飯山陽氏の言論1 「Window of Legitimacy(正当性の窓)」
今回は、「Window of Legitimacy(ウインドウ オブ レディティマシー。和訳:正当性の窓)という言葉を取り上げ、飯山氏が池内先生についてどのような言及を行ったのか示し、飯山氏の言論を考察していきます。
まず、私の立場を明示しておきますが、飯山氏に対して非常に批判的な立ち位置です。飯山氏と池内先生の対立発生時から一貫して池内先生を支持しています。
(記事タイトルで飯山氏の応援記事だと思ってここまで読んでしまった方にはお詫びしておきます。他に適切なタイトルが思い浮かばず)
私は2023年の秋以降、期せずして飯山陽氏の「言論活動」について多くを知ることとなりましたが、それまで国際情勢や国際政治について特に勉強をしようと思ったこともなく、この分野についてはほとんど何の深い知識も持ち合わせていませんでした。購読している新聞記事を読んで、Twitterや動画で専門家の先生方が言っていることを眺めていた、というくらいです。そういう素人が、飯山氏の言論について知るうちに必然的に中東情勢というものに関心を持ち続けることになり、今、この文章を書いていることを予めご承知おきください。
(私は文学部で文学を学んだ生粋の文学脳で、国際情勢を深く知りたいというよりは、池内先生の文体や表現が好みでずっと先生の本を読んできたので、自分のことは、かなり異質な存在だと思っています)
「10.7」と呼ばれることになった、ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃、そしてイスラエルのガザ侵攻は、発生からもうすぐ3年となります。現在、この出来事についての国際社会における分析や判断は、広い見方としてほとんど確定的になっていると私は捉えています。そこで、これまで集めた情報を読み直して検証し、そして私の考えについてまとめておくことにしました。
飯山氏の言論についての考察は、複数回にわけて書いていく予定です。飯山氏の言論の内容や、どのような手法を取っているか、また言論内容から飯山氏がどういった考えを持ってその発言をしたのか考察していき、最終回で各記事から出てきた考察の総括ができればと考えています。
◆「Window of Legitimacy(正当性の窓)」について
まず、この言葉が持つ意味(概念)については、Web検索で出てきたものを参考までに置いておきます。
⚠️私は専門家ではありませんので、この言葉について関心を持った人にはご自身で調べていただくことをお勧めします。
イスラエル・パレスチナ紛争におけるWindow of Legitimacyの意味
「正当性の窓」という言葉は、イスラエル・パレスチナ紛争の文脈でよく使われます。一部の論者は、イスラエルがガザでの軍事作戦を行う正当性の窓は限られていると主張しています。イスラエルが過度な力を使用したり、多くの民間人犠牲者を出したりすると、国際社会の支持を失うことになります。
分かりやすく言うと、ハマスのテロ攻撃にあったイスラエルが反撃した場合、報復という観点やさらなる攻撃を防ぐためにハマスあるいはガザ地区を攻撃することに一定の正当性があるとイスラエル政府は主張することが出来ます。 しかしながらテロ組織を一掃するという大義があったとしても、ガザ地区を攻撃すれば民間人の犠牲が相当出るため、その正当性には大きな疑問が生じてくるわけです。このような場合、イスラエルによるガザへの攻撃の正当性の窓は縮小していると表現することが出来ます。
Window of Legitimacyという言葉は、2023年10月28日にネット動画配信の国際政治ch・第154回放送にて、池内先生が中東情勢(イスラエル軍のガザ攻撃)の解説に用いました。
動画配信リンクと情報は以下。(有料会員のみ視聴可能)
https://www.youtube.com/live/bnvakJwDLKs?si=HKfw7xdn2aI14PSE
配信後の2023年11月1日、国際政治chの投稿には、有料部分のショート動画が添付されており、これはWindow of Legitimacyを池内先生が用いた場面の切り抜きです。
正直、これを見ただけでは、何の話かわかりにくいと私は思います。
何も知らない人にこの切り抜きだけ見せると、池内先生の人柄が誤解されそうな感じもします。
そこで、この文脈を理解するために最低限必要な情報を付け足して文字起こししておきます。
イスラエルの存立根拠というものが、かなり争われるものであって、しかしイスラエルというのは厳然として存在するという、この2つの間で現実が引き裂かれるわけですよね。それで、引き裂かれた結果としてハマスも生まれ、そしてハマスの越境攻撃に対して、イスラエルが非常に大規模な攻撃をもう一通りやってるわけです。
