて…』
桜花姫自身も悪霊事件が発生する以前は北方の山奥に小村落が存在するのは知らなかったのである。自宅から移動し始めてから数十分後…。
『如何やら此処が…問題の小村落かしら?』
桜花姫は問題の小村落へと到達したのである。
『奇妙だわ…村里の空気が重苦しいわね…』
小村落は非常に殺風景であり七軒程度の家屋が確認出来る。
『こんな場所で長居し続けるのは辛苦だわ…』
小村落の雰囲気は非常に重苦しく気味悪くなる。
『家屋敷に戻りたいわね…』
桜花姫は小村落に雰囲気に圧倒され…。一日も早く自宅に戻りたくなる。
「無数の霊気は感じられるけれど…」
『何かしら?』
悪霊特有の霊気以外に…。
『人間達の…重苦しい殺意かしら?』
各家屋からは人間達の殺気を痛感したのである。
『此処の小村落は随分と閉鎖的ね…』
桜花姫は村里の雰囲気に嫌悪する。
『今回の事件は非常に厄介そうだわ…』
今回の悪霊事件は桜花姫が想像する以上に厄介であると感じる。
『正直…其処等の悪霊よりも厄介かも知れないわね…』
正直小村落の殺伐とした空気と比較すれば普段の悪霊退治が娯楽に感じられる。
『悪霊を仕留めたら即刻家屋敷に戻りましょう!』
すると各家屋から十数人もの村人達が桜花姫に急接近したかと思いきや…。
「あんた達…何よ?」
村人達は陰湿そうな雰囲気であり桜花姫を包囲したのである。
『村人達の様子…陰湿そうね…』
村人達は非常に殺気立った形相であり桜花姫は彼等の雰囲気に嫌悪する。
『非常に物騒だわ…此処の村人達からは私に対する敵意を感じるわね…』
村人達は出刃包丁やら鈍器を所持…。誰しもが余所者の桜花姫を敵対視した様子だったのである。
『彼等の様子から…私は敵対視されたみたいね…』
桜花姫は恐る恐る周囲の者達に警戒する。すると村人達は桜花姫に…。
「余所者は即刻消え失せろ!」
「部外者は此処から失せやがれ!部外者は進入禁止なのだぞ!」
「小娘!大怪我したくなければ消え失せろ!」
「其方は死にたいのか!?」
桜花姫は村人達の暴言に腹立たしくなる。
「はぁ?私に消え失せろ!?あんた達は何様かしら!?」
桜花姫は鬼神の形相で村人達に睥睨したのである。
「私は西国の月影桜花姫なのよ!」
桜花姫は自身の名前を名乗り始めたものの…。
「西国の月影桜花姫だと?」
「桜花姫なんて知らない名前だな…」
「桜花姫なんて初耳だぞ…小娘は大都会の花魁なのか!?」
「何方にせよ…余所者は自宅に戻りやがれ!」
桜花姫にとっては衝撃的であり村人達の反応に絶句する。
「えっ…何ですって?」
『此処の小村落は本当に閉鎖的なのね…不寝番の私の名前を知らないなんて…』
小村落は外部との交流が皆無であり隔絶された僻地であると実感したのである。
「兎にも角にも…私は村里に出現した神出鬼没の悪霊を退治したいの!あんた達は邪魔しないで!」
桜花姫は周囲の村人達に怒号する。
「此奴!女子の分際で!」
「何が悪霊退治だ!其方みたいな貧弱そうな小娘が悪霊を退治出来るか!?」
「俺達の村里には薄汚い悪霊等存在しないぞ!村里に存在するのは神聖なる神木様だけなのだぞ!」
桜花姫は一人の村人の発言に反応したのである。
「えっ?悪霊は…存在しない?神聖なる神木様ですって?」
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る問い掛ける。
「悪霊が存在しないって何よ?神木様って…何かしら?」
「神木様は私達の村里を守護される絶対的守護神なのだ!余所者は即刻自分の村里に戻れ…余所者である其方が此処に長居し続ければ神木様に呪殺されるのだぞ!」
「神木様にとって俺達以外の余所者は敵対者なのだ!」
「余所者の小娘とて…こんな見ず知らずの場所では死にたくないだろう?」
「命拾いしたいのであれば小娘は即刻消え失せるべきだ!」
村人達は桜花姫に警告したのである。
「はぁ…」
『此処の村人達を説得するのは不可能みたいね…』
桜花姫は村人達への説得は不可能であると判断…。
『今回ばかりは仕方ないわね…』
桜花姫は両目を瞑目させる。直後…。半透明の血紅色だった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光したのである。
『天道天眼…発動!』
桜花姫は十八番である神性妖術の天道天眼を発動する。同時に桜花姫の妖力が数百倍に増大化したのである。
「うわっ!小娘の瞳孔が…半透明の瑠璃色に発光したぞ!」
「此奴は女人の物の怪なのか!?」
村人達は桜花姫の天道天眼に戦慄する。
「私を物の怪呼ばわりなんて…あんた達は失礼しちゃうわね!」
桜花姫は周囲の村人達に睡眠の妖術を発動…。
「正直あんた達は目障りだからね…長時間熟睡するのね!」
村人達は桜花姫の発動した睡眠の妖術により地面に横たわり始める。
『睡眠の妖術で村人達は熟睡したわね…』
桜花姫は村人達の様子に一安心する。
「はぁ…」
『此処の小村落は想像以上に可笑しな場所だわ…』
小村落のみが俗界とは別の異世界であると感じる。
『悪霊を発見し次第…退治しましょう!』
すると直後…。
「ん?」
周囲より無数の霊気が自身に接近するのを感じる。
『霊気だわ…如何やら相手は大群みたいね!』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後を確認する。
「あんた達は…悪食餓鬼かしら?」
背後には数十体もの悪食餓鬼が地面より出現したのである。
『早速悪霊の登場ね!』
桜花姫は馴染み深い悪食餓鬼の大群に大喜びする。
『悪食餓鬼…死滅するのね!』
桜花姫は念力の妖術を発動…。悪食餓鬼の大群を自身に殺到する寸前に念力の妖術で粉砕したのである。
『所詮相手は悪食餓鬼だから他愛無いわね!』
周囲の地面には悪食餓鬼の鮮血やら血肉が彼方此方に飛散する。
「えっ?」
数秒間が経過したのである。
「えっ!?」
彼等の肉片が再度融合化すると肉体の一部が植物へと変化し始め…。
『再生したの!?』
肉体の一部が植物へと変化した一体の悪食餓鬼が誕生したのである。桜花姫は突如として出現した悪食餓鬼の亜種に驚愕する。
『此奴はひょっとして…悪食餓鬼の亜種【樹体悪食餓鬼】かしら!?』
樹体悪食餓鬼とは悪食餓鬼の亜種であり植物系統の悪霊として知られる。植物の寄生により肉体の一部分が変異した悪食餓鬼の一種…。樹体悪食餓鬼は体格こそ通常の悪食餓鬼と同等であるが肉体の一部分が植物なのが特徴的である。
『こんな場所に樹体悪食餓鬼が出現するなんて…』
樹体悪食餓鬼は全身から触手を放出し始め…。桜花姫に攻撃する。
「きゃっ!」
樹体悪食餓鬼の触手は桜花姫の全身を覆い包み…。桜花姫を拘束したのである。
「ぐっ!」
『身動き出来ないわ!最上級妖女の私が樹体悪食餓鬼に圧倒されるなんてね…』
樹体悪食餓鬼の触手により身動き出来なくなった桜花姫であるが…。
「焼失しなさい!樹体悪食餓鬼!」
樹体悪食餓鬼に火炎の妖術を発動する。直後である。樹体悪食餓鬼は桜花姫の火炎の妖術により全身が燃焼され…。焼死したのである。
『樹体悪食餓鬼…仕留められたわね…』
桜花姫は一安心する。
『樹体悪食餓鬼の出現…ひょっとすると今回の悪霊は植物系統の悪霊ね…』
神木の存在も樹体悪食餓鬼と同様に植物系統の悪霊であると予測したのである。
『神木とやらの…居場所を探索しましょう!』
桜花姫は霊気を目印に行動を開始する。
『小山から無数の霊気を感じるわね…一体何かしら?』
近辺の小山から無数の霊気を察知したのである。
『一先ず小山に移動しましょう!』
桜花姫は恐る恐る小山へと進入…。暗闇の道中より先程交戦した樹体悪食餓鬼の大群と遭遇したのである。
『今度も樹体悪食餓鬼の大群だわ…』
樹体悪食餓鬼の大群はふら付いた身動きで桜花姫に殺到し始め…。彼等は先程の樹体悪食餓鬼と同様に植物の触手で桜花姫に攻撃したのである。
「あんた達の触手攻撃なんて…私には通用しないわよ!」
桜花姫は火炎の妖術を発動…。周囲の樹体悪食餓鬼を燃焼させたのである。火炎の妖術により樹体悪食餓鬼は燃焼され…。黒焦げに焼死したのである。
『樹体悪食餓鬼は火炎の妖術で容易に仕留められるわね♪』
樹体悪食餓鬼は植物である性質上…。高熱が弱点であり火炎系統の妖術で容易に仕留められる。
「小山の頂上から特大の霊気を感じられるわ…」
『ひょっとすると神木の正体かしら?』
桜花姫は小山の頂上へと驀進したのである。
第二話
神木
樹体悪食餓鬼との戦闘から数分後…。桜花姫は小山の頂上へと到達したのである。
『何かしら?』
頂上の中心部には等身大の人間十五人分の巨樹が存在する。
『巨樹だわ…』
巨樹は強烈なる霊気を放出し始め…。
「えっ…」
『此奴の何が神聖なる神木なのよ!?』
桜花姫を気味悪がらせる。
『神木の正体は此奴だったのね…【肉食樹体】…』
肉食樹体とは戦乱時代の最中…。数多の人間達の鮮血を吸収した巨樹の悪霊である。肉食樹体は人間の血肉が大好物とされ…。本体である樹木に近付いた人間を完膚なきまでに捕食すると認知される。
『此処の村人達は悪霊の肉食樹体を神木呼ばわりなんて…肉食樹体なんて神木とは程遠い存在でしょうに…』
桜花姫は村人達の感性に呆れ果てる。
「えっ…」
『何かしら?』
すると肉食樹体の表面より大勢の死没者達の呻き声やら叫び声が響き渡る。
「樹木から叫び声だわ…ひょっとすると今迄肉食樹体に捕食された人間達の叫び声かしら!?」
『肉食樹体に食い殺された彼等を成仏させないとね…』
直後である。
「えっ…何かしら?」
肉食樹体は桜花姫を敵対視すると地面より無数の触手を生成し始め…。無数の触手で桜花姫に攻撃を仕掛けたのである。
『肉食樹体も触手攻撃を!?』
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。妖力の防壁により肉食樹体の触手攻撃を無力化したのである。
「肉食樹体…あんたを燃焼させるわね…」
肉食樹体に火炎の妖術を発動させる直前…。周囲の地面より先程遭遇した樹体悪食餓鬼が無数に出現したのである。
『今度は樹体悪食餓鬼の大群!?』
樹体悪食餓鬼の大群は桜花姫に殺到し始める。
「あんた達!邪魔しないで!私の相手は肉食樹体なのよ!」
桜花姫は周囲の樹体悪食餓鬼に火炎の妖術を発動…。周囲の樹体悪食餓鬼は一瞬で焼失したのである。
『楽勝だわ…樹体悪食餓鬼の大群一掃出来たわね…』
桜花姫は樹体悪食餓鬼の一掃には成功するものの…。
「きゃっ!」
桜花姫は肉食樹体の触手に拘束されたのである。
「ぐっ!」
『触手で身動き出来ないわね…如何しましょう?』
すると触手の効力なのか体力が消耗し始める。
「えっ…」
『体力が…肉食樹体の触手は生命力を吸収出来るの?』
肉食樹体の触手は拘束以外に対象者の生命力を吸収出来る。一定の時間に生命力を吸収されると衰弱死は回避出来なくなる。
『止むを得ないわね…一か八かよ!』
桜花姫は自爆の妖術を発動…。自身の肉体諸共肉食樹体の触手を焼失させたのである。自爆してから数秒後…。近辺の地面から桜花姫が出現したのである。
「はぁ…」
『間一髪だったわね…』
桜花姫は自爆の妖術を発動させる直前に分身の妖術を発動する。当然自爆に使用したのは自身の分身体であり桜花姫自身は無事だったのである。
「猛反撃開始よ!肉食樹体!覚悟なさい!」
桜花姫は肉食樹体に業火の妖術を発動する。
「肉食樹体に捕食された亡者達…あんた達は成仏するのね…」
業火の妖術を発動した直後…。肉食樹体の樹木が蛍光色の火炎により炎上し始める。すると燃焼し続ける肉食樹体からは大勢の亡者達の悲鳴が響き渡る。
『肉食樹体に捕食された…亡者達の悲鳴ね…』
数分間が経過…。肉食樹体は業火の妖術で消滅したのである。
「はぁ…はぁ…」
桜花姫は体力と妖力の消耗により地面に横たわる。
『多少は苦戦したけれど…』
「肉食樹体と樹体悪食餓鬼の大群を退治出来たわね!」
肉食樹体の消滅により小村落から感じられた重苦しい空気は沈静化したのである。
『殺伐とした場所だけど…一休みしてから村里に戻りましょう!』
桜花姫は不本意であるが…。極度の疲労から安眠する。翌日の出来事である。東国武士団が事件現場の小村落に介入すると小村落の村人達を拘束する。村人達は東国の牢獄へと連行され…。数日後に全員が処刑されたのである。小村落の村人達は悪霊である肉食樹体を神格化…。神聖なる神木として崇拝したのである。小村落を守護する大義名分として小村落に進入した人間達を力任せに拘束…。村人達は拘束した人間達を悪霊である肉食樹体に人身御供として意図的に捕食させたのである。肉食樹体の肉体から響き渡った叫び声の正体とは肉食樹体に捕食された犠牲者達とされ…。彼等は後日全国の僧侶達によって手厚く供養されたのである。
