ドル売り為替介入で得た円、財源になる? 減税5兆円分確保は難しく
CheckPoint
政府は5日、食料品に課す消費税の税率を1%に下げる方針を決めた。与党内には政府・日銀が実施した為替介入で得た円を使えないかとの期待がある。介入資金の活用には複雑な会計ルールがあり、5兆円に上る財源を確保するハードルは高い。
2027年4月からいま8%の税率を1%に下げる。6月から残り1%分に当たる年6000億円ほどを所得に応じ中低所得者に配る。実質的な減税規模は5兆円ほどになる。赤字国債に頼らず、市場の信認を維持するには財源確保が欠かせない。
高市早苗首相は減税を表明した7月30日に「26年度は外為特会や独立行政法人の納付金などで9.0兆円程度だった税外収入についても、さらなる歳入確保の取り組みを進める」と述べた。政府・与党内には外為特会の一段の活用を求める声がある。
為替介入に必要な資金は外国為替特別会計(外為特会)がドル建ての有価証券や預金などの形で管理、運用している。大半は米国債とされる。外貨準備高は6月末時点で1兆2874億ドル(約203兆円)に上る。ドル売り・円買い介入で得た円は、そのまま特会の利益にはならない。
会計上複雑なルールがあるからだ。介入時の為替レートが2カ月前の為替レートよりも円安なら特会の利益になり、決算剰余金が増える。逆に円高なら損失になる。
財務省によると、政府・日銀は4月28日から5月27日までのおよそ1カ月で計11兆7349億円の介入を実施した。過去の円高局面で買ったドルなどに含み益が生じていても、特会の利益になるとは限らない。
介入で得た円は実際は政府短期証券と呼ぶ特会の借金の返済に全額を充てている。政府短期証券は過去にドルを買った際に外為特会が発行した国債の一種だ。介入で売却益が生じても、あくまで会計上の処理に過ぎないといえる。
減税の財源に使えるかどうかは、ドルの売却益や米国債の運用で得た利子収入を積み上げた剰余金の規模が左右する。一部は一般会計に使えるからだ。
現行ルールは剰余金の3割を外為特会にためると定める。財務省によると、25年度決算では5兆565億円の剰余金が生じた。うち1兆3414億円を特会に留保し、残り3兆1300億円は既に26年度の一般会計に繰り入れ済みで使い道は決まっている。うち8000億円ほどは防衛費に充てる。
いま財源に使える可能性があるのは、外為特会の予算段階の見込みから上振れした5850億円の剰余金だけだ。5兆円を賄うには物足りない。
日米両政府は7月31日におよそ28年ぶりの円買い協調介入に踏み切った。片山さつき財務相は3日「更なる協調介入を実施することも躊躇(ちゅうちょ)しない」と述べた。
日本が持つ米国債を担保に米連邦準備理事会(FRB)からドルを借りる「外国・国際通貨当局向けレポ・ファシリティ」と呼ぶ枠組みの活用も検討する。この枠組みを使えば日本政府は米国債を売らずともドルを調達できる半面、FRBへの利払いが生じる。剰余金の下押し圧力となる。
一連の介入で生まれた円資金は見た目ほど自由に使えないのが実情だ。このため政府関係者からは「剰余金の3割を留保するルールを一時的に撤廃すればよいのではないか」との声も浮上している。
【関連記事】
関連企業・業界