(略)
最後アメリカが「いい加減にしろ」と言うとやめるっていう、もう何度も何度も繰り返されてきたことを何倍かでやっている、ということです。ただその何倍かでやることも、これは10月7日に私も含めて、大部分のまともに見ている人は、これまでの何倍かでやるから、その場合はこれまでと同じではすまないよね、っていうそういう認識になったわけです。
(略)
これまでの、5人殺されたので、50人殺すぐらいまではアメリカが容認しますという、そういうかなりグロテスクなやり方でも、国際社会の認識というものはですね、50人ぐらいだと、やっぱり頑張って忘れるんですよ。こんなこと言っちゃなんですけど。5人殺されて、50人殺し返したけど、頑張って見ないようにして、っていうことをみんなでやってきたんだけど、でも
(Awi註:ここからショート動画切り抜き部分)
1300人殺されたから、じゃあ1万人、1万5000人くらいまでいいんですか、っていう、これすごいグロテスクな言葉で、「Window of Legitimacy」っていう言葉が出て、イスラエル側から出てきて、「おおっ」て。彼らやっぱりすごい概念使うのが得意な人たちなんですけど、だからグロテスクなんですよね。
(Awi註:ここまでショート動画切り抜き部分)
つまり、「Window of Opportunity」って言い方がありまして、機会の窓、っていうのが、それが開かれた瞬間にやるだけやって、それが閉じてきたらやめざるをえないっていう、こういう言い方ですけど、Window of Legitimacyって、まさにテロで殺されたっていうことによって、今回の場合は1300人殺されていると。だったら、言わないでもわかるよね、っていうことですけど、1万人くらいは、殺しても「Legitimacy」があるっていう、そういう共通認識、みんなが言わない共通認識に基づいてそういうこと言うわけですよね。
この後、2023年11月16日に、飯山氏が自身のYouTubeチャンネルの配信内にてこの投稿を示しながら話題にしたため、大きな反響があったようです。
(動画の内容は、【資料】にて掲載しています。)
これを受けて、池内先生からは以下の投稿がありました。
スレッドが長いので、スクショを載せておきます。
特にこの部分は、配信で池内先生の話を聴いた人にはよくわかる話ではないでしょうか。以下にまとめておきます。
「イスラエルの戦争はいつも時計を見ながら戦われる。国際的な非難が高まり、やがてはアメリカが支援を弱める」まさにこの期間にイスラエルが何をどこまでやって各国がどう反応して結果として何が起こるかを中東の各国の安全保障の専門家はじっと見ています。
イスラエルにとっては、ガザ攻撃をどれだけの規模でどれだけの期間できるか、国際社会の非難を当初はアメリカが体を張って止めてくれるがやがてはイスラエルに抑制せよと言ってくる。やめないと支援を絞って圧力をかけてくる。どこまでやれるか、細心の注意を払って探る。
これをwindow of legitimacyと言い表すと、状況がきっちり言い表せる。だからEconomistでもAs one Israeli official puts it, “our window of international legitimacy is limited."とイスラエル高官の表現として表現しているのでしょう。
先生が引用しているエコノミストの記事リンクはこちらです。
◆飯山氏の言論内容
Window of Legitimacyについて、飯山氏の言及を集めました。
note (ブログ)、YouTube (動画配信)、著書2冊(「ハマス・パレスチナ・イスラエル」「日本の国際報道はウソだらけ」)、雑誌1誌(月刊WiLL)。
長文になるので、別記事にしています。以下の考察では、引用を使い、発信内容を全て読まなくても文意が通るようにしていますが、正確に飯山氏の言論について把握したい人はこちらをご覧ください。
◆飯山氏の主張
飯山氏の主張について、その発信から抜き出していきます。
⚫︎「Window of Legitimacy」という概念について
note
・(イスラエルでこの概念が使われているという)そのような実態はありません
YouTube
・Window of Legitimacyなんていう概念は、別に全く一般的に使われてないんです
・イスラエルにおいてこのWindow of Legitimacyなる概念が一般的に用いられて、イスラエルではその概念を用いて、グロテスクな概念を用いて、パレスチナ人の大◯殺を正当化するように使っているなんていう、そういう事実はないんですよ。ないんですよ