第三話
鬼女
近頃の出来事である。南国の村里では包丁を所持した鬼女が出没するとの噂話が国全体に出回り始める。樹木の悪霊肉食樹体と樹体悪食餓鬼との戦闘から五日後…。
『五日前に肉食樹体と樹体悪食餓鬼を仕留めたのに…こんな短期間で悪霊事件が発生するなんてね…』
噂話が気になった桜花姫は真昼の時間帯に南国の村里へと移動したのである。
「包丁を所持した鬼女…」
『一体何者なのかしら?鬼女の正体が悪霊なのは確実でしょうけど…』
数十分後…。桜花姫は南国の村里へと到達したのである。
「殺風景だわ…」
『鬼女らしき人物は確認出来ないわね…』
周囲の景色は長閑であり何一つとして確認出来ない。
『探索しましょう…』
桜花姫は鬼女の探索を開始する。探索を開始し始めてから数十分間が経過…。
「はぁ…」
桜花姫は村里全域を探索するのだが鬼女らしき人物は発見出来ない。
「鬼女を発見出来ないわね…」
『本当に存在するのかしら?鬼女なんて…』
桜花姫は探索に疲れ果てたのか草臥れる。
「はぁ…今日は出直しかしら?」
『一先ずは西国の村里に戻って一休みしましょう…』
西国の村里に戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
極度の胸騒ぎを感じる。
『一体何かしら?複数の…殺気?』
住宅街にて複数の殺気を察知したのである。
『住宅街からだわ…早速移動しましょう…』
桜花姫は即座に住宅街へと直行する。
「えっ?」
移動し始めてから数分後…。
『彼女は…何者なのかしら?』
住宅街に到達すると般若の仮面を被った女性が佇立するのが確認出来る。
『般若かしら?』
般若の女性は服装が白装束であり左手には出刃包丁を所持…。女性の素肌は死没者を連想させる灰白色であり般若の女性が人外の存在なのは確実である。
『左手に出刃包丁…』
般若の女性からは桜花姫に対する根強い殺気が感じられる。
『殺気だわ…彼女は一体何者なのかしら?ひょっとすると彼女が包丁を所持した鬼女っぽいけれど…』
桜花姫は般若の女性が包丁を所持した鬼女であると予想する。
「あんたは…」
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る般若の女性に問い掛ける。
「一体何者なの?大人しく般若の仮面を外しなさい…」
すると女性は般若の仮面を外したのである。
「あんたは…」
女性は両目が蛍光色であり人外の存在であると認識出来る。
「あんたの正体…悪霊の【包丁女房】ね…」
包丁女房とは村八分により包丁で殺害された女性の亡霊として知られる。一部の村落では包丁の亡霊とも呼称される。
『鬼女の正体は包丁女房だったのね…』
すると包丁女房は無表情で桜花姫を凝視し始めたかと思いきや…。包丁女房は不吉の笑顔で桜花姫を冷笑したのである。
「えっ…何よ?あんたは気味悪いわね…」
桜花姫は笑顔の包丁女房を気味悪がる。すると包丁女房は左手に所持した包丁で桜花姫に攻撃し始める。
「ぐっ!」
包丁女房は所持した包丁で桜花姫の腹部に刺突したのである。
「包丁女房…」
一方の桜花姫は包丁女房に腹部を刺突されると吐血し始める。
『迂闊だったわ…突然攻撃するなんて…』
桜花姫は吐血した状態で地面に横たわったのである。吐血してより数秒後…。
『私は…こんな場所で…』
桜花姫は出血多量により息絶える。一方の包丁女房は地面に横たわった状態の桜花姫に接触する。包丁女房は桜花姫の生死を確認すると再度冷笑したのである。すると直後…。息絶えた桜花姫の遺体から白煙が発生すると桜花姫の遺体は消滅したのである。桜花姫の遺体が完膚なきまでに消滅すると包丁女房は驚愕する。包丁女房の背後より…。
「残念だったわね!包丁女房!」
包丁女房には無傷の桜花姫が満面の笑顔で近寄る。
「あんたは…不思議そうな表情ね!包丁女房が殺したのは私の分身体なのよ!」
桜花姫は包丁女房に攻撃される寸前…。咄嗟に分身の妖術を発動したのである。
「包丁女房…あんたは美味しそうな桜餅に変化しなさい!」
桜花姫は包丁女房に変化の妖術を発動…。すると包丁女房の全身から白煙が発生したのである。包丁女房は小皿に配置された美味しそうな桜餅に変化する。
『早速桜餅を頂戴するわね!』
桜花姫は桜餅に変化した包丁女房を捕食したのである。
『神出鬼没の悪霊でも桜餅に変化させれば美味しいわね!』
桜餅に変化した包丁女房を捕食した直後…。
「ん?」
再度無数の殺気を感じる。
「殺気だわ…」
『今度は複数みたいね…』
桜花姫は周囲に警戒したのである。すると各家屋の板戸から数十体もの包丁女房が同時に出現する。
「包丁女房!?」
『こんなにも大量に出現するなんて…』
無数の包丁女房は先程出現した包丁女房と同様に桜花姫を凝視し始め…。不吉の笑顔で冷笑する。
「包丁女房…あんた達は笑顔が気味悪いわね…」
『笑顔だけは気味悪いけど…包丁女房は護身用の出刃包丁さえ注意すれば対処は容易なのよね!』
包丁女房は戦闘能力こそ脆弱であり出刃包丁さえ注意すれば身体能力は一般の成人女性と同等である。
「あんた達…覚悟するのね!」
桜花姫は先程と同様に無数の包丁女房に変化の妖術を発動…。周囲の包丁女房は小皿に配置された美味しそうな桜餅へと変化したのである。
『美味しそうな桜餅がこんなにも沢山!』
桜花姫は桜餅に変化した無数の包丁女房を捕食する。数分間が経過…。
『腹一杯だわ!』
桜花姫は無数の桜餅を食べ続けて満腹状態だったのである。
『包丁女房を征伐出来たし…鬼女事件は無事解決かしら?』
桜花姫は鬼女事件の標的である包丁女房を討伐出来たので西国の村里へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ?何かしら?」
『霊気だわ…今度は包丁女房より強力そうね…』
強大なる霊気が自身に刻一刻と急接近する。
『包丁女房以外にも…新手の悪霊が出現したのかしら?』
霊気は先程仕留めた包丁女房よりも強力であり桜花姫は新手の襲撃に警戒したのである。すると桜花姫の背後より…。
「えっ…」
背後より不吉の気配を感じる。
『背後から気配?』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後を注視したのである。
「あんたは…一体何者なの?」
桜花姫の背後には能面を被った女性が確認出来る。能面の女性の服装は平安貴族を連想させる煌びやかな和装だったのである。
『此奴は大昔の貴族みたいな衣装ね…顔面は能面だし気味悪いわ…何者かしら?』
桜花姫は能面の女性を気味悪がる。すると女性は能面を外したのである。
「えっ!?あんたは…」
桜花姫は女性の素顔に驚愕する。女性の素顔は人間らしい目鼻が存在せず…。紅色の大口のみの異様だったのである。桜花姫は恐る恐る…。
「ひょっとしてあんたは…悪霊の【大口淑女】かしら?」
大口淑女とは大飢饉によって自身の子供を食い殺した母親の無念が誕生させたとされる女性の悪霊である。地方によっては別名として大食い女房とも呼称される。
「霊気の正体は大口淑女…あんただったのね…」
すると大口淑女は人間の口言葉で喋り始める。
「あんたは妖女の小娘だね…美味しそうな香気だよ!」
「えっ…あんたは…」
『大口淑女って…悪霊なのに人語で喋れるの!?』
桜花姫は人間達の公用語で喋れる大口淑女に驚愕したのである。
『大口淑女は意志疎通が通用しそうね…』
桜花姫は大口淑女が意思疎通の通じる相手であると判断…。恐る恐る大口淑女に問い掛ける。
「大口淑女?あんたは一体何が目的なの?」
問い掛けられた大口淑女は小声で…。
「食べたい…」
「えっ?何ですって?食べたいって何を食べたいのよ?」
大口淑女は再度食べたいと発言したのである。
「小娘のあんたを…食べたい…」
「私を食べたいって…あんたは本気なの?」
桜花姫は大口淑女の発言に呆れ果てる。
「はぁ…」
『やっぱり会話出来ても悪霊は悪霊ね…大口淑女は徹底的に浄化しないと!』
桜花姫は大口淑女に妖術を発動する寸前…。
「えっ?」
『大口淑女の肉体が異様に巨体だわ…』
突如として目前の大口淑女が巨大化し始めたのである。
「一体何が?此奴は…自由自在に巨大化出来るの?」
大口淑女の自身の肉体よりも数十倍もの巨体へと巨大化し始める。
「私の体躯が巨大化だって?失礼しちゃうね…」
大口淑女は桜花姫の問い掛けに即答したのである。
「反対だよ!あんたの肉体が縮小化したのさ!」
「えっ!?」
桜花姫は恐る恐る周囲の各家屋を直視する。
『私の肉体が…縮小化ですって!?』
周囲の各家屋も大口淑女と同様に何もかもが巨大に感じられるのだが…。
『現実なの?』
桜花姫は目前の光景が現実なのか理解出来ず身震いしたのである。
「私は…」
『本当に肉体が縮小化しちゃったの!?』
桜花姫は大口淑女の指摘から自身の肉体が一寸程度に縮小化したのだと認識する。
「大口淑女…あんたは私に一体何を!?」
「何って?私の霊能力であんたの肉体を収縮させたのさ!」
大口淑女は満面の笑顔で即答したのである。
「私の肉体を収縮って…」
『大口淑女は他者の肉体を縮小化出来るのね…』
大口淑女の特殊能力は他者の肉体を一寸程度に縮小化出来…。体躯の縮小化した相手を捕食するのが大口淑女の手口である。
「あんたは私に捕食される運命だよ!観念するのね!」
「誰が観念するか!」
桜花姫は強気の態度で返答する。
「ん?あんたは…自分が圧倒的に不利なのに随分と強気だね…」
大口淑女は呆れ果てる。
「圧倒的に不利なのはあんたよ!大口淑女!」
「私が不利ですって?」
すると直後…。一寸程度に縮小化した桜花姫の肉体が数秒間で元通りの体格へと戻ったのである。
「えっ!?如何して…如何してあんたは元通りの体格に戻れたの!?」
大口淑女は元通りの体格に戻った桜花姫に驚愕…。動揺し始めたのである。
「如何して私の霊能力が解除されたの!?私の霊能力を解除するには…私自身を仕留めなければ元通りには戻れないのに!如何して!?」
「元凶のあんたを仕留められれば…あんたの霊能力を解除出来るのね!」
桜花姫は大口淑女の突発的発言に冷笑する。
「如何してあんたは元通りの体格に戻れたのだ?あんたは…一体何を?」
大口淑女は何故桜花姫が元通りの体格に戻れたのか恐る恐る問い掛ける。
「大口淑女…仕方ないわね!」
桜花姫は満面の笑顔で返答する。
「単純よ!私は巨大化の妖術で自身の肉体を巨大化させただけなのよ!」
巨大化の妖術とは単純に自身の肉体は勿論…。自分自身以外の他者やらあらゆる物体を倍以上に巨大化させられる妖術である。一瞬であれば肉体の巨大化を維持出来るのだが…。長時間の巨大化状態を維持し続けるのは体力的にも精神的にも不可能であり数分間が限度である。巨大化の妖術の用法は基本的に相手を威嚇する目的のみに限定される。
「巨大化の…妖術だと?」
大口淑女は恐る恐る後退りし始める。
「大口淑女!あんたは桜餅に変化しなさい!」
桜花姫は大口淑女に変化の妖術を発動したのである。数秒後…。
『美味しそうな桜餅ね!』
大口淑女は小皿に配置された桜餅に変化したのである。
『早速頂戴するわね!』
桜花姫は桜餅に変化した大口淑女を捕食…。食い殺したのである。
『悪霊だとしても桜餅は美味ね!』
大口淑女を捕食した影響なのか大口淑女の霊能力が消滅…。桜花姫は元通りに戻ったのを知覚したのである。
『元通りに戻った感覚だわ!』
無事元通りの体格に戻れた桜花姫であるが…。
『巨大化の妖術で妖力を消耗しちゃったわね…』
巨大化の妖術により妖力を必要以上に消耗したのである。
『精霊故山の露店風呂で妖力を回復させないと!』
桜花姫は即座に西国の村里へと直行する。今回は包丁女房の大群と親玉の大口淑女を退治出来…。南国の鬼女事件は無事に解決したのである。
第四話
怪魚
悪霊の包丁女房と親玉の大口淑女との戦闘から一週間後…。北国の近海では規格外の怪魚が出現するとの噂話が全国各地に出回ったのである。目撃した漁師達による見解では怪魚は全長二町規模…。規格外の巨大さだったとの内容である。巨体の怪魚以外にも上半身が人間の女性…。下半身が錦鯉の大魚である人魚を多数目撃した漁師も存在する。規格外の巨大怪魚と多数の人魚の噂話が気になった桜花姫は真昼の時間帯…。
『今度は北国の近海みたいね…』
早速北国の海岸へと移動したのである。
