この国ではフェミニストが嫌われる。なぜか。
私はフェミニストと名乗ることに、まだ違和感がある。
べつに、差別なんてなかった、という話ではない。ただ、自分の育ってきた環境が比較的恵まれていたのは事実で、「女だから」という理由で何かを諦めさせられた記憶が、あまりはっきりとは出てこない。だから「フェミニスト」という言葉を自分に当てはめることに、どこかまだ、しっくりこない感覚がある。
でも、少し立ち止まって考えてみると。
夜道を、明るい道で帰る
夜に一人で歩くとき、なるべく明るい道を選ぶ。これは別に意識してやっていることではなく、気づいたらそうなっている。繁華街で悪乗りしている男性グループを見ると、自然と距離をとる。目が合わないように、絡まれないように。
これを「普通のこと」として、ずっとやってきた。
でも考えてみると、これは「普通のこと」なのだろうか。暗い道を避けるのは、何かを恐れているからだ。悪乗りしたグループから距離をとるのも、同じ理由だ。「平和で安全な暮らし」を実感しながら、身近な恐怖はすぐそこにある。そのことに、当たり前すぎて気づかないままでいた。
そしてもっと問題なのは、これを「嫌だ」と言うと、嫌がっている方がおかしい、とされることだ。「そんなに警戒しなくても」「考えすぎじゃない?」。恐怖を感じた側が、感じ方を訂正される。
同じ世代の話
自分がそれほど差別を感じてこなかったとしても、同じ年代に、女子だからという理由で大学に落とされた人がいる。東京医大の不正入試問題が明るみに出たとき、あれは特別な例外ではなく、長年続いていた「慣習」だったと知った。
自分が気づいていなかっただけで、構造はそこにあった。自分の経験だけを根拠に「差別はなかった」とは、もう言えない。
「フェミニスト」と言った瞬間に起きること
ここからが本題だ。
「フェミニスト」という言葉には、すでに大量のイメージが貼り付いている。声が大きい、男が嫌い、すぐ怒る、面倒くさい。実際にそういう人がいるかどうかより先に、そのイメージが来る。だから「フェミニスト」と名乗った瞬間、あるいは名乗っていなくても「フェミっぽい」と思われた瞬間に、言っていることの中身を聞いてもらえなくなる。
「またフェミが騒いでる」で終わる。
これが一番問題だと思っている。嫌うのは自由だ。でも、嫌うことによって主張の中身が検討されないまま終わるなら、それは議論ではない。レッテルが、思考の代わりをしている。
声を上げたときに圧力がかかる、というのはこういうことだ。物理的な圧力だけではなく、「あなたはフェミニストだから」という一言で、言葉そのものを無効化される。
だからこの記事を書いている
私はフェミニストと名乗るかどうか、まだわからない。でもそれはあまり重要ではないと思っている。
夜道を明るい道で帰ることを「当たり前」としてきた感覚、嫌だと言ったら嫌がる方がおかしいとされた経験、同じ世代に起きていたことへの驚き。そういうものを、「フェミニストかどうか」という話に回収させたくない。
「フェミニスト」という言葉が嫌われることで、その言葉を使う人の主張が聞かれなくなるなら、結果として何も変わらない。変わらないどころか、変えようとすること自体が「やばい女のやること」として処理される。
名乗るかどうかより、「なんでこうなるんだろう」を考えることをやめたくない。それだけだ。


コメント欄の反応を見ても、「フェミっぽい言説」と認知された瞬間に、文脈を無視した定型的な反論(レッテル貼り)が発動している印象を受けます。 この不毛な衝突を避けるためには、私たちは「フェミニスト」や「愛国者」といった大きな言葉の内部にある「分類(グラデーション)を増やす」という…
横山さんの仰る『言葉の解像度を上げる』という視点に、深く共感いたします。 現在SNS等で見られる議論の多くは、『フェミニスト』や『愛国者』といった大きなラベルを貼り付けることで、相手の個別の文脈や切実な背景を切り捨て、思考を停止させる『排除の論理』が先行してしまっているように感じ…
と、セクハラおばさんが主張しています おじさんが女に対してお前と同じことを言ったら立派なセクハラだよ
盆暮れさん! コメントありがとうございます! 同じこと、というのは記事のどこの部分でしょうか。煽りとかじゃなく、本当に理解したいのでぜひ知りたいです。
夜道は出来るだけ明るく人通りのある道を歩く 繁華街で絡まれないようにする これフェミニズム関係あります? 男女問わずやってることですよね 横断歩道渡る時に車が来ないか確認するのと同じようなものだと思いますよ
参考にしたデータはこちらです。 警察庁: https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/keihatutu_ru/josei.pdf 警視庁: https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/koramu2/koramu8.html ALSOK(警視庁統計引用): https://www.alsok.co.jp/person/lifesupport/woman/08.html