「ハマス・パレスチナ・イスラエル」
・イスラエルでこのような概念がそのような用途で一般的に用いられているという事実はありません
WiLL
・イスラエルでそのような概念が大量殺人を正当化する目的で一般的に使われている実態はありません
「日本の国際報道はウソだらけ」
・全く一般的でない概念
⚫︎池内先生について
note
・イスラエルという国がWindow of Legitimacyという概念で大量虐殺を正当化する国であるかのように解説する
・彼は架空の現実をでっちあげ「イスラエルは悪だ」という印象操作をやっている
・これは研究ではない。自らの政治イデオロギーをひろめるための「活動」です。彼は研究者の皮をかぶって政治活動をやっている
YouTube
・全く一般化されてないWindow of Legitimacyとかいう概念を、あたかも一般的に使われているかのような、偽の現実をでっち上げて、それによってイスラエルをディスるということをやっている
・ストローマン論法使って、詭弁やってる
「ハマス・パレスチナ・イスラエル」
・典型的な詭弁の一種、藁人形(ストローマン)論法です
・詭弁を弄してまでイスラエルにグロテスクというレッテルを貼り、中東を専門とはしない他の国際政治学者たちを洗脳している
・仰々しい物言いでイスラエルを嘲りました。訳知り顔をして、加害者のハマスではなく被害者のイスラエルを非難する
WiLL
・池内氏は中東政治の専門家だという立場を利用し、またチャンネルで共演した三人の国際政治学者や視聴者が無知だということを利用して、あたかもイスラエルという国が「Window of Legitimacy」という概念で大量虐殺を正当化する国であるかのように解説している
・彼は架空の現実をでっちあげ、「イスラエルは悪だ」という印象操作をやっ
・「研究」ではなく、自らの政治イデオロギーを広めるための「活動」でしょう。彼は研究者の皮をかぶって政治活動をやっている
「日本の国際報道はウソだらけ」
・一般的でない概念を持ち出し、イスラエルではそれがさも常識としてまかり通っているかのように主張している
・「正当性の窓」という概念によって、イスラエルでパレスチナ人虐殺が正当化されている、だからイスラエルというのはグロテスクなんだという論を展開するのは無理があります
⚫︎飯山氏の主張まとめ
上で抜き出したものから、その主張をまとめてみます。
・「Window of Legitimacy」について
イスラエルで一般的に使われていない言葉であり概念であって、このようなグロテスクな概念を使って、イスラエルがパレスチナ人への虐殺を正当化する事実はない。
・池内先生について
「Window of Legitimacy」という一般的ではない概念を持ち出し、架空の現実をでっちあげ、詭弁(ストローマン論法)を弄して、イスラエルがパレスチナ人への虐殺を正当化する国であると解説している。また、被害者のハマスではなく被害者のイスラエルを嘲り、非難している。間違った解説をして、他の学者を洗脳しており、これらの行動は研究と呼べるものではなく、自らの政治イデオロギーを広めるための政治活動である。
◆考察
ここまで、Window of Legitimacyという言葉を巡って、池内先生の解説、そして池内先生の解説に対する飯山氏の主張を見てきました。
ここからは、上記の情報を元に、私が考えたことを記していきます。
⚫︎「Window of Legitimacy」についての認識
まず、飯山氏はWindow of Legitimacyという言葉について、「別に全く一般的に使われていない」言葉であり、「嘘の現実をでっちあげている」などと断言していますが、そのことより先に、飯山氏はWindow of Legitimacyについての知見はあったのでしょうか。
飯山氏の動画配信では、以下の発言があります。
皆さんね、ネットで検索すればわかると思いますけど、いかりちゃんもさっき検索したんですよ。そうしたら、このWindow of Legitimacyというのね、使っている記事が一個だけ出てきた。
「いかりちゃんもさっき検索したんですよ」、「記事が一個だけ出てきた」、この内容からは、飯山氏が元々この言葉を知っていたようには受け止められません。知っていたなら、⚫︎⚫︎で読んだことがあるけれど、一応調べてみた、などと言うのが通常の話の流れになるように思います。
動画の言及では、池内先生の解説について言及しようとして、知らない言葉だから検索した、というように受け取れてしまうのです。
そしてまた、これも私の穿った見方なのかもしれませんが、飯山氏は検索したところ「記事が1個だけ」しか出てこなかった。だから、「一般的ではない」という結論になった可能性もあり得るのでは、と思ってしまいました。