『全長二町規模の巨大怪魚と人魚の大群が出現したみたいだけど…今回は出現するかしら?』
桜花姫は西国の村里から移動し始めてから二時間後…。
『此処が問題の場所ね…』
桜花姫は北国の海岸へと到達したのである。
『随分と殺風景だわ…海岸だから当然かしら?』
海岸は非常に物静かであり砂浜には数隻もの漁船は確認出来るものの…。
『無人地帯だわ…』
漁師達の姿形は誰一人として確認出来ない。
『私にとっては好都合だけどね!』
すると遠方の砂浜より人影を発見する。
『人影だわ…一体誰かしら?』
桜花姫は人影が気になり人影の方向へと移動したのである。
『彼女は村娘みたいだけど?』
砂浜の人影の正体とは水色の着物姿の女性であり正体不明の女性は無表情で遠方の海面上を凝視し続ける。
「あんた?」
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る女性に問い掛ける。
「一寸?あんた?」
桜花姫は女性に問い掛けるのだが…。女性は只管無表情であり遠方の海面上を凝視し続けたのである。一方の桜花姫は女性に無視され…。
『此奴…』
女性の態度に腹立たしくなる。
「一寸!あんたね!」
桜花姫は女性に怒号したのである。
「無視しないで応答したら如何なのよ!」
すると女性は桜花姫の方向を直視すると冷笑した表情で…。
「貴女も…私と仲良く入水しましょうよ!」
「えっ?入水って…あんたは本気なの?」
桜花姫は女性の一言に再度警戒したのである。
「あんたは一体何者なのよ?」
女性は姿形こそ人間の女性であるが…。
『此奴の正体…恐らくは人外の存在ね…』
桜花姫は女性の正体が人外の存在であると認識したのである。
『彼女からは霊気が感じられないけれど…』
不吉にも目前の女性からは悪霊特有の霊気は感じられない。すると女性は突発的に全力で疾走したかと思いきや…。
「えっ!?」
女性は海面上へと入水したのである。
『彼女は…』
桜花姫は突然の女性の行動に驚愕する。
『止むを得ないわね…』
桜花姫は変化の妖術を発動…。下半身が銀鱗の大魚へと変化したのである。
『変化の妖術…成功ね!』
桜花姫は変化の妖術により人魚の姿形に変化する。
「私も海中に…」
『彼女を追跡しないと!』
桜花姫は人魚の状態で海中へと沈潜したのである。
『海中は暗闇だわ…』
桜花姫は暗闇の周囲を警戒する。すると背後より…。
「えっ!?あんたは…」
桜花姫は背後の光景に身震いしたのである。先程砂浜で遭遇した女性が暗闇の海中に存在するのだが…。女性の下半身は錦鯉の大魚であり自身と同様に人外の人魚の姿形だったのである。
「えっ…あんたは人魚!?」
『彼女の正体は人魚だったの!?』
桜花姫は衝撃の光景に驚愕する。
『月影家の家系以外に人魚の血族が存在するなんて…』
桜花姫は人魚の女性に驚愕するものの…。
『彼女には…精気が感じられないわね…』
人魚の女性の素肌は精気を感じさせない灰白色であり全体的に亡霊みたいな雰囲気だったのである。
『ひょっとして彼女の正体…悪霊かしら?』
桜花姫は人魚の女性が神出鬼没の悪霊であると予想する。
「あんたの正体…ひょっとすると【海難遊女】でしょう?」
海難遊女とは生前宿六に裏切られた人妻であり暗闇の海中にて入水したとされる女性の亡霊である。海難遊女は地上では人間の女性の姿形であるものの…。暗闇の海中では人魚の姿形で活動する。海難遊女は特定の地方では別名として亡霊人魚やら女体錦鯉等とも呼称される。
「噂話の人魚の正体は海難遊女…あんただったのね!」
人魚の正体とは悪霊の海難遊女だったのである。一方の海難遊女は不吉の笑顔で冷笑し始める。
「私が悪霊であればあんたは如何するのかしら?人魚の小娘…あんたは私を仕留めるのかしら?」
すると海難遊女は海水で半透明の刀剣を形成させたのである。
『海水の…刀剣かしら?』
一方の桜花姫は海難遊女の攻撃に警戒し始める。
「人魚の小娘…先制するわね…」
海難遊女は神速の身動きで桜花姫に急接近したかと思いきや…。
「えっ…」
海難遊女は海水の刀剣で桜花姫の腹部を斬撃したのである。
「ぎゃっ!」
海難遊女の斬撃により桜花姫の腹部からは大量の鮮血が流れ出る。
「人魚の小娘…あんたは意外と鈍間なのね…」
『興醒めだわ…一先ずは終了かしら?』
海難遊女は桜花姫を仕留めたかと思いきや…。
「ん?」
斬撃された桜花姫の肉体は一瞬で消滅したのである。
『彼女は…分身体かしら?』
海難遊女は周囲を警戒する。
『彼女の本体は?』
すると背後より…。
「残念だったわね!海難遊女!」
海難遊女の背後には人魚状態の桜花姫が暗闇の海中を浮遊する。
「あんたは先程の攻撃で…分身の妖術かしら?」
「勿論よ!あんたが攻撃したのは私の分身体なのよ!」
桜花姫は斬撃される直前に分身の妖術を発動したのである。桜花姫は満面の笑顔であり余裕の表情であったが…。
「えっ…」
『何かしら?妖力の消耗なんて…』
人魚の状態を維持し続けるのは非常に苦痛であり妖力が短時間で消耗し始める。
『海中で変化の妖術を維持し続けるのは危険そうね…』
海中での妖力の消耗は想像以上だったのである。
『こんなにも短時間で妖力が消耗しちゃうなんて…海中での長期戦は回避しないと妖力が空っぽに…』
一方の海難遊女は桜花姫の様子から冷笑し始める。
「あんたはひょっとすると妖力の消耗かしら?先程から苦痛そうね♪」
「私は…別に…」
桜花姫は海難遊女の問い掛けに苦笑いした表情で返答したのである。
「無理しないの!変化の妖術を維持し続けるのが苦痛でしょう?」
海難遊女は桜花姫の苦し紛れの返答に再度冷笑する。すると桜花姫は一瞬であるが反応したのである。
「えっ…」
海難遊女は桜花姫の反応に再度挑発する。
「如何やら図星みたいね!妖女の小娘…あんたは無理しないで地上に戻ったら?戻らないと此処で衰弱死するかも知れないわよ♪」
「何ですって?」
「勿論…私はあんたを地上へは戻らせないけれどね!あんたは私と遭遇したからには海中で窒息死する運命なのよ!」
「あんたね…」
桜花姫は海難遊女の挑発に腹立たしくなる。
「最上級妖女の私を挑発すると後悔するわよ…海難遊女…」
「後悔ね…あんたは私を後悔させられるかしら?」
海難遊女は余裕の表情で返答したのである。
「覚悟しなさいよ!海難遊女!」
桜花姫は神性妖術の天道天眼を発動する。半透明の血紅色だった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光したのである。
「あんたは…両目の瞳孔が瑠璃色に?一体何かしら?」
「私の十八番…天道天眼よ!」
「天道天眼ですって?」
『妖女の小娘…先程よりも妖力が急上昇したわね…天道天眼の効力かしら?』
一時的であるが…。天道天眼の効力によって桜花姫の妖力が先程よりも数十倍程度に急上昇したのである。
「海難遊女!あんたは桜餅に変化しなさい!」
桜花姫は海難遊女を標的に変化の妖術を発動…。海難遊女は一瞬で桜餅に変化したのである。暗闇の海中に桜餅が浮遊する。
『桜餅を食べないと…私の妖力が消耗しちゃうわ!』
桜花姫は即座に桜餅に変化した海難遊女を無我夢中に捕食したのである。
『桜餅は美味だけれども…』
海中では妖力の消耗が桁外れであり桜餅を食べても妖力の回復力は僅少…。限定的だったのである。
『桜餅でも暗闇の海中では妖力の回復は期待出来ないわね…』
「ん?」
すると今度は無数の霊気が自身に急接近するのを察知する。
『無数の霊気を感じるわ…今度は大群みたいね…』
遠方より上半身が人間の女性…。下半身が錦鯉の大魚である数十体もの海難遊女が桜花姫に急接近する。
『人魚の大群だわ…』
「海難遊女の大群かしら?」
人魚とは先程遭遇した海難遊女であり今度は大群で接近したのである。
「あんたは…妖女の小娘ね!」
「妖女の小娘…あんたは人魚に変身出来るなんて!」
彼女達は桜花姫を凝視し始め…。冷笑したのである。
「あんた達…鬱陶しいわね…」
桜花姫は自身を冷笑し続ける海難遊女の大群に睥睨する。
「あんた達は…金無垢の砂金に変化しなさい!」
桜花姫は海難遊女の大群に砂金の妖術を発動したのである。砂金の妖術を発動すると海難遊女の大群は砂金に変化し始め…。海水により肉体が一瞬で崩れ去ったのである。
『鬱陶しい奴等だったわ…』
桜花姫は一息する。
「はぁ…」
『海難遊女の大群は仕留められたけれども…』
桜花姫は手応えを感じられない。
『手応えを感じられないわね…多分だけど今度は大物が出現しそうだわ…』
気配は感じられないものの…。桜花姫は大物が確実に出現すると予想する。
『漁師達が目撃した正体不明の怪魚って一体何かしら?噂話だと怪魚は規格外に巨体らしいけれども…』
桜花姫は巨大怪魚の存在が気になったのである。
『今回の事件では…噂話の怪魚は出現するのかしら?』
噂話の怪魚が出現するのか思考した直後…。
「えっ?」
遠方の海中より無数の殺気が自身に急接近するのを感じる。
「何かしら?」
『殺気みたいね…気配は集合体っぽいけれど…』
桜花姫は無数の気配が集合体であると予想する。
『一体何が…出現するのかしら?』
警戒してより数秒間が経過したのである。
「何よ?」
海中は漆黒の暗闇であり肉眼では周辺の様子を視認するのは困難であるが…。
『彼奴は一体?』
鯨類をも容易に上回る規格外の巨大移動物体が桜花姫に急接近したのである。正体不明の巨大移動物体は想像以上に巨大であり推定二町規模以上と推測される。
『彼奴は予想以上に巨大だわ…』
周辺は暗闇の海中であり巨大移動物体の全体像を認識出来ないものの…。巨大移動物体の表面には数百個もの発光体が確認出来る。
『無数の発光体だわ…一体何かしら?』
巨大移動物体を視認してより数秒後…。正体不明の巨大移動物体が桜花姫の目前へと到達したのである。
『規格外の巨体だけど…』
「此奴の肉体は魚体だわ…」
巨大移動物体には魚類の特徴である背鰭と腹鰭は勿論…。後方には尾鰭らしき部分が確認出来る。巨大移動物体の正体とは規格外に巨体の怪魚であり全長は鯨類の十数倍は確実である。
『ひょっとすると此奴は悪霊の…【亡霊百目怪魚】かしらね…』
亡霊百目怪魚とは魚類系統の巨大悪霊…。全長は推定二町規模と規格外であり神出鬼没の悪霊では最大級の巨体として知られる。特定の地方では亡霊百目怪魚は単純に巨大怪魚やら亡霊深海魚とも呼称される。亡霊百目怪魚の体表に確認出来る数百個もの発光体は眼目である。亡霊百目怪魚の正体は戦乱時代の海戦にて戦死…。海中にて溺死した戦死者達の無念の集合体とされる魚類系統の悪霊である。
『漁師達が目撃した巨大怪魚って…悪霊の亡霊百目怪魚だったのね…』
余談であるが…。妖怪の絵巻物に登場する巨大妖怪の海難入道は悪霊の亡霊百目怪魚が模範とされる。
『此奴が妖怪絵巻物に登場する海難入道の模範なのね…本当に巨体だわ…』
すると亡霊百目怪魚の体表に存在する数百個もの眼目が桜花姫に注視し始める。
「えっ…」
『亡霊百目怪魚の視線が人目みたいで気味悪いわね…』
桜花姫は亡霊百目怪魚の人目らしき視線に身震いしたのである。すると亡霊百目怪魚の体表に存在する数百個もの眼目が黄色に発光したかと思いきや…。全身の眼目より数百発もの光弾が放出されたのである。
『眼目から無数の光弾!?』
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。亡霊百目怪魚の光弾を無力化したのである。
「無力化…成功ね!」
『間一髪だったわ…』
桜花姫は一安心するものの…。
『妖力の防壁で妖力が消耗しちゃったわね…』
先程の妖力の防壁によって桜花姫は妖力を消耗したのである。
『相手は亡霊百目怪魚だからね…如何しましょう?』
桜花姫は妖力の消耗により苦悩する。
『こんな状態では変化の妖術も使用出来ないわね…』
今現在の桜花姫は連戦の影響からか妖力が空っぽの状態であり最早万事休すだったのである。
『妖力が空っぽの状態では亡霊百目怪魚を仕留められないわね…一度出直さないと亡霊百目怪魚は攻略出来ないでしょうね…』
桜花姫は不本意であるが…。
『今回ばかりは止むを得ないわね…』
標的である亡霊百目怪魚を目前に撤退を余儀無くされる。
『今一度…地上に戻って妖力を回復させましょう!』
桜花姫は地上へと移動する寸前…。
「えっ?」
亡霊百目怪魚は大量の海水を吸収し始めたのである。
「えっ!?」
『亡霊百目怪魚は周辺の海水諸共私を!?』
桜花姫は大量の海水諸共…。亡霊百目怪魚の体内へと吸収されたのである。
『迂闊だったわ…亡霊百目怪魚に吸収されるなんて…』