飯山氏の発言については、その根拠がどこにあるのか疑問が出てくることがあります。「イスラエルにそんな事実はない」というのであれば、たとえばイスラエル主要メディアの情報はチェックしているが見たことはない、イスラエル在住の知り合いに聞いたが、誰も知らないと言っていた、など、その根拠がわかる何かしらの情報を入れて話をしたほうが納得感が出るのでは、と私は思います。たとえライブ動画で説明が十分でなかったとしても、以後の出版物では、その根拠を差し込むことはできたはずです。
少なくとも、11月16日のライブ配信から約2週間後の12月1日が「ハマス・パレスチナ・イスラエル」の原稿校了日だったのは、飯山氏が嘘をついていたわけではない限り、明らかです(【資料】参照)。飯山氏が公の媒体を使って表したものの中に、何を根拠に「一般的ではない」という結論に至ったのかを示す根拠は見当たらず、また、池内先生が11月18日にXの投稿でWindow of Legitimacyの説明をしたことにも反論はなく、一番初めにnoteやYouTubeで言及した内容を、補足も訂正もなく、その後も繰り返していたことは、はっきりしています。
次に、池内先生が「Window of Legitimacy」について説明した部分をまとめてみましょう。
まず、池内先生は「現実が引き裂かれる」という表現を用い、イスラエルという国の歴史経緯について、無理をして国家成立した面は否定できず、そしてそれによってハマスが存在していることを示しています。
これまで何度も繰り返されてきたこととして、イスラエルの報復攻撃は過剰なものであり、最終的にはアメリカが止めるけれども、過剰攻撃の被害については国際社会が黙認してきたとも説明があります。そして、10月7日に端を発する今回のイスラエルの報復は今までの何倍もの規模で、これまでと同じでは済まない、もっと大きな被害が出るだろう、という認識であったとのこと。
そんな中、「Window of Legitimacy」という言葉がイスラエル側から出てきて、イスラエル側の共通認識として、ハマスによってイスラエル人が1300人殺されたのだから、報復として、例えばガザで1万人の被害が出るくらいは正当だという考え方がある、というお話でした。
池内先生の解説では、Window of Legitimacyについて「イスラエル側から出てきて」という発言があり、イスラエルにこの概念があることを示していますが、「「Legitimacy」があるっていう、そういう共通認識、みんなが言わない共通認識」と、この概念を言葉で示すというよりは、暗黙の了解のようなものがあると解説しています。放送内ではこのように話した上で、後日のX投稿ではエコノミストの記事を引用しつつ、「ここでは中東の安全保障に関する専門家の議論の上澄みをさらって、ちゃんとイスラエル高官の言葉まで取ってきています。」と評価し、「私にとっても臨場感がある」と述べていますが、「議論に参加していない人には、中東の安全保障に疎い人には、よく分からないのでしょう。それはやむを得ない」とも述べています。
つまり、イスラエルの人々が一般的に使っているという文脈で解説したわけではなく、イスラエルの外交、安全保障に携わる人や、それに関した議論の場、論考などで出てくる言葉だと捉えるべきと考えられます。
以上から、イスラエルはガザで民間人の被害が出ないようにハマスだけを攻撃している、という飯山氏と、イスラエルの過剰な報復は繰り返されてきたので、大きな被害が出ている今回のガザ攻撃は予想ができた、という池内先生の間には、大きな認識の開きがあり、Window of Legitimacyについての認識もこれと同じように大きな認識の開きがあることがわかります。
また、池内先生は過去の事例を元に解説していることに対し、飯山氏は、Window of Legitimacyは検索で1件しかない、そのような事実はないと断言しており、Window of Legitimacyに対する説明の姿勢にも大きな違いがあります。
⚫︎イスラエルについての認識
Window of Legitimacyについての見解が大きく違うことから分かる通り、イスラエルに対する見解自体、飯山氏と池内先生との間には大きな開きがあります。
飯山氏の池内先生に対する言及には「イスラエルをディスる」「イスラエルを嘲り」などと、飯山氏がイスラエルにシンパシーを持っているように受け取れる発言があります。
池内先生が、イスラエルが過剰な報復攻撃をしているという解説をしているのに対し、飯山氏は「ハマス・パレスチナ・イスラエル」でこのような説明をしています。
第1章 ハマスを擁護する日本のマスコミと”専門家”
【「イスラエルは国際法違反の虐殺国家」という世論形成のウソ】
イスラエルのガザ侵攻の目的は明白です。イスラエル国防軍は何度も繰り返し「目的はハマスの軍事能力を削ぐことだ。ガザの民間人は我々の標的ではない」とはっきり言っています。これは正しく自衛権の行使であり、国際法違反ではない。誰にも非難されるような行為ではないはずです。
イスラエルは全力で、ガザのパレスチナ人を巻き添えにしないように手を尽くしている。しかし、それでもガザ住民が巻き添えになったとしたら、咎められるべきは、ガザ住民の退避の邪魔をし、「人間の盾」として使ったハマスであるはずです。
イスラエルの作戦は対テロ作戦であり、自衛権の行使です。正規の戦争です。イスラエルはルールを守っている。民間人の犠牲が出ないよう、彼らは努力している。
飯山氏の見解は、イスラエルのガザ侵攻の目的はハマスの殲滅であり、国際社会で守るべきルールを守っている、ということです。
ここで私が気になったのは、飯山氏の文章にイスラエルへの感情がこもっているように感じられること。「全力で」「手を尽くしている」「彼らは努力している」…これらの表現について、日本に住む日本人の「研究者」が中東を解説した文章としては、違和感を感じます。
私は日本に住む日本人ですが、だからといって政府や首相の発言を全て鵜呑みにはできません。政府の政策について、それはどうだろうと疑問に思うことはよくあります。
飯山氏は日本の外交政策についてたくさんの批判をしているのですが、イスラエルに対して批判をしているのを見かけたことはありません。不思議なことです。
⚫︎イスラエルについての知見
池内先生のプロフィールを見ると、イスラーム政治思想と中東地域研究が専攻とあります。先生はイスラエルを主に研究対象にしてきた研究者ではありませんが、イスラエルに滞在し、現地の大学で研究した経験があります。先生が所属する東大先端研と、テルアビブ大モシェダヤン中東アフリカ研究センターは研究提携を結んでいて、先生はそこで研究活動をしてきたそうです。
国際政治chの他の回でも、イスラエル滞在に起きた出来事の話が出てきたり、今回の記事で取り上げている動画内でもイスラエル人の友人について言及があります。また、イスラエルについての論考や対談もあります。
もちろん、池内先生の解説を少し聴いたり読んだりしただけでイスラエルという国のことがわかるようになるわけではありませんが、少なくとも先生の周りでは、そういう議論や考え方が現実にあるのだと受け止める根拠はあると私は思います。
対して、飯山氏がどのくらいイスラエルに詳しいのか、私にはわかりません。飯山氏のイスラエル関連の話には、イスラエル側はこのように発表している、という言及が多くあります。しかし、イスラエルを研究対象として、自分の考えを表している著書や論考を読んだことはありません。 私が知っている限りでは、前項で示したように、イスラエルに感情が入った表現をすること、そして、イスラエルで楽しく過ごした思い出と、滞在時にハマスのロケット攻撃に遭遇したと言う経験談。
飯山氏は、イスラム法の論文で東大の博士号を取り、アラビア語通訳の経験がある。そして肩書きは「イスラム思想研究者」です。イスラエルについて研究をしてきたかについては、明言している情報も、推察できる情報も、見当たりません。また長期滞在をした、あるいは現地研究者の知己がいるなどということは、私がその著書を読んだ限りでは知りません。研究者らしい行動として私が知っているのは、10.7から2年が過ぎての2025年12月に、イスラエルでの安全保障ツアーなるものに行ってきたということだけです。
⚫︎飯山氏が同じ言及を繰り返すのは何故か
飯山氏の発言を媒体ごとに見て比較していくと、似通った表現、中には全く同じものが見つかることがあります。正直に言って、使い回し感、あるいはずっと同じ話を繰り返している印象は否めません。
ここに、ほぼ同じ発言があります。違いは、語尾が丁寧語であるかどうか。
note
彼は架空の現実をでっちあげ「イスラエルは悪だ」という印象操作をやっているにすぎない。これは研究ではない。自らの政治イデオロギーをひろめるための「活動」です。彼は研究者の皮をかぶって政治活動をやっている。
WiLL
彼は架空の現実をでっちあげ、「イスラエルは悪だ」という印象操作をやっているにすぎません。これは「研究」ではなく、自らの政治イデオロギーを広めるための「活動」でしょう。彼は研究者の皮をかぶって政治活動をやっているわけです。
そして、多少言い回しは違うが、内容はほぼ同じなのがこちら。
「ハマス・パレスチナ・イスラエル」