亡霊百目怪魚に海水諸共吸収されてから数分後…。
『私は?』
桜花姫は亡霊百目怪魚の体内で目覚める。
『如何やら此処は…亡霊百目怪魚の胃袋みたいね…』
桜花姫は恐る恐る周囲を眺望するのだが…。
『亡霊百目怪魚の胃袋は暗闇だわ…』
亡霊百目怪魚の体内は暗闇であり視界は不良だったのである。
「今後は…如何しましょう?」
『私は此処から脱出出来るのかしら?』
桜花姫は妖力も空っぽの状態であり何一つとして妖術が使用出来ない。
『こんな空っぽの状態では妖術も駆使出来ないし…亡霊百目怪魚の胃袋に長居し続ければ私自身が亡霊百目怪魚の胃液で消化されそうね…』
亡霊百目怪魚の胃酸で消化されるのは最早時間の問題である。
『自力で亡霊百目怪魚の体内から脱出するのは困難ね…』
桜花姫は自力での脱出は困難であると判断…。
『今回ばかりは仕方ないわね…こんな場合は奥の手を駆使する以外に選択肢は無さそうだわ!』
桜花姫は止むを得ず奥の手の使用を決断したのである。
『一か八かよ!』
桜花姫は不本意であるが恐る恐る亡霊百目怪魚の胃袋の表面へと接触する。
『融合化の妖術…発動!』
桜花姫の奥の手とは融合化の妖術である。融合化の妖術とは自身の肉体に接触した他者の肉体を吸収する荒唐無稽の妖術…。相手の体内であろうと相手の肉体に接触出来れば常時発動出来る。融合化の妖術は非常に強力であるものの…。微量の妖力で妖術が発動可能である。規格外に強力である反面…。桜花姫は生理的理由から滅多に駆使しない妖術である。桜花姫が亡霊百目怪魚の胃袋に接触した直後…。桜花姫の肉体と亡霊百目怪魚の肉体が融合化したのである。亡霊百目怪魚と融合化してより数秒後…。規格外に巨体だった亡霊百目怪魚が縮小化され桜花姫の姿形へと変化したのである。
『亡霊百目怪魚と同化出来たわ…融合化の妖術は成功ね!』
亡霊百目怪魚は桜花姫の体内で同化…。消化されたのである。
『今回は本当に危機一髪だったわ…』
桜花姫は亡霊百目怪魚に辛勝出来…。一安心したのである。
『下手したら敗北する可能性も否定出来なかったでしょうね…』
今回の戦闘では非常に冷や冷やした桜花姫であるが…。
『今度こそ地上に戻りましょう…』
桜花姫は人魚の状態で海面上へと浮上したのである。
第五話
村道
悪霊の海難遊女と亡霊百目怪魚との戦闘から四日後の真昼…。一人の男児が南国の村道にて散歩したのである。
『先日…鬼女の大群が出現したみたいだけど…最近話題の月影桜花姫様が鬼女の大群を退治したみたいだね!』
男児は先日発生した包丁女房と大口淑女の事件解決に大喜びする。
「一安心!一安心!」
男児の名前は【夜桜太郎丸】…。名門の武家一族とされる夜桜一族であり太郎丸は分家の長男である。
『僕も先代の夜桜崇徳王様みたいな屈強の武士として村人達に貢献したいな!』
夜桜太郎丸は年齢九歳の子供であるが…。東国の軍神とされる夜桜崇徳王みたいに歴史の表舞台で大活躍したいと常日頃から夢見る。反面…。怪談やら神出鬼没の悪霊は人一倍苦手であり先日発生した包丁女房と大口淑女の噂話が出回ってからは一歩も外出出来なかったのである。以上の理由から親族やら親戚は勿論…。同年代の子供達からも弱虫だと揶揄されたのである。
『僕は戻って一生懸命稽古して!怪談と悪霊を克服しないと!』
太郎丸は武家屋敷に戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
『誰だろう?』
突如として前方より緑色の着物姿の女性が佇立する。
『女の人だ…』
女性は無表情で太郎丸を凝視し続ける。
「えっ…」
『如何して女の人は僕を?』
女性は非常に妖艶さを感じさせる美人であるが…。
『気味悪いな…家屋敷に戻らないと…』
全身の皮膚は死没者を連想させる灰白色であり女性からは生者としての精気が感じられない。太郎丸は女性の容姿に気味悪くなり…。恐る恐る後退りし始める。
『女の人…幽霊みたいで不吉だな…』
太郎丸が一度瞬きした瞬間である。
「えっ!?」
女性は一瞬で太郎丸の間近へと瞬間移動…。両者の距離間は目と鼻の先だったのである。太郎丸は一瞬で間近へと移動した女性に驚愕する。
『女の人は一瞬で!?』
太郎丸は女性が人外の存在であると認識…。
『女の人の正体は…妖怪なの!?』
極度の恐怖心からか身体髪膚が膠着したのである。すると女性は不吉の笑顔で…。
「あんたって♪可愛らしい子供ね♪」
女性は太郎丸の頬っぺたに接触する。
「ひゃっ!」
太郎丸は女性に戦慄したのである。
『僕は…身動き出来ないよ…』
女性から逃げられるのであれば逃げたいのだが…。
『如何して身動き出来ないの!?』
太郎丸は女性に対する恐怖心からか全身の膠着により逃げられなくなる。
「私からは逃げられないのよ♪大人しく幽閉されなさい♪」
太郎丸は身動き出来ず正体不明の女性に幽閉されたのである。
第六話
大富豪
夜桜太郎丸が失踪してから三日後の真昼…。
「失礼します…」
とある大富豪の使者が桜花姫の武家屋敷に訪問したのである。
『大富豪っぽいわね…』
「あんた?何かしら?」
「貴女様が不寝番の月影桜花姫様ですね…」
使者は恐る恐る桜花姫に会釈し始め…。
「私は武家一族の…夜桜一族分家の使者です…」
「えっ!?夜桜一族って…名門の武家一族の!?」
『やっぱり武家の人間だったわね…』
桜花姫は夜桜一族の名前に驚愕したのである。
「夜桜一族は名門の武家一族でも…私の所属は分家ですがね…」
「夜桜一族分家の使者が…私に用事かしら?」
桜花姫は使者に問い掛ける。
「三日前の出来事なのですが…」
使者は真剣そうな表情で三日前の出来事を一部始終口述したのである。
「太郎丸って若様が…三日間が経過しても夜桜家の武家屋敷に戻らないのね…」
太郎丸は人一倍生真面目であり普段の太郎丸であれば夕方には帰宅する。
「太郎丸様は三日前の真昼…散歩に出掛けたばかりに失踪したのです!私は太郎丸様が無事なのか心配で…心配で…真夜中も眠れません!」
今現在南国の村里では夜桜太郎丸の捜索に南国武士団の捜索隊は勿論…。東国武士団も夜桜太郎丸の捜索に協力するのだが太郎丸の行方は依然として不明だったのである。
「大勢の家来達は勿論…村人達が総出で太郎丸様の行方を必死に捜索したのですが…太郎丸様は発見出来ないのですよ…」
「私に夜桜太郎丸の捜索を依頼したいと?」
「桜花姫様は私等みたいな常人では想像すら出来ない…摩訶不思議の妖術を駆使出来るとの噂話を村人達から傾聴したのです!桜花姫様の摩訶不思議の妖術で太郎丸様を発見出来ないでしょうか!?」
使者から根気強く依頼された桜花姫は満面の笑顔で返答したのである。
「仕方ないわね!」
桜花姫は使者の依頼に承諾する。
「桜花姫様!大変感謝します!」
使者は桜花姫の承諾に大喜びしたのである。
「太郎丸様が無事発見出来れば…桜花姫様には絶大なる褒美を授与しますから!」
「褒美ね…褒美なら桜餅だけを用意してね!私には桜餅と和菓子以外の褒美なんて不要なのよ!」
「えっ?桜餅ですと?」
使者は桜花姫の返答に拍子抜けする。
「桜餅だけで大丈夫なのですか!?桜花姫様!?」
「無論ね…桜餅さえ食べられるのなら私は大満足だから!」
「承知しました!桜花姫様…是非とも不寝番の桜花姫様には最高級の桜餅を用意しなくては!」
すると使者は太郎丸の似顔絵を桜花姫に手渡すと外出したのである。
「夜桜一族の若様が行方不明なのね…」
『人攫いなのは確実でしょうね…』
桜花姫は今回の事件が人攫いであると予想する。
第七話
真犯人
同日の真夜中の時間帯…。
『先日…悪霊の大口淑女と包丁女房を退治したのに…今度も南国の村里で事件発生なんてね…』
桜花姫は失踪中の夜桜太郎丸を捜索しに南国の村里へと移動したのである。
『南国も物騒だわ…』
桜花姫は度重なる事件発生に苦笑いし始める。
『今回の行方不明事件が人攫いであれば…匪賊達か…神出鬼没の悪霊の仕業なのは確実かしら?』
すると道中…。
「えっ?」
桃色の着物姿の女性が村道の中央に佇立したのである。
『女人だわ…一体誰かしら?』
女性は無表情で村道の桜花姫を凝視し続ける。
『こんな真夜中の時間帯に女性が一人で出歩くなんて不自然ね…』
桜花姫は前方の女性に警戒したのである。
「あんたは…一体何者なの?」
桜花姫は警戒した様子で前方の女性に問い掛ける。
「こんな暗闇の深夜帯の夜道で女性が一人で出歩くなんて不自然だわ!返答次第では実力行使よ!」
桜花姫は強気の態度で女性に発言する。すると女性は失笑した表情で…。
「あんたって♪最上級妖女の月影桜花姫よね♪」
「えっ!?」
『如何して彼女は私の名前を!?』
女性は一目で目前の人物が最上級妖女の桜花姫であると認識する。
「えっ…霊気かしら?」
突如として女性の肉体から悪霊特有の霊気が感じられる。
『彼女から霊気が感じられるわ!彼女の正体は…神出鬼没の悪霊みたいね!』
すると女性は冷笑した表情で発言する。
「如何やらあんたは私の正体を見破っちゃったみたいね♪やっぱり最上級妖女のあんたを相手に隠し事は通用しないか♪」
女性は隠し持った大鎌を装備し始め…。携帯したのである。
『大鎌だわ…』
「あんたの正体は…【大鎌女郎】ね!」
大鎌女郎とは生前…。村八分により大鎌で殺害された女性の悪霊とされる。大鎌女郎は列記とした悪霊であるが人語で他者とも会話出来る。
「大鎌女郎も喋れるみたいね…」
「であれば如何するのかしら?」
大鎌女郎は冷笑したのである。
「月影桜花姫…喋れたとしても私に対話なんて通用しないわよ!」
すると大鎌女郎は身構え始める。
「あんたは一瞬で即死するのね!」
大鎌女郎は神速の身動きで桜花姫に急接近…。
『大鎌女郎は身動きが神速ね…』
必殺の大鎌で桜花姫に斬撃したのである。
『桜花姫は…他愛無いわね!』
大鎌女郎が斬撃した直後…。桜花姫の肉体が一瞬で消滅したのである。
『斬撃した瞬間に小娘の肉体が消滅したわ…彼女の分身体かしら?』
大鎌女郎は周辺を警戒する。
『彼女の本体は?』
大鎌女郎は周辺を警戒するのだが…。桜花姫らしき人物は確認出来ない。
『本物の桜花姫は…一体?』
大鎌女郎の背後より…。
「残念だったわね!大鎌女郎!」
「如何やらあんたが本体みたいね…」
大鎌女郎の背後には無傷の桜花姫が佇立する。桜花姫は余裕の様子であり大鎌女郎に挑発したのである。
「であれば今度こそ…桜花姫を…」
大鎌女郎は再度大鎌で桜花姫を攻撃する寸前…。
「大鎌女郎!あんたでは私を仕留められないわよ!」
桜花姫は大鎌女郎に金縛りの妖術を発動する。
「ん?なっ!?」
『身動き出来ないわ…桜花姫は私に金縛りの妖術を!?』
大鎌女郎は桜花姫の金縛りの妖術によって身動きを封殺されたのである。
「大鎌女郎…私の質問に率直に返答しなさい!」
桜花姫は大鎌女郎の頭部のみに金縛りの妖術を解除する。
「私に質問ですって?」
桜花姫は両目を瞑目させる。
『彼女は…一体何を?』
大鎌女郎は桜花姫の様子に再度警戒したのである。
「三日前の出来事だけど…九歳位の武士の男の子が失踪中なのよ…彼を神隠ししたのはあんたなのかしら?」
「九歳位の人間の武士ですって?誰よ?私には無関係だわ…」
大鎌女郎は桜花姫の質問に無関係であると否認する。
「幼子の武士を神隠ししたのは私以外の別の悪霊か…人間の仕業でしょうね?」
「あんたは今回の神隠しの事件とは無関係なのね…」
「無論ね…」
大鎌女郎が返答してより数秒間…。桜花姫は沈黙したのである。
「月影桜花姫…あんたは私を如何するのかしら?」
大鎌女郎は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「私があんたを如何するのかって?」
桜花姫は大鎌女郎に変化の妖術を発動…。
「大鎌女郎…返答感謝するわね!大鎌女郎は桜餅に変化しなさい!」
直後に大鎌女郎は桜餅へと変化する。
『桜餅は頂戴するわね…』
桜花姫は即座に桜餅へと変化した大鎌女郎を捕食したのである。
『真犯人が大鎌女郎以外の人物だとしたら…一体誰が夜桜太郎丸を神隠しした真犯人なのかしら?』
すると背後より…。
「えっ?あんた達は?」
五人の村里の子供達が無表情で桜花姫を凝視し続ける。
『彼等は村里の子供かしら?不吉ね…』
子供達の様子から人間としての精力は感じられず…。五人とも無感情の人形みたいな雰囲気だったのである。
「あんた達は傀儡人形みたいね…誰に洗脳されたのかしら?」
『恐らくは神出鬼没の悪霊か…妖女の仕業でしょうね…』
何者かが摩訶不思議の効力で子供達を無力化…。洗脳したのだと予想する。すると子供達は隠し持った包丁を携帯したのである。
「あんた達…包丁なんて物騒ね…」
『止むを得ないわね…』
桜花姫は子供達の包丁に警戒し始める。
『不本意だけど…』
桜花姫は子供達に睡眠の妖術を発動…。数秒間が経過すると子供達は地面に横たわったのである。
『太郎丸を誘拐した真犯人は恐らく神出鬼没の悪霊なのは確実ね…』
桜花姫は再度夜桜太郎丸の捜索を開始する。
第八話
監禁
桜花姫が夜桜太郎丸の探索を開始し始めた同時刻…。南国の山奥に位置するとある洞窟にて三人の子供達が何者かによって監禁されたのである。二人の子供が極度の恐怖心で落涙し続ける。
「私達…殺されちゃうのかな?」
「父ちゃん…母ちゃん…僕は死にたくないよ…」
女の子と男の子が落涙し続ける最中…。
「二人とも!大丈夫だよ!僕達は無事に戻れるからさ!絶対に!」
彼こそは名門の夜桜一族分家の夜桜太郎丸である。太郎丸も洞窟に監禁されたが…。非常に冷静であり前向きな様子だったのである。
「あんたは何を根拠に!?何が大丈夫なのよ!?」
「僕達は悪霊に食い殺されちゃうよ…村里には戻れないよ…」
二人の子供達は悲観的であり太郎丸は困り果てる。
「えっ…」
『二人とも…説得するのは駄目みたいだな…』
すると洞窟の表口より先程の緑色の着物姿の女性が三人に近寄り始める。
「心配せずとも…私はあんた達を食い殺さないから安心なさい…」
女性は満面の笑顔で自分達を食い殺さないと発言したのである。
「えっ?」
『食い殺さないって?』
女性の発言に太郎丸は勿論…。二人の子供達は一瞬安堵したのである。
「食い殺さないけれど…あんた達は私の人形として活用するからね♪」
「私達を…人形ですって?」
女性は少女に凝視し始める。
「手始めに小娘…あんたからね!」
「えっ!?私!?」
少女は極度の恐怖心により膠着化し始め…。全身の身震いによって逃げたくても逃げられない。
「あんたは…可愛らしいわね!」
女性は赤面した表情で少女に急接近し始める。
「今日からあんたは私の人形よ!」
すると女性は少女に接吻し始め…。洗い浚い少女の精気を吸収したのである。前代未聞の光景に太郎丸と少年は絶句し始める。
「えっ…」
『女の人は一体何を!?』
女性に接吻された少女は地面に横たわるものの…。数秒間が経過すると目覚める。少女の表情は無表情であり無感情の人形みたいな様子だったのである。
『女の子…本物の人形みたいだ…一体何が?』
太郎丸は衝撃の光景に身震いし始める。
「貴女は…彼女に何を?貴女は一体何者なのですか?」
太郎丸は恐る恐る女性に問い掛ける。
「私が何者なのか?私は神出鬼没の悪霊よ♪」
問い掛けられた女性は自身の正体が神出鬼没の悪霊であると即答…。太郎丸に冷笑したのである。
「えっ…悪霊…」
『女の人の正体は…悪霊なの!?』
一方の太郎丸は人一倍悪霊が苦手であり極度の恐怖心により全身が膠着化し始め…。身震いしたのである。
「私はね…あんたみたいな男児は大好物なのよ!」
すると女性は太郎丸に急接近し始める。
「是非とも…あんたは私の人形に!」
女性は赤面した表情であり両手で太郎丸の頭部に接触…。一方の太郎丸は抵抗出来ず女性に接吻される寸前である。
「あんたは破廉恥ね…【溺愛貴婦人】!」
「えっ…溺愛貴婦人って?」
溺愛貴婦人とは生前…。不妊症により子供が出来ず自死したとされる女性の悪霊である。溺愛貴婦人は接吻により子供を自身の奴隷として扱える霊能力を保持する。子供を亡くした母親達の無念の集合体である亡霊妖婦の亜種とされる。
「あんたは!?何者なの!?」
溺愛貴婦人は背後の人物に警戒…。睥睨し始める。
「私が何者なのか?私は桜花姫…最上級妖女の月影桜花姫よ!」
溺愛貴婦人の背後には最上級妖女の桜花姫が佇立したのである。一方太郎丸は桜花姫を直視し始め…。
「えっ…月影桜花姫様?」
『彼女は…女神様みたいな女の人だな!彼女が話題の月影桜花姫様なのか…』
太郎丸は桜花姫に見惚れたのか赤面したのである。
「月影桜花姫だと?であれば大鎌女郎は…」
「勿論!大鎌女郎は私が仕留めたわよ!」
桜花姫は満面の笑顔で即答する。
「あんたは大鎌女郎を仕留めるとは…」
溺愛貴婦人と大鎌女郎は共謀関係だったのである。
「溺愛貴婦人!あんたは霊能力で村里の子供を奴隷みたいに扱ったみたいだけど…私の出現であんたの野望は阻止されるわね!」
桜花姫は溺愛貴婦人に挑発する。
「あんたね…」
『妖女の小娘の分際で…』
溺愛貴婦人は桜花姫に睥睨したのである。
「溺愛貴婦人…如何するのよ?非力のあんたでは私に反撃出来ないわよ!」
桜花姫に挑発された溺愛貴婦人であるが…。
「仕方ないわね!不本意だけれども!」
溺愛貴婦人は先程奴隷化した少女を人質に隠し持った包丁を仕向ける。
「あんたが下手に身動きすれば…私は彼女を殺害するわよ!」
溺愛貴婦人は本気だったのである。
「人質かしら?」
『彼女は本気だわ…悪霊らしい手口だけれども…』
桜花姫は人質の出現により下手に手出し出来なくなる。
「最上級妖女の月影桜花姫…如何するのかしら?あんたが下手に身動きしちゃえば彼女は絶命するわよ!」
溺愛貴婦人は冷笑したのである。一方背後の太郎丸は恐る恐る…。
『正直…悪霊は苦手だけど…』
太郎丸は身震いした様子で護身用の小刀を携帯したのである。
「女人の悪霊!御免なさい!」
太郎丸は謝罪と同時に護身用の小刀で溺愛貴婦人の背部を力一杯刺突…。
「なっ!?あんたは…」
溺愛貴婦人は吐血したのである。
「ぐっ!」
「えっ!?あんたは溺愛貴婦人を…」
桜花姫も太郎丸の突発的行動に驚愕する。
「あんたは…如何して私を?」
溺愛貴婦人は悲痛そうな表情で太郎丸を凝視し始める。太郎丸は大声で…。
「桜花姫様!彼女を!溺愛貴婦人を桜花姫様の妖術で成仏させて下さい!」
太郎丸は桜花姫に溺愛貴婦人の成仏を懇願したのである。
「私を…成仏させるって!?」
溺愛貴婦人は冷や冷やし始める。
「承知したわ!」
桜花姫は再度溺愛貴婦人を凝視する。
「溺愛貴婦人!覚悟なさい!」
桜花姫は浄化の妖術を発動したのである。
「えっ…」
『涼風かしら?』
冷や冷やした溺愛貴婦人であるが…。涼風の影響からか素肌が人間らしい肌色へと変化したのである。
「貴方達…御免なさいね…」
溺愛貴婦人は落涙した表情で太郎丸と二人の子供に謝罪する。三人の子供達に謝罪した直後…。溺愛貴婦人は微笑み始める。
「えっ…溺愛貴婦人が…」
「如何やら溺愛貴婦人は成仏出来たみたいね…」
洞窟内部で涼風が発生すると溺愛貴婦人は無数の発光体へと変化し始め…。完膚なきまでに消滅したのである。
『溺愛貴婦人…』
太郎丸は消滅した溺愛貴婦人に合掌する。溺愛貴婦人の消滅と同時に人質として利用された少女の意識が戻ったのである。
「えっ!?私は…一体?」
「如何やらあんたは正気に戻ったみたいね!」
桜花姫は一安心する。
「あんた達…洞窟から脱出するわよ!」
暗闇の洞窟から脱出してより数分後…。溺愛貴婦人に監禁された少年と少女は無事に村里へと戻ったのである。
「ひょっとしてあんたが夜桜一族の夜桜太郎丸かしら?」
桜花姫は太郎丸に問い掛ける。
「勿論ですとも!僕が夜桜一族の長男坊…夜桜太郎丸です!夜桜一族でも僕の家系は分家ですけれどね!」
太郎丸は満面の笑顔で即答する。
「月影桜花姫様!大変感謝します!」
太郎丸は桜花姫に一礼したのである。
「別に…今回はあんたの突発的行動で溺愛貴婦人を無事に浄化出来たし!あんたって…気弱そうだけど勇敢だわ!」
「えっ!?僕が…勇敢ですか!?」
太郎丸は赤面し始める。
「無事に武家屋敷に戻ったら…即刻桜花姫様の功績を報告しますからね!」
太郎丸は一目散に武家屋敷へと戻ったのである。一方の桜花姫は太郎丸を見届けてから数分後…。
「神隠しの事件は無事に解決出来たし!」
『私も西国に戻ろうかしら?』
桜花姫は西国の村里へと戻ったのである。
第九話
雪女
悪霊の溺愛貴婦人と大鎌女郎を仕留めてから二日後…。真昼の時間帯である。
『今度は妖怪雪女が西国の廃村に出現ですって?』
近頃…。西国の廃村では妖怪絵巻物に登場する妖怪雪女が出没するとの噂話が国全体に出回り始める。桜花姫は雪女の情報を熟知…。早速行動を開始したのである。
『北国では雪美姫って名前の…粉雪妖女が有名だけど…』
北国には粉雪妖女の雪美姫と呼称される妖女が存在する。
『彼女は今回の雪女事件とは無関係よね?妖女特有の妖力も感じられないし…』
廃村からは妖女特有の妖力が感じられず…。今回の雪女事件では同種の妖女は無関係であると確実視する。桜花姫は自宅から移動し始めてより三十分後…。
『廃村だわ…』
「此処に雪女が出現するのかしら?」
桜花姫は無人の廃村へと到達したのである。
『人気は皆無だわ…如何やら廃村は無人地帯みたいね…』
桜花姫は周囲を警戒し始める。
『前回の肉食樹体の事件もだけど…西国にこんな廃村が存在するなんてね…』
すると突然…。
「きゃっ!」
突如として猛吹雪が発生したのである。
『猛吹雪だわ…』
突然の猛吹雪に桜花姫は驚愕する。
『此処は雪国みたいな景色ね…如何して此処だけ猛吹雪が発生するのかしら?』
猛吹雪により廃村全域が雪景色へと変化…。桜花姫は周囲を眺望したのである。
「えっ?」
『何かしら?気配?』
背後より不吉の気配を感じる。
『背後には?』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後を確認したのである。
「あんたは…何者なの?」
桜花姫の背後には白装束で黒髪の長髪…。妖艶さを感じさせる小柄の美少女が佇立する。美少女は無表情で桜花姫を凝視したのである。僅少であるものの…。
『彼女から霊気を感じるわ…』
美少女からは悪霊特有の霊気が感じられる。桜花姫は恐る恐る…。
「あんたからは…悪霊特有の霊気を感じるわね…」
『彼女の正体…恐らくは悪霊ね…』
桜花姫は白装束の美少女の正体が神出鬼没の悪霊であると察知する。
「あんたは神出鬼没の悪霊ね…ひょっとしてあんたは【亡霊雪女郎】かしら?」
亡霊雪女郎とは生前…。大寒波により凍死したとされる女性の亡霊として知られる。北国では妖怪雪女とも呼称される。余談であるが…。亡霊雪女郎の存在が怪談絵巻物に登場する妖怪雪女の模範とされる。
「妖怪雪女の正体は亡霊雪女郎…あんただったのね…」
すると亡霊雪女郎は無表情で…。
「其方が噂話の妖女…月影桜花姫か?」
亡霊雪女郎は人間の口言葉で喋り始める。
「亡霊雪女郎…如何してあんたは私の名前を?」
桜花姫は名前を認知する亡霊雪女郎に内心大喜びしたのである。
『神出鬼没の悪霊にも私の名前が知られるなんてね…私も有名人だわ!』
名前を認知され内心嬉しくなった桜花姫であるが…。
「折角だけど…私は悪霊のあんたを退治するわね…」
「其方は私を退治すると?其方みたいな小娘に出来るかな?」
亡霊雪女郎は桜花姫に挑発し始める。
「此奴は手始めだ…」
すると亡霊雪女郎は霊能力で氷柱を複数生成させたのである。
『氷柱かしら?』
桜花姫は亡霊雪女郎の攻勢に警戒し始める。亡霊雪女郎は霊能力により生成させた氷柱を空中浮揚させたのである。
「氷柱で其方を刺殺する…覚悟しろ!」
直後…。複数の氷柱が桜花姫を目標に飛翔させたのである。
「亡霊雪女郎は氷柱を長距離用の武器に?」
『であれば妖力の防壁で氷柱攻撃を無力化するだけよ!』
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。高速で接近する亡霊雪女郎の氷柱攻撃を無力化したのである。
「其方は…妖力の防壁で私の氷柱を無力化するとは…」
一方の桜花姫は満面の笑顔で…。
「間一髪だったわね!私にはあんたの遠距離攻撃は通用しないわよ!」
桜花姫は亡霊雪女郎に火炎の妖術を発動したのである。
「亡霊雪女郎…あんたは火炎の妖術で焼死しなさい!」
突如として亡霊雪女郎の肉体が発火し始め…。
『此奴!?発火だと!?』
亡霊雪女郎の肉体は突然の発火によって肉体が崩れ落ちる。
「大寒波で凍死した女人の亡者…成仏するのね!」
亡霊雪女郎の肉体は火炎の妖術により数十秒間で水化し始め…。亡霊雪女郎は完膚なきまでに氷解されたのである。
『亡霊雪女郎の肉体は氷塊みたいね…』
火炎の妖術で亡霊雪女郎を瞬殺した桜花姫であるが…。
『亡霊雪女郎って…こんな程度の悪霊なのかしら?』
手応えを感じられなかったのである。
「えっ!?」
彼是と思考した直後…。
『背後から霊気!?』
突如として背後より気配を察知したのである。
「月影桜花姫…今更気付いても手遅れだぞ!」