イスラエルは、Window of Legitimacy (正当性の窓)というグロテスクな概念を用いてパレスチナの民間人虐殺を正当化するグロテスクな国なのだというわけですが、イスラエルでこのような概念がそのような用途で一般的に用いられているという事実はありません。
「日本の国際報道はウソだらけ」
イスラエルでは「Window of Legitimacy」というグロテスクな概念を用いて、パレスチナ人の大量虐殺を正当化するのが一般的であり、イスラエルはグロテスクだと言っています。しかし、イスラエルでそのような概念が大量殺人を正当化する目的で一般的に使われている実態はありません
例えば、WiLLの記事タイトルは『ハマスVSイスラエル 学者・政治家・専門家 世間知らずの暗愚ばかり』という対談なので、タイトル通りの話題といえばそうなのでしょう。しかし「ハマス・パレスチナ・イスラエル」というタイトルの本で、池内先生以外にも、研究者やジャーナリスト、そして新聞などのメディアについての批判が延々と書かれているのは、私には理解ができません。
別の見方をすれば、飯山氏は池内先生について「まともな研究者ではない」「この研究者の言うことを信用してはいけない」という言説を広めるために、同じ話をずっと繰り返していると考えることもできます。
ついでに書いておきますが、 池内先生が2023年10月7日以降、飯山氏について言及しているのはX (Twitter)のみです。池内先生は2023年11月18日に国際政治chの全編に出演していますが、そこで飯山氏の名前は一度も出てきません。また、専門誌などへの寄稿もありますが、中東情勢など学術研究の領域内の話のみです。私は、こういう池内先生の態度に学者としての矜持が現れていると思います。
飯山氏はなぜ同じ話を色々な媒体で繰り返すのか。
執筆依頼が多くて仕事を楽に捌くために同じ話を便利に使いまわしているのかもしれないし、とにかく池内先生のことを悪く言って回りたいのかもしれないし、また別の理由があるかもしれません。
ただ一つわかったことがあります。飯山氏の著書には、雑誌について、次のような認識が書かれていました。
「日本保守党との死闘」(ワック(株)) 2025年5月 発行
雑誌の重要なところは、インターネットを見ない層に手が届くところです。雑誌には固定の読者層がいるし、雑誌ならば、活字ならば手に取ろうという人もいる。加えて「WiLL」は、読売新聞や産経新聞、日経新聞にも大きな広告が掲載されます。読売新聞の政治面の下に「WiLL」の広告があれば。政治面に眼を通す政治に関心の高い層がその見出しを目にするわけです。
ワック(株)は、雑誌WiLLの発行元でもあります。
⚫︎研究者とは何か
飯山氏は自身を「研究者」だと自認しているようです。しかし、飯山氏の姿が研究者としての態度として正しいものなのか、私は疑問に思います。
自分とは見解の違う研究者について、根拠のよくわからない批判を多数の媒体で行うことが、本当に中東情勢の解説になるのでしょうか。
イスラエルについて、客観的な研究者としての目線で捉えることはできているのでしょうか。
飯山氏の「研究者」としての態度は、中東情勢を解説するというよりも、他の研究者を否定することで、最も自分が優れていると顕示したいようにも受け取れます。
それについてはまたこの先の機会に。
◆参考資料
最後に、「Window of Legitimacy」は、池内先生と飯山氏の係争にて、地裁判決に判断が含まれているのでここに載せておきます。
(⚠️控訴後の判決では、判断が変化する可能性はあります)
⚫︎2026年6月25日
東京地裁判決
令和6年ワ24994号
原告 池内恵
被告 飯山陽・ワック株式会社・島田洋一
The Economist誌及びTIME誌の記事によれば、「Window of Legitimacy」という用語は、イスラエルによるガザでの戦争に関する両誌の記事において表題等において用いられていたこと、イスラエル当局者によって、イスラエルの武力行使による懲罰的被害を正当化する概念として使用されていたことが認められる。
この裁判は、月刊WILL 2024年2月号の飯山氏と島田氏の対談の内容が争点となっています。「Window of Legitimacy」について、裁判所が池内先生の主張を認めたことがわかります。
今回は、以上です。長文にお付き合いくださりありがとうございました。
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ただし、どうも事務手数料その他で15〜20%引かれてしまうらしいのです。もし可能でしたら東大基金へ直接寄付していただくのが最も金銭的ロスが少ないと思います。よろしくお願いいたします。

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