亡霊雪女郎は神速の身動きで桜花姫に急接近したかと思いきや…。背後から氷塊の刀剣で桜花姫の胸部を一突きしたのである。
「ぐっ!あんた…」
「油断したな…月影桜花姫…」
氷塊の刀剣で一突きされた桜花姫は吐血し始める。
「其方は失血死するのだ…」
吐血した桜花姫であるが…。満面の笑顔で応答する。
「あんたこそ…油断したわね!亡霊雪女郎!」
桜花姫は余裕の様子だったのである。
「ん?其方…」
『彼女…私を相手に随分と余裕だな…』
亡霊雪女郎は桜花姫の動向に警戒し始める。
「私と一緒に死にましょうね♪亡霊雪女郎!」
直後である。
「なっ!?」
『高温化だと!?彼女は何を!?』
桜花姫の肉体が高温化し始め…。
「はっ!?」
桜花姫の肉体は爆発したのである。
「えっ…ぎゃっ!」
亡霊雪女郎も桜花姫の自爆によって爆散…。桜花姫の肉体から発生した高熱の熱気により亡霊雪女郎の全身は一瞬で氷解したのである。全身の肉体が氷解した亡霊雪女郎であるが…。水化した状態から女体を形成させる。
「はぁ…」
亡霊雪女郎は数秒間で復活したのである。
「物騒だな…桜花姫は自爆を駆使するとは…」
『先程の自爆攻撃は私自身も危なかったが…』
冷や冷やした亡霊雪女郎であるものの…。
『邪魔者である月影桜花姫は自身の妖術で爆死したからな…』
肉体が元通りに復活出来て安堵する。
『今度は周囲の村里を襲撃するか…』
亡霊雪女郎が行動を開始する直前…。
「久し振りね!亡霊雪女郎!」
「なっ!?其方は!?」
亡霊雪女郎の背後には無傷の桜花姫が佇立する。
「何故だ!?月影桜花姫は自身の妖術で自爆したのでは!?如何して爆死した其方が存在するのだ!?」
亡霊雪女郎は突如として出現した桜花姫に驚愕し始め…。目前の光景が現実なのか混乱したのである。
「随分と不思議そうな表情ね♪亡霊雪女郎♪私は自爆分身の妖術を駆使したのよ!」
「自爆分身の…妖術だと?」
自爆分身の妖術とは分身の妖術の応用の一種…。自身の分身体を爆弾として使用する自爆攻撃型の妖術である。匪賊に拘束された場合やら敵地を直接攻撃する場合に使用される妖術であり基本的に悪霊との戦闘では使用されない。
「亡霊雪女郎は大人しく私に食べられちゃいなさい!」
「其方…」
桜花姫は亡霊雪女郎に変化の妖術を発動…。亡霊雪女郎は定番である桜餅に変化したのである。
『変化の妖術!成功ね!』
桜花姫は笑顔で小皿に配置された桜餅に近寄る。
『亡霊雪女郎!頂戴するわね!』
桜花姫は即座に桜餅へと変化した亡霊雪女郎を捕食したのである。
『其処等の悪霊でも…やっぱり桜餅は美味だわ!』
すると亡霊雪女郎の霊気が消失…。廃村では亡霊雪女郎の霊気が感じられなくなる。
『亡霊雪女郎の霊気が消失したわ…廃村は元通りの状態ね!』
雪景色だった周辺も元通りの廃村へと戻ったのである。亡霊雪女郎を退治してより数分後…。
『今回の事件も無事解決出来たわね!』
「私は村里に戻ろうかしら?」
桜花姫は村里に戻ったのである。
第十話
睡魔
近頃…。西国では若齢の村娘が極度の睡魔により熟睡する超常現象が発生したのである。精気こそ感じられるが…。誰一人として目覚めなかったのである。誰もが永眠した様子であり西国全体で社会問題化する。悪霊の仕業であるとの噂話が各地に出回り始める。悪霊の亡霊雪女郎を仕留めてより一週間後…。桜花姫の自宅より村里の役人達が訪問する。彼等から調査を依頼されたのである。
「役人達に調査を依頼されちゃったけど…今度は何事かしら?」
『村娘達が熟睡から目覚めないなんて…一体何が原因で?』
桜花姫は目的地である村里の大屋敷へと到着する。
「村娘達の居場所は此処ね…」
大部屋には十数人もの村娘達が熟睡した状態であり彼女等の周囲には大勢の遺族達が確認出来る。村娘の遺族達は心配した様子であり熟睡中の彼女達を見守り続ける。
「如何して…如何して目覚めないのかしら?」
「死んじゃったら如何しましょう?」
「私達の…宝物が…」
母親達は目覚めない愛娘の様子に号泣…。
「一体何が原因なのか!?」
「如何して俺の愛娘は目覚めないのか!?」
父親達も苛立った様子であり村娘達の様子を不安視したのである。
「一体如何すれば彼女達は目覚めるのか?」
村里の役人達も目覚めない村娘達の様子に困り果てる。すると数人の役人達が桜花姫に注目する。
「月影桜花姫様でしたか!?」
「最早今回の超常現象…貴女様以外に依頼出来ません!」
「桜花姫様の妖術で彼女達を救済出来ませんか!?」
桜花姫は村娘の一人に接触したのである。
「えっ…」
僅少であるが…。
『霊気かしら?』
村娘の脳裏から悪霊特有の霊気を察知したのである。
「霊気だわ…」
今度は別の村娘に接触する。
『彼女も同様ね…恐らくは彼女達…神出鬼没の悪霊に憑霊されたみたいだわ…』
霊気を察知した瞬間…。桜花姫の背後より少女らしき笑い声が響き渡る。
『少女の笑い声だわ…一体誰かしら?』
桜花姫は恐る恐る背後を注視する。すると自身の背後には十代前半位の小柄の少女が佇立…。冷笑した様子で桜花姫を凝視し続ける。
「あんたは♪妖女ね♪」
桜花姫の背後に小柄の少女は存在するのだが…。
『周囲の人間達は彼女の存在に気付かないのかしら?ひょっとして彼女の正体…』
周囲の者達は少女の存在に気付かない様子であり小柄の少女が人外の存在なのは明白である。すると小柄の少女は両目が蛍光色に発光し始め…。
「折角だからね!妖女のあんたも彼女達みたいに永眠させないと!」
直後である。桜花姫も村娘達と同様に極度の眠気に急襲され…。床面に横たわったのである。
「えっ!?」
「桜花姫様も!?」
突如として熟睡し始めた桜花姫の様子に周囲の者達は驚愕し始め…。大部屋全体が騒然としたのである。
第十一話
夢幻世界
熟睡し始めてから数分後…。桜花姫は意識が戻ったのである。
「えっ…此処は?」
周辺は漆黒の暗闇であり何も存在しない漆黒の空間だったのである。すると自身の背後より…。
「私の夢幻空間で目覚めるなんてね…やっぱり妖女は別格だわ♪」
桜花姫の背後には先程大部屋で遭遇した小柄の少女である。
「あんたは!?」
桜花姫は背後の少女に警戒する。
「あんたの正体…悪霊の【夢幻童女】ね…」
夢幻童女とは特定の人物のみが視認出来る悪霊として知られる。姿形は小柄の少女であり煌びやかな藍色の着物が特徴的である。夢幻童女の正体としては生前…。迫害された霊媒師の女性であると解釈される。別名では幻想少女…。夢想女郎とも呼称される。
「夢幻童女…村娘達を解放しなさい!」
指摘された夢幻童女であるが…。夢幻童女は桜花姫の指摘に失笑し始める。
「不可能よ…何故なら!」
夢幻童女の背後には幸福そうに安眠し続ける村娘達が出現したのである。
「今現在彼女達は私の夢幻世界で永遠の幸福を満喫中なのよ!邪魔しないでね!」
「何が幸福よ…所詮此処は夢想の世界でしょうに…」
桜花姫は夢幻童女の発言に呆れ果てる。
「妖女…あんたは二度と此処から脱出出来ないのよ!彼女達と一緒に私の夢幻世界で無限の幸福を満喫するのね!」
すると直後である。
「えっ!?夢幻童女は!?」
突如として夢幻童女の姿形が消滅する。夢幻童女が消滅したと同時に…。とある人物が出現したのである。
「桜花姫…」
桜花姫の目前より…。
「えっ…貴女は…」
「久し振りね…桜花姫…貴女が元気そうで安心したわ♪」
死去した実母の月影春海姫が出現したのである。
「母様なの!?」
突然の春海姫の出現により桜花姫は愕然とし始め…。全身が膠着する。一方の春海姫は生前の姿形であり桜花姫は一瞬大粒の涙が零れ落ちる。
「如何して母様がこんな場所に!?」
『可笑しいわね…目前の母様は夢幻童女の形作った幻想かしら?』
動揺し続ける桜花姫であるが…。
「桜花姫!貴女は悪霊退治で活躍中みたいね!立派だわ!」
春海姫は悪霊征伐で活躍中の桜花姫に大喜びしたのである。
「私…貴女に再会出来て幸福なのよね♪」
春海姫は満面の笑顔で桜花姫に近寄り始める。
「えっ…母様?」
すると今度は周辺より…。白煙が発生したのである。
「えっ!?今度は桜餅!?」
白煙が消失すると数千個もの小皿に配置され…。桜餅が無数に形作られる。
『夢幻童女の形作った幻想なのよね?』
桜花姫は一瞬躊躇するのだが…。
「桜花姫…貴女の大好きな桜餅よ!遠慮せずに食べなさい!」
春海姫は満面の笑顔で誘導したのである。
「はぁ…」
『我慢出来ないわ…』
桜花姫は極度の空腹により周辺の桜餅が食べたくなる。
「一口だけ…」
桜餅を一個平らげる。
「やっぱり桜餅は美味だわ!」
幻想であっても桜餅の食感と味気は本物と同様だったのである。桜花姫は無我夢中に周辺の桜餅を平らぎ始める。一方の夢幻童女は幸福そうに桜餅を食べ続ける桜花姫の様子に冷笑したのである。
『如何やら妖女にとって幸福の象徴は死没者の母親と…桜餅みたいね!あんたも村娘達諸共衰弱死するのね!』
夢幻童女は自身の霊能力で他者を睡魔で安眠…。衰弱死させられる。現実世界で熟睡中の人間は夢幻童女の形作った夢幻世界で永遠の幸福を体感出来る。
『彼女達が衰弱死するのも時間の問題だわ!』
夢幻童女は彼女達の衰弱死を確実視するのだが…。
「残念だったわね!夢幻童女!」
「えっ?」
夢幻童女は恐る恐る背後を直視する。
「えっ!?あんたは!?」
夢幻童女の背後には桜花姫が佇立した状態である。
「妖女!?如何してあんたが!?」
桜花姫の両目は半透明の瑠璃色へと光り輝き続ける。
「あんた…両目が…」
「天道天眼よ!あんたの幻術さえも無力化出来るのよね!」
天道天眼は強力であり夢幻童女の幻術さえも無力化出来る。すると遠方で食事中だった桜花姫が完膚なきまでに消失したのである。
「消滅するなんて…」
「彼女は私の分身体よ!」
桜花姫は夢幻童女が霊能力を発動する寸前…。分身の妖術を発動したのである。
「夢幻童女は私の分身体に幻術を発動しちゃったのよね♪」
夢幻童女は後退りし始める。
「観念するのね!夢幻童女!」
桜花姫は夢幻童女に変化の妖術を発動…。夢幻童女は小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「幻想でしょうけど…頂戴するわね!」
桜餅に変化した夢幻童女を捕食する。
「やっぱり夢幻世界の悪霊でも…桜餅は美味ね!」
直後である。
「えっ?」
夢幻童女を捕食した影響なのか夢幻世界の空間全域に閃光が発生する。直後…。桜花姫は意識が戻ったのか目覚めたのである。
「此処は…大部屋かしら?」
すると大部屋の役人達は勿論…。村娘の親族達が大喜びしたのである。
「桜花姫様が目覚められたぞ!」
「桜花姫様…無事で良かった!」
今度は熟睡中だった村娘達も目覚め始める。
「えっ…私は一体?」
「此処は?」
「如何して…私…こんな場所に?」
「私は何を?」
元凶の夢幻童女を仕留めた影響により村娘達の脳裏から夢幻童女の霊気が消失したのである。目覚めた村娘達の様子に彼女等の親族達は落涙し始め…。愛娘達の無事に大喜びしたのである。
「桜花姫様!大変感謝します!」
「貴女様の協力で…私達の愛娘は無事に戻れました!」
桜花姫は周囲の者達に感謝される。
「別に…私にとってこんなのは日常茶飯事だからね…」
今回の事件以後…。夢幻童女は出現しなくなる。
第十二話
黒雲
夢幻童女による睡魔事件から三日後…。大都市部である東国郊外に位置する山奥での出来事である。時間帯は早朝…。二人の猟師達が狩猟を目的に山道を移動する。
「頭領?野獣は一匹も発見出来ませんね…如何しますか?」
周囲からは清涼の涼風と川音が響き渡るものの…。野鳥やら野兎一羽も発見出来ず二人は苛立ったのである。弟子である小柄の猟師が大柄の頭領に問い掛ける。
「可笑しいな…平時であれば小鳥やら野兎なんて其処等で見物出来るのだが…小動物一匹とも遭遇しないとは…」
大柄の頭領も困り果てる。すると小柄の猟師が身震いした様子で恐る恐る…。
「荒唐無稽かも知れませんが…悪霊の仕業とか?」
「悪霊って…其方は子供かよ?」
一瞬小柄の猟師の発言には呆れ果てるのだが…。
『非現実的かも知れないが…』
大柄の頭領は近年の度重なる悪霊事件の頻発に神出鬼没の悪霊を否定出来なかったのである。
「俺も悪霊の存在は全否定しないさ…ひょっとすると此奴は嵐の前の静けさなのかも知れないな…野兎一羽確認出来ないからな…」
大柄の頭領の発言に小柄の猟師は畏怖し始める。
「頭領…神出鬼没の悪霊が出現するかも知れませんし…山奥から脱出しましょうよ!俺はこんな場所で悪霊と遭遇したくないです!」
「今更何を…」
すると大柄の頭領は猟銃を携帯したのである。
「俺達は護身用の猟銃を装備したからな…奴等が襲撃を仕掛けるなら猟銃で猛反撃するだけだ!」
「えっ…猛反撃って?」
『神出鬼没の悪霊を相手に俺達の猟銃なんて通用するのだろうか?』
小柄の猟師は内心不安がる。彼等は山道を歩き回ってより十数分後…。
「頭領?」
小柄の猟師は再度不安そうな表情で大柄の頭領に問い掛ける。
「ん?如何した?」
一方の頭領は面倒臭そうな態度で返事する。
「頭領は…気味悪くないのですか?」
「気味悪いって?何が気味悪いのだ?」
「周辺の空気が…先程よりも重苦しく感じるのです…」
空気は非常に重苦しく疲労が蓄積されたのである。
「頭領は何も感じられませんか?」
「空気が重苦しいか…」
頭領も周囲の空気が先程よりも重苦しいと痛感し始める。
「正直…此処で長居し続けるのは辛苦だな…」
すると突然…。暗闇の自然林より無数の呻き声が響き渡る。
「ひっ!」
小柄の猟師は無数の呻き声に畏怖したのである。
「頭領!呻き声です!」
「一体何事だ?呻き声だと?」
「物の怪の呻き声でしょうか!?不吉過ぎますよ…」
頭領も遠方の自然林から響き渡る呻き声には無視出来ない。
『此奴が畏怖するのも理解出来るな…此奴は相当気味悪いぜ!』
頭領は長年の経験からか不吉の気配を感じる。
「気配…」
『気配は感じるのだが…人間は勿論…動植物とは似ても似つかない…気配の正体は人外の化身だろうか?呻き声の正体は一体…やっぱり気配の正体は物の怪なのか?』
姿形は確認出来ないものの…。人外の気配は確実に二人に接近中だったのである。
『一体何が…接近中なのだ?』
頭領は警戒した様子で恐る恐る猟銃に銃弾を装填させる。
「頭領…何が出現するのでしょうか?」
「正直俺にも…何が何やら…」
『気配の正体が人外なのは確実だろうが…』
二人が警戒し始めてから数分後…。
「ん?なっ!?」
突如として両者の目前より黒雲が発生したのである。
「黒雲だと!?」
黒雲の内部から数十体もの悪食餓鬼が融合した亜種…。親玉の百鬼悪食餓鬼が出現したのである。
「ひっ!悪霊だ!」
「此奴は…百鬼悪食餓鬼か!?」
百鬼悪食餓鬼の出現に二人は愕然とし始め…。
「頭領!御免なさい!」
小柄の猟師は極度の恐怖心からか一目散に逃走したのである。
「なっ!?」
『彼奴…恐怖心で逃げやがったか!』
百鬼悪食餓鬼は鈍足の身動きで頭領に接近する。
『畜生が!止むを得ないな!』
百鬼悪食餓鬼の体表に存在する悪食餓鬼の頭部が頭領を睥睨したのである。
『此奴は…相当気味悪いな…』
頭領は百鬼悪食餓鬼に恐怖を感じるものの…。
「神出鬼没の悪霊!覚悟しやがれ!」
頭領は目前の百鬼悪食餓鬼に猟銃を発砲したのである。発砲した弾丸は百鬼悪食餓鬼を貫通…。傷口からは出血が確認出来るのだが百鬼悪食餓鬼は怯まない。
「畜生が!」
『銃弾が直撃しても死なないとは…』
頭領は何発か百鬼悪食餓鬼に銃撃するものの…。
『悪霊には弾丸が通用しないのか!?』
百鬼悪食餓鬼は怯まず頭領に接近し続ける。
『やっぱり駄目だ!此奴は相当危険だな!』
頭領は不本意であるが撤退を決意…。
『一か八かだ!』
一目散に逃走したのである。
第十三話
山椒魚
同日の真昼…。南国の村里より夜桜一族分家の夜桜太郎丸が勉学を目的に出掛けたのである。
『東国へはもう少しかな?』
周囲は暗闇の自然林であり真夜中に感じられる。
「不吉だな…」
『時間帯は真昼なのに…周辺は深夜帯みたいに暗闇だな…』
太郎丸は暗闇の光景に畏怖したのか身震いしたのである。
『此処を突破すれば大都会の東国に到達出来る!もう少しの辛抱だ!』
太郎丸はもう少しの辛抱であると自身に断言…。太郎丸は暗闇の山道を直進し続けたのである。すると山道の道中…。
「ん?」
遠方より無数の呻き声が山道全域に響き渡る。
「えっ…」
『大勢の…呻き声かな?』
太郎丸は無数の呻き声に畏怖したのである。
「一体何が?」
太郎丸は無数の呻き声に戦慄するのだが…。
『呻き声の正体は何者だろう?』
無数の呻き声の正体が気になったのである。
『一か八か!』
太郎丸は決断…。無数の呻き声が響き渡る方向へと移動したのである。
「はぁ…はぁ…」
移動し始めてから数分後…。
「なっ!?」
呻き声の正体とは無数の悪食餓鬼が一体化した百鬼悪食餓鬼の大群だったのである。暗闇の山道で数十体は確認出来る。
「奴等は…悪霊の大群だ…」
『妖怪絵巻物の百鬼夜行みたい…』
百鬼悪食餓鬼の大群は百鬼夜行を連想させる不吉の光景だったのである。太郎丸は警戒した様子で恐る恐る百鬼悪食餓鬼の大行列に追尾する。
『彼等の目的地は?』
百鬼悪食餓鬼の大行列を追尾してより一時間後…。暗闇の自然林を脱出すると殺風景の平地へと到達したのである。平地の中心地には数百体もの百鬼悪食餓鬼が確認出来る。
「えっ…」
太郎丸は異様の光景に身震いし始める。
『悪霊の大群だ…』
太郎丸は遠方から彼等の動向を観察したのである。
『彼等は平地で一体何を?』
百鬼悪食餓鬼の大群は何一つとして身動きせず…。只管佇立し続けるだけである。
『こんな場所で長居し続けるのも無意味だね…』
「山道に戻ろうかな?」
太郎丸は山道へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ!?」
突如として数百体もの百鬼悪食餓鬼が融合化し始めたのである。
『悪霊の大群が融合化するなんて!』
数百体もの百鬼悪食餓鬼が融合化した直後…。百鬼悪食餓鬼の大群は巨大山椒魚を連想させる規格外の怪物へと変化したのである。
『巨体の怪物だ…山椒魚みたいだな…』
怪物の表面には数千体…。数万体もの悪食餓鬼の顔面が確認出来る。彼等の呻き声が平地全域へと響き渡る。怪物の全長は一町規模と規格外に巨体であり太郎丸は平地の光景が現実の光景なのか理解出来なくなる。
『彼奴は危険だ!逃げないと殺される!』
太郎丸は怪物に戦慄すると一目散に逃走したのである。
「桜花姫様…」
『不寝番の月影桜花姫様なら山椒魚の怪物を仕留められるかな!?』
太郎丸は逃走中に不寝番の桜花姫なら先程の怪物を仕留められると思考する。太郎丸は全身全霊で西国の村里へと直行したのである。一目散に移動してより数十分後…。太郎丸は目的地である西国の村里へと到達したのである。
「西国の村里だ…」
『此処に不寝番の月影桜花姫様が…』
西国の村里は片田舎であり全体的に殺風景であるのだが…。一際目立つ武家屋敷が一軒のみ確認出来る。
『武家屋敷だ!』
太郎丸は武家屋敷へと移動したのである。
『家名は?』
玄関口の家名を確認すると月影家の三文字が確認出来る。
「家名は月影家だ…」
『ひょっとすると武家屋敷は桜花姫様の家屋敷なのかな?』
太郎丸は緊張した様子で恐る恐る…。
「御免下さい!月影桜花姫様!」
すると玄関口より一人の女性が戸口を開放させる。
「誰かと思いきや…あんたは夜桜一族の夜桜太郎丸かしら?」
女性は最上級妖女の月影桜花姫である。
「こんな場所に一人で訪問するなんて…一体私に用事かしら?」
「桜花姫様!大変です!緊急事態ですよ!」
「えっ…何が緊急事態なのよ?」
桜花姫は騒然とし続ける太郎丸に困惑する。
「東国の…山奥の平地で…」
太郎丸は桜花姫に先程の出来事を一部始終洗い浚い告白したのである。
「東国の山奥で山椒魚みたいな怪物が出現したのね…」
「桜花姫様の妖術で山椒魚の怪物を退治出来ないでしょうか?」
「勿論よ!悪霊征伐は不寝番としての私の使命だからね!」
桜花姫は満面の笑顔で承諾…。
「悪霊を征伐するわよ!太郎丸!」
「僕も同行しますよ!桜花姫様!」
桜花姫は太郎丸と一緒に東国へと移動したのである。
第十四話
迎撃
桜花姫と太郎丸が行動を開始し始めた同時刻…。東国の郊外では先程出現した山椒魚の怪物が大都市部の東国へと進行中だったのである。東国武士団は現地の村人達から情報を入手…。迅速的に対応したのである。郊外近辺には数百人規模の迎撃部隊と多数の大砲が配備され…。郊外近辺は要塞化されたのである。
「巨体の怪物が出現したって噂話は本当なのかな?」
突然の事態に東国武士団は大混乱…。怪物の出現が本当なのか懐疑的に思考する者達も少なくなったのである。
「何人かの武士達も規格外の巨大山椒魚を目撃したらしいからな…怪物の噂話は本当なのだろう…」
「今回は神出鬼没の悪霊なのかな?」
現場は騒然とする。すると直後…。
「ん?」
遠方の山奥より小規模の地響きと無数の呻き声が響き渡ったのである。
「呻き声だと!?」
「一体何が!?」
「呻き声の正体は悪霊なのか!?」
無数の呻き声に現場の隊員達は畏怖し始める。
「貴様達!狼狽えるな!」
部隊長が畏怖し続ける隊員達に怒号する。
「最前線である俺達が神出鬼没の悪霊に戦慄して如何するのだ!?俺達が悪霊を阻止しなくては大勢の町民達が殺されるかも知れないのだぞ!俺達は東国を守護する最後の防波堤なのだ!」
部隊長の叱咤激励に彼等は沈黙したのである。隊員達が一時的に沈黙し始めてから数分後…。無数の呻き声と同時に地響きが小刻みに響き渡る。
「地響きか…」
迎撃部隊の隊員達は地響きに一瞬畏怖するものの…。誰一人として逃亡しなかったのである。
「総員!戦闘配置だ!大砲に砲弾を装填させるのだ!」
部隊長が命令すると隊員達は各拠点に配置された大砲に砲弾を装填し始め…。
「砲弾…準備完了しました!」
直後である。遠方の自然林から一町規模の巨大山椒魚が出現…。
「此奴が噂話の物の怪か!規格外の巨獣みたいだな!」
巨大山椒魚は想像以上の巨大さであり皮膚の表面には無数の顔面が確認出来る。無数の顔面からは不吉の呻き声が響き渡り…。現場の隊員達を身震いさせる。
「貴様等!狼狽えるなよ!巨獣を仕留めるのだ!砲撃を開始せよ!」
部隊長の命令と同時に各拠点に配置された大砲から多数の砲弾が発射されたのである。十数発もの砲弾が巨大山椒魚の体表に直撃…。炸裂したのである。砲弾の炸裂により近辺では爆発音が連続的に響き渡る。
「巨獣を仕留めたか!?」
巨大山椒魚の体表には多数の砲弾が直撃するのだが…。巨大山椒魚は迎撃部隊の砲撃に怯まず只管驀進し続けたのである。
「畜生が!巨獣は一筋縄では仕留められないか!?」
部隊長は苛立ち始める。周囲の隊員達は接近中の巨大山椒魚に畏怖し始め…。
「駄目だ…」
「逃げないと…殺される!」
極限状態からの恐怖心により逃亡し始める隊員達も出始める。
「なっ!?貴様等!逃走するな!此処で巨獣を仕留めないと東国が壊滅するのだぞ!怯まず応戦しろ!」
部隊長は逃亡中の隊員達に怒号したのである。すると巨大山椒魚は口部を開放し始め…。高熱の火炎を放射したのである。
「ぎゃっ!」
「うわっ!」
高熱の火炎により大勢の隊員達が蒸発…。一瞬で炭化したのである。最前線の迎撃部隊は巨大山椒魚の猛反撃により総崩れ…。一方の巨大山椒魚は人口密集地の市街地に接近したのである。
第十五話
足跡
巨大山椒魚が東国武士団の迎撃部隊を一蹴してより同時刻…。桜花姫と太郎丸は目的地の東国へと急行する。
「東国の方向から霊気を感じるわ…非常に強力ね…」
「えっ!?先程の怪物は強力なのですか!?」
太郎丸は驚愕したのである。すると周囲より無数の霊気を感じる。
「霊気だわ…悪霊かしら?」
「桜花姫様?如何されましたか?」
太郎丸は突如として警戒し始めた桜花姫の様子に不安がる。
「桜花姫様…何が…一体何が出現するのですか?」
「悪霊の大群よ…」
「えっ…悪霊の大群ですって?」
周辺の地面より数十体…。数百体もの悪食餓鬼が出現したのである。桜花姫と太郎丸は悪食餓鬼の大群に包囲される。
「ひっ!悪霊の大群!?」
太郎丸は悪食餓鬼の大群に畏怖…。極度の恐怖心からか全身が膠着化したのである。一方の桜花姫は太郎丸が大袈裟であると感じる。
「太郎丸…あんたは本当に大袈裟ね…こんな悪霊に畏怖しちゃうなんて…」
桜花姫は内心太郎丸の小心さに呆れ果てる。
「桜花姫様は恐怖を感じられないのですか!?」
「別に…悪霊なんて平気よ!」
桜花姫は満面の笑顔で即答する。
「えっ…」
『悪霊が平気なんて…桜花姫様は一体何者なのか?』
太郎丸は悪霊と遭遇しても娯楽感覚の桜花姫が何者なのか理解出来なくなる。
「あんた達!私に挑戦するなんて無謀ね!」
桜花姫は周囲の悪食餓鬼に挑発したのである。すると悪食餓鬼の大群は桜花姫と太郎丸に殺到し始める。
『定番の!』
桜花姫は周囲の悪食餓鬼に変化の妖術を発動…。悪食餓鬼の大群は小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「えっ!?悪霊の大群が桜餅に!?」
「妖力を消耗したからね!」
桜花姫は桜餅に変化した悪食餓鬼の大群を捕食し始める。
「えっ…桜花姫様?」
太郎丸は桜花姫の様子が衝撃的であり絶句する。
『桜餅って…悪霊だよね?』
太郎丸は内心苦笑いしたのである。桜花姫は桜餅を食べ始めてから数分後…。桜餅を完食したのである。
「妖力が回復したわ!太郎丸!目的地に移動するわよ!」
「勿論ですとも!桜花姫様!」
桜花姫と太郎丸が移動を再開し始めてから数十分後…。二人は東国の郊外近辺に到達したのである。
「えっ…」
「なっ!?」
桜花姫と太郎丸は目前の光景に絶句…。目前の光景は地獄絵だったのである。破壊された大砲の残骸は勿論…。地面には黒焦げの焼死体が彼方此方に確認出来る。
「此処では…一体何が?」
「恐らくは悪霊に焼殺されたみたいね…」
「彼等は悪霊に!?」
周辺の地面には八間規模の足跡が存在したのである。
「随分と巨大だわ…ひょっとして足跡かしら?」
「恐らくは怪物の足跡でしょうね…」
すると桜花姫は瞑目する。
「あんたが目撃した怪物って山椒魚みたいな形状だったのよね?」
「勿論です!山椒魚の怪物は肉体も規格外でしたよ…全長は恐らく一町なのは確実でしょうね…」
「怪物の全長が一町規模ね…ひょっとすると今回出現した悪霊は…【百鬼山椒魚】かも知れないわ…」
「百鬼山椒魚ですと?」
百鬼山椒魚とは上級悪霊の一角として知られる。悪食餓鬼系統の亜種であり上位互換とされる無数の百鬼悪食餓鬼が融合化…。誕生する破格の上級悪霊として認識される。百鬼山椒魚の外見は四足歩行の山椒魚であるものの…。非常に巨体であり全長は推定一町規模と規格外である。
「百鬼山椒魚は上級悪霊の一体みたいだからね…正直厄介だわ…」
「えっ…百鬼山椒魚は上級悪霊ですか!?」
『百鬼山椒魚…即刻対処しないと東国の城下町が襲撃される…』
太郎丸は城下町の被害を想像するだけで身震いし始める。すると桜花姫は太郎丸に指示したのである。
「太郎丸?東国に移動して百鬼山椒魚を阻止するわよ!」
「勿論ですとも!桜花姫様!百鬼山椒魚の暴走を阻止しましょう!」
桜花姫と太郎丸は再度東国へと移動を開始する。
第十六話
一件落着
桜花姫と太郎丸が行動を再開し始めた同時刻…。国境の迎撃部隊を一掃した百鬼山椒魚は東国の郊外へと到達したのである。
「非常に不吉だな…呻き声かな?」
「呻き声の正体は物の怪だろうか?」
無数の呻き声に国境を警備する見張り役達が恐怖する。
「一体何だろう?何が近付いて…」
二人の見張り役達は警戒したのである。
「ん!?」
数秒後…。
「彼奴は山椒魚の怪物だ!」
見張り役達は接近中の百鬼山椒魚を直視する。
「此奴は現実なのか!?」
「迎撃部隊は突破されたのか!?」
二人の見張り役達は目前の光景に絶望し始め…。極度の恐怖心で身動き出来なくなったのである。
「山椒魚の怪物に突破されるぞ!東国は滅亡だ!」
「畜生が!俺達は如何すれば!?」
東国の滅亡が現実的であると確実視した直後…。
「百鬼山椒魚!あんたの相手は私よ!」
女性の呼号が響き渡る。
「女人の呼号なのか!?」
女性の呼号と同時に百鬼山椒魚は身動きが停止したのである。
「えっ?何が?山椒魚の怪物が…身動きしなくなったぞ!」
「俺達は命拾い出来たのか?一先ずは安心だな…」
二人の見張り役達は命拾い出来…。安堵したのである。一方の百鬼山椒魚は背後を直視し始める。百鬼山椒魚の背後には最上級妖女の月影桜花姫と夜桜一族の夜桜太郎丸が佇立する。
「桜花姫様!此奴が…先程僕が遭遇した山椒魚の怪物ですよ!」
太郎丸は恐る恐る百鬼山椒魚に指差したのである。
「此奴が元凶の百鬼山椒魚なのね…間近で遭遇すると本当に規格外の怪物ね…」
『亡霊百目怪魚もだけど…こんな規格外の怪物が神出鬼没の悪霊なのかしら?』
桜花姫は規格外の巨大さから百鬼山椒魚が神出鬼没の悪霊なのか疑問視する。一方の太郎丸は恐る恐る問い掛ける。
「桜花姫様?百鬼山椒魚を一人で仕留められるのですか?」
一方の桜花姫は不安そうな表情で問い掛ける太郎丸に満面の笑顔で断言する。
「私は最上級妖女なのよ!相手が上級の悪霊だろうと仕留められるでしょうね!」
桜花姫は天道天眼を発動…。半透明の血紅色だった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光したのである。
「えっ…」
『桜花姫様の両目が瑠璃色に変色するなんて…』
太郎丸は桜花姫の両目の変色に不思議がる。
「桜花姫様の妖術でしょうか?」
「神性妖術…天道天眼よ…」
「天道天眼ですか?」
『桜花姫様の妖術は摩訶不思議だ…』
桜花姫は天道天眼の発動により体内の妖力が数十倍にも急上昇したのである。
「百鬼山椒魚!覚悟しなさい!」
桜花姫は余裕の気分であったものの…。百鬼山椒魚は口部を開口させると高熱の熱風を放射したのである。
『熱風かしら!?』
「太郎丸!」
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。間一髪熱風の無力化に成功したのである。
「はぁ…危なかったわ…」
桜花姫は太郎丸が無事なのか確認する。
「太郎丸も無事みたいね!」
「桜花姫様!感謝します!」
太郎丸も桜花姫の発動した妖力の防壁により無事だったのである。二人は一安心するのだが…。
「なっ!?今度は瘴気かしら!?」
百鬼山椒魚は全身から猛毒の瘴気を放射させたのである。
『百鬼山椒魚は全身から猛毒の瘴気を放出したのね…』
百鬼山椒魚の瘴気は非常に強力であり周辺の草木が枯死され…。周辺の自然界が汚染されたのである。
「ぐっ!桜花姫様…息苦しいです…」
太郎丸は百鬼山椒魚の瘴気により衰弱化し始め…。
「桜花姫様…僕は…」
太郎丸は地面に横たわったのである。
「太郎丸…無理に喋らないで!」
桜花姫は地面に横たわった状態の太郎丸を制止させる。
『百鬼山椒魚を仕留められれば…瘴気の拡大を鎮静化出来るかしら?』
桜花姫は全身全霊の妖力を収縮させたのである。
『百鬼山椒魚…』
「あんたは覚悟なさい!」
全身全霊の妖力で超高温の火の玉を形成させる。桜花姫は火の玉を飛翔させると百鬼山椒魚を標的に直撃させたのである。
『直撃したわ!』
超高温の火の玉が百鬼山椒魚の頭部に直撃すると爆散し始め…。百鬼山椒魚は完膚なきまでに死滅したのである。
「大物の百鬼山椒魚を仕留められたわね…」
百鬼山椒魚を仕留めた影響からか先程拡大した猛毒の瘴気が消失し始め…。自然に浄化されたのである。
「桜花姫様…僕は…一体如何すれば?」
太郎丸も百鬼山椒魚の瘴気によって一時的に衰弱化したものの…。百鬼山椒魚の消滅により体内の瘴気が浄化されたのである。
「太郎丸…体内の瘴気は浄化されたけど当分は安静が必要不可欠よ…」
「安静ですと?」
「あんたは武家屋敷に戻って安静にしなさい…体力を回復させないと…」
実際問題太郎丸は瘴気によって体力が消耗…。体内の瘴気が浄化されたとしても油断出来ない。
「承知しました…桜花姫様…」
太郎丸は自宅へと戻ったのである。太郎丸が戻ってから数秒後…。
『兎にも角にも…一先ずは一件落着ね!』
「私も…西国に戻ろうかしら?」
桜花姫も西国の村里へと戻ったのである。
最終話
無人島
桜花姫が上級悪霊の百鬼山椒魚を退治した同時刻…。とある無人島での出来事である。藍色の着物姿の女性が水晶玉を所持…。女性が両目を瞑目させると水晶玉の表面よりとある場所の光景が映写されたのである。
「如何やら彼女が…」
藍色の着物姿の女性は銀狐の神族である天狐如夜叉…。
『月影鉄鬼丸と名乗る武士の愛娘…月影桜花姫みたいだな…』
天狐如夜叉こそが桜花姫の実父月影鉄鬼丸を殺害した張本人である。
「彼女は天道天眼を開眼させ…覚醒させるとは見事だな…」
『彼女は人間と妖女の混血なのに天道天眼をこんなにも使いこなせるとは…彼女は天道の化身なのか?』
今迄にも数多くの妖女が神性妖術の天道天眼を開眼出来たものの…。桜花姫みたいに天道天眼を変幻自在に使いこなせた妖女は誰一人として存在しなかったのである。
『彼女の正体…恐らくは元祖妖女…桃子姫の再来だろうな…』
天狐如夜叉は桜花姫が桃子姫の再来であると確実視する。
「彼女の成長は非常に興味深いな…」
『今後の展開が面白くなりそうだ!』
天狐如夜叉は日に日に強大化し続ける桜花姫が興味深くなる。
「今後とも薄汚い無間地獄の悪霊を蹴散らし続け…妖力を強大化させるのだぞ!最上級妖女の月影桜花姫!」
『私が主目的を達成するには…其方の天道天眼が必要不可欠なのだからな!』
すると疲労の蓄積からか極度の眠気に急襲されたのである。
「はぁ…」
『睡魔か?眠たくなったな…』
天狐如夜叉は洞窟に戻って睡眠する直前…。
「ん?」
『今度は何事だ?』
突如として複数の気配を感じる。
『気配は複数か…』
天狐如夜叉は外部の様子が気になったのか気配の感じる場所へと移動したのである。天狐如夜叉が移動し始めた同時刻…。無人島にて異国の海賊団が上陸したのである。
「如何やら此処は無人島みたいだな…」
「人気は無さそうだぞ…」
「こんな無人島では…財宝は期待出来ないだろう…」
すると船長らしき人物が発言する。
「今日から此処を俺達の拠点として活用する!無人島を占拠するぞ!」
彼等が無人島を占拠する直前…。
「ん?あんたは…誰だ?」
彼等の目前より藍色の着物姿の女性が無表情で佇立する。
「此奴は無人島の住人か?」
「船長!此奴は異国の小娘みたいだぜ!」
「可愛らしい小娘だ!夜遊びしちまいたい気分だぜ!如何しますかい!?」
海賊団は短剣を携帯すると着物姿の女性を包囲したのである。すると船長らしき人物が着物姿の女性に問い掛ける。
「異国の小娘よ…あんたは何者だ?」
着物姿の女性は無表情で名前を名乗り始める。
「私の名前は天狐如夜叉…神族の一人だ…」
「はぁ?神族だと?」
『神族なんて…冗談だろう?』
船長は天狐如夜叉の返答に呆れ果てる。すると周囲の海賊達が天狐如夜叉の返答に爆笑したのである。
「異国の姉ちゃんよ!面白い冗談だな!」
「此奴は傑作だぜ!」
彼等は天狐如夜叉の神族の一言に揶揄する。
「神族なんて大昔に全滅しちまっただろう!姉ちゃんは冗談が面白いな!」
「気の毒に…あんたは孤独の無人島生活で脳味噌が狂っちまったのかよ!」
周囲の海賊達に冷笑された天狐如夜叉であるものの…。天狐如夜叉は無表情で装備品の木刀を抜刀したのである。
「此奴…木造の刀剣か?」
「棍棒が俺達に通用するか…異国の小娘を打っ殺せ!」
船長の命令により周囲の海賊達は護身用の短剣を携帯…。大勢で天狐如夜叉に殺到したのである。
『愚か者達が…』
一方の天狐如夜叉は海賊達に呆れ果てる。海賊団は天狐如夜叉を攻撃するのだが…。天狐如夜叉は神速の身動きで反撃すると包囲した海賊団を一瞬で蹴散らしたのである。
「なっ!?えっ…」
船長は突然の出来事に何が発生したのか理解出来ず愕然とする。
「一体…何が?」
正気に戻ると砂浜の地面には惨殺された部下達の遺体は勿論…。血塗れの木刀を所持した天狐如夜叉が無表情で船長を凝視し続ける。
「えっ…現実なのか?」
『如何してこんな…悪夢なのか?』
船長は周囲の光景に戦慄したのである。
「今度は親玉の其方が…私の相手だな…」
天狐如夜叉は身構え始める。すると船長は身震いした様子で…。
「俺が…俺が悪かったよ!無人島からは即刻撤退するからよ…今回は見逃して貰えないか?手出ししたのは反省するからよ!俺はこんな場所で死にたくないからな!」
船長は天狐如夜叉に謝罪…。命乞いしたのである。
「親玉なのに命乞いとは…小物だな…」
天狐如夜叉は船長の様子に呆れ果てるものの…。
「其方は情けないな…死にたくないか…」
天狐如夜叉は命乞いし続ける船長を見逃したのである。
「覚悟しやがれ!小娘!」
一方の船長は護身用の拳銃を所持し始め…。背後から天狐如夜叉に発砲したのである。対する天狐如夜叉は即座に殺気を察知…。木刀で銃弾を無力化したのである。
「えっ…銃弾が!?」
「拳銃程度が私に通用するか…」
船長は恐る恐る…。
「あんたは…本当に神族なのか?神族とは…大昔に全滅したのでは?」
「私が神族だから如何なのだ?極悪非道の人間風情は沈黙するべし…」
天狐如夜叉は問答無用で船長を殺害したのである。
『邪魔者は一掃出来たな…』
極悪非道の海賊団を蹴散らしてから数分後…。
『今度こそ眠ろうかな?』
天狐如夜叉は洞窟へと移動したのである。
『最上級妖女の月影桜花姫よ…其方は今後とも神出鬼没の悪霊を仕留め続けろ!天道天眼を覚醒させるのだぞ!』
桜花姫の成長と天道天眼の覚醒に期待する。
完結